冷徹社長と完璧秘書、二人きりの“業務報告”は蜜の味

どえろん

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第12話:宣戦布告の“記者会見”と、禁断の果実

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 橘本家からの帰り道、俺たちの間にあったのは絶望ではなかった。
 それは、静かで、しかしどこまでも硬質な“覚悟”だった。
 母が、そして橘家という旧弊な権威が“力”で俺たちをねじ伏せようとするのなら、こちらも現代の“力”で対抗するまでだ。

 俺のペントハウスに戻るなり、俺はPCを開き、数人の人物に短いメッセージを送った。
『力を貸してほしい』
 それは、俺が社長として培ってきた、最強のカード。マスコミ、金融、政界に広がる、俺自身の人脈だった。

「蓮さん……何を?」
「記者会見を開く」

 俺の言葉に、雫は息を呑んだ。

「古賀会長との一件で、マスコミは俺のスキャンダルを嗅ぎつけている。母も、そこを突いてくるはずだ。ならば、先手を打つ」
「ですが、そんなことをすれば……蓮さんのプライベートが、世間に……」
「構わない。俺は、お前との関係を隠すつもりも、恥じるつもりもないと、世間に宣言する。そして、同時に発表する。……グローバル・ネクサス社との提携を活かした、新会社の設立をな」

 それが、俺の描いた逆転の一手だった。
 橘家の支配下にある、株式会社T・I・S。その“器”を捨て、俺と雫、そして俺を信じてくれる仲間だけで、全く新しい城を築く。
 橘の名も、旧弊な権力も、全てを捨て去り、ゼロから始める。
 それは、母への、そして俺を縛り付ける全ての過去への、宣戦布告だった。

「……無茶です」

 雫が、震える声で言った。

「そんなことをすれば、橘家だけでなく、古賀会長も黙ってはいません。あらゆる方面から、蓮さんを潰しにかかるでしょう。……成功する保証なんて、どこにも……」
「保証はある」

 俺は彼女の肩を掴み、その瞳をまっすぐに見つめた。

「お前が、隣にいる。それが、俺の唯一で、絶対の保証だ」

 その言葉に、彼女の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
 しかし、それはもう、不安や悲しみの涙ではなかった。

「……はい。わたくしが、蓮さんを、世界一の男にしてみせます」

 雫はそう言うと、自らのブラウスのボタンに手をかけた。

「え……?」
「決戦の前には、景気づけが必要です。……蓮さん、わたくしを、あなたの“力”にしてください」

 彼女はゆっくりと、一枚、また一枚と衣服を脱ぎ捨てていく。
 やがて、生まれたままの姿になった彼女は、少し恥ずかしそうに、しかし挑むような瞳で俺を見つめた。

「蓮さんがこれから戦うのは、魑魅魍魎が跋扈する、欲の世界です。ならば、あなたも“鬼”にならなければならない。……わたくしが、あなたを鬼にして差し上げます」

 彼女はそう言うと、俺の前にひざまずいた。
 そして、これから始まる戦いの儀式のように、俺の昂りに、そっと唇を寄せる。

「あっ……♡」
「これは、ただの交わりではありません。わたくしの魂を、あなたの身体に注ぎ込む、“契約”の儀式。わたくしの全てを喰らい、あなたは……神をも殺す鬼となるのです」

 それは、今までで一番、背徳的で、官能的な奉仕だった。
 彼女は俺をただ悦ばせるのではない。俺の奥底に眠る、野心、闘争本能、そして破壊衝動を、その舌で、唇で、巧みに引きずり出していく。
 まるで、禁断の果実を食らうように。

「もっと……もっとです、蓮さん……♡ わたくしを喰らい、もっと強く、もっと貪欲になって……♡」

 俺は、もはや理性を保ってはいられなかった。
 彼女を抱き上げ、社長室の窓ガラスにその背中を押し付ける。眼下には、これから俺が戦うことになる、東京の夜景が広がっていた。

「雫……っ! お前は、俺の女神か、悪魔か……!」
「どちらでもありません。わたくしは、あなたの“共犯者”です」

 俺たちは、夜景という観衆の前で、激しく、獣のように求め合った。
 それは、愛の交歓というよりは、決戦前に交わされる、血の契りに近かった。
 互いの魂を喰らい合い、一つになることで、俺たちは人を超えた存在になろうとしていた。

 何度も絶頂を迎え、朝日が昇る頃。
 俺たちは、疲れ果て、しかし不思議なほどの高揚感の中で、裸のまま抱きしめ合っていた。

 俺の腕の中で、雫が静かに呟く。

「……もう、何も怖くありませんね」
「ああ」

 俺は、窓の外で白み始めた空を見つめた。

「世界中の全てを、敵に回そう」

 ――そして、運命の記者会見の日。
 無数のフラッシュが焚かれる中、俺はマイクの前に立った。隣には、凛とした表情の雫がいる。

 俺は、全てのカメラに向かって、はっきりと宣言した。

「本日をもって、株式会社T・I・Sの社長を辞任し、橘家との縁を切ることを、ここに宣言します。そして、私の生涯のパートナーである、水瀬雫と共に、新会社『ネオ・フロンティア』を設立いたします!」

 会場が、どよめきと興奮の渦に包まれる。
 それは、旧世代への訣別と、新時代の幕開けを告げる、産声だった。
 俺たちの最後の戦いが、今、始まった。

【続く】
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