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16 男社会の闇を知りました!
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今日は学校の授業の一環として一般企業にクラス全員で1日入社することになった。いわゆる職場体験学習というやつだ。
僕たちが職場体験することになった会社では社員の職種は性別によって区分けがはっきりとしていて、それは社員章にも表れている。
丸い社章に色のついた縁取りがあり、男子は青、女子はピンク色だ。ωである僕もピンク色をつけるように言われている。
ピンクの社員章をつけた者はガードマンの案内で奥の会議室まで連れて行かれた。
広さは学校の教室程度と言ったところだが、内装や調度品も行き届いている。
「こんなところに連れてきて、私らに何させるつもりなんだか……」
椅子に座ると喪子さんは少しイラついた様子で言った。
すぐに着席したのは、会議室に置かれたホワイトボードに、着席して待つようにと書かれてあったからだ。
「おはよう、奏♡」
会議室のドアが勢いよく開いて、エレンくんが入ってきた。
「ええ、エレンくん⁉︎……おはよう」
驚いた僕は思わず立ち上がって挨拶を返す。
「いい挨拶だ♡ 挨拶は社会人にとって基本中の基本だからなぁ。元気な挨拶ができるだけで上司からの印象はいいぞ~」
スーツ姿のエレンくんはにっこりと微笑んで言った。
長身でスタイルがいいエレンくんにはスーツ姿がよく似合っていた。
「この会社は俺の親父の会社が出資している会社でな。つまりは俺の支配下にあるわけだ。だから奏たちの職場体験は俺が担当することになった。奏のような弱い立場の人間でも男社会で生き抜いていく方法を徹底的にレクチャーしてやるぜ♡」
僕を着席させると、エレンくんはホワイトボードの前に立った。
エレンくんはマジックで「第3秘書課」と書き込んだ。
「この会社には役員や取締役に同行し、スケジュール調整などを担当する第1秘書課、その秘書をバックアップする事務職である第2秘書課があるんだ」
ホワイトボードに文字を書きながらエレンくんは説明していく。
「そして第3秘書課だが、こちらは先の部署とは関わりなく、特別な大口取引先との交渉がうまくいくための接待や、男性社員の福利厚生が業務となっている」
秘書の仕事にしては意外な業務の内容に僕は驚いた。
役員付の秘書が接待に同行するというのはまだ理解できるが、男性社員の福利厚生と言われると正直何が何だかさっぱり分からない。
「社会経験が全くない僕にはエレンくんの言ってる意味がよく分かんないや……」
「そうだな。口で説明するより、生で見てもらった方が分かりやすいだろう。これを見てくれ」
そう言うと、エレンくんは入口のドアとは別の、会議室の壁にある扉に向かっていく。
その扉は入口よりも重厚で、さらには電子鍵まで着けられていた。
「みんな、中に入ってくれ……」
エレンくんは首からさげたカードを通し、パスワードを入力して扉を開く。
中に入ると、そこは赤い絨毯が敷かれた薄暗い部屋で、せいぜい10畳ほどの広さだった。
正面はなぜか大きなカーテンになっているが、光が差していないから窓というわけではなさそうだ。
「それじゃあ、正面に注目www」
エレンくんはそのカーテンの端に立つと、壁に埋め込まれたボタンを押した。
同時に上でモーター音が響いて、カーテンが2つに割れた。
「えッ」
カーテンの向こうは大きなガラス窓になっている。向こう側は外ではなく、かなり広めの部屋になっていた。
「ぎゃああああああああ~ッ⁉︎」
僕たちは盛大に悲鳴をあげた。
そうなるのも仕方がなかった。ガラス板1枚向こうでは、全裸の若いωの男がテーブルに手をついてお尻を突き出し、後ろからαの男に貫かれているのだ。
「これはマジックミラーになっていてな。こちらからは窓でも、向こうからは鏡になっている。じゃあ、声も聞いてもらおうか」
さっきのボタンの上についたダイヤルをエレンくんは操作し始める。
『あ、ああッ、ああん、常務様……ああん、すごくいい♡』
すぐに天井にあるスピーカーからωの男の妙な声が響き始めた。
『オレもいいぞ、お前のケツ穴は最高だ!』
まるでゲイビデオの一場面のようだが、目の前の現実であることはモザイクなどが一切かかっていないことからも分かる。
『いいぞ……お前、オレの愛人にならないか?』
激しく腰を使いながら常務がωの男の耳元で言う。
『ああん、ダメですぅ。ボクの身体は秘書3課に捧げているんですから……はあん……それに、常務様なら……ここに来ればいつでもボクを抱けるじゃありませんか……』
ときおり、こみ上げてくる喘ぎ声に息を詰まらせながら、ωの男は返事をした。
『くく、それもそうだな。まったくこれだから、この会社との取引はやめられん』
『ああん、これからも弊社をよろしくお願いします。あッ、そこ、ああん、気持ちいいところに当たってるうう、ああん♡』
ωの男の絶叫がだんだん激しさを増していった。
ガラスの向こうの情事が佳境にさしかかったとき、エレンくんは僕を見下ろして笑った。
「今、見てもらった通りだ。秘書3課の仕事は、身体を使って重要な取引先や、会社の中核を担う男性社員の接待をすること。これが奏に職場体験してもらう仕事だ♡ 他の人たちにはその様子を見学してもらう。男社会の恐ろしさを肌で感じてくれ」
舌なめずりをするようにエレンくんは口元を緩ませながら僕を見据える。
らんらんと輝く切れ長のエレンくんの瞳が、まるで獲物を見つけた肉食獣を思わせた。
「そんな……身体を売るような仕事なんて僕には無理だよ……」
「安心しろ、奏が相手をするのはこの俺だからな♡」
結局、この国では僕たちの身体なんて所詮は男の性欲に消費されるモノに過ぎないんだということを改めて実感した。
弱き者を襲い奪い辱め犯し孕ませることが日常的に行われている我が国のジェンダー・ギャップ指数は149ヶ国中110位なのだから、嘆いたところでしょうがない。この現実を受け入れるしか選択肢はないのだ。
愛するエレンくんにだったら、喜んでこの身を任せられる。どうせ自分の身体が性的に消費される肉便器として扱われるんだったら、愛するエレンくんに使ってもらいたい。
肉便器としての役割を受け入れた僕は天井から鎖で吊るされると、口元に杯を押しつけられた。
白い、エレンくんの臭いがする液体が青銅の杯を満たしている。それは僕が何度も目にし、口にさえしてきた液体だった。
「これって、まさか……」
「その通り、俺のザーメンだ。夕べから集めておいたんだ。さあ、たっぷりと味わうんだぁ~♡」
今までかなりの精液を飲まされてきたが、杯を満たすほどの精液を飲み干すなど、想像にさえできないことだった。
「いいか、奏。社会に出たら、この程度のセクハラなんて日常茶飯事だ。ジェンダー・ギャップ指数が149ヶ国中110位の国で奏を社会に出すのは正直心許ない。それでも奏は社会に出て働きたいか?」
エレンくんに問いかけられて、僕はしばし考える。
確かにエレンくんのもとで専業主夫に収まった方が見ず知らずの男から性的に搾取される危険性は減るだろう。
周囲の男たちよりも圧倒的に低い給料で奴隷のようにこき使われるくらいなら、エレンくん専用の性奴隷として子育てに専念する方が有意義かもしれない。
「僕はエレンくんのところで永久就職させてもらうことにするよ♡ 社会進出したって、薄給で他の男のサポート役や性処理をやらされるだけだもん。セクハラやパワハラに耐えてまで働く理由なんかないしね」
その答えを聞くと、にんまりと微笑みながらエレンくんは僕の口元へ杯を寄せて徐々に傾けていく。白い粘液が杯の外へと溢れ出し、大きく開かれた僕の口の中へと流れ落ちていく。
「んぐぅ、んぐぅ……」
