HEAVEN B HELL【BL短編集】

野瀬 さと

文字の大きさ
40 / 88
第五章 あまのじゃくからの手紙

1

しおりを挟む
お元気ですか?

僕はとても元気です。
今、南の島にいます。

日々、透明な空と海に囲まれ身体が生き返っていくようです。

あれから、あなたはどう過ごしていますか?

僕の居ない日々は──






「やめた」

くしゃっと便箋びんせんを丸めて、ゴミ箱にシュートしてみた。
ヘリに当たって入らない。

「ちぇ…」

のそのそとたたみの床を這って、丸まった便箋を掴む。

「…なにやってんだろ…」

ぎゅっと便箋を握りしめると、目を閉じた。

「ばか…」







…これでよかったのかな…


毎日頭のなかで考えてるけど、一向に答えは出ない。

直人なおとー!御飯ー!」
「はあい!今行く!」

今度は、便箋をダンクシュートした。

階段を降りて一階に行くと、もう食堂には皆集まってた。
畳敷きの広い和室に丸いちゃぶ台がいくつか置いてある。
そのうちのひとつに、ぐるりとご飯が用意されている。

「遅い遅い。もう食べるよ?」
「ごめんて」

南の人はのんびり屋だと聞いてたけど、ここの家の人は違うようだ。
慌てて敷いてあった座布団に座ると、手を合わせる。

「はあい、いたーだきます!」
「いただきまーす」

皆で手を合わせて飯をかっこみ始めた。

ここは、台湾との国境近くにある南の島。
今年の始め、ここにきた。

何にもない島だけど、民宿は数軒あって。
身寄りのない僕は、お金だけは持ってたからデポジット代わりにいくらかまとめて渡して、この民宿に世話になってる。

「あ。ノリコさん」
「ん?なにさ」

ノリコさんはこの宿の女将さん。
大柄でいつもすっぴんで、長い髪を後ろにひとつに纏めてる。
浅黒く日焼けしてて、笑うと歯が白い。
いかにも南国のお母さんって感じ。

若い頃はさぞ綺麗だったんだろうという容姿なんだけど…
白飯をがーっとかっこむさまは、僕よりも男らしい。

僕は…色も白いし、ちびでなよっとしてるから…
とても敵わないなって感じがする。

宿代やどだい、足りてる?」
「よゆーよゆー」
「ほんと?渡してある分でいつまで居られるの?」
「後で計算する」
「そう言って半年以上教えてくれないじゃないか…」
「もお、本土ほんどの人ってうるさいのねえ…」
「おまえだって元々ナイチャー(本土の人)だろ!」

突然、この宿のあるじであるまつにいが割り込んできた。
ノリコさんの旦那さんでこの宿のご主人だ。

「うっさいわねー。後でやるって言ってんでしょ?」
「おまえの”後で”は、三百万光年先だなぁ…あがっ…」

ノリコさんは器用におはしで、隣に座ってる松にいの唇を挟み込んだ。
大柄な松にいの体がお箸に操られているように中腰になっている。

「あら…美味しそうな明太子があるわ…食べちゃうぞ?」
「ふがーっ!」

よっぽど痛いのか、松にいはもがいてる。
そんな二人を見ながら、松にいのお父さんとお母さんは爆笑してる。

ここ『民宿まつき』は、松にいとノリコさんでやってる民宿だけど、松にいのお父さんとお母さんも通いで手伝って4人でやってる。
松にいとノリコさんの一人息子さんは、沖縄本島の高校へ行っているので、夏休みが終わったら帰っていった。

今はちょうど夏シーズンが終わりかけで、今日は客が僕以外いなくて、全員で晩御飯を食べてる。

もう半年以上居るから、家族と変わんないんだって。

「ノリコさー。なんで俺にだけそんな凶暴なんだよ…」

やっとお箸から解放された松にいは、涙目だ。
山のような大男なのに、ノリコさんにはからきし弱い。

「あんたが鳥頭だからだ」
「ぶふうう…」

思わず噴き出したらゴチンと松にいにゲンコツを落された。

だって、松にいの髪型はにわとりのトサカみたいなんだもん…
こんなの笑っちゃうだろ…
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...