イケメン教師陵辱調教

リリーブルー

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第二十七章 小坂の過去

小坂の生い立ち。竹刀で打たれる

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 小坂は、父を知らなかった。小坂の幼いころに蒸発したからだ。
「おまえの父は、婿でありながら女をつくり家の金をくすねて逃げた。おまえは、その女の息子だ」
小坂は、祖父からそう聞かされた。
「だが、わしがおまえを家の跡取りとして養ってやるのだ。いいな」
小坂は黙って頷いた。
 小坂は、実の母のこともよく覚えていなかった。ただ懐かしく優しいかすかな気配と、それよりずっと強烈な見捨てられた恐怖と絶望と悲しみ、無力感……。どんなにあがいても埋められない苦しさ。小坂は、表現することも許されない悲しみを一人でじっと耐えてきた。
 小坂の母は小坂の幼いころに亡くなったらしい。母譲りの美貌……ということは、周囲からよくささやかれた。

 義母は、身体が弱いという名目で、離れの座敷で、いつも伏せっていた。父が、愛出人の母である愛人の女と逃げたことで、精神的に病んでいたのかもしれない。
 義母は、離れの座敷で、いつも自堕落に暮らしていた。家事はお手伝いの者にやらせて自分は昼間から男を引きこんでいた。

 祖父は愛出人が父親の虚弱な体質と懶惰な性格を受け継いでいるとして、愛出人の心身を鍛えなければいけないと言った。
 鍛錬と称して、毎朝、愛出人に庭で竹刀を振らせた。
 愛出人は井戸で夏はもちろんどんなに寒い雪の降るような冬の日も、心身を清めるという名目で水垢離をさせられた。
 祖父は、愛出人が逃げた両親の軟弱な性格を受け継いでいると嫌っていた。また愛出人の容姿が女のようだといって、同世代の者たちと比べて、愛出人を劣っているとして愛出人の優しく繊細な性格や真面目で賢い長所をけして認めることがなかった。

 愛出人の白くて細い身体には祖父の竹刀の跡が痣になっていくつもついていた。
 祖父の目は、竹刀を振り下ろすたびに異様な光を帯びた。まるで小坂の震える肩や白い肌に痣が刻まれるのを楽しむように、口元がかすかに歪む瞬間があった。
「これがお前の弱さを叩き直すのだ」
と祖父は言いながら、竹刀を握る手に力がこもりすぎていることに、小坂は気づいていた。それは鍛錬というより、別の何かを祖父が求めているようだった。
 竹刀が肌を打つたび、鋭い痛みが全身を貫いた。だが、繰り返されるその痛みの中で、小坂は奇妙な安堵を感じ始めていた。少なくとも、この瞬間だけは自分がここにいることを、誰かに認められている、ということを実感できた。  
 だから、痛みは嫌いではなかった。いや、嫌いになれない自分がいた。祖父の竹刀が残す痣は、母の気配も父の記憶も埋められない空虚を、一瞬だけ忘れさせてくれた。
 それが鍛錬というものだろうかと、ぼんやり思った。苦しくても耐えること。痛くてもつらくても。悲しくても孤独でも。ただ痛みに耐えること。それが強くなることなのだと、ただ黙って耐えた。
 竹刀の鍛錬前の庭の凍てつく空気。井戸水の冷たさ。小坂の身体的・精神的緊張は高まった。
 竹刀が身体に落ちる音は、乾いた薪が割れるような鋭さだった。冷たい汗が小坂の額を伝い、痣が熱を帯びて脈打つ。祖父の手は止まらず、まるでその赤みを確かめるように、同じ場所を何度も叩いた。
 小坂の白い腕には、竹刀の跡が紫と赤に染まり、重なり合ってまだらになっていた。痛みは鋭く、だがその後にくる痺れが、なぜか心の奥のざわめきを静めてくれる瞬間があった。
 打撃の後、小坂は一人で痣を撫でながら、うっすらとした母の記憶を、もっと鮮明に思い出そうとした。そうすれば、安堵できるのではないかと。この痛みをやわらげられるのではないかと。
 しかし、安らげるような記憶は、よみがえってこなかった。
 継母のいる離れの部屋は、しんとして、いつも戸が閉まっていた。閉ざされた戸が幼い小坂を招いて開けられることはなかった。
 痛む箇所を指先で撫でながら、自分は無力だと、絶望的に思った。この孤独から抜けられる方法はないように思えた。どうしたら、この痛みと苦しみから逃れられるのか、癒やされるのか、全くわからなかった。
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