133 / 161
第五章 問題は尽きないようです
妖精が行けない場所
しおりを挟む「詳しい理由までは調べが付かなかったのですか?」
妖術で詳しく調べられそうなのに。
情報からすると、城の奥深くまでは侵入しているのだろうから、妖精の子達の力で調べてくればよかったのにと思う。
しかし調べるなら何の子だろう。
記憶の子かな?
などを聞いてみて、新たな事実を知った。
「え?妖精が離れてしまう?」
「ウチ様はご存知なかったのですか?
妖精は山脈より北へ行くと離れてしまうのですよ」
ニヤ、ピヤ、そうなの?
二人に聞くと、うんうんと頷く。
『お山より北へは行けないの。
だから離れて戻って来るの待ってるの』
『力が出なくなるんだよ』
え?でも事故現場の絵って、山脈の北側だよね?
『うんと、うーーーんと頑張ると、ちょっとだけならお山の向こうに入れるけど、すぐに戻らないと消えちゃうよ』
『そうそう、ちょっと行ってぴゅっと帰ってくるなら何とかなるの。
でも本当に近くだけでちょっとの間だけなの』
『あの絵を描いた絵の子は、祝福あげてる人の子が、【ちょっとでも早く正確な情報を届けたい】って願いを叶えるために頑張ったんだよ』
『そうなの。
うーーんとうーーーーんと頑張ったの。
うーーーんと頑張ってお山を超えたの。
そして消えちゃったの……』
ええ‼︎山越えると消えるの?何で⁈
『うーん……湖の力が届かないから?』
いや、聞かれてもわかんないし。
湖って、ニヤ達の城っていうか住処だよね?
『そうそう』
離れすぎると消えちゃうの?
『そうそう』
何で?
『わかんなーい』
本人達がわからないって話を続けてもラチがあかないか。
でもそれなら遠話の子とか居なくて、どうやって馬を飛ばして四ヶ月掛かる所の情報をこんなに早く持ち帰れたの?
情報収集にも日にちも掛かるのに。
『確かお山の向こうだと、鳥とかワイバーンを使ってるの』
ああ、伝書鳩的なものがあるんだ。
そりゃそうか、スマホやパソコンも無いし、魔法も妖術も使えないとなると、情報伝達は、人から人へか、動物使うくらいしかないか。
ってか、ワイバーンか……今度見せてもらおう。
「しかし、彼の国を問いただしても、正直に話をするとは思えないな」
「面会まで漕ぎ着ける間に、証拠隠滅をしてしまうでしょうね」
「そうですね、妖精の方々の助力を得ないとなると、難しいものがありますね」
正規の手段を取ったとしても、絶対にやましい事は隠し通すだろうな。
いくらトキ家の人が忍びとして優秀でも、やはり妖術を使わずに調べるって言うと限度があるだろう。
調査が進まないからと言って、妖精達に無茶させてたら、ベルンリグールとやってる事が同じになるし……どうしたもんだろう。
僕の考えも行き詰まったけど、会議自体も進まない。
考え込んでいると、ニヤが頬をペチペチと叩いてきた。
『とうちゃんとうちゃん、お山の北で術使いたいの?』
うん、そうだけど、皆に無理して欲しくないし、かと言って元の世界みたいな技術力が有れば、盗聴やハッキングや何やかやで何とかなったかも知れないけど、この世界で人の力だけだと、色々限界は多いからね。
どうしたもんだろう。
すると、ニヤとピヤは僕の顔越しに見つめ合い、頷きあった。
『んとね、んとね……相談してくるの』
え?誰に?
『誰って……誰だろう?
でも相談してみるから、戻るね』
全然わからない言葉を残して、二人は消えた。
瞬間移動だろうけど、どこの誰に何をどう相談しに行ったんだ?
ニヤの言葉が足りないのは割とあるけど、ピヤも意味不明だったなぁ。
会議はそれ以上の進展もなく、お開きとなった。
2
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる