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0章 小鹿の旅
(※小鹿は、終末世界を旅する3)
3
まるで、罪人のように、小鹿は男たちに連れられた。
コンクリートが打ちっぱなしになっている広間に、放られる。
「……っ、」
その際、強か身体を床に打ちつけた。
冷えたコンクリートの感触にぞっと身が竦む。小鹿はかたいコンクリートの上で凍えていた。
男たちは、そんな小鹿の様子を見下ろしている。
いやに粘つき、澱んだ目、目、目。
小鹿は、荒んだ視線に晒されることに怖じたものの、おくびにはださない。
鋭い眼差しで男たちをねめつけた。
「こいつ……!」
男が激し、鳩尾に蹴りをいれた。
身体が海老のように跳ねた。ぐう、と喉が奇妙な音をたてた。
「は、はぐ……」
(馬鹿、だ)
刹那的に、そのような考えが過る。
男たちに対する敵意もさることながら、自嘲がこみあげた。
今まさに嬲られ、殺されるかもしれない……という状況にありながら、つまらない矜持を捨てられない自分の愚かさがおかしかった。
身を丸めて、暴力のおわりを待った。
ボールのように背を蹴られる度、みしみしと華奢な骨が嫌な音をたてて、軋む。
衝撃に身体が、たわむ。
髪をつかまれ、強制的に顔を露わにされる。
その顔が生意気だと言われ、ますます暴力は激しくなる。
顔を打擲され、身体が痣だらけになるまで蹴られる……おわりがあるはずの暴力だがはてがない。
口の中に鉄さびめいた嫌な風味が広がる。どうやら、口内を切ったらしい。
(矜持だけは、)
まるで、カメラのシャッターを切るように、思考が白々と瞬く。
(わっちは、小鹿でありんす。そんな好かねえことをいいなんすな……)
目の前には、牢のような妓楼の座敷が浮かぶ。
艶やかな打掛、派手な化粧。
矜持の高い男娼・小鹿は煙管をふかしながら、艶然と廓言葉を操る。
どうやら、束の間、意識を失っていたらしい。
しろい頬を叩くように冷や水を浴びせられた。
「ぎゃっ」
そのぞっとするような冷たさに、頬を叩く痛みに悲鳴をあげる。
次に身体の痛みに呻いた。ひどく関節が軋み、殴打の痣が疼く。
自分が今、むごい現実にいることを理解して、小鹿は打ちひしがれた。
「お姫様、起きたか」
嘲笑の言葉が降ってくる。
悪意を持った男たちの前で、ひとりでいることが急に心もとなく思えた。
小鹿は、こどものような細い身体をかき抱いた。
そして、そのとき自分が衣服を身につけていないことに気がついた。
男たちの思惑、その賊心が恐ろしかった。
食料や貴金属を奪うことを躊躇わず、小鹿を嬲ることに抵抗がない。きっと、彼らは自分を殺すことも厭わないだろう。そう思うと臓腑が気持ち悪く、腹の底から冷えていく心地がした。
「貴重品や食料は持っていけば……いい。命だけは助けてくれないだろうか」
喘ぐようにそう言う。
初めて、小鹿が男たちに屈した瞬間だった。
「ははは、お前、自分の立場わかってんのか」
男のひとりがけたたましく笑う。
やがて、笑いは伝播した。
ざらざらとした耳障りな哄笑が空間に反響する。
「驚いたなあ。お前、バイオノイド……人形だろう」
小鹿の顔が色を失う。
「それも高級素体。よくできているな、ほとんど人間と変わりがないじゃないか」
男の言葉は、この数年間、小鹿が隠していた秘密を容赦なく、白日の元に晒す。
――――旅人として放浪し、自由を得るためにはバイオノイドであるという事実は、けして知られてはならないことだった。
この国において、バイオノイド(人造人間)に、自由は許されない。
培養槽で人工的につくられた生命体。人間に準じた生体と心を持つが、その扱いは愛玩動物と変わりない。労働力として使われる者、小鹿のように性産業に携わる者。
(ともかく、この国では人間が文化的な生活を送る礎として彼らの犠牲があった)
中でも小鹿のような高級素体になると、ほぼほぼ、生身の人間と姿かたち、言動が変わらないため外見上でヒトであるか否かを判別することは難しい。
そのため、太腿に個体識別のバーコードが刻印されている。それが見つからないかぎり――――現にこの数年、各地を放浪する旅人として、小鹿はひとりの「人間」として生きてきた。
だから、男たちの暴力、嘲笑は「人間」としての自尊心を砕き、否応にも自分は人形……バイオノイドであると突きつけられたも同然だった。
「味見したあと、売るか」
男のひとりが呟く。
その言葉にぞっと肌が粟立った。
刹那的に、暗い座敷の光景が脳裏に浮かぶ。
「嫌だ!」
思わず、叫んでいた。
自分は、小鹿という名を持ち、思考を有する。
例え、プログラムの延長だとしても感情があり、数十年という人生を過ごした。
物として扱われ、ささやかな人生を否定される……男たちの気まぐれでまた人に飼われるというのか。
そのような現実は許容しがたい。
「あああああっ!」
大きな瞳を見開き、がむしゃらに叫ぶ。
「気でも触れたか」
しかし、男は冷淡だった。
ぐ、と乱暴に髪を引っ張られる。
ぶちぶちと髪がちぎれる嫌な音がした。
「ぐ、うう……」
そのまま、引きずられ股間に顔を導かれる。
(いや……)
「はああ……最近は性欲処理もままならなかったからなあ」
ズボンのジッパーをずりさげる音が、無機質に響く。
蒸れた雄の臭い。
不快だと思うのに、バイオノイドとしての性から、どうにも身体の奥が落ち着かない。
まるで、強制的に官能を引き出されるような。
「おら、咥えろ」
にわかに膨張したペニスを目前につきつけられる。
「あ、あ……」
小鹿は、呆然と唇を開いたままだった。
黒い空洞からぽたぽたと唾液が滴る。
しばらく性交はしていないというのに、小鹿の身体は鮮明に愛玩具であったときの記憶を覚えていた。
膨らんだペニスが咥内を満たす。容赦なく、喉奥を穿ち……やがて、痙攣する。そして、喉の粘膜にザーメンを叩きつけるのだ……そんな場面を思い出しながら、股を濡らしていた。
「ほら、しゃぶれよ。欲しくてたまらないんだろう」
束の間、小鹿は躊躇った。
(そんなはしたない真似……)
矜持の高さからの逡巡であった。
しかし、ひどく喉が渇いているように、口がペニスを欲していた。
飢えた犬のように口から唾液を溢れさせている有様。
「物欲しげな顔しやがって」
「むう、うううっ!」
乱暴に頭をたぐりよせられ、一息にペニスを咥えさせられる。
その瞬間、色鮮やかな悦び、渇望を満たされた幸福感に身体が陶酔する。
滲むカウパー腺液が甘露のように舌を濡らす。
「んう、う、う……」
自ら鈴口に唇を重ね、カウパー腺液を啜る。
「はっ、さすが……うめえな」
男は荒い呼吸をこぼした。
小鹿の小さな頭蓋をたぐりよせては、ピストンする。
しかし、荒々しい行為にも彼は怯まない。
それどころか、小鹿は精液を搾りとろうと性技を駆使する。そこにはブランクなど感じさせない。
口を窄め、オナホールよろしく強くペニスに吸いつく。
喉奥のやわらかな箇所で敏感な亀頭を扱く。
手のひらでずっしりと重い睾丸をこねくりまわず……。
そのような自分の行動を、どこかで冷静な自分が俯瞰している。
気持ちが悪い――――自らの媚態はひどく生々しく映った。
「んむ、んちゅ……ぅ、ん」
深く、男の性器を咥える。
「うあ、こいつの口やべえ……いく」
男が身じろぎした。
しかし、その光景は遠い。
