232 / 475
第十六章 唾液研修
イケメン教師、校長に、脱ぎなさいと命じられる
しおりを挟む
小坂は指定された研修室の鍵を開けて入った。小会議室の一つだ。
今日は、各部会に分かれて少人数で実践的な研修をする予定になっていた。
小坂たちの学校は当番校なので、率先して準備をする必要があった。
校長から渡された指示書を見ながら机と椅子を動かしていると、ほかの教諭が二、三人部屋に入ってきた。
「お疲れ様です」
互いに挨拶する。
ほかの教諭たちはブルーシートを広げ、小坂が空けた床に敷き始めた。
小坂は指示書を見た。そんな指示書きはない。何をしているのだろう。
一人の比較的若い教員が小坂を見上げて何か言おうとした。もう一人がその教員をひじでつついた。すると若い方の教員は、咳払いして小坂から目をそらした。
いったい、何だというのだ。指示書を手に小坂は立ちすくんだ。
「すぐにわかりますよ」
作業の手を止めた他の教員が、小坂をいなすように言った。
作業が終わった。
扉が開き、校長が数人のベテラン教諭たちとともに研修室に入ってきた。
「お疲れ様です」
「今日は、よろしくお願いします」
などと挨拶をしている。
「全員集まったようなので、始めましょうか」
進行役らしき教諭が言うと、
「そうですね」
と皆がうなずいた。
小坂は指示書をめくる。「学校現場の危機管理に関する実践的指導及び訓練」と書いてある。これについても、小坂は事前に資料をあたってレポートを作成し、万端の準備をしてあった。
だが、どうも様子が違う。小坂はぼうぜんとする。
校長が小坂の手から書類を奪い机に投げ捨てた。
「え?」
乱暴に放り投げられた書類に目をやる。自分は何か間違ったことをしたのだろうか。ミスはないはずだ。何度も見返して書類を作った。緊急の知らせにも忘れず目を通すようにしている。
でも皆はブルーシートを敷いていた。自分はそんな準備を知らなかった。何か聞き漏らしていたのかもしれない。
皆は知っていて自分だけが知らない何かがある。その不手際を校長は怒っているのだ。どうしよう。昨夜、あんなに優しくしてもらったのに。
失望された。また見離されるかもしれない。当番校なのに一人だけ変更を知らず校長に恥をかかせてしまった。
人に聞こうか。
隣を見るが皆、小坂と目を合わせようとしない。
そうか。もう遅い。もう研修が始まる時刻を過ぎていた。今さら遅い。
これからの手順も知らずに自分はここに来たのだ。
昨夜、あんなに優しくしてもらったのに。早く休みなさいと気を使ってもらったのに。なのに自分は、また、こんな不手際をしてしまった。
部屋はシンとしている。小坂は、過ぎていく時間にいたたまれずに、校長の顔を見る。渋い表情をしている。怒っているのだろう。
自分はどうしたら。
「脱ぎなさい」
校長が口を開き小坂に命じた。小坂は耳を疑った。
今なんて?
今日は、各部会に分かれて少人数で実践的な研修をする予定になっていた。
小坂たちの学校は当番校なので、率先して準備をする必要があった。
校長から渡された指示書を見ながら机と椅子を動かしていると、ほかの教諭が二、三人部屋に入ってきた。
「お疲れ様です」
互いに挨拶する。
ほかの教諭たちはブルーシートを広げ、小坂が空けた床に敷き始めた。
小坂は指示書を見た。そんな指示書きはない。何をしているのだろう。
一人の比較的若い教員が小坂を見上げて何か言おうとした。もう一人がその教員をひじでつついた。すると若い方の教員は、咳払いして小坂から目をそらした。
いったい、何だというのだ。指示書を手に小坂は立ちすくんだ。
「すぐにわかりますよ」
作業の手を止めた他の教員が、小坂をいなすように言った。
作業が終わった。
扉が開き、校長が数人のベテラン教諭たちとともに研修室に入ってきた。
「お疲れ様です」
「今日は、よろしくお願いします」
などと挨拶をしている。
「全員集まったようなので、始めましょうか」
進行役らしき教諭が言うと、
「そうですね」
と皆がうなずいた。
小坂は指示書をめくる。「学校現場の危機管理に関する実践的指導及び訓練」と書いてある。これについても、小坂は事前に資料をあたってレポートを作成し、万端の準備をしてあった。
だが、どうも様子が違う。小坂はぼうぜんとする。
校長が小坂の手から書類を奪い机に投げ捨てた。
「え?」
乱暴に放り投げられた書類に目をやる。自分は何か間違ったことをしたのだろうか。ミスはないはずだ。何度も見返して書類を作った。緊急の知らせにも忘れず目を通すようにしている。
でも皆はブルーシートを敷いていた。自分はそんな準備を知らなかった。何か聞き漏らしていたのかもしれない。
皆は知っていて自分だけが知らない何かがある。その不手際を校長は怒っているのだ。どうしよう。昨夜、あんなに優しくしてもらったのに。
失望された。また見離されるかもしれない。当番校なのに一人だけ変更を知らず校長に恥をかかせてしまった。
人に聞こうか。
隣を見るが皆、小坂と目を合わせようとしない。
そうか。もう遅い。もう研修が始まる時刻を過ぎていた。今さら遅い。
これからの手順も知らずに自分はここに来たのだ。
昨夜、あんなに優しくしてもらったのに。早く休みなさいと気を使ってもらったのに。なのに自分は、また、こんな不手際をしてしまった。
部屋はシンとしている。小坂は、過ぎていく時間にいたたまれずに、校長の顔を見る。渋い表情をしている。怒っているのだろう。
自分はどうしたら。
「脱ぎなさい」
校長が口を開き小坂に命じた。小坂は耳を疑った。
今なんて?
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる