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会いたい
会いたい-4-
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今は、本人がポスターを観察しているのが気になって目を合わせられずにいた。
胡桃をベッドに降ろして、ポスターの自分をじっと見つめる。
青空の下、笑顔で手を差し出す男。
「これ、ファーストライブのポスターだっけ」
「はい……その、グッズだけ買って、この写真が好きだったので思わず」
「そっか。……それで、実物が目の前にいるんだけど、どう?」
「あの、目をどこに向けたらいいか、分かんないです」
赤くなった顔を隠すために手で覆った。穴があったら入りたい気分だった。
でも、剛史はその手を自分の手に絡めてゆっくり外す。
そして彼女の視界全てに映るように、顔を近づけた。
「胡桃」
「っ……はい……」
「俺を見て」
「……はい」
視線を交差させて、彼女の輪郭から胸元にかけて手を触れた。小さく声を上げて、胡桃は彼の頬に両手をゆっくりと添える。顔を確認するように、自分の虚像が瞳の奥に映るように、互いの鼻が触れてしまえる距離まで来ていた。
どちらから唇を差し出したか分からなかった。
腫れてしまいそうなくらいキスを繰り返す。唾液が溢れて、声が漏れて、柔らかい口が自分の中に入ってくるようだった。真っ赤な顔のまま、胡桃は彼の舌を受け入れる。そのまま自分のベッドになだれ込んで、寝転がりながら手足をもつれさせていた。
剛史は改めて彼女の部屋着を見た。
黄色のTシャツにラフなグレーのスウェットパンツだった。下着は何もつけていない。揺れている胸元が美味しそうで、顔を埋めた。
「ぁっ」
「……ああ、ちゃんと残ってる」
谷間にある赤い薔薇。美しかった。俺が咲かせたものだ。
嬉しくなって、舌をまた這わせる。まだあちこちに自分の痕があって安心した。
思った以上に支配欲が強くなっている。
こんなこと今まで無かったのに。数人付き合った女には全く感じなかったのに。
「んっ……あ……」
体に触れる中、悶えていた彼女は急に思い出したように、あっと間の抜けた声を出した。顔を上げる。
「どした?」
「このアパート、防音があまりされてなくて……。声、漏れたらどうしよう」
「…………っはは」
重要な秘密を言うように呟いてきて、剛史は吹き出して笑った。
雰囲気が艶めかしくなっていた時にそれを言うのか。
ぽかんとしている彼女が面白くてますます愛おしくなった。
楽しい。
彼女といると、心地良い。
「じゃあ、声を出さずに気持ち良くなろう」
「声を出さない……?」
首を傾げる彼女に耳打ちをする。
誰も聞いていないがこっそり教えたくなった。
落ち着いていたのに、またリンゴのような赤い顔に変わる。
なんて愛らしい彼女だろう。
「どう?」
自分の提案に、胡桃はゆっくりと頷いていた。
胡桃をベッドに降ろして、ポスターの自分をじっと見つめる。
青空の下、笑顔で手を差し出す男。
「これ、ファーストライブのポスターだっけ」
「はい……その、グッズだけ買って、この写真が好きだったので思わず」
「そっか。……それで、実物が目の前にいるんだけど、どう?」
「あの、目をどこに向けたらいいか、分かんないです」
赤くなった顔を隠すために手で覆った。穴があったら入りたい気分だった。
でも、剛史はその手を自分の手に絡めてゆっくり外す。
そして彼女の視界全てに映るように、顔を近づけた。
「胡桃」
「っ……はい……」
「俺を見て」
「……はい」
視線を交差させて、彼女の輪郭から胸元にかけて手を触れた。小さく声を上げて、胡桃は彼の頬に両手をゆっくりと添える。顔を確認するように、自分の虚像が瞳の奥に映るように、互いの鼻が触れてしまえる距離まで来ていた。
どちらから唇を差し出したか分からなかった。
腫れてしまいそうなくらいキスを繰り返す。唾液が溢れて、声が漏れて、柔らかい口が自分の中に入ってくるようだった。真っ赤な顔のまま、胡桃は彼の舌を受け入れる。そのまま自分のベッドになだれ込んで、寝転がりながら手足をもつれさせていた。
剛史は改めて彼女の部屋着を見た。
黄色のTシャツにラフなグレーのスウェットパンツだった。下着は何もつけていない。揺れている胸元が美味しそうで、顔を埋めた。
「ぁっ」
「……ああ、ちゃんと残ってる」
谷間にある赤い薔薇。美しかった。俺が咲かせたものだ。
嬉しくなって、舌をまた這わせる。まだあちこちに自分の痕があって安心した。
思った以上に支配欲が強くなっている。
こんなこと今まで無かったのに。数人付き合った女には全く感じなかったのに。
「んっ……あ……」
体に触れる中、悶えていた彼女は急に思い出したように、あっと間の抜けた声を出した。顔を上げる。
「どした?」
「このアパート、防音があまりされてなくて……。声、漏れたらどうしよう」
「…………っはは」
重要な秘密を言うように呟いてきて、剛史は吹き出して笑った。
雰囲気が艶めかしくなっていた時にそれを言うのか。
ぽかんとしている彼女が面白くてますます愛おしくなった。
楽しい。
彼女といると、心地良い。
「じゃあ、声を出さずに気持ち良くなろう」
「声を出さない……?」
首を傾げる彼女に耳打ちをする。
誰も聞いていないがこっそり教えたくなった。
落ち着いていたのに、またリンゴのような赤い顔に変わる。
なんて愛らしい彼女だろう。
「どう?」
自分の提案に、胡桃はゆっくりと頷いていた。
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