58 / 109
海鮮チラシ…もとい、誕生日
しおりを挟む新しい朝が来た、誕生日の朝だ。
ご都合主義これに極まり、って感じで今日は日曜日。
夕方からは、両親の知り合いと、俺の友達を呼んでのバースデーパーティーだ。
貴族子女のパーティーだと、お見合い目的もあるんだけど、今日の場合は……あれだな…こんにゃく白書………寒い!
婚約発表だな。
17歳の俺の目標は、貴族っぽく見えるようにする事と、ポーカーフェイス。
………無理っぽくっても、心掛けるように、心の隅にでも置いておこう。
今夜呼んだのは、クリスティーナとスカーレット、その婚約者の王子、ヤスハルと婚約者のコウエンジ、俺の婚約者のリズヴァーンとその両親、そして両親の重要な知り合い。
……………あれ?ヤバい、ヒロインだけがぼっちだよ!
王子ルートとヤスハルルートとリズヴァーンルートは、それぞれ相手が決まっちゃってるし、モースディブスは絶対阻止だし、ベルアルムも微妙……。
え?後は教師と用務員と護衛騎士?
あ!兄ルートがあるか!
……でも兄もビミョーっちゃあビミョーなんだよなぁ…シスコン過ぎるし。
そりゃあ兄はいい奴だよ、頭良いし、努力家だし、見た目によらず力もあるし。
ただ、その辺の女より美少女フェイスで、病的なシスコンなだけで………。
うん、やっぱり微妙だ………。
隠しキャラにかけるしかないか?
「お誕生日おめでとうございます」
「キャシー、おめでとう」
皆が祝ってくれて、プレゼントもくれた。
スカーレットと王子からは、髪飾り、クリスティーナからガラスペン、そしてめっちゃテンションあがったのは、ヤスハル達からのプレゼント。
「お誕生日おめでとうございます、キャスティーヌ様。
これはね、うちの国ではお祝いの時によく食べられるものなんだよ」
「今日に合わせて取り寄せた具材だから、新鮮だよ」
そう、俺の誕生日とかにもよく親が作ってくれてたよな、海鮮ちらし寿司。
「まあ、華やかなお料理ですわね」
「これは食べ物なのかい?」
「キラキラ輝いているこちらは、宝石なのではないのですか?」
「このオレンジ色のまーるいのは、いくらって言う魚のたまごで、後はエビと卵とサーモンとホタテとマグロと真鯛だよ」
「魚の卵……え?生ですの?」
うん、ちょっと引いてるね。
王都は海に面していないから、魚介に馴染みもないし、生の魚を食べる習慣もないもんね。
でも俺はこの『ご馳走』が好物だから、遠慮なく食べるよ。
しゃもじは無いから、大きなスプーンで皿に移し、箸も無いからフォークで、いただきます。
「う~ん!美味しい!」
家で食べた物より具材は豪華だし、タネが新鮮だよ、もうぷりっぷり!
海から距離があるのに、サイオンジ家の配達能力は凄いね。
海運だけじゃなくて陸運もバッチリなんじゃない?
「とても美味しいですわ!
こんなに新鮮な海鮮が食べられるなんて凄いです」
「それはこうちゃんの家の特殊な箱で運んできたの。
その箱のおかげで色んなものが新鮮なままこの国にも運んでこられるんだよ」
これは是非交友関係を結んで、色んな物を届けてもらえるようにしないと。
内心企みながらも箸……フォークは止まらない。
そんな俺を見た周りの人も、恐る恐る海鮮ちらし寿司を口にする。
皆が食べたけど、美味しいって人と、やはり生や半生がダメな人に分かれた。
あっさりしてるし、割と女性の方が美味しいって人が多かったかな。
他に貰ったプレゼントは、両親からドレス、祖父母からはネックレス、兄からは、兄が編んだレースのショール……兄よ、手先まで器用なのか。
そして最後にリズヴァーンからは………はい来た、婚約指輪!
俺の瞳の色、透き通った碧色の石が付いている。
この国での婚約指輪は、相手の瞳の色の宝石をあしらった指輪を渡すのだ。
「ほう、なかなか質の良い物を見つけたな」
「そうですね父様、これ程透明度の高いマリンライトは初めて見ました」
父と兄が感心している。
このマリンライトという宝石は、透明度の低い物が一般的だ。
不透明な物は結構出回っているけど、それは【綺麗な石】感覚で、雑貨屋などで取り扱われていて、透明度のある物だけが宝石として扱われる。
しかしこの指輪の石は、透明度が高いよな。
リズヴァーンの思いの深さ……と思いたいけど、チラッと思うのが、俺と兄の瞳の色って同じなんだよね。
これって俺用に準備したものなのかなぁ~?
俺がリズヴァーンから指輪を贈られているのを見たクリスティーナとスカーレットが、目をキラキラさせている。
「まぁ、キャスティーヌ、婚約されるのですか?」
「ええ、まぁ、そうですね」
「キャシー、照れているの?
もっとはしゃいでも良いのですよ」
「ほ…ほほほ、恥ずかしいだけですの」
「これはめでたいことですね」
「ダブルでおめでとうだね、キャスティーヌ様」
ヤスハル達も祝福してくれるけど、うわーい、とか喜べることでもないしね、どうも微妙な反応になってしまう。
うちの両親とリズヴァーンの両親は、始終ニコニコだし、いつもは兄と居るリズヴァーンも、さすがに今日は俺と一緒に居る。
誕生日も迎えたし、婚約発表も済んだし、これで平穏な日々が送れるんだよね。
だよね?
*****
翌週、学園でクリスティーナに、
「お話がありますの、長くなるかもしれないので、できれば週末にでも我家に泊まりに来ませんか?」
と誘われた。
色々あってうっかり忘れていたけど、クリスティーナの家のこととかを話してくれるのかな。
愚痴を聞くくらいドーンとこい!だよ。
俺は家族に許可を取り、週末クリスティーナの家に泊まりに行った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
33
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる