聖女召喚で呼ばれた私は女神(仮)でした

ミツ

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女神になった少女

天使と妖精……イケメン……と、ドレス

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 目が醒めると外は、うっすらと明かりが差していた。 目にうつる緑溢れる光景に「ふぅ」と私は溜め息を付いた。
「自由に生きるか……」
 医師になる事以外考えてなかった。 私は……。

 コンコンと入口のドアが叩かれる。
 続いて、
「お嬢様、お目覚めのコーヒーをお持ちしました」
「ありがとう。 ファントさん」
 冷静にお礼を言ったけど、物凄く怯えているから。 
 何、この人私が起きたタイミングわかってたの!?

 朝の支度を終え、ステラさんとゲイリーさんの待つ食堂車へと移動する。
 そこには、焼きたてのパンやハムエッグ、サラダが用意されていた。
 ハムエッグは、良いのだがサラダは塩とオリーブオイルを混ぜた簡単なドレッシング。 マヨネーズ等もないため味気ない。

 歴代聖女は、料理が下手だったらしく食文化は簡単な料理しか伝わってないらしい。 

「ご馳走様でした」
「……本当に大丈夫なの、ミサキ」
「もっと食べないと……」
 ステラさんとゲイリーさんが私の食の細さに驚いていた。 パンも数欠片、おかずもちょっとでお腹が膨れてしまうのだ。
 この身体が前世に引っ張られてるからだと思う。

 だけど、正直言えば神の擬体の私にご飯は必要ないのかもしれない。 この世界に来てから、空腹や飢餓に襲われなくなったのだから。

「後、どのくらいで到着するんですか?」
「そうだな……半日と言うところだろう」
 半日か……。 嫌な予感がする。
「また、パレードとか無いですよね?」
「はっはははは!」
 笑って誤魔化すゲイリーさん。 

 ステラさんは、あっさり「あるわよ」と肯定し更に続ける。
「ミサキの事は既にエフィル神国で私達の養子になったと言うことが発表されているから大歓迎を受けるわね」
「なに、それ、きいてない」
 あまりの衝撃に私は、カタコトになる。

「後、これからドレスアップしなくちゃいけないわね。 ミサキは、誰もが憧れるお姫様ならなきゃね」
 ……ドレスアップ。 憧れるお姫様? ムリです! てか、嫌です。
「お断りします!」
 私は、NOと言える日本人ですから。

「あらあら、断るの? うふふ」
 ステラさんが、微笑みながら私を見つめる。 なにこれ、凄い怖いですが。 蛇に睨まれたカエル……いや、ドラゴンに睨まれた蟻状態です。
「オチャメな冗談ですわ。 ステラサマ……」
 折れました。 ポキッと言うか根本からボキボキと折れました。

 ゲイリーさんが嬉しそうな顔で私に近付き「ようこそ」と小声で囁いた。


 ━━━生け贄発見。



「ハイ」
 私はステラさんに向かって手を上げる。
「どうしたの?」
「ゲイリーさんが、怒られてる? 私を見てなんかニヤニヤして鬱陶しいです」
「あら、あなたは何をそんなに楽しそうにしてるのかしら?」 
「えっ、いや、パレード楽しみだなぁ……って」
 ジリジリと詰め寄られるゲイリーさんが私に「タスケテ」と視線を送ってくるので私は、窓の外に目を向けます。

「イイ、テンキダナァ」
 優雅にコーヒーを飲み干し、そそくさと部屋に帰ろうとすると後ろから服の襟首をぐっと掴まれ「ぐげぇ」と出てはいけない声が出てしまった。

「ドレス、イヤ、グンプク、デ、イイ」
 この世界に来てからの私は、白い軍服オンリーなのだ。 この服は、イイ。
 まず汚れないし、機能性も高い、更には通気性もよく格好いいのだ。
 更に、自動調整の魔法が掛けられているため身体にジャストフィット。
 これ以上、素晴らしい服があるでしょうか! いえ、無いと思います!

 そんな事を言えるわけもなく、大人しくステラさんに従うわけで。
 私は今、ステラさんと列車のメイドさんに着せ替え人形のように扱われています。

「ステラ様、この透き通るような白い肌には、このドレスもお似合いかと」
「そうね。 でも、お披露目なのよ……ここはシンプルに白はどうかしら」
「お嬢様の目の色に近い色のドレスも宜しいかと……」
「ドレデモ、イイデスヨ」
「「「ダメです! 少し黙っていてください!」」」
 ステラさんと二人のメイドさんに怒られました。 今の私に人権は無いらしい。




 ━━━着せ替え人形になって6時間後。


「これで決まりね……」
「ええ、素晴らしいです」
「まるで女神様ですわ」
 ええ、女神の身体ですから。 いや、でも、エフィルが疲れを知らない身体って言ってたよね? 精神的、肉体的疲労が著しいのですが。
 私が疲れて側にある椅子に座り込むと悪魔の囁きが聞こえてきた。

「では、ミサキお嬢様。 これより、お身体を清め、手入れ致しましょうか」
「お風呂? やったぁ!」
 あぁ、神様……こっちじゃ、エフィルか。 ありがとう……私に癒しをくれて。

 この感謝は、この後無に帰すことになる。 メイドさんによる徹底的な手入れが始まったのだ。
 髪、御肌の手入れ。

 実質、3時間程。

 そして、間を置くことなく再びドレスを着せられ薄目の化粧をされる。
 まあ、小さくて細いからコルセットを付けられる事はなかったが……隣でドレスを着るステラさんはつらそうだった。

 綺麗な体型なのに…………そういや、コルセットみたいな補正下着があったな。
 居酒屋のバイトの先輩が着けていたよ。 全然、苦しくない上にスタイルも良く見えるって自慢してたな頭の栄養が全部胸に行った先輩が……。

 ………………嫉妬だよ! 私に無用な長物で悪かった……。
 自己嫌悪に陥ってるとステラさんが、心配していた。

「そんなにパレードが嫌なの?」
「いえ、ステラさんのスタイル見て悲しくなっただけです」
 あれですよ。 3人の子持ちなのにナイスバディーてどういう事? ですよ。
「……ミサキも……うん。 可愛いわよ」
 余計な間がありましたよ! 諦めましたね! 諦めたらそこで成長は終了ですよ!
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 ステラさんも、メイドさん二人も何も言えない居たたまれない空気を作り出してしまった。
 この世界の人は、比較的モデル体型の人が多い。
 ステラさん然り、ファントさん然り、メイドさん達もだ。

 …………ヒョッケイは違うよ。 何だろう、パッと見、四頭身の生物。
 そうそう、歩いてても、椅子に座っててても「はぁ、はぁ、はぁ」って言ってるよ。
 万年発情期かぁ! って、突っ込もうと決心したらファントさんに止められた。

 どうやら、その言葉はヒョッケイの地雷らしい。 かつてその発言をした貴族が五体不満足になるまでしばかれたらしい。 更に、驚きなのは戦闘力で言うとゲイリーさんの次に強い人らしい。
 あっ、でも嫌いじゃないよ。 話したらヒョッケイイイ人だし……どちらかと言うと良く話すから。

 ファントさん……グッジョブでしたが、心読むのは止めて欲しい。

 列車が止まった。 どうやら、到着らしい。
 ステラさんも完璧に変わった。 すげぇ……本気のステラさんは超絶美人だわ。

「あら、どうしたの? ミサキ」
「いや、スッゴい美人ッス。 ……若く見えるッス」
 動揺の余り、舎弟みたいな話し方になってしまいました。 それほど、綺麗なのです。
 かなり、目付きが険しく空気が張り詰めたんですが……。
「あらあら、ミサキには私がそんなに歳を召してるように見えてたのかしら?」

 不味い。 やらかした。
 私は、勢いよく立ち上がり敬礼をしながら大声で発言する。
「違います! ステラサマは、20代、10代を通り越して赤子のような美しさであります!」
「「「ふふふ……」」」
 ステラさんとメイドさんの二人が、クスクスと笑う。

「ミサキ、赤子で誉められるのは流石に無いわよ」
 確かに、赤子って誉められて喜ぶ人は居ないよな。 だが……
「赤子のようなスベスベモチモチ肌の意味であります!」
 敬礼を崩さず言葉を続けた。

