男の子たちの変態的な日常

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99 変態映画〜後編〜

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 次のシーンはリョウが退院して、病院の正面玄関から出てタクシーを呼ぶところから始まる。
 タクシーは病院の前を通り過ぎ、ひとつ目の角を曲がると国道に出る。
 すると、リョウの背中に何かが触れる。

「なんだ⁉︎」

 振り向いたリョウの目に、黒く細い触手が飛び込んできた。触手は大人の小指ほどの太さでリョウの腰をうねうね這い登ってくる。
 悪魔だ!!!

「うわッ!」

 リョウは触手を払いのけようとして、さらに驚いた。触手が一本だけではない。無数の黒い筋が足もとにうごめいている。まるで遺伝子を操作して巨大化した糸ミミズを養殖している水槽の中にリョウが立っているような演出だった。

「うぎゃあッ!」
「ぎゃあああッ!」

 助手席のシートの陰から触手がパッと飛びかかり、運転手の首や手足に蛇のように巻きついた。ちなみに運転手役には外井げい先生に友情出演してもらった。

「あッ……あッ、あんぅ~ッ!」

 黒い触手は荒縄のように外井先生が演じる運転手の身体をきりきりと締めあげた。

「んッ、んッ、うふぅうッ……はぁあッ!」

 運転手は明らかに感じている。胸を締めあげ、恥ずかしい穴を犯す触手に反応している。リョウはポカンとしながら運転手の痴態を見つめた。

「あぐううッ!……た、助けてぇ……」
「運転手さんッ!」

 リョウは運転手の身体に飛びつく。肌に食い込む触手を急いではずそうとするが、運転手さんの肌から吹き出た汗のせいで指が滑る。

「誰かッ、助けてくれッ!」

 助けを求めようと後ろを振り向いたが、他の車からは誰も降りてこない。

「ああ~ッ!」

 運転手がひときわ甲高い声をあげた。絶頂を迎えたのだ。運転手の身体は力を失い、ひくひくと痙攣したあと、全身を黒い触手に包まれたまま、ぐったりと前へのめる。

「運転手さんッ!」

 なんとか助け出そうとしているリョウの目の前で、触手が液化し始めた。運転手の肌の表面を、黒い液体がじわじわ覆っていく。水に浮かんだ油のように薄く不透明な皮膜は、運転手の全身をすっぽり包み込んでいく。

「た、助けて……うぐうッ!」

 黒い皮膜をかぶった人型の物体がずるりと崩れ出した。
 リョウは腕とおぼしき箇所をつかんで必死に引っぱる。運転手の身体はフライパンに乗せられたバターのようにどろどろと溶けていき、ぐぐぐぐ……と声にならぬ音を発して、倒されたシートの上にべたりと張りついた。外井先生には悪いが、ここで出番は終わりだ。

「運転手さん! あつッ……」

 リョウが思わず手を離すと目の前で黒い塊が皮張りのシートを流れ落ちて、足もとのフロアマットに吸い込まれていく。リョウの両脚にも黒い波は押し寄せ、スライムのようにじわじわ這い登ってくる。このシーンはリョウ以外全てCGで表現されている。

「ちくしょう、誰かッ!……そうだ、アイツを呼ぼう……ええと、アクセスコードは何だっけ? マジカルポコチン、スーパーボーイ……う~ん、思い出せん!!! マスターチンポコボーイ? いや、違う。スペシャルチンチンボーイ? 最後にボーイがつくのは分かるんだけど、最初の方が思い出せない……くそッ」
「忘れちゃダメッ! アクセスコードは『ハイパーミラクルポコチンスペシャルボーイ』だよ~ッ!!!」

 突然声が聞こえ、リョウはハッと背後へ目を走らせた。リョウは思わず「おお!」と声を出す。
 僕が真っ赤に燃える夕日をバックに、決めッ!のポーズを取る。このシーンは何回も撮り直したのを覚えてる。
 僕の周囲に綺麗な花びらが舞い、かぐわしい香りがあたり一面に漂う。女児向けアニメにありがちな変身ヒロイン登場シーンのようだ。

