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最終章 願わくば花の下にて恋死なむ
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その夏は、色々と重なって…
父親が地方に赴任することになって、さあどうするとなった。
母親はパソコンがあればどこでも仕事ができる職だったから、ついていくことになった。
俺は大学があるし、姉貴は社会人をやっていたが専門学校に通い直したところだった。
両親にこの話を出されると、姉貴も付き合っていた人と結婚することになったと爆弾を落とした。
式は姉貴が働くようになってからと決めていて、とりあえず入籍して一緒に暮らすことになったと言う。
色々話し合って、家は持ち家だから両親が帰ってくるまで姉貴夫妻が預かることになった。
俺は常々大学の近くに住みたいと思っていたから、一人暮らしをすることになった。
さすがに新婚家庭に居られないって…邪魔したくねえもん。
家賃を入れて、月に15万の仕送りを貰えることになった。
追い出すような形になるから、姉貴からも多少お小遣いが出るっていうことだった。
早速、バイト日に学生課に行って賃貸を探すことにした。
「え?一人暮らしするの」
教授室の片付けはまだ続いている。
なにしろ、椎葉前教授の蔵書が多くて…
「ええ…これから遅くなることも増えるだろうし…大学の近くに住んでいたほうが便利なんで…」
「やっぱりこの辺に住もうと思ってるの?」
兼高教授は汗を拭きながら、俺を見下ろした。
「この辺りは…家賃が高いから…」
「ふうん…」
中央線沿線で、どこかいいところがないかな。
中島さんの家が隣の市だから、その辺もいいなと思っていた。
「…じゃあ、いいところがあるよ」
その日の夕方、兼高教授と一緒に大学を出た。
大学から10分ほど歩くと、閑静な住宅街に出た。
俺の家のあたりも住宅街だけど、下町だから道も狭いしガチャガチャしてて。
このあたりは静かで、同じ東京なのに全然雰囲気が違っていた。
「この先だよ」
通りから細い路地に入って暫く歩くと小さなアパートが見えた。
「ここは、学生課でも多分紹介してないとこじゃないかな…」
アパートの隣に民家があって、そこに兼高教授は入っていった。
「こんにちはー」
勝手に門扉を開けて訪いを入れると、奥の庭の方からおばあさんが出てきた。
「あらあ…誰かと思ったら、譲くんじゃない」
譲って…教授の下の名前だ。
「お久しぶりです」
「よく来たわねえ…上がって?」
「あ、その前に…この前、部屋空いてるって聞いたんだけど…」
教授の問いに、おばあさんはにっこり笑った。
「今、一つ空いてるわよ。二階の角のお部屋…」
「ほんと!?」
嬉しそうに俺を見た。
「ここね、俺が学生時代住んでたところなんだ」
「えっ?」
「この方は、大家さんで俺の親戚なんだ」
なんでも、不動産屋を通さずにひっそりとやっているらしい。
税金対策でやっているアパートらしく、家賃も格段に安かった。
「ご、5万…」
「譲くんの紹介なら、4万でもいいわよ?」
「ええっ!?」
とても魅力的だった。
このあたりは、極狭のアパートでも7万はすると聞いている。
「ほんと?おばさん。いいの?」
「いいのよ。あなたの時なんて貰ってなかったんだから」
「あっ…それは黙っておいて…」
「あら、ふふふ…」
なんか、いつも俺たちに教えてくれてるときの教授とは全然違って。
『親戚の末っ子の譲くん』の姿が容易に想像できた。
「でもいい店子さんだったわよ?お部屋もきれいに使ってくれていたし」
「あたりまえだよ!頑張ったもん」
「あら。威張りん坊ね?」
「おばさん…俺、もうアラフォーなんだよ…?」
いいなあ…
若い頃の教授、どんな風にここで暮らしていたんだろ。
教授が、ちょっと照れながら俺に顔を向けた。
「内見してみる?」
まるで不動産屋みたいに、兼高教授が言った。
父親が地方に赴任することになって、さあどうするとなった。
母親はパソコンがあればどこでも仕事ができる職だったから、ついていくことになった。
俺は大学があるし、姉貴は社会人をやっていたが専門学校に通い直したところだった。
両親にこの話を出されると、姉貴も付き合っていた人と結婚することになったと爆弾を落とした。
式は姉貴が働くようになってからと決めていて、とりあえず入籍して一緒に暮らすことになったと言う。
色々話し合って、家は持ち家だから両親が帰ってくるまで姉貴夫妻が預かることになった。
俺は常々大学の近くに住みたいと思っていたから、一人暮らしをすることになった。
さすがに新婚家庭に居られないって…邪魔したくねえもん。
家賃を入れて、月に15万の仕送りを貰えることになった。
追い出すような形になるから、姉貴からも多少お小遣いが出るっていうことだった。
早速、バイト日に学生課に行って賃貸を探すことにした。
「え?一人暮らしするの」
教授室の片付けはまだ続いている。
なにしろ、椎葉前教授の蔵書が多くて…
「ええ…これから遅くなることも増えるだろうし…大学の近くに住んでいたほうが便利なんで…」
「やっぱりこの辺に住もうと思ってるの?」
兼高教授は汗を拭きながら、俺を見下ろした。
「この辺りは…家賃が高いから…」
「ふうん…」
中央線沿線で、どこかいいところがないかな。
中島さんの家が隣の市だから、その辺もいいなと思っていた。
「…じゃあ、いいところがあるよ」
その日の夕方、兼高教授と一緒に大学を出た。
大学から10分ほど歩くと、閑静な住宅街に出た。
俺の家のあたりも住宅街だけど、下町だから道も狭いしガチャガチャしてて。
このあたりは静かで、同じ東京なのに全然雰囲気が違っていた。
「この先だよ」
通りから細い路地に入って暫く歩くと小さなアパートが見えた。
「ここは、学生課でも多分紹介してないとこじゃないかな…」
アパートの隣に民家があって、そこに兼高教授は入っていった。
「こんにちはー」
勝手に門扉を開けて訪いを入れると、奥の庭の方からおばあさんが出てきた。
「あらあ…誰かと思ったら、譲くんじゃない」
譲って…教授の下の名前だ。
「お久しぶりです」
「よく来たわねえ…上がって?」
「あ、その前に…この前、部屋空いてるって聞いたんだけど…」
教授の問いに、おばあさんはにっこり笑った。
「今、一つ空いてるわよ。二階の角のお部屋…」
「ほんと!?」
嬉しそうに俺を見た。
「ここね、俺が学生時代住んでたところなんだ」
「えっ?」
「この方は、大家さんで俺の親戚なんだ」
なんでも、不動産屋を通さずにひっそりとやっているらしい。
税金対策でやっているアパートらしく、家賃も格段に安かった。
「ご、5万…」
「譲くんの紹介なら、4万でもいいわよ?」
「ええっ!?」
とても魅力的だった。
このあたりは、極狭のアパートでも7万はすると聞いている。
「ほんと?おばさん。いいの?」
「いいのよ。あなたの時なんて貰ってなかったんだから」
「あっ…それは黙っておいて…」
「あら、ふふふ…」
なんか、いつも俺たちに教えてくれてるときの教授とは全然違って。
『親戚の末っ子の譲くん』の姿が容易に想像できた。
「でもいい店子さんだったわよ?お部屋もきれいに使ってくれていたし」
「あたりまえだよ!頑張ったもん」
「あら。威張りん坊ね?」
「おばさん…俺、もうアラフォーなんだよ…?」
いいなあ…
若い頃の教授、どんな風にここで暮らしていたんだろ。
教授が、ちょっと照れながら俺に顔を向けた。
「内見してみる?」
まるで不動産屋みたいに、兼高教授が言った。
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【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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