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第二十六章 麓戸と校長の邂逅
麓戸、神崎の家で、小坂のことを話す 2【挿絵あり】
しおりを挟む麓戸が、
「私は、小坂君が心配なんです。だから本当は側にいたいんです。同じ職場でいっしょに仕事ができる神崎先生がうらやましいです」
と言うと、神崎も、
「いやあ、小坂君を、いずれ若い誰かに取られるのかと思うと悲しいよ。男だけでなく、女に取られる可能性もあるからな」
と苦渋をにじませた。
「あいつ、女性と結婚して子どもが欲しいとか言ってますからね。バカじゃなかろうか。あんな変態の浮気者と結婚する女性なんているもんか。付き合うのだって、よほどの好きものでないと……」
麓戸は、我が意を得たりと、息巻いた。神崎校長は、そんな麓戸の意見を制するように、
「小坂君は容姿もいいし、万事スマートでそつなく見える。教員は安定した職だ。小坂君と結婚したい女性はたくさんいるだろうよ」
と言った。
「すぐ男と浮気して慰謝料請求されるのがオチじゃないですか」
麓戸は否定する。
「後ろの疼きを我慢できそうにないからな」
神崎は下卑た風に言う。
「そもそも、あいつ、女性となんかできないでしょう」
麓戸は次第に、ざっくばらんになりながら言う。小坂について、小坂をよく知る人と話すのは楽しい、とさえ感じた。
「よっぽど変態な女は別だけど」
そう付け加えながら、麓戸は自分の元妻のことを思い出していた。いまいましい。何だってあんなやつと。趣味が悪すぎる。
「ははは、麓戸君も口が悪いな。そんなことはないと思うぞ。何しろ小坂君は、イケメンだからねえ。小坂君さえその気になれば、いくらでも女は寄ってくるよ」
神崎は小坂をかばう。甘いなあ、と麓戸は思う。
「慰謝料請求されすぎて破産しても助けたくないです」
厳しくいかなきゃ、小坂のためにならない。
だが神崎校長は、
「そんなこと言って、麓戸君は、小坂君を助けてあげそうだがな」
と笑う。
「やめてください。甘やかしませんよ、私は」
自分でも小坂には甘いのを自覚しているからこそ厳しく、と自分で自分を戒める。
「それはどうかな。小坂君には、我々、甘々だと思うがね」
と神崎校長は笑う。
「ほんと、あいつは、たらしですよ」
麓戸は、憎まれ口を叩く。
「確かにね」
神崎も、しぶしぶのように同意した。
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