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第二十七章 小坂の過去
小坂、初めての自慰
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小坂は、初めて自慰をした日を、鮮烈に覚えている。小坂は、勝手口から、霜ばしらを踏んで、外に出た。軒につららのかかる1月の朝だった。苔むした裏庭に出て井戸から水を汲んだ。白い着物を脱いで、井戸端にかけ、頭から水をかぶった。刺すような水の冷たさ。ずぶ濡れになった小坂少年の肌は、赤くなった。髪から水滴が滴り落ちた。朝陽にきらめく氷のようだった。小坂少年の内部から言い知れぬ、むずむずする感覚が沸き起こった。下半身を見ると、睾丸は、寒さに縮みあがっていた。
「はぁっ、はぁっ……」
気がつくと小坂少年は、陰茎を握って動かしていた。
紅い椿の花の上に、白濁が飛んだ。ビロードのようになめらかな苔と、押し黙った飛び石と、濃緑の葉。寺院の散華で撒き散らされる作り物のような、椿の花。緋色の椿の花弁を、黄色の花粉が汚している。小坂は、草履で蕊を踏み躙(にじ)った。荒々しい気持ちが抑えられなかった。蹂躙したい。小坂少年の内部に、毒の種が芽生えた。
ふと、振り返ると、男が、こちらを見ていた。白地に紺絣の和服姿の男は、縁側に立って、腕組みしていた。
細く開いた障子の向こうに、底なしの闇が、ひそんでいた。白地に赤い模様の寝巻き姿の女が袖を口にあてて、
「フフフ……」
と笑った。
男が、小坂少年を手招きした。小坂少年は、着物と手ぬぐいを手に、縁側へ寄った。男は、
「お上がんなさい、坊ちゃん」
と小坂を縁側へ上げた。
「濡れた着物は、お脱ぎなさい」
男の手が小坂の白い着物を脱がした。
男は馴れ馴れしかった。だが、男の身体からは、愛出人の身体を熱くさせる甘い香りが漂っていた。
「坊ちゃんも、ついに大人の身体になったんですね」
小坂はかぶりを振った。小坂は、それを恐ろしいことのように思った。
「待っていましたよ。坊ちゃんが大人の身体になるのを」
男の手が小坂の精液で汚れた股を拭った。
「ほら、これがその証拠」
男は、美味しそうに舐めてみせた。
「坊ちゃんの精液は美味しい」
男は小坂の股に溜まった液をもう一度指先で掬った。
「ほら、坊ちゃんも舐めてみなさい」
愛出人は、男の指を無理やり舐らされた。
「ほおら、美味しい」
小坂はかぶりを振る。
「美味しいだろう?」
男は繰り返し掬っては舐めさせる。
「こうやって、出したら全部舐めなくてはいけないんだよ」
小父のことばに、小坂少年は、かぶりを振った。
「いやだったら、ほかの人に舐めてもらうんだ。その代わりほかの人のを舐めるんだよ」
小坂少年は首を横に振った。
「仕方ない。小父さんが舐めてあげるよ」
小父は小坂少年の精液を器用に舐めとった。
「あとで小父さんのも舐めるんだよ。いいね」
小坂少年が黙ってかぶりを振ると前髪が額にかかった。
「聞き分けのない子だ。そんな子には、お仕置きだよ」
小坂は、お仕置きと聞いて、逃げ出そうとした。
「そんな裸でどこにいく」
逃げて走ってたどり着いた廊下の先は暗かった。廊下の突き当たりにある和式の便所の湿った臭気がした。行き止まりだ。逃げ場はなかった。周りは庭木と垣根で囲まれている。誰にも見えない。声をあげ助けを求めたとしても誰にも声は届かない。
絶望。諦念。
小坂は、小父に手を引かれて廊下を戻った。
「はぁっ、はぁっ……」
気がつくと小坂少年は、陰茎を握って動かしていた。
紅い椿の花の上に、白濁が飛んだ。ビロードのようになめらかな苔と、押し黙った飛び石と、濃緑の葉。寺院の散華で撒き散らされる作り物のような、椿の花。緋色の椿の花弁を、黄色の花粉が汚している。小坂は、草履で蕊を踏み躙(にじ)った。荒々しい気持ちが抑えられなかった。蹂躙したい。小坂少年の内部に、毒の種が芽生えた。
ふと、振り返ると、男が、こちらを見ていた。白地に紺絣の和服姿の男は、縁側に立って、腕組みしていた。
細く開いた障子の向こうに、底なしの闇が、ひそんでいた。白地に赤い模様の寝巻き姿の女が袖を口にあてて、
「フフフ……」
と笑った。
男が、小坂少年を手招きした。小坂少年は、着物と手ぬぐいを手に、縁側へ寄った。男は、
「お上がんなさい、坊ちゃん」
と小坂を縁側へ上げた。
「濡れた着物は、お脱ぎなさい」
男の手が小坂の白い着物を脱がした。
男は馴れ馴れしかった。だが、男の身体からは、愛出人の身体を熱くさせる甘い香りが漂っていた。
「坊ちゃんも、ついに大人の身体になったんですね」
小坂はかぶりを振った。小坂は、それを恐ろしいことのように思った。
「待っていましたよ。坊ちゃんが大人の身体になるのを」
男の手が小坂の精液で汚れた股を拭った。
「ほら、これがその証拠」
男は、美味しそうに舐めてみせた。
「坊ちゃんの精液は美味しい」
男は小坂の股に溜まった液をもう一度指先で掬った。
「ほら、坊ちゃんも舐めてみなさい」
愛出人は、男の指を無理やり舐らされた。
「ほおら、美味しい」
小坂はかぶりを振る。
「美味しいだろう?」
男は繰り返し掬っては舐めさせる。
「こうやって、出したら全部舐めなくてはいけないんだよ」
小父のことばに、小坂少年は、かぶりを振った。
「いやだったら、ほかの人に舐めてもらうんだ。その代わりほかの人のを舐めるんだよ」
小坂少年は首を横に振った。
「仕方ない。小父さんが舐めてあげるよ」
小父は小坂少年の精液を器用に舐めとった。
「あとで小父さんのも舐めるんだよ。いいね」
小坂少年が黙ってかぶりを振ると前髪が額にかかった。
「聞き分けのない子だ。そんな子には、お仕置きだよ」
小坂は、お仕置きと聞いて、逃げ出そうとした。
「そんな裸でどこにいく」
逃げて走ってたどり着いた廊下の先は暗かった。廊下の突き当たりにある和式の便所の湿った臭気がした。行き止まりだ。逃げ場はなかった。周りは庭木と垣根で囲まれている。誰にも見えない。声をあげ助けを求めたとしても誰にも声は届かない。
絶望。諦念。
小坂は、小父に手を引かれて廊下を戻った。
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