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0章 小鹿の旅
※エピローグ
エピローグ
「これしか……ないけど」
そう言って、男が差し出したのは、こどもの小遣い程度のコインだった。
「うん、いいよ」
件の監禁では、幸いにして機会を見つけて逃げだすことに成功した。
凌辱では、男たちの精液が枯れるまで繰り返し、犯され、嬲られた。
それは耐えがたい屈辱のはずだった。
実際、狂乱が終わったあと、小鹿は壊れた。
発情して、どうしようもないのだ。
ずっと、忘れていたバイオノイドとしての本能を思い出したからか、性欲に歯止めがきかない。
男のペニスがないと口がさみしくて、気が狂いそうになるのだ。
だから、私娼の真似事をして、僅かな金銭と引き換えに身体を売っている。
このときも自ら男を誘い、矜持など微塵たりとない値段で自分を売ろうとしていた。
「だから、いれて……」
小鹿は、そう言って下半身を露出した。
白桃のような艶やかな尻が露わになる。
「うわ、やわらけえなあ」
男の手は、ねちねちとしつこく尻を撫でた。
「ん、ん……焦らさないでえ……」
小鹿は、いたずらから逃れようと尻を振る。
その間の抜けた様子が、どうやら、男の劣情を煽ったらしい。
すぐに男は、小鹿に覆い被さって、後孔に性器を挿入した。
粘液にまみれたペニスが、ぬる、と一気に肉壺にのみこまれる。
(今日のおちんちん、小さい……)
そんな不満が頭を過る。
だが、男は一心不乱に腰を振る。強いて、良い点をあげるとするのならば、ペニスがかたく、ピストンがはやいところか。膨らんだ亀頭がぐりぐりと前立腺を集中的に抉るのが気持ち良い。
「んー、ん、ん……っ」
小鹿は、自らの指に噛みついた。
「ほれほれ、気持ちいいか」
男は、下卑た言葉を口にしながら、夢中で律動した。
そのうち、男が体内に射精をする。
小鹿も射精した。
いつの間にか、男はいなくなっており、今度は若い男が、札を握らせ、性交を強請った。
あの日以来、小鹿はそんな自堕落な生活を送っている。
寝食を忘れてセックスに没頭し、服はぼろ同然。浮浪者然とした有様だ。
明日、生きることを考えるよりも、目先の快楽ばかり追いかけている。
こんな自分を、芙蓉はどう思うか。
久しく、フヨウプログラムを起動した。
暗転のディスプレイに映った自分はかわいそうなほど、荒んだ顔つきをしている。
『お久しぶりですね、御主人様』
フヨウプログラムは、楚々として微笑んでいる。
『お会いしたかったです』
立体映像に映し出される「友人」の姿は以前も今も、そして、これからも変わりがない。
「芙蓉、」
声が震えた。
吐き出した呼気はザーメンの臭いがする。
『…………御主人様、』
フヨウプログラムが、芙蓉の色をした瞳を見開いた。
『海に行きたいですね』
それから、慈愛の満ちた表情でそんなことを言う。
その言葉に胸が詰まった。
「海……」
小鹿とフヨウプログラムの前には、大きな青が広がっている。
それは広大な空の青と……小鹿には想像もつかない大きな水たまりの青。
そこに境目はあるのだろうか。
『ええ。私も見たいです』
小鹿は吼えた。
そして、携帯端末の電源を乱暴に落とした。
青年の姿はぶつ、と消えた。
「さようなら、芙蓉」
また明日会うように、軽やかな調子で、小鹿は友人に別れを告げた。
歩けど、歩けど、スラム街の灰色の色彩が広がっているばかり。
お腹は空いているし、足は疲れているけれど、小鹿は歩く。
もう何日もさまよっているけれど、景色は変わらない。
もしかしたら、同じ箇所ばかりをぐるぐると回りつづけているだけなのかもしれなかった。はたして、この街に出口はあるのだろうか。
「小鹿、」
不意に耳朶をくすぐられた。呼気かと思い、振り返ったが、誰もいない。
その声は懐かしくて、誰よりもやさしかった。
叶うことならば、また小鹿、と呼ばれたかった。
叶うことならば、またあの笑顔を見たかった。
しかし、それらが叶わないことは、彼自身よく知っている。
彼は笑みをつくった。
思うように表情筋が動かないため、ひきつった歪な笑みである。
かつて、男たちの心を蕩けさせ、魅了させた極上の笑みとは程遠い。
けれど、彼は笑う。
「あ、きれい」
ひとりごとを洩らす。遠くにきらきらと澄んだ青の色を見た気がした。それはまばゆく、ひどく小鹿の心をひどく惹きつけた。
光を目指して小鹿はかけた。
きっと、あの場所に小鹿たちの友人はいる……そんな気がしてならなかった。
(時代は終末世界、これはとある物語のエピローグである)