ゴクリゴクリと大きく咽喉を鳴らしながら、僕は精液を嚥下していく。次第に杯の傾きが大きくなり、大量の精液が勢いよく口中へと流れ込んだ。
「ぐぅ、んぐぅ……ごほッ!」
とても飲みきれないほど精液を注ぎ込まれ、僕は噎せ返った。咳とともに口から吹き出した粘液が、顎先から胸へかけて流れ落ちていく。
「俺のザーメンはお気に召さなかったかぁ~?」
「うんうん、とっても美味しかったよ♡」
そう言うと、エレンくんは嬉しそうな表情で残った精液を僕の額にたらした。淫らな白濁液が額から双眸の窪みを通って頰、顎へと流れ落ち、僕の顔を白く染めていく。
「こんなにも大量の精液を一度に飲んだのは生まれて初めてだよ♡ どんだけ溜めてたのwww」
「奏をオカズに1日何回かシコれば、2リットル近くは射精するぜ♡」
僕は小さく咳き込み、半開きになった唇からダラダラと精液を垂れ流しつづける。
が、そのとき――。
「誰か助けてぇ~ッ!!!」
喪子さんの絶叫に、僕は凍りつく。
僕はエレンくんに連れられて全速力で駆け出した。
「喪子さんッ!」
僕たちが乱入すると、うちのクラスの女子生徒たちが複数人の男性社員に襲われそうになっていた。
「うへへ、こんなにも若い肉便器が盛りだくさんだぞwww」
「おい、見ろ! 新しい肉便器が来たぜwww」
男性社員たちがギラギラと欲望をたたえた目で僕の方を見つめてくる。
「許せない! 女をモノ扱いするのはもうやめてッ!」
僕が絶叫すると、男性社員たちは下卑た笑い声をあげる。
「ぎゃはははッ! お前、知らねえのか? 女なんてモノは社会に出たら単なる肉便器か、男の召使いでしかねえんだぞ。今日の職場体験では、そのことをみっちり教えてやるとしようwww」
男尊女卑思考の男といると本当に反吐が出そうになるが、この国では一般的な価値観なのだろう。
「へぇ~、どんなふうに教えてくれるんです?」
「どんなふうだと? 知りたければ教えてやる。その小綺麗な制服をひん剥いて、オレたちのモノをお前の穴にぶち込んでやるのさ。じっくりと楽しんだ後に精液を注ぎ込み、お前がオレのモノになったってことを思い知らせてやるwww」
「ふ~ん、それから?」
「うへへ、そうして済ましていられるのも今のうちだぜ。どんなに泣き叫ぼうがやめてなんかやらねえ。男性社員たちを全員集めて、夜通し強姦させてやる。一瞬も休むことなくだ! 気を失おうが、発狂しようが、お前の穴という穴を貫きつづけて、全身に男を刻みつけてやる。夜通し犯された肉便器がどんな姿になるか知ってっか? 穴という穴から精液が流れ出して止まりゃあしねえ。まるでカエルのように股を開いて床に這いつくばり、ケツをピクピクと震わせるんだ。そりゃあ、惨めなもんだぜ。死んでも女にだけは生まれ変わりたくねえなぁwww」
男というだけで女よりも圧倒的に優遇される男社会で好き放題できるのだから本当に羨ましい限りだ。次、生まれ変わる時は僕も普通の男に生まれたい。
「女にだけは生まれ変わりたくないって? なるほど……確かに男の方が女よりも遥かに多く自殺に、殺人事件の被害者に、過労死に、ホームレスに、刑務所に、危険が伴う職業に追い込まれるという『絶対の優遇』があるもんなぁwww」
エレンくんがブラックジョークを言うと、クラスの女子生徒から笑いが巻き起こる。
「ふん、くだらんな。自殺した男も過労死した男もホームレスも犯罪者もドカタも全員ただの負け組じゃねえか。オレたちのような競争社会で勝ち残った男のみが女をモノにする権利があるのだ。男社会で生き残ることが出来そうにないからといって今から負け犬の遠吠えをしてちゃ将来は暗いなぁwww」
そこまで話を聞いてやると、エレンくんは目の前でベラベラ喋る男性社員の頰に正拳を炸裂させる。
「げほッ!」
壁まで吹き飛ばされ、割れた唇から血を滲ませて床に座り込んだ男性社員は茫然となった。エレンくんの動きは唐突で、攻撃の瞬間の気配さえつかむことが出来なかったのだ。
