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第 6 話
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「克之をお願いします」
日本語で丁寧に克之を何度も発音すると、電話の向こう側で息を呑む音が聞こえた。
「克之は今いません。学校行っています」
きれいな日本語、どこにも変なアクセントはなく、日本人なのだとわかった。
時差がすっかり頭から抜け落ちていた。
「彼は無事ですか? テロには巻き込まれていませんね?」
「大丈夫です。今日も学校へいっています」
「よかった。ありがとう」
そう言いながら、何故、彼の携帯にでることができる人がいるのか気がついたのは、電話を完全に切ったあとだった。
「あなたは誰ですか?って聞けばよかった・・・」
安否はわかったが、今度は彼女が誰なのか気になって仕方がない。
もう一度、電話をする勇気もなかった。
それからだった。
もうあきらめたはずなのに、何故こんなに胸が痛いのだろう。時間がたてば、彼のことも忘れられると思っていた。時間がたてばたつほど、会いたくなるのはどうしてなんだろう。
「共有した時間の長さの分だけ、彼を忘れるのにかかるよ」
言ったのは芽衣だった。
共有した時間の長さは、もう過ぎてしまっているのに、どうしてこんなに胸が熱くなるんだろう。きっと、私の中に不燃焼で残ったものが今燃えてるんだ。
そう思ってひとりで泣いて笑った。
だからこれは賭けだった。
彼が来なかったらもう二度とE-mailは送らないし、このスペインの地も踏まない。
それは彼に永遠に会わないことを意味していた。
日本語で丁寧に克之を何度も発音すると、電話の向こう側で息を呑む音が聞こえた。
「克之は今いません。学校行っています」
きれいな日本語、どこにも変なアクセントはなく、日本人なのだとわかった。
時差がすっかり頭から抜け落ちていた。
「彼は無事ですか? テロには巻き込まれていませんね?」
「大丈夫です。今日も学校へいっています」
「よかった。ありがとう」
そう言いながら、何故、彼の携帯にでることができる人がいるのか気がついたのは、電話を完全に切ったあとだった。
「あなたは誰ですか?って聞けばよかった・・・」
安否はわかったが、今度は彼女が誰なのか気になって仕方がない。
もう一度、電話をする勇気もなかった。
それからだった。
もうあきらめたはずなのに、何故こんなに胸が痛いのだろう。時間がたてば、彼のことも忘れられると思っていた。時間がたてばたつほど、会いたくなるのはどうしてなんだろう。
「共有した時間の長さの分だけ、彼を忘れるのにかかるよ」
言ったのは芽衣だった。
共有した時間の長さは、もう過ぎてしまっているのに、どうしてこんなに胸が熱くなるんだろう。きっと、私の中に不燃焼で残ったものが今燃えてるんだ。
そう思ってひとりで泣いて笑った。
だからこれは賭けだった。
彼が来なかったらもう二度とE-mailは送らないし、このスペインの地も踏まない。
それは彼に永遠に会わないことを意味していた。
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