「大いなる宇宙を照らす愛の光! 美少年戦士ポコチンガーΩ!!! 光を失いし闇のしもべたちよ、僕の愛に酔いしれな♡」
「頼む。助けてくれッ!」
「も~う、アクセスコードはきちんと覚えてくれなきゃ困っちゃうな」
「わりい、わりい……」
「後、約束してもらいたいことがあるんだ♡」
「約束?」

 僕はこくっとうなずく。

「昨日のように僕のこと襲ったりしたらダメなんだからね!」
「了解したよ……。とにかく助けてくれぇ!」

 ポコチンガーΩは長手袋をはめた両手を頭上に高くあげ、宙に♡の形を描き始めた。

「ポコチンビッグウェーブシャワーッ!!!」

 技名を叫ぶと、ちょうど股間の前で♡を完成する。すると股間からネバネバした液体がほとばしり出た。両脚を左右にしこたま開いて射精する姿はものすごく変態的で、このシーンをやるために僕は実際に射精することを監督から要求されて大変だった。
 僕はアソコからチロチロと噴出している液体を敵に噴きかけた。

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」

 声帯を持たないと思われた黒い液が悲鳴をあげ、リョウの身体から剥がれ落ちる。未練たらしく両脚にまとわりつき、ぐねぐねのたうちまわる。

「もう、観念しなさい!」

 僕が蹴りを入れると、黒い液は、

「AAAAAHHHHHH…………」

 と呻いて絶命した。リョウは急いで車外に飛び出す。

「ええッ、なんなんだ、この呆気なさは?」
「あはは……♡ ポコチンガーΩに敵うものなんかこの世にはないもんね! 僕は最強にして、神なんだから!」

 立てた人差し指を唇にそっと押し当て、うふっと笑ってウィンクすると、♡があたり一面にポワポワワ~ンと飛び散る演出が入る。
 リョウは僕の発したネバネバな液体を指ですくい、くんくんにおいをかぐ。

「このにおい、サイコーだな……」

 舌でペロッと舐めた瞬間、リョウはうむ、とうなずき、僕の方を真顔で見ると肩に手をかけてくる。と同時に僕の身体を押し倒した。

「あッ、いやッ! 何をするのッ⁉︎」

 リョウは僕のレオタードの中に手を突っ込んで、素早くアソコを揉み始める。

「ああッ、いや~ッ! 約束が違いますよぉ~ッ!」
「あれぇ~、そんな約束したかな~?」

 リョウの手から逃れようと必死になってもがく僕の唇を奪い、上半身を覆うコスチュームをずらして乳首をじかに愛撫する。
 たちまち僕の息が荒く弾んできて、切なげに身をよじり、リョウの胸を両手で押しのけようとする。

「あッ……あッ……らッ、らめぇ♡」
「本当はうれしいんだろ、え?」
「う、嬉しくなんかないんだから♡……」

 リョウの欲棒はカチカチにそそり勃ってカウパー液でぬろぬろ湿っている。

「お、お願いだからぁ。もう、らめぇ♡……」

 リョウは僕の嘆願を無視し、レオタードをずらす。すっかり剥き出しになったアソコはリョウの指に責められて、チュクチュク音を立て始める。

「ほら見ろ、こんなにも溢れてきちゃってるぞ」

 リョウの指はびちょびちょだ。

「もぉ、よく分かりましたぁ……。ふッ、ふぇえ。お願いです……」
「ハメて欲しいのか? チンポぶっ込んで欲しいんだろ?」
「いやぁ~ん♡」

 身悶える僕のアソコから、我慢汁がたらたらトロトロ溢れ出す。
 だが、いざリョウの亀頭が恥ずかしい穴に突きつけられようとした瞬間、僕はリョウの両肩をつかみ、くるりと体勢を入れ換える。
 リョウを地面に押し倒し、小さな両手でペニスをそっと握ったと思うと、先端から滲み出ていた透明な液を舌で舐め始める。

「うおッ‼︎ あッ? な、なんだッ⁉︎」

 リョウは快感にゾクッと身を震わせた。
 僕はペニスをぱくっと口に含む。唇をすぼめたり開いたりしながら、舌で亀頭の先割れをチロチロ舐める。

「うぁ……たまんね~ッ! もっとやってくれ~ッ!」

 僕はキャンディバーを味わうように、根元から大きくエラの張ったカリの部分をゆっくりレロレロ舐めていく。同時に細い指で玉袋を転がすようにまさぐる。激しい快感がリョウの背筋をずりずり這い上がる。
 ドピュドピュュッ!
 息子がこらえきれずに爆発する。ペニスは勢いよくスペルマをポコチンガーΩの顔にぶちまけた。

「あ……」

 リョウの両肩から一気に力が抜けていく。僕はトロンとした瞳でリョウを見上げた。リョウの太竿を味わったせいで、身体の奥深くに潜んでいた欲情の炎が大きく燃えあがった。頰や唇を濡らした白濁液を指先でぬぐって舌でぴちゃぴちゃ舐め取る。

「うまいか? もっぺん飲ませてやるよ」

 リョウは萎えかけたペニスをつかみ、片手で僕を押し倒す。

「あッ……イヤ……」
「安心しろ。たっぷりイカせてやるからな」

 半立ちになった太竿を恥ずかしい穴に押し当てる。

「やっぱり、らめぇ……♡」

 身体をフルフル震わせ、涙をこぼすが、本気で抵抗しなかった。

「ダメなもんか。すぐよくなるって……」

 リョウは僕の腕をつかみ、自分の側へ引き寄せた。僕の唇に自分の唇を重ね、舌を深く差し入れる。

「ん……むふぅ……」

 僕はディープキスの感触に戸惑いながらも、おずおず舌を絡める。このシーンはリョウのアドリブだったが、なんとか愛撫に応えようとした。
 リョウは唇を離し、僕の瞳を覗き込んだ。

「もう、いいね?」

 僕はうなずいて、リョウの腕にしがみつく。僕の瞳は涙でうるんでいる。
 リョウは優しい手つきで僕のコスチュームを脱がす。
 僕は恥ずかしげに瞳を閉じ、上気した顔でリョウの胸に抱かれる。敏感な身体は、肌の上を滑るリョウの指に鋭く反応する。

「……んッ……あぁ……」

 硬くなった乳首を噛まれただけで、小さな喘ぎ声がもれる。
 僕の香りにリョウの欲棒が覚醒する。リョウはパンツを脱ぎ捨てた。解放された陰茎は新鮮な血液をたっぷり吸い込み、みるみるうちに充実していく。心臓の鼓動に合わせ、ドクッドクッと脈打ち始める。
 僕の背筋をゾクゾクッと興奮が走る。吐息をもらし、唇をわななかせつつ、リョウの背に両腕をまわす。
 乳首を指で転がされるたび、軽い電流にも似た快感が身体中を突き抜けて、腰のあたりがジーンと痺れて重くなってくる。アソコをいじられると幽体離脱でもしたように身体が浮いて気持ちがいい。
 リョウは太腿を膝で割ってひろげ、ビンビンに張りつめた勃起を僕の恥ずかしい穴に押し当てた。

「あはぁ~、硬い。硬くて熱いものが、僕の恥ずかしい穴に当たってるよ……。僕の中に入ってくる♡」

 こんなところでこんなことをしている場合じゃない。わかっていても、股間の暴走は誰にも止められない。止まらない。
 撮影で緊張しているせいか、僕の恥ずかしい穴は固く口を閉ざしている。
 リョウは先走りの液を恥ずかしい穴に塗りつける。

「あッ……あぁ……んッ……はあぁぁ♡」

 吐息とも喘ぎともつかぬ声が、僕の唇からもれる。もっと恥ずかしい穴をいじって欲しくて、自分から腰を突きあげる。
 リョウは僕のウエストをつかみ、ようやく濡れてきた恥ずかしい穴へペニスの先端を突きつけた。

「いくぞッ!」

 太幹が恥ずかしい穴に埋まり込み、大きな亀頭がアナルを突き破る。

「ああ~ッ!」

 僕は両手でリョウの胸をつっぱねる。

「すぐよくなるからな~♡」

 リョウは僕のウエストを片手で押さえ、ゆっくりと腰を動かす。剛棒を出し入れするたびに、鋭い快感が脊髄を走り、脳天まで突き抜けていく。

「あッ……あぁ……んあぁ~ッ、いッいい~ッ!」

 いっそう敏感になった僕の身体は肌に触れられただけで昇りつめてしまいそうになる。

「……へ、変になっちゃうぅぅ……」

 苦しげな息を繰り返し、狭間を深く貫かれたまま激しく身悶えする。背を弓なりに仰け反らせ、大きなよがり声を放った。ピンと伸ばした脚で虚空を蹴りあげた。
 身体の奥から湧き出す快感をより深く味わおうと、自分からぐいぐい腰をグラインドさせる。
 リョウも負けじと太腿を抱え、より深く恥ずかしい穴にペニスを突き入れる。ひねりを加え、荒々しくピストンさせると、グプッ、ヂュプッといやらしい音が響く。

「そ、そろそろ、だ……な」

 恥ずかしい穴は熱く燃え、挿入された一物をギュギューッときつく締めつける。

「で、出るッ!」
「あああああ~ッ!!!」

 リョウは絶叫する僕の中へ熱く燃えるスペルマを放った。どぷっどぷっと射精してしばらくしてから、ゆっくりペニスを抜き取る。
 巨根を失った恥ずかしい穴はひくひくとうごめき、白い樹液をアナルからこぼしていた。


ーーー


 いろいろあって、ついに映画のクライマックスである『神(ラスボス)』との対決シーンが始まった。
 畏れをまとったラスボスが僕とリョウの前に立ちはだかっている。

「ようやく我の所までたどり着いたようだな。褒めてつかわすぞ。といっても、ここまで全て『神』である我のシナリオ通りだが……」

 ラスボスの姿を見てリョウは頭をハンマーでぶん殴られたような衝撃を受けた。

「な、なんでだ……⁉︎ お前はあの時の看護師じゃねえかッ⁉︎」

 リョウの目の前には、冒頭でカスケが演じた看護師がいた。正直言うと、僕もこの超展開には驚かされた。まさか、カスケがラスボスを演じるとは夢にも思っていなかった。

「ふふふ♡ あれからずいぶんと悪魔たちを退治したようだなぁ。さあ、ラストを飾るにふさわしい戦いを始めようではないか!!!」
「待ってくれ! あんたが『神』なら、なんで『悪魔』たちを使って人間を滅ぼそうとしたんだ⁉︎ 応えてくれよ!」

 リョウとカスケの名演技に僕は圧倒された。2人とも短期間で演技力がめっきり向上した。

「逆に問おう。『神』と『悪魔』が同じ者だとしたら?」
「はい?……」
「『神』も『悪魔』も人によっては悪魔と思われたり、神と思われたりするだろう。つまりは同じ者なのだ。そして、神も悪魔も目指すモノは同一。皆『希望』という名の光を追い求めておる。汝はポコチンガーΩという名の『悪魔』の力を有した。では、その力は『神』の力とも言い換えることが出来るであろう!」
「あなたが『神』だろうと『悪魔』だろうとホントはもう戦いなんか真っ平御免なんです。『人間』は本来ならば誰とも争いを望まぬ平和主義者なのですから!」
「ほ~う、それはどうだろう? この世界を本来ある姿から捻じ曲げ、ここまで荒廃させた犯人は『人間』ではないか。汝も知っているはずだ。人間が今まで如何に醜く争い、殺し合い、弱者を踏みつけ、そして世界を破壊して来たか! 人間が存在する限り、このディストピアを終わらせることは出来ぬ! どんな先端技術をもってしても、どんな武力をもってしても、どんな政治体制をもってしても『残酷』や『憎しみ』や『不義』を人間から取り除く事は不可能! 総ての地を通信で繋いでも、あらゆる深海の底に達しても、人の遺伝子にメスを入れても、天空の彼方の月に到達しても、人間は『戦争』や『犯罪』や『不公正』の無い平和な社会を招来する事はできなかった……。『貧困』も『病気』も『死』も征服できはしなかった。犯罪と暴力が蔓延り、死をもたらす性病が蔓延し、何千万もの者が飢えや病気で死んで行く一方で、少数の者が莫大な富を所有した。貧富の差によって、あらゆる国で内戦が起こり略奪が行われ、人と人が殺し合った。そして、それはこの時代に於いても何ら変わっておらぬではないか!!! これほど愚かな『人間』がなぜ邪悪ではないと言えるだろうか⁉︎ 真の『神』が存在するならば『人間』には滅びこそが正当な罰だと判断するであろう!!! 人間こそが滅ぶべき真の『悪魔』であることを我は悟ったのだ……」