「お、お前ら……この若造に目にもの見せてやれ! 大人を怒らせたらどうなるか、思い知らせてやるんだ~ッ!」
エレンくんに殴られた男性社員が部下たちに向かって怒号した瞬間、三方から一斉に男たちが襲いかかってきた。
「ぐわああ~ッ!!!」
部下の1人が絶叫とともに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「なんてヤツだ……」
全身の骨をバラバラに砕かれた男の無惨な姿を見て、先ほどエレンくんに殴られた男性社員は青ざめた。先刻のエレンくんの一撃が手加減されたものでなかったら、死んでいたかもしれない。
最初の一撃で相手の度肝を抜いたエレンくんだったが、つづいて左右から同時に迫る攻撃をかわすことはできなかった。というより、かわす必要もなかった。
男たちはエレンくんに自分の攻撃が全く効かなかった時点で戦意喪失した。そのまま硬直した姿勢のまま2人ともエレンくんに蹴り飛ばされて力尽きる。
これまでに経験したことのない圧倒的な恐怖を前にして、男たちは発狂寸前になった。
「ひゃああああッ!!!」
泣き叫んで逃げまわる男たちを、エレンくんは1人残らずKOした。
「やれやれ……この国からコイツらのような男さえいなくなれば、俺の奏も少しは生きやすくなるのになぁ」
エレンくんは僕をぎゅっと抱きしめながら頭を撫でてくれた。
「今回の職場体験で自分が清々しいほどの被差別階級だと思い知らされたよ。これが僕たちの社会の現実なんだね……」
僕が弱々しく涙声で言うと、喪子さんが優しく肩をポンと叩いた。
「エレンくん、女よりも弱い奏くんをちゃんと守ってあげてね♡ 奏くんを幸せにしないと、私がNTRしちゃうんだからwww」
そう言われて、思わず過剰反応したエレンくんは僕を喪子さんから引き離した。
「言われなくても、奏は俺が幸せにしてみせるぜ! だから貴腐寺院さんに奏はやら~ん、絶対になwww」
2匹の肉食恐竜は僕を捕食する勢いで必死に取り合いを始め、周囲にいた女子生徒たちはその光景を見つめながら職場体験の時間が終わるのを茫然自失の状態で待つのであった。
僕たちが職場体験することになった会社では社員の職種は性別によって区分けがはっきりとしていて、それは社員章にも表れている。
丸い社章に色のついた縁取りがあり、男子は青、女子はピンク色だ。ωである僕もピンク色をつけるように言われている。
ピンクの社員章をつけた者はガードマンの案内で奥の会議室まで連れて行かれた。
広さは学校の教室程度と言ったところだが、内装や調度品も行き届いている。
「こんなところに連れてきて、私らに何させるつもりなんだか……」
椅子に座ると喪子さんは少しイラついた様子で言った。
すぐに着席したのは、会議室に置かれたホワイトボードに、着席して待つようにと書かれてあったからだ。
「おはよう、奏♡」
会議室のドアが勢いよく開いて、エレンくんが入ってきた。
「ええ、エレンくん⁉︎……おはよう」
驚いた僕は思わず立ち上がって挨拶を返す。
「いい挨拶だ♡ 挨拶は社会人にとって基本中の基本だからなぁ。元気な挨拶ができるだけで上司からの印象はいいぞ~」
スーツ姿のエレンくんはにっこりと微笑んで言った。
長身でスタイルがいいエレンくんにはスーツ姿がよく似合っていた。
「この会社は俺の親父の会社が出資している会社でな。つまりは俺の支配下にあるわけだ。だから奏たちの職場体験は俺が担当することになった。奏のような弱い立場の人間でも男社会で生き抜いていく方法を徹底的にレクチャーしてやるぜ♡」
僕を着席させると、エレンくんはホワイトボードの前に立った。
エレンくんはマジックで「第3秘書課」と書き込んだ。
「この会社には役員や取締役に同行し、スケジュール調整などを担当する第1秘書課、その秘書をバックアップする事務職である第2秘書課があるんだ」
ホワイトボードに文字を書きながらエレンくんは説明していく。
