イケメン教師陵辱調教

リリーブルー

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第二十八章 変わりゆく関係

イケメン教師、麓戸にSOSを送る

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 小坂は、ベンチに腰を下ろし、スマホを握りしめたまま、ためらっていた。

 涙のあとが乾かないまま、震える指でスマホを操作し、麓戸の名前を呼び出す。

 画面に表示された麓戸の名前を、しばらく見つめてから、メッセージを打ちかけて、やめた。

 結局、電話の方が早いと思った。通話ボタンを押す。 

 呼び出し音が数コール続いたあと、いつもの低い落ち着いた声が応答した。

「……小坂?」

 声を聞いた瞬間、なぜか喉の奥が詰まった。でも、どうしても言わなければいけなかった。

「……今夜、会えませんか?」

 数秒間の無音。小坂は続ける。

「いらっしゃいますよね……息子さん。だから無理なら、いいんです」

 麓戸は短く息を吐いた。それがため息なのか、安堵なのか、小坂にはわからなかった。

「いない……悪照は、いつも夜は遅くまで塾に行っている。それと、今夜は、母親のとこに泊まるらしい」

 その言葉を聞いた瞬間、小坂の心から、力が抜けた。息が、自然と震えた。

「じゃあ、行っても……?」

「来いよ」

 その返事に、小坂はようやく

「はい」

と言って、頷いた。。

「待ってる」

 短い返事を受けて、通話が切れた。

   ◆

 電車に乗りながら、小坂は何度もハンカチを目元に当てた。
 泣いているのをごまかすように、車窓に顔を向けて。

 麓戸のマンションに着いたころには、夜風がすこし涼しくなっていた。



 インターホンを押すと、すぐにドアが開いた。
 中から漏れてきたのは、意外にも――音楽だった。

 ジャズのピアノ。小さな音量。
 それが、部屋の空気をやわらかくしていた。

 「……音楽なんて、聴くんですね」

 ぽつりとこぼすと、麓戸は

「最近、なんとなく」

 と言って、目をそらした。照れたような、その横顔に、小坂は思わず微笑みそうになった。

 でも上手く笑えなかった。顔がこわばっていた。感情があふれそうだった。

 麓戸は、何も言わず、ドアを閉めて鍵をかけた。
 そして、立ったまま、小坂に向かって手を伸ばした。

「……来い」

 それだけだった。

 小坂は、何も言わず、歩み寄ってその胸に顔を埋めた。

 小さく
「……ごめんなさい」
 とだけつぶやいて、そのまま、声を殺して泣いた。

 麓戸は、黙って抱きとめていた。背中を撫でることもせず、ただ、そこにいることで支えていた。

 嗚咽が、じわじわとこみ上げてくる。小坂は、肩を震わせながら、泣いた。

 麓戸は一言も発せず、ただ小坂を支えていた。

 小さな音で流れ続けるピアノの旋律が、遠く優しく響いていた。

 全てのものをうっすらと濡らす小糠雨のように。

 部屋の中に流れる音楽が、ふたりの心をやわらかくつないでいた。
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