バレエ・メカニック

相良柚月

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1章 芙蓉の物語

エピローグ

エピローグ

 妓楼は、周囲をぐるりとお歯黒どぶに囲まれた花街の一角にある。「人形館」という名の妓楼は好事家たちの人気を博していた。
「人形館」とは、その名のとおり、バイオノイドの男娼を集めた見世である。
 かつて、この国にあったとされる吉原遊郭の雅な趣を再現した建物及び、衣装をまとったあらゆる嗜好の美少年、美青年たちが傅く様は、今日日においては異様な、浮世離れした光景であろう。
 培養槽で育てられた人造人間であるところのバイオノイドは、きわめて、生身に近い反応、生体を持つが、彼らは、法の元で愛玩動物に準じた扱いと決められている。当然、人権の類は認められていない。人間の嗜好にあわせた美貌に、絶対服従を徹底した愛玩動物として、彼らは親しまれていた。
 世間的に、人間より下等にあたるバイオノイドを金で買い、性的に搾取するのは非人道的、アブノーマルとされていた。しかし、艶めかしい悪夢のような桃源郷として、一部の好事家たちには受け、通い詰めるものは少なくない。
 だからこそ、現代においてこのような形で商売として成り立っているのだ。
 さて、例の黒橡の髪、芙蓉の色をした瞳を持つ美青年は妓楼・人形館にいた。
 この物語は、バイオノイドの男娼である芙蓉が、自らの数奇な人生を回顧する備忘録である。遠い記憶の波間に忘れられた過去は、語られるときを静かに待っている。
 よって、この物語は綴られていく。
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