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第8話
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ホテルの前で開いている店というのは、小さなバーがひとつ、レストランがひとつという夜に見ると、寂しいたたずまいだった。
チェックインのときに克之が話した言葉、私には一言も聞き取れない異国の言葉。彼が必死に勉強したのだという証。
そういえば、克之の大学での専攻は、スペイン語だったと今さながらにして思い出した。
彼のことわかっていたつもりだったのに、わかっていなかったのは、私の方かもしれなかった。
「また明日、朝9時にロビーで。今日はゆっくりと休むこと。ホテルから一歩もでないこと、オッケー?わかった?」
ゆっくり頷く。
よしっていう掛け声と共に紙袋を渡されて、彼は後ろ向きに手を振った。
「明日の朝……」
紙袋のなかには、サンドウィッチと炭酸抜きのウォータ。
今夜の食べ物として彼が調達してきてくれたのだ。
機内であまり動かない上に、でてきた機内食をきっちり食べてしまっていた貧乏性の私は、その食物をみて、ちょっとおなかに入る余裕がない。
さりげない彼の気持ちがここにサンドウィッチという形をかたどって目の前にある。
触れない彼を嫌だというほど感じてきた時間のなかではっきりと触れられるもの、それがうれしく思えた。
チェックインのときに克之が話した言葉、私には一言も聞き取れない異国の言葉。彼が必死に勉強したのだという証。
そういえば、克之の大学での専攻は、スペイン語だったと今さながらにして思い出した。
彼のことわかっていたつもりだったのに、わかっていなかったのは、私の方かもしれなかった。
「また明日、朝9時にロビーで。今日はゆっくりと休むこと。ホテルから一歩もでないこと、オッケー?わかった?」
ゆっくり頷く。
よしっていう掛け声と共に紙袋を渡されて、彼は後ろ向きに手を振った。
「明日の朝……」
紙袋のなかには、サンドウィッチと炭酸抜きのウォータ。
今夜の食べ物として彼が調達してきてくれたのだ。
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