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第一章

第55話 報告

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 なんだかやるせない気持ちになりながらも、オレは北の大森林の魔物の大群に対応するため、一度宿へと戻った。

 ちょうどいい具合に牢があったので、魔神信仰ビアゾの奴らはすべてそこに放り込み、監視にアダマンタイトナイトを三体残している。

 かなりのすし詰め状態だが、何日も閉じ込めておくわけではないし問題ないだろう。
 アジトのあった場所なども、ピクシーバードに手紙を持たせて連絡してあるのでじきに衛兵が駆けつけて捕えてくれるはずだ。

 だから気持ちを切り替え、やるべきことに集中しなければ……。

「主さま。冒険者ギルドに向かわれるのですか? それとも現地に?」

「ん~……すぐにでも現地に行って少しでも魔物の数を減らしておくのも手だが、それで散り散りになると厄介だ。ひとまず冒険者ギルドに行って指示を仰ぐとしよう」

 もう冒険者ギルドにはピクシーバードを向かわせており、そろそろ着く頃だ。
 慌てなくともユニット交換で向かえば一瞬で着く。

 しかし、今回の魔神の眷属の件と北の大森林の魔物の大群。
 タイミングが合い過ぎており、無関係だとは思えない。

 となると、魔物の大群も魔神信仰ビアゾが関わっているということになる。
 つまり、この王都ベルジールの人々を贄に捧げようと狙っている可能性が高いのではないだろうか。

「お。ピクシーバードが冒険者ギルドについたようだ。キューレ、行くぞ」

「はい。私はいつでも大丈夫です」

 一応、ピクシーバード二羽を冒険者ギルド近くの人気のない路地に向かわせてから……。

「では、冒険者ギルドに向かう」

 オレたちは冒険者ギルドへと向かったのだった。

 ◆

 ユニット交換のコマンドを使用して冒険者ギルドそばの路地に移動したオレとキューレは、そのまますぐに冒険者ギルドへと移動した。

 しかし扉を開けて入ったそこには、雑然としつつもいつも通りの光景が広がっていた。

「ん? まだ特に騒ぎなどにはなっていないようだな」

 注意して見てみるが、冒険者ギルドの中はやはりいつも通りの様子だ。

「まだ一般の冒険者には伝えていないのか? それともリナシーの報告が届いていないのか?」

 いや、そんなはずはない。
 リナシーたちのあとをピクシーバードに追わせており、冒険者ギルドの建物の中に入ったところまでは確認している。

 建物の中に入って以降は確認できていないが何かあったのだろうか。

 と、心配にしかけたのだが、どうやら杞憂だったようだ。

「あっ! レスカ様!! キューレさん!」

 そこでちょうどそのリナシーから声を掛けられた。

 オレは軽く手をあげてこたえてから、受付のあるカウンターの側まで歩いていった。

「リナシー、どういう状況だ?」

「はい。ここではなんですので奥にお願いします。ギルドマスターがお待ちです」

「あぁ、わかった」

 そのままカウンターの中に入り、ギルドマスター室に通されたオレを待っていたのは、冒険者ギルドギルドマスターのガンズとベルジール王国宰相のリセントだった。

「おう! レスカ、待っていたぞ!」

「いや、待っていないでしょう」

 なんだ? 待ってたのか待ってないのか、なんなんだ?

「今、リナシーさんはこの部屋を出ていったところですよ?」

「いや、こいつのことだからどうせここに来るだろうと思ってな」

 なんだ。そういう意味か。

「そんなことより、北の大森林に現れた魔物の大群のことですよね?」

「あぁ、そうだ!」

「はい。そうです」

 息があっているのかあっていないのか……。

 しかし、それにしても珍しい組み合わせだな。
 どうして一国の宰相を務めるリセントがここに?

「リナシーからだいたいの話は聞いた。にわかには信じがたいが、その報告をもたらしたのがレスカだというのなら真実なのだろうな」

 たしかに突拍子もない話だ。
 信じて貰えるのはありがたい。

 だが、それならなぜまだ行動に移していないんだ?

 それに、リナシーが報告してから城に使いをだしたとしても、リセントがここに来るのが早すぎる。

「ん? どうした腑に落ちなさそうな顔をして。そうか、リセントこいつがここにいるのが不思議に思っているのか。こいつとは昔から付き合いがあってな。たまたま予算の件でここに話し合いに来ていたので巻き込んだってわけだ」

「まぁ腐れ縁というやつです。しかし、そのお陰でこの情報を早く知る事ができました。それで対策を練らなければならないのですが……まずはレスカ様にどこまで協力して頂けるかで作戦が大きく変わるので待っておりました」

レスカお前がどう動くかで騎士団や冒険者たちの動かし方が変わってくるからな」

 あぁ、なるほど。
 たしかにオレは一人で三〇〇〇体の竜牙ドラゴン・トゥース・ウォリアーを動かせるのを見せているからな。

 どこまで協力するか。そしてどこに配置するかで大きく作戦がかわってくるか。

「そういうことか。まず、もちろん出し惜しみせずに協力するつもりだ」

「レスカ様、本当に感謝いたします。依頼という扱いにして、報酬もしっかりとご用意いたしますので」

 金銭的な報酬はともかく、依頼として扱って貰えれば冒険者としての実績になるのでありがたい。

「なっ? こいつが断るわけないと言ったろう?」

「いや、だから私も断られるとは思っていませんでしたよ。ただ、勝手に作戦に組み込むわけにはいかないと言っただけです」

 さっきから様子をみていると、いいコンビだな。
 それに、ヘタすると国家存亡の危機だというのに落ち着いたものだ。

 まぁ焦って慌てたところで良い事などないし、冷静でいてくれた方が話が早くてこちらも助かる。

「それでどうする? まずは北の大森林に飛んで魔物の進行を食い止めようかと思っていたんだが?」

「飛ぶって? レスカは空飛べるのか?」

「いや、転移ってわかるか? そのような能力を持っている。まぁ空を飛んで向かう事もできるのだが、そっちの方が早いからな」

「っ!? レスカ様には毎度、本当に驚かされます。しかし、それなら確かに先に向かって貰うのが良さそうですね」

 最終防衛ラインは街をぐるりと囲む壁という事になるだろうが、王都に立て籠るにしても打って出るにしても、時間稼ぎはしておいた方がいいだろう。

 それにオレが出向けばかなりの魔物の数を減らす事ができる。

「ただ、その前に私も状況をこの目で確認したい。リナシーさんに見せたという映像を見せて頂くことはできますか」

 北の大森林で待機させているピクシーバードのユニットビューのことか。

「あぁ、問題ない」

 それからオレは、ユニットビューだけでなく、クオータービューもまじえて魔物の大群の情報を二人に伝えたのだった。
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