まるで、罪人のように、小鹿は男たちに連れられた。
コンクリートが打ちっぱなしになっている広間に、放られる。
「……っ、」
その際、強か身体を床に打ちつけた。
冷えたコンクリートの感触にぞっと身が竦む。小鹿はかたいコンクリートの上で凍えていた。
男たちは、そんな小鹿の様子を見下ろしている。
いやに粘つき、澱んだ目、目、目。
小鹿は、荒んだ視線に晒されることに怖じたものの、おくびにはださない。
鋭い眼差しで男たちをねめつけた。
「こいつ……!」
男が激し、鳩尾に蹴りをいれた。
身体が海老のように跳ねた。ぐう、と喉が奇妙な音をたてた。
「は、はぐ……」
(馬鹿、だ)
刹那的に、そのような考えが過る。
男たちに対する敵意もさることながら、自嘲がこみあげた。
今まさに嬲られ、殺されるかもしれない……という状況にありながら、つまらない矜持を捨てられない自分の愚かさがおかしかった。
身を丸めて、暴力のおわりを待った。
ボールのように背を蹴られる度、みしみしと華奢な骨が嫌な音をたてて、軋む。
衝撃に身体が、たわむ。
髪をつかまれ、強制的に顔を露わにされる。
その顔が生意気だと言われ、ますます暴力は激しくなる。
顔を打擲され、身体が痣だらけになるまで蹴られる……おわりがあるはずの暴力だがはてがない。
口の中に鉄さびめいた嫌な風味が広がる。どうやら、口内を切ったらしい。
(矜持だけは、)
まるで、カメラのシャッターを切るように、思考が白々と瞬く。
(わっちは、小鹿でありんす。そんな好かねえことをいいなんすな……)
目の前には、牢のような妓楼の座敷が浮かぶ。
艶やかな打掛、派手な化粧。
矜持の高い男娼・小鹿は煙管をふかしながら、艶然と廓言葉を操る。
どうやら、束の間、意識を失っていたらしい。
しろい頬を叩くように冷や水を浴びせられた。
「ぎゃっ」
そのぞっとするような冷たさに、頬を叩く痛みに悲鳴をあげる。
次に身体の痛みに呻いた。ひどく関節が軋み、殴打の痣が疼く。
自分が今、むごい現実にいることを理解して、小鹿は打ちひしがれた。
「お姫様、起きたか」
嘲笑の言葉が降ってくる。
悪意を持った男たちの前で、ひとりでいることが急に心もとなく思えた。
小鹿は、こどものような細い身体をかき抱いた。
そして、そのとき自分が衣服を身につけていないことに気がついた。
男たちの思惑、その賊心が恐ろしかった。
食料や貴金属を奪うことを躊躇わず、小鹿を嬲ることに抵抗がない。きっと、彼らは自分を殺すことも厭わないだろう。そう思うと臓腑が気持ち悪く、腹の底から冷えていく心地がした。
「貴重品や食料は持っていけば……いい。命だけは助けてくれないだろうか」
喘ぐようにそう言う。
初めて、小鹿が男たちに屈した瞬間だった。
「ははは、お前、自分の立場わかってんのか」
男のひとりがけたたましく笑う。
やがて、笑いは伝播した。
ざらざらとした耳障りな哄笑が空間に反響する。
「驚いたなあ。お前、バイオノイド……人形だろう」
小鹿の顔が色を失う。
「それも高級素体。よくできているな、ほとんど人間と変わりがないじゃないか」
男の言葉は、この数年間、小鹿が隠していた秘密を容赦なく、白日の元に晒す。
――――旅人として放浪し、自由を得るためにはバイオノイドであるという事実は、けして知られてはならないことだった。
この国において、バイオノイド(人造人間)に、自由は許されない。
培養槽で人工的につくられた生命体。人間に準じた生体と心を持つが、その扱いは愛玩動物と変わりない。労働力として使われる者、小鹿のように性産業に携わる者。
(ともかく、この国では人間が文化的な生活を送る礎として彼らの犠牲があった)
