瞳の奥に潜む野獣 

果汁さん

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 野獣は嘘つきだ。自分の都合の良い方へ逃げる。世並みで生きて俺は光を追いかけていたかもしれない。老いるとは、生きるとは、哲学っぽい考えも今の俺には不要だ。
「あの少年は台座のシステムを起動させる気だ。御前は敵じゃないから離れていろ。疑われるぞ」
「確かにそれは困るわ。でも私はあの男が気になる」
「勝手にしろ」
「おい、そこ。五月蝿いぞ」
 台座のシステムを起動させる寸前で手を止め、鬱陶しそうに見てきた。野獣は襲う側だから狩られるのとは違う。
「ボス戦に参加する気か。よく見たらスペル騎士団の武装してるな。腕は確かなようだ」
「私はスペル騎士団じゃないけどね」
「このエリアから声が。だが俺には時間がない」
 ボス部屋の一番、高い所から受付嬢マリアの声が聞こえた。嵐を察して安全地を見つけたのか。
 黒髪の少年は手をコンピュータに翳し認証システムを開始させた。
 地上から大きな穴が裂けるようにして音が鳴る方へ足を向けると、次第に音は響き、嵐の目は上空で出現した。
「御前、眼が・・・緑と赤。それになんだその姿は・・・」
 女神の器はどうやら本来のカグラと交互しながら感情を出せるらしい。俺は八岐大蛇に乗っ取られた。首が一つずつ身体から生えて牙を剥く。蛇刀と言われる剣の形が大蛇に化け相手の隙を狙う。今の俺の口にはその蛇刀が加えられている。
 この瞬間だけ姿は異なりボス戦が終われば元に戻る。受付嬢マリアが見たかったのはこの姿なんだ。でも八岐大蛇は初めから居なかった。
「嵐はもう始まる。ボス戦は集団で襲ってくる雑魚を片付けた後だ。それまで足を引っ張るなよ」
 八岐大蛇に乗っ取られた。スペル騎士団長が来るまで静まっておくか。
 嵐の目から俺の姿は監視されている。
 この『嵐の目』は本当に眼だ。野獣の姿を見越して敵か味方を判断している。すれば攻撃は女神の器とあの男。それは俺が敵じゃなくても味方でも構わないということだ。野獣の一戦は勝負の行方を左右する筈だ。敵をピンチに引っ掛けてもよし。味方を殺してもいい。
 それは現実を突きつける事で理想を壊す野獣のやり方。昔に浮かれて夢を叶える。そんな理想論は野獣の目を光らせる。
 ゴブリン等の雑魚モンスターが溢れてくる。
「まず手始めに奴等からだ」
 男は剣を構え、雑魚モンスターを切り裂きに行った。最初は右手、左手と握った剣を離さず狙いを的確に定め逆手持ちに持ち替え刃を当てる。眼の色は赤ではない。燃える炎。濃い色だ。しかも恐れ入った。此奴は選ばれし『適任者』だ。
 彼の身体は八岐大蛇と同じ様な変化をしていた。
 全身から流れる血筋が暴走し鬼の角が生えた。身長も高く2mに到達。血の色をした幻の獣に進化した。

「御前も纏めて相手にしてやる」
「次から次へと・・ゴブリンが両手銃を持っている・・このゴブリン。不良ゴブリンか」
 『不良ゴブリン』とは生前にお金もなく路上に迷い世間から見捨てられたオタクの姿。
『時間の館』から転生された『不良ゴブリン』
 此奴は手強い。
「距離で攻撃する奴が接近戦だと」
「世を呪ってやる」
 ボスの散弾数は計り知れない程の物で生前の恨みが込められている。
 
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