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第14話:反撃の狼煙と、祝杯の代わりに注ぐもの
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アラン・リチャーズからのメッセージは、干上がった大地に降る恵みの雨だった。
『君たちの“城”の話を聞いた。面白いじゃないか。一つ、仕事を頼みたい』
短い文面には、明らかに面白がっている、あの老獪な男の顔が透けて見えた。
「……雫、見ろ」
俺は、まだ愛の余韻で潤む彼女に、携帯の画面を見せた。
雫は目を見開き、そして、信じられないというように何度もそのメッセージを読み返す。
「アランさんが……仕事を?」
「ああ。橘家でも、古賀会長でもない。俺たち『ネオ・フロンティア』に、だ」
「……やりましたね、蓮さん!」
彼女は心の底から嬉しそうに微笑み、俺の首にぎゅっと抱きついた。
その温もりと重みが、俺たちが決して孤独ではないという事実を、何よりも雄弁に物語っていた。
翌朝、オフィスには久しぶりに活気が戻っていた。
アランから正式に依頼された仕事――それは、彼の会社が極秘に進める次世代AIのセキュリティシステム開発だった。
橘家も古賀会長も手を出せない、シリコンバレーの最深部。その牙城の一角を、俺たちが任される。
それは、金銭的な価値以上に、俺たちの技術力と未来を、アランが認めたという証だった。
「マジかよボス! アラン・リチャーズ直々の仕事だなんて!」
「これで、俺たちの力を世界に示せる……!」
田中をはじめ、エンジニアたちは興奮を隠しきれない様子で、早速開発に取り掛かる。
佐藤たち営業チームも、この実績を武器に、新たな取引先を開拓しようと息巻いていた。
小さな城に、確かな光が灯った瞬間だった。
しかし、祝杯をあげるには、まだ早すぎた。
アランからの仕事は、俺たちの希望であると同時に、敵にとっては最後の息の根を止めるための格好の的となる。
案の定、すぐに妨害が始まった。
大規模なサイバー攻撃、主要メンバーへの執拗なヘッドハンティング、そして、根も葉もない噂を流すネガティブキャンペーン。
敵は、俺たちがこのプロジェクトを成功させることを、死に物狂いで阻止しにかかってきた。
「……くそっ!」
深夜のオフィスで、俺はモニターを殴りつけたい衝動に駆られた。
敵のサイバー攻撃は、想像以上に巧妙かつ執拗で、開発は遅々として進まない。アランが提示した納期は、刻一刻と迫っていた。
「……蓮さん」
いつの間にか背後に立っていた雫が、そっと俺の肩に手を置いた。
「少し、飲みませんか。祝杯はまだ早いですが、決起集会ということで」
彼女が差し出したのは、高級なシャンパンではなく、コンビニで買ってきたであろう缶ビールだった。
それが、今の俺たちの現実であり、そして何よりも心地よかった。
俺たちは、誰もいなくなったオフィスの床に、並んで座り込んだ。
カシュ、という小気味良い音を立ててプルタブを開け、無言でビールを流し込む。
冷たい液体が、火照った頭と、張り詰めた神経を少しだけ和らげてくれた。
「……勝てるかな」
弱音が、不意に口をついて出た。
雫の前で、初めて見せる弱さだったかもしれない。
彼女は何も言わず、ただ俺の肩にこてんと頭を乗せてきた。
「勝てますよ」
「……」
「わたくしが、勝たせますから」
その静かで、しかし絶対的な確信に満ちた声に、俺は救われる思いがした。
俺たちはしばらく、ただ黙って、互いの温もりを感じながらビールを飲んだ。
やがて、空になった缶を床に置くと、雫が俺の膝の上に、するりと移動してきた。
そして、俺のネクタイを、挑発的に、ゆっくりと緩め始める。
「……雫?」
「祝杯は、まだ早いんですよね?」
彼女は、いたずらっぽく微笑んだ。
「でしたら、祝杯の代わりに……蓮さんの“勝利への渇望”を、わたくしに注いでください。わたくしの身体を杯にして、あなたの野心を、一滴残らず飲み干してあげます」
その言葉は、どんな酒よりも、俺を酩酊させた。
ここは戦場だ。だが、この女がいる限り、俺は何度でも蘇る。
俺は彼女を抱きかかえ、オフィスの中心に置かれた、まだ真新しい会議テーブルの上へと運んだ。
ここは、俺たちの城の中心。作戦を練り、未来を語る、神聖な場所。
「あっ……♡ ここは、みんなの……」
「だから良い。全員の夢と希望が詰まったこの場所で、お前と一つになる。……俺たちの勝利を、ここに誓うんだ」
俺は彼女のブラウスをはだけさせ、現れた豊かな双丘に顔をうずめた。
ミルクのような甘い香りが、俺の最後の理性を焼き切る。
「蓮さん……♡ もっと……わたくしを、あなたの色に染めて……♡」
俺は彼女の脚を大きく開かせ、反撃の狼煙を上げるように、俺の全てを、彼女の一番奥深くへと突き立てた。
「あ“ぁあああーーーーーっっ♡♡♡」
それは、今までで一番、力強い交わりだった。
絶望を希望に変えるための、起死回生の一手。
テーブルが、俺たちの激しい律動に合わせて、ギシギシと悲鳴を上げる。
だが、それはやがて、勝利を告げるファンファーレのように、オフィスに響き渡った。
「勝つぞ、雫……!」
「はい……っ♡ あなたと、一緒なら……っ♡♡」
絶頂の瞬間、俺は祝杯の代わりに、俺の魂の全てを、彼女という名の聖杯に注ぎ込んだ。
――その時、鳴りを潜めていた敵のサイバー攻撃が、ピタリと止んだ。
そして、入れ替わるように、俺たちのシステムが、逆に敵のサーバーの深層部へと侵入していく。
モニターを見ていた田中が、興奮した声で叫んだ。
「ボス! 敵の攻撃アルゴリズムを逆解析して、カウンターハックに成功しました!奴らの情報、丸裸です!」
それは、奇跡のような逆転劇の、本当の始まりだった。
【続く】
『君たちの“城”の話を聞いた。面白いじゃないか。一つ、仕事を頼みたい』
短い文面には、明らかに面白がっている、あの老獪な男の顔が透けて見えた。
「……雫、見ろ」
俺は、まだ愛の余韻で潤む彼女に、携帯の画面を見せた。
雫は目を見開き、そして、信じられないというように何度もそのメッセージを読み返す。
「アランさんが……仕事を?」
「ああ。橘家でも、古賀会長でもない。俺たち『ネオ・フロンティア』に、だ」
「……やりましたね、蓮さん!」
彼女は心の底から嬉しそうに微笑み、俺の首にぎゅっと抱きついた。
その温もりと重みが、俺たちが決して孤独ではないという事実を、何よりも雄弁に物語っていた。
翌朝、オフィスには久しぶりに活気が戻っていた。
アランから正式に依頼された仕事――それは、彼の会社が極秘に進める次世代AIのセキュリティシステム開発だった。
橘家も古賀会長も手を出せない、シリコンバレーの最深部。その牙城の一角を、俺たちが任される。
それは、金銭的な価値以上に、俺たちの技術力と未来を、アランが認めたという証だった。
「マジかよボス! アラン・リチャーズ直々の仕事だなんて!」
「これで、俺たちの力を世界に示せる……!」
田中をはじめ、エンジニアたちは興奮を隠しきれない様子で、早速開発に取り掛かる。
佐藤たち営業チームも、この実績を武器に、新たな取引先を開拓しようと息巻いていた。
小さな城に、確かな光が灯った瞬間だった。
しかし、祝杯をあげるには、まだ早すぎた。
アランからの仕事は、俺たちの希望であると同時に、敵にとっては最後の息の根を止めるための格好の的となる。
案の定、すぐに妨害が始まった。
大規模なサイバー攻撃、主要メンバーへの執拗なヘッドハンティング、そして、根も葉もない噂を流すネガティブキャンペーン。
敵は、俺たちがこのプロジェクトを成功させることを、死に物狂いで阻止しにかかってきた。
「……くそっ!」
深夜のオフィスで、俺はモニターを殴りつけたい衝動に駆られた。
敵のサイバー攻撃は、想像以上に巧妙かつ執拗で、開発は遅々として進まない。アランが提示した納期は、刻一刻と迫っていた。
「……蓮さん」
いつの間にか背後に立っていた雫が、そっと俺の肩に手を置いた。
「少し、飲みませんか。祝杯はまだ早いですが、決起集会ということで」
彼女が差し出したのは、高級なシャンパンではなく、コンビニで買ってきたであろう缶ビールだった。
それが、今の俺たちの現実であり、そして何よりも心地よかった。
俺たちは、誰もいなくなったオフィスの床に、並んで座り込んだ。
カシュ、という小気味良い音を立ててプルタブを開け、無言でビールを流し込む。
冷たい液体が、火照った頭と、張り詰めた神経を少しだけ和らげてくれた。
「……勝てるかな」
弱音が、不意に口をついて出た。
雫の前で、初めて見せる弱さだったかもしれない。
彼女は何も言わず、ただ俺の肩にこてんと頭を乗せてきた。
「勝てますよ」
「……」
「わたくしが、勝たせますから」
その静かで、しかし絶対的な確信に満ちた声に、俺は救われる思いがした。
俺たちはしばらく、ただ黙って、互いの温もりを感じながらビールを飲んだ。
やがて、空になった缶を床に置くと、雫が俺の膝の上に、するりと移動してきた。
そして、俺のネクタイを、挑発的に、ゆっくりと緩め始める。
「……雫?」
「祝杯は、まだ早いんですよね?」
彼女は、いたずらっぽく微笑んだ。
「でしたら、祝杯の代わりに……蓮さんの“勝利への渇望”を、わたくしに注いでください。わたくしの身体を杯にして、あなたの野心を、一滴残らず飲み干してあげます」
その言葉は、どんな酒よりも、俺を酩酊させた。
ここは戦場だ。だが、この女がいる限り、俺は何度でも蘇る。
俺は彼女を抱きかかえ、オフィスの中心に置かれた、まだ真新しい会議テーブルの上へと運んだ。
ここは、俺たちの城の中心。作戦を練り、未来を語る、神聖な場所。
「あっ……♡ ここは、みんなの……」
「だから良い。全員の夢と希望が詰まったこの場所で、お前と一つになる。……俺たちの勝利を、ここに誓うんだ」
俺は彼女のブラウスをはだけさせ、現れた豊かな双丘に顔をうずめた。
ミルクのような甘い香りが、俺の最後の理性を焼き切る。
「蓮さん……♡ もっと……わたくしを、あなたの色に染めて……♡」
俺は彼女の脚を大きく開かせ、反撃の狼煙を上げるように、俺の全てを、彼女の一番奥深くへと突き立てた。
「あ“ぁあああーーーーーっっ♡♡♡」
それは、今までで一番、力強い交わりだった。
絶望を希望に変えるための、起死回生の一手。
テーブルが、俺たちの激しい律動に合わせて、ギシギシと悲鳴を上げる。
だが、それはやがて、勝利を告げるファンファーレのように、オフィスに響き渡った。
「勝つぞ、雫……!」
「はい……っ♡ あなたと、一緒なら……っ♡♡」
絶頂の瞬間、俺は祝杯の代わりに、俺の魂の全てを、彼女という名の聖杯に注ぎ込んだ。
――その時、鳴りを潜めていた敵のサイバー攻撃が、ピタリと止んだ。
そして、入れ替わるように、俺たちのシステムが、逆に敵のサーバーの深層部へと侵入していく。
モニターを見ていた田中が、興奮した声で叫んだ。
「ボス! 敵の攻撃アルゴリズムを逆解析して、カウンターハックに成功しました!奴らの情報、丸裸です!」
それは、奇跡のような逆転劇の、本当の始まりだった。
【続く】
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