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【第28話:かばでぃと言いたかったこと】
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そのころ僕は、女子二人にそんな心配をされているかなどつゆ知らず、無事に売店の前までやってきていた。
しかし、売店で貴宝院さんに頼まれた緑茶のペットボトルは買えたんだけど、小岩井に頼まれたアイスティーが見つからない。
売店と言ってもお土産などをメインに扱っているお店なので、そもそも飲み物の種類が少ないのだけどれど……。
「そう言えば外に自販機あったよね」
店の中にはなさそうなので、僕はさっき売店の裏にちらっと見えた、自動販売機コーナーに向かうことにした。
「意外と紅茶って置いてないんだな……」
しかし、その自動販売機コーナーにもアイスティーは置いていなかった。
コンポタはあるけど……。
「ちょっと面倒になってきたな……いっそ本当にコンポタでも買うか?」
などと思っていると、少し離れたところに軽食などを扱う別の売店を見つける。
「よし! とりあえずあそこに行ってみて、それでも無かったらコンポタってことで!」
そこまで離れていなかったので、五分とかからずその売店に着いたのだけれど……。
「うっ……やっぱり売ってないぞ……小岩井は、面倒なもの頼んでくるなぁ……」
まぁそこまで珍しいものを頼まれたわけではないので、完全に八つ当たりなんだけど、とりあえずコンポタは買っておこう。
「しかし、なんでこの時期に熱々のコンポタを売っているのに、アイスティー売ってないかな」
コンポタを買いつつ愚痴っていると、突然、後ろに気配を感じ、僕は慌てて振り向いた。
「おい! おまえ!」
振り向くとそこには、陰湿な感じの三人の男が立っていた。
僕はいきなり凄まれたので、少し萎縮しつつも、
「は、はい? なんですか?」
と言葉を返す。
しかし、この時点ですぐに、こいつらがどういった奴らなのかはわかっていた。
そいつらの肩には、大きなカメラがさげられていたし、さっき遠目に動物園エリアで見かけた不審な奴らだ。
きっとネットの情報を見て、貴宝院さんのことを撮ろうと追いかけている奴らだろう。
「なんですかじゃねぇよ! お前! 神の奇跡と一緒にいた奴だろ!? 彼女がどこにいるか教えろ!」
「そうだ! アイナチーはみんなのモノなんだぞ! 教えろ!」
「アイドルは男の友達なんて作るの禁止なんだ! 俺たちに居場所を教えて、二度と近づくな!」
身勝手に吐かれる言葉に思わず言い返しそうになったけど、僕はぐっと堪えて口を開いた。
「な、何の事かな……? 彼女とか言われてもわからないし、僕は今日は男友達と一緒に来ただけで、女の子なんて知らないよ」
しかし、適当にごまかして逃げようと思ったのだけど、三人の中の一番大柄な男に胸ぐらを掴まれてしまった。
「嘘付け!! さっき一緒にいるところをしっかり見てたんだぞ!」
ぐっと押さえたつもりだったのだけど、いきなり胸ぐらを掴まれたせいで、
「うぐっ!? し、知らないものは知らない! そもそも君らみたいな粗暴な奴らに、友達のことを知ってたって教えたりしないから!」
と、思わず言ってしまった。
しかし、そう言い返した瞬間……、
「かはっ!? い、痛たた……」
頬に強い衝撃と痛みが走り、僕は地面に叩きつけられていた。
頬に鈍い痛みと、口の中に鉄の味が広がるのを、どこか遠くに感じながら上半身を起こす。
まさかいきなり殴られるとは思わなかった。
人に本気で殴られたのなんて、小学生の時に正と喧嘩したとき以来かもしれない。
「お前みたいな冴えない奴が、神の奇跡と友達だと!?」
「だいたいアイナチーもアイナチーだ! アイドルはアイドルらしく行動しろってんだ!」
「ほんとだぜ! わざわざ写真撮りに来てやったっていうのに、男も一緒に遊んでるとか、有名人の自覚なさ過ぎなんだよな!」
なんだこいつら……なにを身勝手な事を……。
普段僕は、あまり人に対して本気で怒りを感じることはないのだけれど、その勝手な物言いに、怒りの衝動が抑えられなかった。
「ふざけるな……」
「あん?」
「ふざけるな!! お前たちみたいな身勝手な奴らのせいで、貴宝院さんは窮屈な生活を強いられているんだ!」
そして僕は、三人をにらみ返し、
「だいたい貴宝院さんはアイドルでも芸能人でもないんだ! お前等のやってることはストーカーなんだぞ! そもそもあの子は有名人になりたくてなったわけじゃない! そんなことは望んでいないんだよ! お前たちの勝手をあの子に押しつけるな!!」
と、気付けばそう叫んでいた。
どうしても我慢できなかった。
本当の友達がいないって言っていた、あの時の貴宝院さんの寂しそうな顔を、思い出してしまったから。
「こ、こいつ! やっちまえ!」
「お、お、俺たちはストーカーなんかじゃねぇよ!」
そして、まぁ当然こんな常識のかけらもない奴らに、こんな事を言えばボコられるわけで……。
でも、殴ったり蹴られたりしながらも、僕は口を閉じなかった。
こんなパンチ大したことない……。
こんなの、小学生の正に貰ったパンチの方がずっと痛いよ!