「そして第3秘書課だが、こちらは先の部署とは関わりなく、特別な大口取引先との交渉がうまくいくための接待や、男性社員の福利厚生が業務となっている」
秘書の仕事にしては意外な業務の内容に僕は驚いた。
役員付の秘書が接待に同行するというのはまだ理解できるが、男性社員の福利厚生と言われると正直何が何だかさっぱり分からない。
「社会経験が全くない僕にはエレンくんの言ってる意味がよく分かんないや……」
「そうだな。口で説明するより、生で見てもらった方が分かりやすいだろう。これを見てくれ」
そう言うと、エレンくんは入口のドアとは別の、会議室の壁にある扉に向かっていく。
その扉は入口よりも重厚で、さらには電子鍵まで着けられていた。
「みんな、中に入ってくれ……」
エレンくんは首からさげたカードを通し、パスワードを入力して扉を開く。
中に入ると、そこは赤い絨毯が敷かれた薄暗い部屋で、せいぜい10畳ほどの広さだった。
正面はなぜか大きなカーテンになっているが、光が差していないから窓というわけではなさそうだ。
「それじゃあ、正面に注目www」
エレンくんはそのカーテンの端に立つと、壁に埋め込まれたボタンを押した。
同時に上でモーター音が響いて、カーテンが2つに割れた。
「えッ」
カーテンの向こうは大きなガラス窓になっている。向こう側は外ではなく、かなり広めの部屋になっていた。
「ぎゃああああああああ~ッ⁉︎」
僕たちは盛大に悲鳴をあげた。
そうなるのも仕方がなかった。ガラス板1枚向こうでは、全裸の若いωの男がテーブルに手をついてお尻を突き出し、後ろからαの男に貫かれているのだ。
「これはマジックミラーになっていてな。こちらからは窓でも、向こうからは鏡になっている。じゃあ、声も聞いてもらおうか」
さっきのボタンの上についたダイヤルをエレンくんは操作し始める。
『あ、ああッ、ああん、常務様……ああん、すごくいい♡』
すぐに天井にあるスピーカーからωの男の妙な声が響き始めた。
『オレもいいぞ、お前のケツ穴は最高だ!』
まるでゲイビデオの一場面のようだが、目の前の現実であることはモザイクなどが一切かかっていないことからも分かる。
『いいぞ……お前、オレの愛人にならないか?』
激しく腰を使いながら常務がωの男の耳元で言う。
『ああん、ダメですぅ。ボクの身体は秘書3課に捧げているんですから……はあん……それに、常務様なら……ここに来ればいつでもボクを抱けるじゃありませんか……』
ときおり、こみ上げてくる喘ぎ声に息を詰まらせながら、ωの男は返事をした。
『くく、それもそうだな。まったくこれだから、この会社との取引はやめられん』
『ああん、これからも弊社をよろしくお願いします。あッ、そこ、ああん、気持ちいいところに当たってるうう、ああん♡』
ωの男の絶叫がだんだん激しさを増していった。
ガラスの向こうの情事が佳境にさしかかったとき、エレンくんは僕を見下ろして笑った。
「今、見てもらった通りだ。秘書3課の仕事は、身体を使って重要な取引先や、会社の中核を担う男性社員の接待をすること。これが奏に職場体験してもらう仕事だ♡ 他の人たちにはその様子を見学してもらう。男社会の恐ろしさを肌で感じてくれ」
舌なめずりをするようにエレンくんは口元を緩ませながら僕を見据える。
らんらんと輝く切れ長のエレンくんの瞳が、まるで獲物を見つけた肉食獣を思わせた。
「そんな……身体を売るような仕事なんて僕には無理だよ……」
「安心しろ、奏が相手をするのはこの俺だからな♡」
結局、この国では僕たちの身体なんて所詮は男の性欲に消費されるモノに過ぎないんだということを改めて実感した。
弱き者を襲い奪い辱め犯し孕ませることが日常的に行われている我が国のジェンダー・ギャップ指数は149ヶ国中110位なのだから、嘆いたところでしょうがない。この現実を受け入れるしか選択肢はないのだ。
