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6話
腹を満たさねば頭が回らない
しおりを挟む政宗も来たことだし、さっそく説明を受ける。と言いたいところだが、その前に腹ごしらえだ。
小十郎が言った通り、政宗が帰還して直ぐ、お手伝いさんだろうか、中居のような格好をした女性3人が部屋へやってきた。一人だけ弥勒より年下だろう女の子がいる。見習いだろうか、すこし緊張しながらも、膳を持っていた。
3人の手には、弥勒たちの膳がある。ほかほかとした湯気が立っていることから、できたてであることが伺えるだろう。
弥勒は、腹の音が鳴るのを止めることができなかった。
女性陣は音を立てずにスススと膳を置いて、政宗に頭を下げた後、同じく音を立てずに退出していった。遅れて、女の子も弥勒の前に膳を置いて、微かな音を立てながら去っていく。
「あんがと!」
運んでくれたお礼を言う弥勒。その際に目が合い、女の子は少し恥ずかしそうに笑みを向けてくれた。うむ、かわいい。
女の子が退出した後、弥勒は、自分の前に置かれた膳へ視線を向けた。
「ひょおお……!!すっげー…!」
ドドン、と置かれた料理に、弥勒は思わず感嘆の声を漏らす。キラキラとした刺身類、ぐつぐつと煮え立つ鍋、とろとろと崩れる角煮、そして土鍋でほかほかと存在を主張する白米。どれもこれもキラキラと光っているように見える。そして驚くべきは、それらが各自の膳に用意されていることだった。
「急ごしらえで申し訳ありませんが」
「これが急ごしらえ!?急ごしらえの粋じゃなくない!?ごちそうじゃん!!」
「元気だな、手前」
こんな物ですみませんと言いたげな小十郎の発言に弥勒は度肝を抜かれた。これがごちそうでなくて何て言うんだ、全国の一般家庭へ土下座必須でしょと。本当に、これがご馳走でないのなら各家庭の料理を担当する母親、もしくは父親は浮かばれない、だろう。弥勒はグルメ番組でしか見たことのない高級感漂う品々に戦慄した。
政宗は運ばれてきた酒を飲んでいた。
「これが急ごしらえって…普段どんなの食ってんだ。3大珍味毎食出るんか、A5ランクステーキいっぱい出るんか?」
「んなわけねーだろ。俺は一般料理のほうが好みなんだよ。普段は俺も厨に立つことが多いしな」
「むしろそっちのほうが驚き…」
政宗が言うには、小十郎の冗談らしい。嘘だろ信じちゃったよ…、弥勒が顔を向ければ小十郎は笑みを浮かべていた。初対面の人間に冗談かませるなんてメンタル強いな。
「また腹下さねえようにゆっくり味わいな」
「腹は下しません!多分!あれはアイスで腹が冷えたから!」
完全に面白がっている政宗にそう噛みつけば、はいはいとあしらわれた。
「ささ、お召し上がりください。」
「い、いただきまっっす!」
パン、と拍手をひとつ、緊張しながら食事を開始した。
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