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57 アルファ喪女VSキモオタ放火犯〜後編〜

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「こ、これはッ⁉︎ 一体どうしたというんだッ⁉︎」

 監督が狼狽していると、外から「火事だぁ~!!!」と絶叫する声が聞こえてきた。

「喪子姉さん、火事だって! 早く逃げようッ!!!」
「そ、そうね! え~と……出口はッ⁉︎」

 部屋の外に出ると、私たちの目の前で紅蓮の炎が燃え盛っている。いや、目の前だけじゃない。知らない間に四方八方を炎の壁に取り囲まれていた。

「そんなッ⁉︎ 火って、こんなにも一瞬で燃え広がるものなのッ⁉︎」

 私が狼狽していると、オメガは冷静に状況を分析して言った。

「たぶん誰かが広範囲にガソリンを巻いたんだ!」

 オメガはそう言うと、必死になって周囲を見まわす。
 私たちは血眼になって炎の壁を見透かした。けれど逃げ道らしい所は全然見つからない。

「ひとまず、この場から喪子姉さんを離脱させないとね。僕に捕まってッ!」

 オメガは私の腕をつかみ、炎の壁の一番薄いところに突っ込んだ。私たちの頭上に真っ赤に燃える材木が降りそそぎ、火の粉がきらきら光りながらオメガの肩に舞い落ちた。それでもオメガは私を先導しながら必死になって走った。

「わぁ~ッ、あっつ~ッ!」

 私はごうごうと燃え盛る床の上で、両脚をかわりばんこにあげさげしている。しかしオメガは危機的状況でも冷静な表情を浮かべて周囲を見まわしていた。

「あぢぢぢぢ~ッ、あっつぃ~!!!」
「大丈夫だよッ! 喪子姉さんは僕が守るから♡」

 オメガは騒ぎまくる私のウエストをつかみ、まるでジャケットか何か、軽いものを肩に引っかけるように、私をひょいと肩に担ぎ上げた。

「もう、ダメかも……」
「ダメじゃないよ。とにかく逃げようッ!」

 燃え盛る炎の壁を突き破り、私たちは灼熱地獄を駆け抜ける。
 オメガは焼け焦げた扉を蹴り開けた。その向こうに回廊がある。強烈な熱風に背中を押されるようにして飛び出し、ようやく外まで出られると、オメガは全ての力を使い果たしたかのようにその場へ倒れ込んだ。

「オメガ……しっかりしてッ! オメガ~ッ!!!」

 私は絶叫しながらオメガのもとへ駆け寄った。
 オメガの美しかった肌がところどころ焼けただれている。私の方はオメガがずっと盾になってくれたおかげで軽い火傷で済んだ。

「酷い……酷過ぎるッ! いったい誰がこんなにも恐ろしいことをッ⁉︎」

 深紅の炎は天をも焦がさんばかりの勢いで燃えあがり、狂気アニメーションの全てを灰に変えていく。
 私は思わずペタンとその場に座り込んで深呼吸していると、火達磨になったデブなキモオタが狂気アニメーションの中から走って出てきた。

「アイツだッ! あのキモオタが会社にガソリンを巻いて火をつけたんだ!!!」

 生き残った狂アニの社員が声を張り上げて言った。
 火達磨になったキモオタは身長180センチを優に超える巨漢で、ぴっちぴちのTシャツを着ているせいで乳首が浮き出ている。100キロ以上は確実にあるであろうデブな体格で、男のくせに女の私より胸が出ていたwww

「狂アニにパクられたッ! パクリやがってッ! 俺は悪くない!!! みんな、狂アニが悪いんだwww」

 火達磨になっているにもかかわらず、キモオタ放火犯はハンマーを振り回しながら、こちらに襲いかかってくる。

「俺様の天才的な小説をパクった狂アニスタッフは皆殺しにしてやるッ! 俺の小説をパクったことを、あの世で悔いるがいいwww」

 どうやら正真正銘の精神異常者らしく、私のことを狂アニスタッフだと勘違いしたキモオタ放火犯は支離滅裂な電波妄想を炸裂させながらハンマーを振り下ろす。
 ハンマーが振り下ろされる前に、私はキモオタが飛び掛かるタイミングに合わせて、振り向きざまに本気の上段回し蹴りを股間めがけてカウンターで放つ。

「48の喪女技の一つ、金玉潰しッ!!!」

 思わず技名のようなモノを叫んでしまった私の咆哮は一筋の矢となり、脚部をキモオタの股間にクリーンヒットさせることに成功した。

「うぎゃああああああああああああッ!!!」

 悲鳴をあげるキモオタの股間から不吉な軋みが響いたかと思うと、次の瞬間ヒビ割れが広がってボロボロと崩れていく。

「パ、パク……パクリやが……って」

 ふいに、重い音が地面に響いた。
 火達磨になっているキモオタの手から、ハンマーが滑り落ちた音だった。
 後を追うようにキモオタの身体が地面に倒れ込む。
 ついに紅蓮の炎がキモオタの全身をすっぽりと包み込み、二度と醜い巨体が起き上がってくることはなかった。
 その後、私とオメガは救急車で搬送され、病院で手当てされることになった。
 オメガはω特有の超再生能力によって1週間で傷を完治させることができた。ωの男の子は能力面ではαに遅れを取るが、肉体的な面では数多くの赤ちゃんを産めるように常人よりも遺伝子的なレベルでタフにできている。

「良かったわ、後遺症もないみたいで……オメガが生きててくれて本当に良かった♡」
「ありがとう、心配してくれて。喪子姉さんみたいな優しい女の人が奥さんで僕、とっても幸せだよ♡」

 どちらからともなく抱き合って貪るようにディープな口付けを交わす。
 やがて私たちは結合し、互いの肉体を確かめ合った。

「もっと僕に喪子姉さんを感じさせて~♡」
☆……3次元の喪女の愛をとくと味あわせてあ・げ・る♡」

 我が社のエロゲに夢中になっている哀れなキモオタ共が一生味わうことができないであろう本当の愛あるセックスを私たちは肌身で実感するのであった。
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