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第二十八章 変わりゆく関係
小坂、麓戸のマンションから、自宅へ
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「寝室、行くか?」
テーブルの向こうから、麓戸が静かに問いかけてきた。
小坂は、かすかに目を伏せて首を振る。
「……いえ。悪照君が、家にいますから」
「何もしない。今日はちょっと、おまえが不安定に見える。だから側にいたい。泊まっていくか? ただ、眠るだけだ。何もしなくていいから」
「……いえ、それでも……悪照君に、変に勘ぐられるのは……避けたいです。気をつかいますから、いろんな意味で」
麓戸は唇を引き結び、テーブルに目を落とした。
「俺がいる限り、オデトに変な真似はさせないけどな」
「……わかってます。でも……生徒ですし、担任ですし。顔を合わせないわけにもいきませんし」
静かに言ったつもりだったが、その背後には積み重なる疲労と緊張があった。
「だよな。ほんと、考えないとな……この状況は」
その一言が、どこか自分自身に言い聞かせるように聞こえて、小坂はふと視線を向けた。
「……オデトは、俺といると気づまりか?」
麓戸の声は低く、少しだけ不器用に聞こえた。
「そんなことないですよ」
即答した。ほんとうだった。
けれど、ふたりの間に漂うわずかな空気の揺れは、互いに確かに感じていた。
「……帰ります。今日は送ってもらってもいいですか?」
「もちろん」
ーーー
車内は静かで、ライトの流れる光だけがふたりを包んでいた。
小坂は窓の外を見ながら、ポツリと呟いた。
「……また来ても、いいですか?」
麓戸は、赤信号のブレーキの中で、ゆっくりと小坂の方へ目を向けた。
「……いつでも来いよ」
マンション前に着いたとき、小坂がシートベルトを外す。
ドアを開けかけたとき、麓戸の手がそっと彼の手首に触れた。
小坂は動きを止めて、ゆっくりと向き直った。
そのまま、窓の灯りだけの車内で、静かに抱き合いたかった。言葉も、キスも、なくていい。だが、この場所は良くない。人目がある。
「来客用の駐車スペースに、とめてもらえますか。そこです」
「いいよ」
エンジンが切られ、車内がいっそう静かになる。
外の街灯の灯りが、フロントガラスにゆるく滲んでいた。
小坂は、しばらくためらった後、言った。
「……上がっていってください」
小さな声だった。
「うちのマンション、音、響くんです。だから……泊まっていったり、その……何かするのはできなくて。話し声も響くから……残念だけれど……あなたの家みたいな高級マンションじゃないから」
麓戸は、小さく頷いた。
「……わかった」
テーブルの向こうから、麓戸が静かに問いかけてきた。
小坂は、かすかに目を伏せて首を振る。
「……いえ。悪照君が、家にいますから」
「何もしない。今日はちょっと、おまえが不安定に見える。だから側にいたい。泊まっていくか? ただ、眠るだけだ。何もしなくていいから」
「……いえ、それでも……悪照君に、変に勘ぐられるのは……避けたいです。気をつかいますから、いろんな意味で」
麓戸は唇を引き結び、テーブルに目を落とした。
「俺がいる限り、オデトに変な真似はさせないけどな」
「……わかってます。でも……生徒ですし、担任ですし。顔を合わせないわけにもいきませんし」
静かに言ったつもりだったが、その背後には積み重なる疲労と緊張があった。
「だよな。ほんと、考えないとな……この状況は」
その一言が、どこか自分自身に言い聞かせるように聞こえて、小坂はふと視線を向けた。
「……オデトは、俺といると気づまりか?」
麓戸の声は低く、少しだけ不器用に聞こえた。
「そんなことないですよ」
即答した。ほんとうだった。
けれど、ふたりの間に漂うわずかな空気の揺れは、互いに確かに感じていた。
「……帰ります。今日は送ってもらってもいいですか?」
「もちろん」
ーーー
車内は静かで、ライトの流れる光だけがふたりを包んでいた。
小坂は窓の外を見ながら、ポツリと呟いた。
「……また来ても、いいですか?」
麓戸は、赤信号のブレーキの中で、ゆっくりと小坂の方へ目を向けた。
「……いつでも来いよ」
マンション前に着いたとき、小坂がシートベルトを外す。
ドアを開けかけたとき、麓戸の手がそっと彼の手首に触れた。
小坂は動きを止めて、ゆっくりと向き直った。
そのまま、窓の灯りだけの車内で、静かに抱き合いたかった。言葉も、キスも、なくていい。だが、この場所は良くない。人目がある。
「来客用の駐車スペースに、とめてもらえますか。そこです」
「いいよ」
エンジンが切られ、車内がいっそう静かになる。
外の街灯の灯りが、フロントガラスにゆるく滲んでいた。
小坂は、しばらくためらった後、言った。
「……上がっていってください」
小さな声だった。
「うちのマンション、音、響くんです。だから……泊まっていったり、その……何かするのはできなくて。話し声も響くから……残念だけれど……あなたの家みたいな高級マンションじゃないから」
麓戸は、小さく頷いた。
「……わかった」
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