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最終章 願わくば花の下にて恋死なむ
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荷物を避けて、玄関から部屋に上がった。
入るとすぐ左手にはユニットバスがあって、短い廊下を抜けると部屋になってる。
なんとか寝場所を確保してあったベッドに俺を寝かせると、教授は麻のジャケットを脱いだ。
「とりあえず、水分摂って。横になっていなさい」
そう言って、買い物袋の中から水とパウチのゼリー飲料を取り出した。
大人しく水を飲んでいると、部屋についてるミニキッチンの前に教授は立った。
「台所用品はこれか…?」
キッチンの前に置いてあるダンボールを指差した。
「ええ…あの…」
「いいから、寝てろ」
しょうがないから横になってたら、手際よく教授はダンボールから物を出していく。
一人暮らし用に母親が買い揃えてくれたものばかりだ。
まだ真新しい鍋や冷蔵庫を、なんだか嬉しそうに見ている。
「懐かしいな…引っ越した頃、思い出す…」
独り言なのか、小さな声で呟いてる。
そんな教授の姿を不思議な思いで見ていた。
なんで…俺の家に教授がいるんだろ…
「ふふ…キッチン、こんなに小さかったか…?」
こんなに安心するんだろ…
「そりゃ…教授に出世して大きいキッチンのある部屋に住めるようになったからでしょ…」
「生意気言うな。教授になったってそんなに変わってないぞ。給料」
「はい……さー…せん…」
なんだか、ふわふわする…
教授と…自分の部屋で…普通の話、してるなんて…
夢見てるのかなあ…
気がついたら眠っていたみたいで。
いい匂いで目が覚めた。
「あ…」
「起きたか?ちょうどできたところだ」
教授が得意げな顔をして、持ってる片手鍋を差し出してきた。
熱気が、むわっと漂ってくる。
覗き込むと、鍋の中には卵粥ができていた。
「うわ…うまそう…」
「うまそうじゃなくて、うまいんだ」
「さーせん…」
「さ…起きて…」
小皿に取り分けてくれて、なんとか見つけ出したスプーンを添えてくれた。
雑誌の上に乗ってるのは、トレーが見つからないからだ。
「後で熱測れよ」
「ふあい」
一口、食べる。
ふんわりと温かい卵がとろけてる。
塩味の優しいお粥だった。
「うまい…」
「だろ?」
「ありがとうございます」
そういうと、兼高教授はちょっと複雑そうな顔をした。
なんだ…?
「ありがとう、なんて久しぶりに言われたな…」
「え?」
「気にしないでいいから…」
なんだろ
なんかひっかかる
でも今は、頭がぼーっとして…
よく考えることができなかった。
飯を食べ終えて薬を飲むと、またうつらうつらして…
カチャカチャと食器を洗う音を聞きながら、また眠ってしまった。
兼高教授の鼻歌が子守唄のようだった。
やっぱ、夢なんじゃないかなあ……?
次に目が覚めたらもう夕方で。
「あれ…」
部屋の中がちょっとだけ片付いていた。
床がだいぶ見えてる。
「え…?あれ…?なんで…?」
びっくりしてベッドに起き上がると、声がした。
「起きたか?」
開け放ったままの部屋のドアの方を見ると、ユニットバスから教授が出てきてびっくりした。
「うひゃあっ…」
「…なんだ?」
「え…あ、いや…夢じゃなかったんだ…」
なんだか夢を見ていたようで…
いい夢を見たなあなんて思っていたんだけど。
現実だった。
「ぷ…熱は…?」
「いえ…もう大丈夫ですから…」
そう言ってるのに、俺のおでこにまた手を当ててきた。
メガネ…してない。
やっぱり、目悪くないんだ。
もしかして、表情…隠すため…?
「ん。だいぶいいな」
「すいませんでした…」
「いや…いいんだ。久しぶりにここで過ごせて、懐かしくてね…」
本当に嬉しそうに兼高教授は微笑んだ。
その笑顔が…とても綺麗で…
思わず手を伸ばして頬に触れた。
「…遠藤…?」
「あっ…すいません…」
すぐに手を引っ込めた。
そのままベッドに横になると、タオルケットを被った。
心臓がありえないくらい早く打ってる
やばい…静まれ…
心臓の音、聞こえてしまう
入るとすぐ左手にはユニットバスがあって、短い廊下を抜けると部屋になってる。
なんとか寝場所を確保してあったベッドに俺を寝かせると、教授は麻のジャケットを脱いだ。
「とりあえず、水分摂って。横になっていなさい」
そう言って、買い物袋の中から水とパウチのゼリー飲料を取り出した。
大人しく水を飲んでいると、部屋についてるミニキッチンの前に教授は立った。
「台所用品はこれか…?」
キッチンの前に置いてあるダンボールを指差した。
「ええ…あの…」
「いいから、寝てろ」
しょうがないから横になってたら、手際よく教授はダンボールから物を出していく。
一人暮らし用に母親が買い揃えてくれたものばかりだ。
まだ真新しい鍋や冷蔵庫を、なんだか嬉しそうに見ている。
「懐かしいな…引っ越した頃、思い出す…」
独り言なのか、小さな声で呟いてる。
そんな教授の姿を不思議な思いで見ていた。
なんで…俺の家に教授がいるんだろ…
「ふふ…キッチン、こんなに小さかったか…?」
こんなに安心するんだろ…
「そりゃ…教授に出世して大きいキッチンのある部屋に住めるようになったからでしょ…」
「生意気言うな。教授になったってそんなに変わってないぞ。給料」
「はい……さー…せん…」
なんだか、ふわふわする…
教授と…自分の部屋で…普通の話、してるなんて…
夢見てるのかなあ…
気がついたら眠っていたみたいで。
いい匂いで目が覚めた。
「あ…」
「起きたか?ちょうどできたところだ」
教授が得意げな顔をして、持ってる片手鍋を差し出してきた。
熱気が、むわっと漂ってくる。
覗き込むと、鍋の中には卵粥ができていた。
「うわ…うまそう…」
「うまそうじゃなくて、うまいんだ」
「さーせん…」
「さ…起きて…」
小皿に取り分けてくれて、なんとか見つけ出したスプーンを添えてくれた。
雑誌の上に乗ってるのは、トレーが見つからないからだ。
「後で熱測れよ」
「ふあい」
一口、食べる。
ふんわりと温かい卵がとろけてる。
塩味の優しいお粥だった。
「うまい…」
「だろ?」
「ありがとうございます」
そういうと、兼高教授はちょっと複雑そうな顔をした。
なんだ…?
「ありがとう、なんて久しぶりに言われたな…」
「え?」
「気にしないでいいから…」
なんだろ
なんかひっかかる
でも今は、頭がぼーっとして…
よく考えることができなかった。
飯を食べ終えて薬を飲むと、またうつらうつらして…
カチャカチャと食器を洗う音を聞きながら、また眠ってしまった。
兼高教授の鼻歌が子守唄のようだった。
やっぱ、夢なんじゃないかなあ……?
次に目が覚めたらもう夕方で。
「あれ…」
部屋の中がちょっとだけ片付いていた。
床がだいぶ見えてる。
「え…?あれ…?なんで…?」
びっくりしてベッドに起き上がると、声がした。
「起きたか?」
開け放ったままの部屋のドアの方を見ると、ユニットバスから教授が出てきてびっくりした。
「うひゃあっ…」
「…なんだ?」
「え…あ、いや…夢じゃなかったんだ…」
なんだか夢を見ていたようで…
いい夢を見たなあなんて思っていたんだけど。
現実だった。
「ぷ…熱は…?」
「いえ…もう大丈夫ですから…」
そう言ってるのに、俺のおでこにまた手を当ててきた。
メガネ…してない。
やっぱり、目悪くないんだ。
もしかして、表情…隠すため…?
「ん。だいぶいいな」
「すいませんでした…」
「いや…いいんだ。久しぶりにここで過ごせて、懐かしくてね…」
本当に嬉しそうに兼高教授は微笑んだ。
その笑顔が…とても綺麗で…
思わず手を伸ばして頬に触れた。
「…遠藤…?」
「あっ…すいません…」
すぐに手を引っ込めた。
そのままベッドに横になると、タオルケットを被った。
心臓がありえないくらい早く打ってる
やばい…静まれ…
心臓の音、聞こえてしまう
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