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第二十六章 麓戸と校長の邂逅
イケメン教師、麓戸の車で【挿絵あり】
しおりを挟む麓戸の車が停めてある駐車場に着いた。
「送ろう」
と、うながされて小坂は、麓戸の車の助手席に乗った。
麓戸が車のエンジンをかけ、周囲を確認して愛車を発車させる様子に、小坂は胸が痛いような気がした。昔を思い出した。麓戸と暮らしていた頃。懐かしいというには痛すぎる。でも、麓戸の横顔、美しい横顔をいつまでも見ていたかった。
麓戸が車のハンドルを握りながら、
「今日、悪照、合宿でいないけど家来るか?」
と、さりげなく聞いてきた。
ああ……。嬉しい……。でも切ない。息子のオテル君がいない時だけか。そう思うと悲しかった。
「シャワーしない麓戸さんとしたい」
小坂は、嬉しさを隠して駄々をこねるように無理を言った。嬉しさをあらわにしたら、幸せが逃げてしまいそうな気がしたからだ。だから、幸せに逃げられないように、気づかれないように、悲しげな面持ちを作ったままでいた。
「えぇ……」
麓戸は前を向いたまま、渋面を作った。
「僕はちゃんとシャワーしましたよ」
小坂は、身の潔白を証明するように、麓戸の横顔に言った。
「うぅん……」
麓戸は、渋い顔をする。
「神崎先生が舐めまわした身体だと思うと興奮します……」
もし麓戸が、神崎先生に無理矢理されたことを嫌がっているなら、自分がそれを全部舐め取って消してあげる。上書きして快感に変えてあげる。
「変わってんな」
麓戸が苦笑した。苦笑であっても笑みを見せてくれたのは嬉しい。
「ハルトくん可愛かったです」
小坂は言った。
「それやめろって」
麓戸は、本当に嫌そうに言うのだけれど、小坂は、
「僕の前には出てきてくれないんですね」
と執着する。
「出てこねえよ」
麓戸はあきれはてたように言う。
「どんな風にされたんですか? ベッドに入る前に」
興味本位もあるが、嫉妬も少し、何より麓戸が本気で嫌がっているのかが心配だった。
「痴漢みたいに身体を触りまくられたよ。舐めまわしたりディープキスされたり」
やはり、麓戸は、かなり嫌がっているようだが、どうしても、うらやましいという気持ちしか出てこない。
「いいなあ、僕もされたい」
と言ってしまった。
麓戸は、しょうがないなあ、と思ったのか、こいつに言っても無駄だと思ったのか、ため息をついた。そして、
「オデトは奥さんとしてただろう? すごい気持ちよさそうだったぜ?」
と小坂の方へ、話を転じた。
「えへへ……」
と小坂は照れ笑いした。
ちょうど麓戸のマンションの駐車場に着いたところだったので、車のエンジンを切って、
「なんだよ、こいつう」
と麓戸は、小坂の脇をくすぐって、ちょっかいを出してきた。
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