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第8話 自分が恥ずかしすぎる
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週末の午後、湊が急な用事で実家に帰ることになった。
「すぐ戻るから」
そう言われて見送ったものの、湊のいないシェアハウスは思っていた以上に寂しくて、陽向はなんとなく落ち着かなかった。
夕飯を済ませても、テレビをつけても、何かが足りない。
(……湊、いつも隣にいたんだなぁ)
ふと自分の部屋を出て、湊の部屋の前で足を止める。
ノックして入ると、きちんと整えられたベッドと、机の上に置かれた本や眼鏡が目に入った。
(ちょっとだけ……)
ベッドの端に腰を下ろし、毛布をそっと触れる。
それだけで、湊の匂いがふわりと鼻をくすぐった。
胸の奥がきゅっとなり、陽向は無意識に枕元にあった湊のシャツを手に取って抱きしめる。
「……早く帰ってこないかな」
小さくつぶやき、シャツの端をぎゅっと握ったまま横になる。
湊の体温を思い出すように目を閉じると、あっという間にまぶたが重くなっていった。
部屋の扉が開く音で、陽向は一度うっすらと目を覚ました――が、足音が近づく前にまた眠りに落ちた。
「……陽向?」
低い声と共に、ベッド脇にしゃがみ込む影。
湊は、眠る陽向の手に自分のシャツが握られているのを見て、わずかに目を細めた。
「……これ、握って待ってたのか」
小さく息をつき、湊はその手にそっと触れる。
「寂しくさせて悪かったな」
囁きながら、乱れた前髪を指で優しく払う。
陽向は眠ったまま、微かに眉を緩めた。
湊はその表情を見て、小さく笑い――
「……ただいま、陽向」
そう呟き、静かにベッドの端に腰を下ろし、しばらく陽向の寝顔を眺めていた。
カーテン越しに差し込むやわらかな朝の光。
陽向はぼんやりと目を開けた――が、すぐに違和感に気づいた。
(あれ……!?もしかして、あのまま寝ちゃった!?)
視線を横にやると、すぐ近くに眠たげな目をしてこちらを見ている湊がいた。
「……おはよ」
「っ……!? な、なんで湊が……ここに……」
陽向は慌てて毛布を持ち上げ、飛び退こうとする。
「動くな。落ちるぞ」
大きな手が腰を押さえ、動きを止められる。
「み、湊……ごめ、待ってたら、寝ちゃった……みたい」
「あぁ、俺のシャツ握ってて、可愛かった」
くすっと笑う声が耳元で響く。
「……見たの……?」
「見た」
さらっと言われ、陽向は耳まで真っ赤になる。
「寂しかったか?」
「ち、違うし……」
「へぇ?俺のシャツ、握ってたのに?」
う~~と答えに詰まる陽向を、湊は片腕で軽く抱き寄せた。
「……可愛いな」
「か、からかってるだろ……」
「からかう必要がない」
短く言い切られたものの、どういうこと?と傾げると
「俺は本気でお前を可愛いと思ってる」
「か、可愛いって。……女の子じゃないし」
「関係ねぇ。ほら、起きるぞ」
ぎゅっと鼻をつままれて、やっぱりからかわれてる!と思う陽向。
その後、一緒にキッチンへ向かうときも、湊はやたらと上機嫌だった。
「陽向、次はシャツじゃなくて、俺にしろよ?」
「……っ!」
その言葉に返事をする代わりに、陽向は前を向いたまま早足になったが、耳の赤さはごまかせなかった。
「すぐ戻るから」
そう言われて見送ったものの、湊のいないシェアハウスは思っていた以上に寂しくて、陽向はなんとなく落ち着かなかった。
夕飯を済ませても、テレビをつけても、何かが足りない。
(……湊、いつも隣にいたんだなぁ)
ふと自分の部屋を出て、湊の部屋の前で足を止める。
ノックして入ると、きちんと整えられたベッドと、机の上に置かれた本や眼鏡が目に入った。
(ちょっとだけ……)
ベッドの端に腰を下ろし、毛布をそっと触れる。
それだけで、湊の匂いがふわりと鼻をくすぐった。
胸の奥がきゅっとなり、陽向は無意識に枕元にあった湊のシャツを手に取って抱きしめる。
「……早く帰ってこないかな」
小さくつぶやき、シャツの端をぎゅっと握ったまま横になる。
湊の体温を思い出すように目を閉じると、あっという間にまぶたが重くなっていった。
部屋の扉が開く音で、陽向は一度うっすらと目を覚ました――が、足音が近づく前にまた眠りに落ちた。
「……陽向?」
低い声と共に、ベッド脇にしゃがみ込む影。
湊は、眠る陽向の手に自分のシャツが握られているのを見て、わずかに目を細めた。
「……これ、握って待ってたのか」
小さく息をつき、湊はその手にそっと触れる。
「寂しくさせて悪かったな」
囁きながら、乱れた前髪を指で優しく払う。
陽向は眠ったまま、微かに眉を緩めた。
湊はその表情を見て、小さく笑い――
「……ただいま、陽向」
そう呟き、静かにベッドの端に腰を下ろし、しばらく陽向の寝顔を眺めていた。
カーテン越しに差し込むやわらかな朝の光。
陽向はぼんやりと目を開けた――が、すぐに違和感に気づいた。
(あれ……!?もしかして、あのまま寝ちゃった!?)
視線を横にやると、すぐ近くに眠たげな目をしてこちらを見ている湊がいた。
「……おはよ」
「っ……!? な、なんで湊が……ここに……」
陽向は慌てて毛布を持ち上げ、飛び退こうとする。
「動くな。落ちるぞ」
大きな手が腰を押さえ、動きを止められる。
「み、湊……ごめ、待ってたら、寝ちゃった……みたい」
「あぁ、俺のシャツ握ってて、可愛かった」
くすっと笑う声が耳元で響く。
「……見たの……?」
「見た」
さらっと言われ、陽向は耳まで真っ赤になる。
「寂しかったか?」
「ち、違うし……」
「へぇ?俺のシャツ、握ってたのに?」
う~~と答えに詰まる陽向を、湊は片腕で軽く抱き寄せた。
「……可愛いな」
「か、からかってるだろ……」
「からかう必要がない」
短く言い切られたものの、どういうこと?と傾げると
「俺は本気でお前を可愛いと思ってる」
「か、可愛いって。……女の子じゃないし」
「関係ねぇ。ほら、起きるぞ」
ぎゅっと鼻をつままれて、やっぱりからかわれてる!と思う陽向。
その後、一緒にキッチンへ向かうときも、湊はやたらと上機嫌だった。
「陽向、次はシャツじゃなくて、俺にしろよ?」
「……っ!」
その言葉に返事をする代わりに、陽向は前を向いたまま早足になったが、耳の赤さはごまかせなかった。
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