愛するエレンくんにだったら、喜んでこの身を任せられる。どうせ自分の身体が性的に消費される肉便器として扱われるんだったら、愛するエレンくんに使ってもらいたい。
肉便器としての役割を受け入れた僕は天井から鎖で吊るされると、口元に杯を押しつけられた。
白い、エレンくんの臭いがする液体が青銅の杯を満たしている。それは僕が何度も目にし、口にさえしてきた液体だった。
「これって、まさか……」
「その通り、俺のザーメンだ。夕べから集めておいたんだ。さあ、たっぷりと味わうんだぁ~♡」
今までかなりの精液を飲まされてきたが、杯を満たすほどの精液を飲み干すなど、想像にさえできないことだった。
「いいか、奏。社会に出たら、この程度のセクハラなんて日常茶飯事だ。ジェンダー・ギャップ指数が149ヶ国中110位の国で奏を社会に出すのは正直心許ない。それでも奏は社会に出て働きたいか?」
エレンくんに問いかけられて、僕はしばし考える。
確かにエレンくんのもとで専業主夫に収まった方が見ず知らずの男から性的に搾取される危険性は減るだろう。
周囲の男たちよりも圧倒的に低い給料で奴隷のようにこき使われるくらいなら、エレンくん専用の性奴隷として子育てに専念する方が有意義かもしれない。
「僕はエレンくんのところで永久就職させてもらうことにするよ♡ 社会進出したって、薄給で他の男のサポート役や性処理をやらされるだけだもん。セクハラやパワハラに耐えてまで働く理由なんかないしね」
その答えを聞くと、にんまりと微笑みながらエレンくんは僕の口元へ杯を寄せて徐々に傾けていく。白い粘液が杯の外へと溢れ出し、大きく開かれた僕の口の中へと流れ落ちていく。
「んぐぅ、んぐぅ……」
ゴクリゴクリと大きく咽喉を鳴らしながら、僕は精液を嚥下していく。次第に杯の傾きが大きくなり、大量の精液が勢いよく口中へと流れ込んだ。
「ぐぅ、んぐぅ……ごほッ!」
とても飲みきれないほど精液を注ぎ込まれ、僕は噎せ返った。咳とともに口から吹き出した粘液が、顎先から胸へかけて流れ落ちていく。
「俺のザーメンはお気に召さなかったかぁ~?」
「うんうん、とっても美味しかったよ♡」
そう言うと、エレンくんは嬉しそうな表情で残った精液を僕の額にたらした。淫らな白濁液が額から双眸の窪みを通って頰、顎へと流れ落ち、僕の顔を白く染めていく。
「こんなにも大量の精液を一度に飲んだのは生まれて初めてだよ♡ どんだけ溜めてたのwww」
「奏をオカズに1日何回かシコれば、2リットル近くは射精するぜ♡」
僕は小さく咳き込み、半開きになった唇からダラダラと精液を垂れ流しつづける。
が、そのとき――。
「誰か助けてぇ~ッ!!!」
喪子さんの絶叫に、僕は凍りつく。
僕はエレンくんに連れられて全速力で駆け出した。
「喪子さんッ!」
僕たちが乱入すると、うちのクラスの女子生徒たちが複数人の男性社員に襲われそうになっていた。
「うへへ、こんなにも若い肉便器が盛りだくさんだぞwww」
「おい、見ろ! 新しい肉便器が来たぜwww」
男性社員たちがギラギラと欲望をたたえた目で僕の方を見つめてくる。
「許せない! 女をモノ扱いするのはもうやめてッ!」
僕が絶叫すると、男性社員たちは下卑た笑い声をあげる。
「ぎゃはははッ! お前、知らねえのか? 女なんてモノは社会に出たら単なる肉便器か、男の召使いでしかねえんだぞ。今日の職場体験では、そのことをみっちり教えてやるとしようwww」
男尊女卑思考の男といると本当に反吐が出そうになるが、この国では一般的な価値観なのだろう。
「へぇ~、どんなふうに教えてくれるんです?」
「どんなふうだと? 知りたければ教えてやる。その小綺麗な制服をひん剥いて、オレたちのモノをお前の穴にぶち込んでやるのさ。じっくりと楽しんだ後に精液を注ぎ込み、お前がオレのモノになったってことを思い知らせてやるwww」
「ふ~ん、それから?」
