75 / 161
第三章 異世界の馬車窓から
190歳年上の先輩英雄との共通点
しおりを挟む「それで聞きたいんだけど、君も自分と近い時代から来たって、ニトリんに聞いたけど、正確にはいつなの?」
やっと落ち着いてまともに会話出来るのかな。
「2018年です」
「ま?自分と同じ年じゃないか」
「え?牧さんも2018年から来たんですか?」
「だよ~。
因みに何月?自分は8月なんだけど」
「10月です」
「あー、惜しい、これで来た月も一緒なら面白いのに」
二ヶ月なんて僅差だよね。
面白いかどうかわからないけど、凄い確率だな。
「出身地は?」
この場合出身地と言うのか?
「僕はS県です」
そこの結構有名な動物園に勤務していたんだけど、あの子達はどうしているだろう。
「Sか~、へ~~。自分Cだな」
「ほー、ご近所さんですね」
「いやいや、場所は近くても…………」
そこからご当地バトルに発展してしまい、ロリさんの仲裁が入るまで続いてしまった。
まあ、お互いどっちが上かって良くある話なんだけどね。
いかんいかん、牧さんには何だか釣られてしまう。
「死因はどうなの?」
「…………色々あって自棄酒した後の、急性アルコール中毒かな」
「アル中か~。
因みに幾つだった?」
「享年と言うのかな、33歳だね」
「ま?そんなおっさんが幼児になるとか」
「いやいや、たまたまあの頃は良かったって思ってただけだから、深い意味ないから」
望んで幼児になったわけではない。
僕はおとこだけど、幼女好きに誤解されるのは、なんとなくだけど勘弁して欲しい。
本当になんとなくだけどね。
「自分28だったから年も近いっちゃあ近いね」
28歳で幼女好き……元の世界で犯罪なんて犯してないだろうなぁ。
ある意味こちらの世界に喚ばれて良かったんじゃ無いの?
「あの夏暑かったじゃない、自分はイベント会場で熱中症で倒れてちゃって、そのままこっちに来たんだよね。
あ~~折角入手した神絵師の新刊が~~~」
熱中症……確かに異常な暑さだったもんな。
動物達もぐったりしてたし、お客さんも気分悪くする人多かった。
「第二回のケモニアとのオフ会も予定してたのに」
…………ん?
「ケモニヤ?」
「ケモマニアのチャット仲間内で、【夏の暑さを自分らの熱で吹っ飛ばす会】とか言ってたんだけどね」
…………ひょっとして……
「ヒンヌー教の教祖?」
*****
「うわっマジか~」
休憩時間にスマホを見ながら叫ぶ山田さんに、弁当を食べながら視線を送ると、
「今メッセが入ったんだけど、教祖が亡くなったって~」
「教祖?山田さん、何か危ない宗教でも……」
仕事仲間が宗教家なのは、ちょっと嫌だな。
「いやいやいや、私じゃなくて、ヒンヌー教の教祖。
私は玄ミミナーですから」
「…………よく分からないけど、ハンドルネームとか言うやつ?」
「ハンドルネーム!古っ!
まぁ先輩のわかりやすいように言うとそうですね」
ジェネレーションギャップがキツいです。
「まぁ兎に角知り合いが亡くなられたんだね。
葬式とかは行くの?休みとるならシフト協力するよ」
「あ、大丈夫です。
リアルでは一度しか会ったことないですし、知ったのは今ですけど、イベで倒れてそれっきりって言うから、2週間くらい前みたいだし。
最近更新しないと思ってたんだよね~……」
*****
と言う会話を夏休みの終わりくらいにした覚えがあるけど、もしかして、その教祖様かな?
「何で知ってるん?
もしやフォロワーとか?」
「仕事場の後輩が、夏に知人が亡くなったと言ってたけど、もしかしてと思って」
当たりっぽいね。
「え?誰だろ」
「山田って言う二十歳の女の子なんだけど」
「名前言われても…職場って、動物園っつたよね?」
「ああ、飼育員だけど、心当たりある?」
S県の動物園……と少し考え込んだ牧さんが、何か思いついたように顔を上げる。
「もしやケモスキーが高じてリアケモ関連の仕事に着いた、玄人ミミスキーの玄ミナか?」
……………玄人ミミ好き……なんなんだか分からないけど、
「多分それかな」
「うっわ、いくらなんでもニア過ぎっしよ、ないわー」
……えー、いくらなんでもニアピン過ぎる、あり得ないわで良いのか?
確かに狭い日本と言えども、同じ年に隣の県の年齢の近い人間が、年代ずらして召喚されるって、どんな確率だよ。
……でも牧さんとは住む世界が違う気がするけどね…。
ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー
これを書いたのが2018年でして、40度超えの日が有るとか、かなりの酷暑でした。
マッキーのスラングも、この当時の物です。
今更な物が多いのは、そんな理由だとご理解いただけるとありがたいです。
2
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる