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二章
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しおりを挟む「はああ???この私が?浮気をしていると??」
『浮気というか、駆け落ちしようとしていると思ったのかもねぇ。』
あの後、悪霊がブラッドファウル様の不可解な行動は、あの短冊を見て私が不貞をしていると勘違いしているんじゃないかと言ってきたのだ。
「何でこんなややこしいことに…!」
『んー、色々とタイミングが悪かったとしか…』
とにかく一刻も早く私の不名誉な誤解を解くべく、ブラッドファウル家に訪問する先触れをだした。
『明日訪問するんだっけ?先に手紙で用件を簡単に伝えとけば?誤解だってことも。』
「そんなの行ってから全部伝えればいいじゃない。…貴方どうしてそんなボロボロになってるのよ。」
『ああ、これ?頑固なおっさんに嫌がらせしてやろう思ったけどヘマしちゃって。でも、力はちょっと奪えたよ!』
悪霊が誇らしげな顔をして、黒い影ーー奪った力なのだろうーーをうにょうにょ動かしている。
王城の頑固なおじさまって絶対身分の高い人よね…。私知らない~っと。
※※※※※
翌日、ブラッドファウル公爵家を訪ねると、彼が直々に出迎えてくれた。
彼の家族は視察に出掛けたり、用事があったりで留守にしているらしい。屋敷には使用人も少なく、彼が応接間までエスコートしてくれた。
応接間のソファーに座ると、紅茶を手づから入れてくれ、少し驚いた。そんなキャラじゃ無さそうなのに。
あら!これ私の好きな種類お紅茶じゃない!センスがいいわね!
「それで、話ってなんだ?」
あらいけない、紅茶とお菓子に夢中になって忘れかけてたわ。
「あのね、あの短冊の事だけれど。お願い事をああやって括り付けるって風習を聞いて、試しにやってみただけなのよ。」
自分の妄想がバレるってこんなにも恥ずかしいのね…。悪霊が黒歴史とやらを思い出すたびに悶えている理由が分かった気がするわ。
「あれはお前の願いだったと?
…残念だったなぁ?婚約者がいるからその願いは叶わねえ。
いや…、その為に婚約破棄しにここに来たのか?」
あんれぇ?誤解がまだ解けてない気がするわ!?
「ちょっと待ちなさい!私、恋人なんて作って無いわよ!…妄想よ!妄想!それに婚約破棄だなんてするつもりもないわ!」
「隠すんじゃねーよ。最近お前の私室から、誰かと親しげに話す声が聞こえるってメイドが話していたぞ。密会してたんだろ?」
それ悪霊ー!しかも女よ!悪霊のせいでややこしい事になっちゃってるじゃないの!
「ちがっ…それ悪…」
なに…?なんだか、急に眠気が襲ってきたわ…。昨日は快眠だったはずなのに…。
ソファーに崩れるように倒れ込む私を、誰かが受け止める。
どろりと甘く蕩けた深紅の瞳と目が合った。
うっそりと笑い、私の頬を撫でる彼。
それが私が意識を手放す、最後に見た光景だった。
「おやすみ、ティナ。…俺のお姫様。」
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