異世界に渡ったら獣人だった!

小猫田猫助

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はじまり

27話 許されざる懺悔

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「う~ん。よく寝た?」

 目を覚ますと木で出来た見知った天井が目に入ってきた。

「目が覚めたんだね?!良かった!!」

 声がした方に目を向けると、紅い髪をした恰幅の良いよく知った女性、俺の…義母さんが心底嬉しそうに目に涙を浮かべながら笑顔を見せて、俺が目を覚ました事を喜んでくれている。

「どこか痛かったり、気持ち悪かったりしてないかい?」
「うん、大丈夫だよ。…義母さん。」
「義母さんって呼んでくれたのかい?!」
「うん。義母さんって呼んでいいかな?
 目を覚ました時に顔を見て、俺の義母さんだって思ったんだ。」
「勿論だよ!あの人だって大喜びさ!!
 そうだ!皆んなに目が覚めた事知らせてやんなきゃ!あんたー!あんたー!!」

 今更呼び方を義母さんと変えるのは恥ずかしかったけど、嬉しそうな顔が見れたから呼んで良かった。

「どうした?!ナートに何かあったのか?!」
「ナートは大丈夫ですか?!」
「どうしたんじゃ?!」

 デアドさんだけでなくガズと先生まで慌てて部屋に転がり込んできて、皆んな凄く心配そうな顔で俺を心配してくれてる。

「ナート?!目が覚めたのか!」
「おぉ目覚めたか!これで安心じゃ!」
「ナ"ァードォ!!よがっだぁ~。」
「ほらっあんた!涙と鼻水を拭きな!」
「僕は大丈夫だよ。心配掛けてごめん、でも…心配してくれてありがとう。」

 はっはっ…相変わらず涙もろいな。義父さんと呼ぼうと思ったけど、こんなに泣いてたら呼んだ時どうなるか心配だから今は止めておこう。
 そういえば、トールやルシーナが居ないな…

「トールやルシーナは大丈夫だった?」
「ルシーナは何の問題もない…トールは命には別状無かったんだけど、羽の重要な部分を斬り落とされてしまって…獣化しても飛ぶことが出来ないらしい…でも人型としては何の問題もないってさ!ナートが止血をして無かったら命が危なかったみたいで、凄い感謝してたぞ。
 今は二人とも大事を取って家で休んでる。」
「そっか…トールはもう飛べないのか。俺がもっと知識があって回復魔法を掛けてたら変わってたのかな…」
「それを言うなら俺だって!回復魔法を使えなかったから誰も助けてやる事が出来なかった。
 でもトールの場合は、自業自得だぞ。あいつは何も考えず飛び出して行って皆んなを危険に晒したんだ。
 お前が死にかけてトールは自分を責めてたよ。だから、お前が自分を責めたらトールも自分を責め続ける事になる。」
「そうじゃな、その悔いる気持ちを胸に成長するのじゃ。助けられなかったのなら助けられるように勉学と鍛える事に勤しむのじゃよ。」
「「はい!」」

 それから俺は気を失ってしまった後の話を聞いた。
 皆んなに囲まれて名前を呼ばれ、寸前のところで生き返った記憶があるが、その時シスターが俺に回復魔法を必死に掛けていたな…刺した本人であるシスターが俺を助けるなんて…。
 セギドとシスターは親の権力が届かない様、調べは警備隊本部が預かる事となったらしい。

「そういえば、シスターがお前が目覚めたら話しをさせて欲しいって言ってたんだがどうする?
 最後は心を入れ替えてお前を助けたが、お前を殺そうとした相手だ...やめておくか?」

 俺に話?何を話したいんだろう…怖い…でもなんで俺を助けたか直接聞きたい!

「何でシスターが俺を助けたか聞きたい。
 デアドさん、俺と一緒にシスターの所に行ってくれる?」
「あぁ、勿論だ!俺だってお前を一人で行かせるのは不安でしょうがないからな!ダメだって言われても引っ付いてでも行くつもりだったぞ!!」

 …引っ付いては嫌だな…これから来て欲しくないけど一緒に行くって言いそうな時は言うのやめておこう。
……



 警備隊本部に引き渡される前にシスターに会うことになった。港の側の海に面してある城壁のような建物が警備隊の建物で、上には投石機が海に向かって3台置いてある。あれで、敵の船や海賊船を沈ませるのかな?
 警備隊の建物に入り、受付に面会の話をすると訝しげな目で見られた。まぁ、捕まってる犯人と面会なんて普通は出来ないよな。でも今回はこちらに迷惑を掛けた警備隊の弱味に漬け込み、上に話は通してあるらしい。
 確認を取っている間、受付の前で待っていると相変わらず差別的な目線を感じる。
 はぁ…今回の事件だって差別から始まった事件だってのに、差別主義は変わらないんだな。

