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涼真の部屋へ〜はじめて知る、素の顔〜
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「……このあと、ウチ来ます?」
映画を観て、パンケーキを食べて、ふたりで雑貨屋をふらっと見た帰り道。
涼真がふいに立ち止まって、そう言った。
「……え、マジで?」
「マジです。……でも、部屋、そんなに綺麗じゃないですけど」
「いや、別に気にしねぇけど……」
「なら、行きましょう」
涼真はちょっとだけ早歩きになった。
その背中を、少し不安で、でもどこか楽しみな気持ちで追いかける。
最寄り駅から徒歩7分。
築浅の1K、オートロック付きのマンション。
「……先輩と飲みに行く日を想定して、駅近にしたんです」
「……何その基準」
「じゃなかったら、今こうして部屋まで来れなかったかもしれないじゃないですか。途中で行き倒れて」
「倒れる前にどうにかするわ」
玄関の扉を開けると、
ほんのり、いい匂いがした。
白とグレーを基調にしたインテリア。
無駄がなくて、意外と片付いてる。
「お前、几帳面なんだな」
「えっ、やだ、褒めてくれました?」
「べつに」
「ニヤけてますよ、先輩」
テーブルの上に、漫画と小説が混在してる。
観葉植物がひとつ、窓辺に置いてあった。
壁にかかってる時計は、ちょっと可愛らしいデザインで――
(ああ、ここが涼真の“世界”なんだ)
映画館の帰りに買ったコンビニアイスを出して、
テーブルの上に並べる。
「間接キスしたいですか?」
「別に」
「こっちのアイスも美味しいですよ?」
スプーンを俺の口元へ持ってくる。
「ふふふ。こういうのしたかったから、わざわざ先輩と違う味にしたんですよ。美味しいでしょ?」
小悪魔め。
アイスを食べ終わったあと、
テレビをつけて、映画の話をふたりでゆるく続ける。
気がつけば、肩が自然にくっついていた。
ベッドはあるけど、まだ座ってるソファでぴったり寄り添って――
「……こうしてるの、変じゃないですか?」
「なんで?」
「なんか、“ふつうのカップル”みたいで……変な感じ」
「“ふつう”でいいんじゃねえの」
「……はい」
涼真がそっと、俺の手を握ってくる。
壁があった時じゃ、できなかったこと。
いま、やっと――当たり前のように、できている。
映画を観て、パンケーキを食べて、ふたりで雑貨屋をふらっと見た帰り道。
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「……え、マジで?」
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「べつに」
「ニヤけてますよ、先輩」
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観葉植物がひとつ、窓辺に置いてあった。
壁にかかってる時計は、ちょっと可愛らしいデザインで――
(ああ、ここが涼真の“世界”なんだ)
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テーブルの上に並べる。
「間接キスしたいですか?」
「別に」
「こっちのアイスも美味しいですよ?」
スプーンを俺の口元へ持ってくる。
「ふふふ。こういうのしたかったから、わざわざ先輩と違う味にしたんですよ。美味しいでしょ?」
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アイスを食べ終わったあと、
テレビをつけて、映画の話をふたりでゆるく続ける。
気がつけば、肩が自然にくっついていた。
ベッドはあるけど、まだ座ってるソファでぴったり寄り添って――
「……こうしてるの、変じゃないですか?」
「なんで?」
「なんか、“ふつうのカップル”みたいで……変な感じ」
「“ふつう”でいいんじゃねえの」
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壁があった時じゃ、できなかったこと。
いま、やっと――当たり前のように、できている。
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