「貴宝院さんは、げ、芸能人じゃないんだ! 勝手に偶像化するな! つきまとうな!」
それに僕は、最後にどうしても、こいつらに言いたかったんだ……。
「あの子は、貴宝院さんは……普通の一五歳の女の子なんだ!」
しかし、売店で貴宝院さんに頼まれた緑茶のペットボトルは買えたんだけど、小岩井に頼まれたアイスティーが見つからない。
売店と言ってもお土産などをメインに扱っているお店なので、そもそも飲み物の種類が少ないのだけどれど……。
「そう言えば外に自販機あったよね」
店の中にはなさそうなので、僕はさっき売店の裏にちらっと見えた、自動販売機コーナーに向かうことにした。
「意外と紅茶って置いてないんだな……」
しかし、その自動販売機コーナーにもアイスティーは置いていなかった。
コンポタはあるけど……。
「ちょっと面倒になってきたな……いっそ本当にコンポタでも買うか?」
などと思っていると、少し離れたところに軽食などを扱う別の売店を見つける。
「よし! とりあえずあそこに行ってみて、それでも無かったらコンポタってことで!」
そこまで離れていなかったので、五分とかからずその売店に着いたのだけれど……。
「うっ……やっぱり売ってないぞ……小岩井は、面倒なもの頼んでくるなぁ……」
まぁそこまで珍しいものを頼まれたわけではないので、完全に八つ当たりなんだけど、とりあえずコンポタは買っておこう。
「しかし、なんでこの時期に熱々のコンポタを売っているのに、アイスティー売ってないかな」
コンポタを買いつつ愚痴っていると、突然、後ろに気配を感じ、僕は慌てて振り向いた。
「おい! おまえ!」
振り向くとそこには、陰湿な感じの三人の男が立っていた。
僕はいきなり凄まれたので、少し萎縮しつつも、
「は、はい? なんですか?」
と言葉を返す。
しかし、この時点ですぐに、こいつらがどういった奴らなのかはわかっていた。
そいつらの肩には、大きなカメラがさげられていたし、さっき遠目に動物園エリアで見かけた不審な奴らだ。
きっとネットの情報を見て、貴宝院さんのことを撮ろうと追いかけている奴らだろう。
「なんですかじゃねぇよ! お前! 神の奇跡と一緒にいた奴だろ!? 彼女がどこにいるか教えろ!」
「そうだ! アイナチーはみんなのモノなんだぞ! 教えろ!」
「アイドルは男の友達なんて作るの禁止なんだ! 俺たちに居場所を教えて、二度と近づくな!」
身勝手に吐かれる言葉に思わず言い返しそうになったけど、僕はぐっと堪えて口を開いた。
「な、何の事かな……? 彼女とか言われてもわからないし、僕は今日は男友達と一緒に来ただけで、女の子なんて知らないよ」
しかし、適当にごまかして逃げようと思ったのだけど、三人の中の一番大柄な男に胸ぐらを掴まれてしまった。
「嘘付け!! さっき一緒にいるところをしっかり見てたんだぞ!」
ぐっと押さえたつもりだったのだけど、いきなり胸ぐらを掴まれたせいで、
「うぐっ!? し、知らないものは知らない! そもそも君らみたいな粗暴な奴らに、友達のことを知ってたって教えたりしないから!」
と、思わず言ってしまった。
しかし、そう言い返した瞬間……、
「かはっ!? い、痛たた……」
頬に強い衝撃と痛みが走り、僕は地面に叩きつけられていた。
頬に鈍い痛みと、口の中に鉄の味が広がるのを、どこか遠くに感じながら上半身を起こす。
まさかいきなり殴られるとは思わなかった。
人に本気で殴られたのなんて、小学生の時に正と喧嘩したとき以来かもしれない。
「お前みたいな冴えない奴が、神の奇跡と友達だと!?」
「だいたいアイナチーもアイナチーだ! アイドルはアイドルらしく行動しろってんだ!」
「ほんとだぜ! わざわざ写真撮りに来てやったっていうのに、男も一緒に遊んでるとか、有名人の自覚なさ過ぎなんだよな!」
なんだこいつら……なにを身勝手な事を……。
普段僕は、あまり人に対して本気で怒りを感じることはないのだけれど、その勝手な物言いに、怒りの衝動が抑えられなかった。
「ふざけるな……」
「あん?」
「ふざけるな!! お前たちみたいな身勝手な奴らのせいで、貴宝院さんは窮屈な生活を強いられているんだ!」
そして僕は、三人をにらみ返し、
「だいたい貴宝院さんはアイドルでも芸能人でもないんだ! お前等のやってることはストーカーなんだぞ! そもそもあの子は有名人になりたくてなったわけじゃない! そんなことは望んでいないんだよ! お前たちの勝手をあの子に押しつけるな!!」
と、気付けばそう叫んでいた。
どうしても我慢できなかった。
本当の友達がいないって言っていた、あの時の貴宝院さんの寂しそうな顔を、思い出してしまったから。
「こ、こいつ! やっちまえ!」
「お、お、俺たちはストーカーなんかじゃねぇよ!」
そして、まぁ当然こんな常識のかけらもない奴らに、こんな事を言えばボコられるわけで……。
でも、殴ったり蹴られたりしながらも、僕は口を閉じなかった。
こんなパンチ大したことない……。
こんなの、小学生の正に貰ったパンチの方がずっと痛いよ!
「貴宝院さんは、げ、芸能人じゃないんだ! 勝手に偶像化するな! つきまとうな!」
それに僕は、最後にどうしても、こいつらに言いたかったんだ……。
「あの子は、貴宝院さんは……普通の一五歳の女の子なんだ!」
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