「お待たせしました。面会の確認が出来ました。ついて来てください。」

 笑顔一つない冷たい感じの警備隊の女性は俺達を地下へと案内した。薄暗く湿って、海の近くなので潮の匂いがする地下はやけに静かだ。

「ここから先は囚人のいる牢屋が並びますので、全ての武器と杖をここでお預かりします。」
「ずいぶんと静かですね。」
「すべての牢屋に音を遮断をする魔法が掛けてあります。怒声や奇声を発しても聞こえない様に。」
「なるほど…」

 地下牢の通路の両側に牢屋が並ぶ。大体は3、4人ずつ牢屋に入っていて、中の何人かの囚人達が俺達に何か叫んでいる。魔法で遮断されていて聞こえないが、血走った目で叫んでいる様子は心臓に悪い。
 暫く行くとまた扉があった。中に入ると部屋の形が6角形なっていて、部屋の中には6枚の扉があった。その中の一つの扉の前に立ち、警備隊の女性は冷たい表情の中に苛立ちを混ぜて説明する。

「ここが面会室です。既に中にシスターリンがいます。
 …要望通り面会には立会いません。なので充分に気をつけて下さい。この鈴だけは我々の所に聞こえるので何かあれば鳴らす様に。話が終わって部屋を出る際も鳴らし、そのまま部屋の中で警備隊の者が来るまで待つ様に。じゃないとこの扉の空間から出られないので。」

 部屋に入るとシスターは縄で拘束され椅子に座っていた。シスターの服ではなくただの白っぽい少し汚れたダボっとしたシャツとズボンを着ている。そしてベールを被っていない髪は真っ白だった。元からその髪色なのか魔力を使い果たしてその色になったのか分からないが、真っ白な髪は彼女を別人の様に感じさせた。
 俺達が部屋に入ると椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。

「どんな謝っても許される事はないのは承知の上で、どうか謝罪させてください。私の望みを叶える為、関係のない貴方を刺して申し訳ありませんでした。
 私は…私が一番辛くて可哀想で、私を助けてくれない神様が全て悪いと思っていました…私が人を殺すのも私を止めないのが悪い、刺された者を救わない神様が悪いと…なんて自分勝手で馬鹿な考えだったのか!!
 女神様が自身は何も出来ない、ただ見守るだけの存在だと仰ってやっと気づけた。
 この事態を起こしているのは私であって神様ではない!私が貴方を刺した…私が悪いのだと!!
 でも女神様は私に魔力を授けて貴方を救う機会をくださった!こんな私に機会を与え救って下さった!
 …貴方が生きててくれて良かった…本当に許されない事を…ごめんなさい。」
「そうか…俺を助けたのは、お前が救われたかったからだったんだな。
 でも俺は死ななかったがイジオタは死んでしまった。
 貴方が殺した訳ではないけど、セギドの計画を知っていて止めなかった。それは見殺しにしたって事だ。
 何が…何が女神様が救ってくれただ!
 俺は貴方を許さない!!俺がお前の罪を一生覚えてるからな!だから二度と過ちを犯さず、罪を償いながら罪を忘れず苦しみながら生きろ!」
「あ…あああ"ぁ!!ごめんなさい!ごめんなさい!!…ごめんなさい…あ"ぁ…うぅ…」

シスターはその場で膝をつき土下座の様に頭を下げ、後悔の涙をしばらく流していた。

「もう気は済んだか?」
「ふっ…うっ…ま、待って!女神様から伝言が!
 …女神様が貴方を巻き込んだお詫びだと仰って、貴方に伝言を授かったの。」
「伝言?」
「えぇ、あの場で女神様から貴方に伝えて欲しいと!
 <そなたらはどちらにも繋がっている旅人だ。>って」
「どちらにも繋がっている旅人…?」
「えぇ、それだけ言って消えてしまわれたわ。」
「…そうか…伝言を教えてくれてありがとう。
 もう用は無いな?二度と会う事も無いかもしれないが、さっき俺が言った事を忘れないでくれ。」
「…はい。貴方が私の罪を覚えていてくれるから、私は罪を背負って生きていけます…ありがとう。」
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