「「「まぁ……」」」
 お三方が惚けております。 上手く騙せたようです。
「うふふ、ミサキ。 その言葉をゲイリーや他の殿方に教えなさい。 良いわね?」
「イエス、マム!」
「で、私は歳を召してるように見えてたのかしら?」
 …………おぉ。 私は、逃げ切れないのね。

「…………黙秘します」
「あら、じゃあパレードは1人で馬車に乗るのよ?」
「いやぁ! お母様!」
「………………許すわ」
 ステラ様の顔が真っ赤になってます。 ふむふむ、これは後でヒョッケイにお礼を言わなくては……。

「ステラ姫がらみでピンチな時は、お母様と呼べば許してくれると思いますよ。 はぁ、はぁ、はぁ。 以前、ミサキさんに断られた時に大層、気を落とされましたから。 はぁ、はぁ、はぁ」
 と、ヒョッケイさんのありがたい言葉だ。

 許された私は、ステラさんと共に外に出る。 そこには、オープンカー仕様の馬車とイケメンと妖精が二人立っていた。
 その横には、熊……じゃなくてゲイリーさん。

 そして、イケメンと妖精二人が此方に向かって走ってくる「お母様!」と呼びながら。
「まさか……ゲイリーさんの子供!? 嘘でしょ!」
「ミサキお嬢様、心の声がはっきりと出ております」
「あっ、あまりにも違いすぎてつい」
 はっきりと言い過ぎて全員が沈黙した。 まさかのイケメンと妖精二人迄……。

「ミサキ、大丈夫よ。 この双子はゲイリーそっくりだから」
 双子は、モジモジしながら私の方を向き。
「「はじめ、まし、て」」
 と、言った。

 私は、二人をガバッと抱き締め「私は、ミサキよ。 二人のお姉さんになりたいのいいかな?」と尋ねると「「うん!」」と元気良く答えてくれた。
「ゲイリーさんのモジモジは気持ち悪いけど、二人は妖精か天使に見えたよ」
「ミサキ、同感だけど口に出しちゃダメ」
 再び、ステラさんがゲイリーさんにトドメ刺しに掛かる。

 次にイケメン君が目の前に。
「僕は、セイクリッド。 宜しくお願いします。 ミサキお姉様」
 セイクリッドは、私の右手の甲にキスをする。
「……引くわ」
 私はドン引きだ。 
「どうなさいましたか?」
 セイクリッドは、笑顔で問う。

「いやいや、どこぞ知らん女の手に口付けとか危険すぎるでしょ。 私も手洗いしなきゃいけないし。 今後、禁止ね」
「えっ、あっ、えっ? はい?」
「ふふふ、セイクリッドでもミサキには勝てないようね」
 面を食らったセイクリッドは、訳のわからない表情をした。 

 パレードの馬車の元に行く。 双子の妖精? 天使? の名前はミルムとラムルと言うらしい。 
 二人と共にパレードの馬車に乗るのは至福だった。 私には、兄しか居なかったしね。

 パレードが終わり、エフィル神国の王宮へと入る。 中は、城と言うよりも教会に近い作りだった。

「一階は一般解放されている、教会の本殿だ」
 ゲイリーさんが、教えてくれる。
 つまり、私がエフィルに会うために向かっていた場所だ。
 飾られているエフィルの石像は、女性のような形をしているだけであった。 多分、あの光の姿で現れてるんだね。

 これで謎が解けた。 エフィルと同じ顔の私がいるのに特に何も言われない理由。
 多分、この姿は見せたことないんだ。 気兼ねなく遊びたいから……。
 動機が不純だが、エフィルだしな。

「ねぇね。 いこ?」
「ねーね。 いこ?」
 右手にはミルム。 左手にはラムル。
 二人は、基本的人見知りらしいがすぐになついてくれた。
 セイクリッドは、未だに凹んでる。 このイケメン、女性に拒絶された経験が無いらしい。 えっと、12歳だよね?

 ステラさんとゲイリーさんは、ニヤニヤ生暖かい笑顔を此方に向けてくる。
「あの、ところで今からどうするのですか?」
「教皇に挨拶をしに行くわよ」
 ステラさんに従い、この国の王のような存在である教皇に会いに行った。




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