「うへへ、そうして済ましていられるのも今のうちだぜ。どんなに泣き叫ぼうがやめてなんかやらねえ。男性社員たちを全員集めて、夜通し強姦させてやる。一瞬も休むことなくだ! 気を失おうが、発狂しようが、お前の穴という穴を貫きつづけて、全身に男を刻みつけてやる。夜通し犯された肉便器がどんな姿になるか知ってっか? 穴という穴から精液が流れ出して止まりゃあしねえ。まるでカエルのように股を開いて床に這いつくばり、ケツをピクピクと震わせるんだ。そりゃあ、惨めなもんだぜ。死んでも女にだけは生まれ変わりたくねえなぁwww」
男というだけで女よりも圧倒的に優遇される男社会で好き放題できるのだから本当に羨ましい限りだ。次、生まれ変わる時は僕も普通の男に生まれたい。
「女にだけは生まれ変わりたくないって? なるほど……確かに男の方が女よりも遥かに多く自殺に、殺人事件の被害者に、過労死に、ホームレスに、刑務所に、危険が伴う職業に追い込まれるという『絶対の優遇』があるもんなぁwww」
エレンくんがブラックジョークを言うと、クラスの女子生徒から笑いが巻き起こる。
「ふん、くだらんな。自殺した男も過労死した男もホームレスも犯罪者もドカタも全員ただの負け組じゃねえか。オレたちのような競争社会で勝ち残った男のみが女をモノにする権利があるのだ。男社会で生き残ることが出来そうにないからといって今から負け犬の遠吠えをしてちゃ将来は暗いなぁwww」
そこまで話を聞いてやると、エレンくんは目の前でベラベラ喋る男性社員の頰に正拳を炸裂させる。
「げほッ!」
壁まで吹き飛ばされ、割れた唇から血を滲ませて床に座り込んだ男性社員は茫然となった。エレンくんの動きは唐突で、攻撃の瞬間の気配さえつかむことが出来なかったのだ。
「お、お前ら……この若造に目にもの見せてやれ! 大人を怒らせたらどうなるか、思い知らせてやるんだ~ッ!」
エレンくんに殴られた男性社員が部下たちに向かって怒号した瞬間、三方から一斉に男たちが襲いかかってきた。
「ぐわああ~ッ!!!」
部下の1人が絶叫とともに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「なんてヤツだ……」
全身の骨をバラバラに砕かれた男の無惨な姿を見て、先ほどエレンくんに殴られた男性社員は青ざめた。先刻のエレンくんの一撃が手加減されたものでなかったら、死んでいたかもしれない。
最初の一撃で相手の度肝を抜いたエレンくんだったが、つづいて左右から同時に迫る攻撃をかわすことはできなかった。というより、かわす必要もなかった。
男たちはエレンくんに自分の攻撃が全く効かなかった時点で戦意喪失した。そのまま硬直した姿勢のまま2人ともエレンくんに蹴り飛ばされて力尽きる。
これまでに経験したことのない圧倒的な恐怖を前にして、男たちは発狂寸前になった。
「ひゃああああッ!!!」
泣き叫んで逃げまわる男たちを、エレンくんは1人残らずKOした。
「やれやれ……この国からコイツらのような男さえいなくなれば、俺の奏も少しは生きやすくなるのになぁ」
エレンくんは僕をぎゅっと抱きしめながら頭を撫でてくれた。
「今回の職場体験で自分が清々しいほどの被差別階級だと思い知らされたよ。これが僕たちの社会の現実なんだね……」
僕が弱々しく涙声で言うと、喪子さんが優しく肩をポンと叩いた。
「エレンくん、女よりも弱い奏くんをちゃんと守ってあげてね♡ 奏くんを幸せにしないと、私がNTRしちゃうんだからwww」
そう言われて、思わず過剰反応したエレンくんは僕を喪子さんから引き離した。
「言われなくても、奏は俺が幸せにしてみせるぜ! だから貴腐寺院さんに奏はやら~ん、絶対になwww」
2匹の肉食恐竜は僕を捕食する勢いで必死に取り合いを始め、周囲にいた女子生徒たちはその光景を見つめながら職場体験の時間が終わるのを茫然自失の状態で待つのであった。
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