「これしか……ないけど」
そう言って、男が差し出したのは、こどもの小遣い程度のコインだった。
「うん、いいよ」
件の監禁では、幸いにして機会を見つけて逃げだすことに成功した。
凌辱では、男たちの精液が枯れるまで繰り返し、犯され、嬲られた。
それは耐えがたい屈辱のはずだった。
実際、狂乱が終わったあと、小鹿は壊れた。
発情して、どうしようもないのだ。
ずっと、忘れていたバイオノイドとしての本能を思い出したからか、性欲に歯止めがきかない。
男のペニスがないと口がさみしくて、気が狂いそうになるのだ。
だから、私娼の真似事をして、僅かな金銭と引き換えに身体を売っている。
このときも自ら男を誘い、矜持など微塵たりとない値段で自分を売ろうとしていた。
「だから、いれて……」
小鹿は、そう言って下半身を露出した。
白桃のような艶やかな尻が露わになる。
「うわ、やわらけえなあ」
男の手は、ねちねちとしつこく尻を撫でた。
「ん、ん……焦らさないでえ……」
小鹿は、いたずらから逃れようと尻を振る。
その間の抜けた様子が、どうやら、男の劣情を煽ったらしい。
すぐに男は、小鹿に覆い被さって、後孔に性器を挿入した。
粘液にまみれたペニスが、ぬる、と一気に肉壺にのみこまれる。
(今日のおちんちん、小さい……)
そんな不満が頭を過る。
だが、男は一心不乱に腰を振る。強いて、良い点をあげるとするのならば、ペニスがかたく、ピストンがはやいところか。膨らんだ亀頭がぐりぐりと前立腺を集中的に抉るのが気持ち良い。
「んー、ん、ん……っ」
小鹿は、自らの指に噛みついた。
「ほれほれ、気持ちいいか」
男は、下卑た言葉を口にしながら、夢中で律動した。
そのうち、男が体内に射精をする。
小鹿も射精した。
いつの間にか、男はいなくなっており、今度は若い男が、札を握らせ、性交を強請った。
あの日以来、小鹿はそんな自堕落な生活を送っている。
寝食を忘れてセックスに没頭し、服はぼろ同然。浮浪者然とした有様だ。
明日、生きることを考えるよりも、目先の快楽ばかり追いかけている。
こんな自分を、芙蓉はどう思うか。
久しく、フヨウプログラムを起動した。
暗転のディスプレイに映った自分はかわいそうなほど、荒んだ顔つきをしている。
『お久しぶりですね、御主人様』
フヨウプログラムは、楚々として微笑んでいる。
『お会いしたかったです』
立体映像に映し出される「友人」の姿は以前も今も、そして、これからも変わりがない。
「芙蓉、」
声が震えた。
吐き出した呼気はザーメンの臭いがする。
『…………御主人様、』
フヨウプログラムが、芙蓉の色をした瞳を見開いた。
『海に行きたいですね』
それから、慈愛の満ちた表情でそんなことを言う。
その言葉に胸が詰まった。
「海……」
小鹿とフヨウプログラムの前には、大きな青が広がっている。
それは広大な空の青と……小鹿には想像もつかない大きな水たまりの青。
そこに境目はあるのだろうか。
『ええ。私も見たいです』
小鹿は吼えた。
そして、携帯端末の電源を乱暴に落とした。
青年の姿はぶつ、と消えた。
「さようなら、芙蓉」
また明日会うように、軽やかな調子で、小鹿は友人に別れを告げた。
歩けど、歩けど、スラム街の灰色の色彩が広がっているばかり。
お腹は空いているし、足は疲れているけれど、小鹿は歩く。
もう何日もさまよっているけれど、景色は変わらない。
もしかしたら、同じ箇所ばかりをぐるぐると回りつづけているだけなのかもしれなかった。はたして、この街に出口はあるのだろうか。
「小鹿、」
不意に耳朶をくすぐられた。呼気かと思い、振り返ったが、誰もいない。
その声は懐かしくて、誰よりもやさしかった。
叶うことならば、また小鹿、と呼ばれたかった。
叶うことならば、またあの笑顔を見たかった。
しかし、それらが叶わないことは、彼自身よく知っている。
彼は笑みをつくった。
思うように表情筋が動かないため、ひきつった歪な笑みである。
かつて、男たちの心を蕩けさせ、魅了させた極上の笑みとは程遠い。
けれど、彼は笑う。
「あ、きれい」
ひとりごとを洩らす。遠くにきらきらと澄んだ青の色を見た気がした。それはまばゆく、ひどく小鹿の心をひどく惹きつけた。
光を目指して小鹿はかけた。
きっと、あの場所に小鹿たちの友人はいる……そんな気がしてならなかった。
(時代は終末世界、これはとある物語のエピローグである)
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