中でも小鹿のような高級素体になると、ほぼほぼ、生身の人間と姿かたち、言動が変わらないため外見上でヒトであるか否かを判別することは難しい。
そのため、太腿に個体識別のバーコードが刻印されている。それが見つからないかぎり――――現にこの数年、各地を放浪する旅人として、小鹿はひとりの「人間」として生きてきた。
だから、男たちの暴力、嘲笑は「人間」としての自尊心を砕き、否応にも自分は人形……バイオノイドであると突きつけられたも同然だった。
「味見したあと、売るか」
男のひとりが呟く。
その言葉にぞっと肌が粟立った。
刹那的に、暗い座敷の光景が脳裏に浮かぶ。
「嫌だ!」
思わず、叫んでいた。
自分は、小鹿という名を持ち、思考を有する。
例え、プログラムの延長だとしても感情があり、数十年という人生を過ごした。
物として扱われ、ささやかな人生を否定される……男たちの気まぐれでまた人に飼われるというのか。
そのような現実は許容しがたい。
「あああああっ!」
大きな瞳を見開き、がむしゃらに叫ぶ。
「気でも触れたか」
しかし、男は冷淡だった。
ぐ、と乱暴に髪を引っ張られる。
ぶちぶちと髪がちぎれる嫌な音がした。
「ぐ、うう……」
そのまま、引きずられ股間に顔を導かれる。
(いや……)
「はああ……最近は性欲処理もままならなかったからなあ」
ズボンのジッパーをずりさげる音が、無機質に響く。
蒸れた雄の臭い。
不快だと思うのに、バイオノイドとしての性から、どうにも身体の奥が落ち着かない。
まるで、強制的に官能を引き出されるような。
「おら、咥えろ」
にわかに膨張したペニスを目前につきつけられる。
「あ、あ……」
小鹿は、呆然と唇を開いたままだった。
黒い空洞からぽたぽたと唾液が滴る。
しばらく性交はしていないというのに、小鹿の身体は鮮明に愛玩具であったときの記憶を覚えていた。
膨らんだペニスが咥内を満たす。容赦なく、喉奥を穿ち……やがて、痙攣する。そして、喉の粘膜にザーメンを叩きつけるのだ……そんな場面を思い出しながら、股を濡らしていた。
「ほら、しゃぶれよ。欲しくてたまらないんだろう」
束の間、小鹿は躊躇った。
(そんなはしたない真似……)
矜持の高さからの逡巡であった。
しかし、ひどく喉が渇いているように、口がペニスを欲していた。
飢えた犬のように口から唾液を溢れさせている有様。
「物欲しげな顔しやがって」
「むう、うううっ!」
乱暴に頭をたぐりよせられ、一息にペニスを咥えさせられる。
その瞬間、色鮮やかな悦び、渇望を満たされた幸福感に身体が陶酔する。
滲むカウパー腺液が甘露のように舌を濡らす。
「んう、う、う……」
自ら鈴口に唇を重ね、カウパー腺液を啜る。
「はっ、さすが……うめえな」
男は荒い呼吸をこぼした。
小鹿の小さな頭蓋をたぐりよせては、ピストンする。
しかし、荒々しい行為にも彼は怯まない。
それどころか、小鹿は精液を搾りとろうと性技を駆使する。そこにはブランクなど感じさせない。
口を窄め、オナホールよろしく強くペニスに吸いつく。
喉奥のやわらかな箇所で敏感な亀頭を扱く。
手のひらでずっしりと重い睾丸をこねくりまわず……。
そのような自分の行動を、どこかで冷静な自分が俯瞰している。
気持ちが悪い――――自らの媚態はひどく生々しく映った。
「んむ、んちゅ……ぅ、ん」
深く、男の性器を咥える。
「うあ、こいつの口やべえ……いく」
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しかし、その光景は遠い。
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