 セリフが長過ぎる……。
 よくこんなにも長いセリフを暗記できたなぁと思わず僕は感心した。カスケの暗記力はホントに天才的だ。

「よく分からないけど、あなたが完璧な正義である『神』だというのなら、僕は人間という不完全な生き物を守護する『悪魔』にだってなってみせる! 『神』を滅ぼし、人間の世界を守ってみせる!!!」

 僕は凛とした口調で言った。

「おやおや、そこまで愚かだとは……。本気で我に勝てると思っておるのか? ポコチンガーの力を君に託したのは、せめてもの親心であったが、所詮その力をもってしても『神』に勝つことなど到底不可能。我の力をとくと見るが良い。――偽りの光によって掩蔽されし純然たる闇を剿滅せよ≪黙示録アポカリプス≫」

『神』は神々しい光のエネルギーボールを捻り出す。
 その瞬間、地獄の光景が広がっていた。
 世界が巨大な炎に焼かれたかと思うと、そのまま巨大な洪水の中に沈んでいった。
 町も川も谷も地獄の業火の中に消え、引き裂かれた大地の巨大なクレバスに飲み込まれてゆく。
 大地がうなり、山々は悲鳴をあげて崩れてゆく。
 海は巨大な龍と化し、天空に巻き上がる。
 恐怖は混乱を生み、人間を無秩序へと導いた。
 天変地妖てんぺんちようと絶望の闇の底で暴徒と化した人々とともに、今や大陸のことごとくは壊滅しようとしていた。
 そして、数十億の人間が恐怖の絶叫とともに死んでいった。
 大陸中の大都市が次々と破壊され、炎と瓦礫の中で死んでいく。
 大陸各国は潰滅的な打撃を受け、人類が数千年にわたって築き上げた文明が“光のかたまり”の中で一瞬のうちに消えさる。
 もはや世界中の国々は地図から消えていた……。
 言うまでもなく、これらのシーンは全てCGによって表現されている。

「『神』が生み出した生命だからといって、勝手に殺していいわけがねえ!!! この世界に住んでる人間たちは生まれたくて生まれたんじゃない……。だが、生きている!!! 自分の意志で、自分の心で必死に生きている!!! 人間の命を創ったのも神ならば、人間が罪に走る自由を与えたのも神じゃないか! 自分が気に入らないからといって、一度生み出した命を力づくで奪って良いわけはない!!! それは『人』が『人』を力で傷つけ、葬り去ろうとする愚行と同じじゃないか!!!」

 気迫と威厳のこもった演技に僕は我知らず見とれていた。

「我はありとあらゆる並行宇宙を含む全ての宇宙の創造主であるぞ。我は汝らを創ったのだ! 故に生かすも殺すも我の自由ではないか。例えるなら人間がブタやウシを飼い、それを殺して食用に利用しているようにな!」
「だからと言って、指先ひとつで殺されるのは嫌だ! 人間たちはただただ純粋に己の意思で生きだけなんだ!!!」

 僕の身体から神々しい輝きがあふれる演出が入る。

「『神』という言葉に惑わされていたよ。あなたも僕たちと同じ生物に変わりはない。次元を超越した存在であり、僕たちより進んだ能力に恵まれているだけの生物に過ぎないんだ」
「それがどうした! 『神』の前では何をしても無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!!」

 すると、カスケが演じる『神』の姿が瞬時にして紅蓮に燃え上がる炎の体へと変化していく。全てを焼き尽くすほどの炎を纏ったモンスターはゆっくりと目を見開くと、深い金と銀のオッドアイの瞳が光った。このシーンはCGとは思えないほど気合いの入った作りとなっている。
『神』は雄叫びをあげて目前に立っていたリョウの肩に飛びかかった。

「うわ~ッ!」

 鋭い牙が突き立てられそうになった瞬間、その口の真ん中に僕が腕を突き出した。骨肉をがっぷりと嚙まれたまま、エルボードロップを決めるように腕を振って後ろへ『神』の巨体をぶっ飛ばす。

「……チンポコより生まれし、全知全能のスピリットよ。今こそ僕に秘められし大いなる浄化の精液を解き放て≪宇宙の初まりビッグバン≫」

 黄金の輝きに包まれた僕とは『神』に突進していった……。

「確かに……人間には邪悪な面もある、愚かな行いを重ねて来たかもしれない……。でも、全ての人間が邪悪なわけじゃない。神よ、人間の中には善良で心優しい清い者達も大勢いる。弱い者をいたわる優しさや温かい思いやり、如何なるものにも立ち向かってゆく勇気や他の者のために自らを犠牲にできる潔さ、そして何より無条件に全てを許せる無償の『愛』があるんだ。貴方はそれら善き者をも一緒に滅ぼされると言うのか⁉︎ 貴方は善き者達も悪しき者達も一纏めに葬り去るのか⁉︎ それが貴方の考えなのか⁉︎」

 僕の魂の演技に『神』は落ち着いた口調で語り始めた。

「そうではない。善良な人間と邪悪な人間が存在するのではなく、あらゆる人間の心の内に善と悪が等しく存在しておるのだ。だが、人間の『欲望』が人々の心を狂わせた……。≪闇≫におかされた愚かで憐れな人間達は愛し合いつつも憎み合い、平和を求めつつも殺し合う……。≪闇≫に汚れた人間達の『愛』に出来るのは、ただひたすら奪い合う事だけだ。――人間達の『愛』は壊れている!!!」
「『愛』が壊れている……?」
「何かを愛し続ける事は時には地獄のような苦しみ……。求め続けても、それが得られないと知れば人間は絶望し、それ自体を憎み、破壊しようとさえするだろう。『愛』はきりの無い欲望でもあり、際限無き欲望は必ず憎悪を生み出す。もっと愛されたいと願う気持ちは狂気に似ている。人を愛し続ける事の苦しみは『愛』と言う罪を犯した者への、神の罰なのだ!!!」
「『愛』と言う名の罪を犯した罪人はあなたの方だ☆」
「な、なんだとッ⁉︎ 何が言いたい⁉︎」
「あなたは先ほど僕にポコチンガーの力を託した理由を親心だと言っていたが、それはあなたが人間の可能性をまだ信じていた証拠だ。そして、ポコチンガーの力をもってして自分を止めてほしかった……そう思っていたんじゃないですか?」
「な、何をバカなことを⁉︎……」
「僕には分かるんだ。だって、生きとし生けるものには『つらくて』『寂しい』気持ちが心の一番深い所にあるから……」
「我が寂しがりやの『構ってちゃん』だとでも言うつもりかッ⁉︎ 神に救いを求めるだけの下品で下劣、無知無能、愚昧にて愚鈍な人間と一緒にするな! かつて我が希望に胸をふくらませて創造した人間の面影はどこにもありはせん……。あるのは延々と互いの夢や希望を破壊し合う残忍な本性を剥き出しにした人間モンスターの姿だけ。――見よ、あの月を。美しいだろう? 太古の昔、この世界はあの月よりもずっと美しかった……。あの頃の美しかった世界を取り戻すため我は自ら創造した人間を無にかえさなくてはならない! これは我に出来る唯一の贖罪なのだ。だが、今は次なる人間の攻撃に備えて深い眠りにつくとしよう。我が眠りから目覚めた時、再び相見えようぞ! それまでしばしの別れ、さらば我が永遠の人間しゅくてきよ!!!」

『神』は僕が放つ光の前に安らかに消えていくと、時空の狭間にある混沌の次元で悠久の眠りにつくのであった。


ーーー


 映画は大ヒットし、関連商品も爆売れで僕たちの知名度は格段にアップした。
 さっそく続編の製作が決定し、僕たちは多くのメディアに引っ張りだこだ。
 これから忙しくなるだろうけど、気合いを入れて頑張るぞぉ~!
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