瞳の奥に潜む野獣 

果汁さん

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 『魁龍』
 それは七不思議に君臨する幻と謳われている龍だ。普通の色の付いた龍ではない。
 出逢えたら極めてラッキーだ。
 海賊時代の貴重なネタだ。
「ねえ、貴方は野獣なの?」
「・・・・・」
 当時の俺は野獣と言うには程遠く時代が違う所為でそんな名前は知らなかった。
 彼女の名前は『ハリウッド シリア』
 海賊時代に於けるイングラム王国、女王の第二王女様だ。最高峰インディア王国の名がなる前の城下の巫女だ。街並みは港を重視していた。
 この時の俺の姿は『魁龍』の種族。海賊時代は今の野獣と違って煌びやかな龍。人型の全身、虹色の鱗で出来た海獣族とは異なる者。
 鋭い牙、真っ直ぐな眼。その片目は潰れて閉じている。ボスの傷痕が残っていた。
 爪は短く足は短い。
 自身の背丈と合った尻尾の長さ。
 『魁龍』の特技は光線を放ち視界を塞いだ後、特殊な煙幕を撒き相手を引き寄せ力技で捩じ伏せる。
 その後、魁龍の掌から蒼鞭となる物で縛り上げ情報を聞き出すのも有りだ。
 どの時代の連中も情報が無ければ生きていけない。故、悪人は何時も外道だ。
 根が金で完成されている者。貴族とも言う。
 牢屋にぶち込んで痛ぶる下劣な野郎も居たもんだ。


 
 『百合根 本滝』心臓部脱出口は仮に知っていても魔物から化物、又は神話クラスの怪物までが押し寄せる。
 人間の絶対、立ち入ってはならない区域だ。
 『記憶屋』への道筋でもある。
 元々、野獣専用の脱出口である為『記憶屋』と野獣は馴染みが深い。
 《麒麟》は今でも我等を監視して姿を現さず観ているのだろう。
 前世、後世。あらゆる世界線を把握し人類の誕生、自然の成り立ち。その全てを管理し支配する者は神でも悪魔でもない。《麒麟》も野獣と狼の悔いで仕上がった。
 『記憶屋』とは生命の理なのだ。
 時代とも言う。人間は過去に取り憑かれ災いを招きその術で才能やら技術を進行している。
 人は価値を見出し独自の能力を向上させる。物事を単純化すれば頭は回る。
 その個人差が人同士を競争させる。
 漫画の様な伏線回収は現代でも偏見がある。
 我はそれが憎い。大人の見る目は極めて残酷で悲しみに溢れてる。
 『魁龍』の前世がありながら獰猛な姿に変わったのは理想から現実に移る時。『記憶屋』は俺の精神を見定め微かに眠る闇を引き出した。
「彼の地に赴いても信じる」だったか。
 残念だ。
「野獣専用の脱出口は俺の種族しか知らない。悪いが御前とは此処でお別れだ。バモス行くぞ」

 受付嬢マリアを後にして心臓部の脱出を目指した俺とバモスを連れて野獣でしか見えないを通り抜ける。

 この道は薄暗く灯も無ければ嗅覚に頼る。
 そして人間に化ける力は無効化され野獣本来の姿へ変えられてしまう。
 『記憶屋』への通り道。
 俺は居酒屋感覚で『記憶屋』を探した。
 『記憶屋』の在り方は野獣の抜け道と数々の異界の出入口に繋がっているが場所はランダムである。
「グオオォォ!!」
 我々が辿ってきた方角から透き通った狼の鳴き声が聞こえる。
 恐らくが始まった。
 狼の群れは時を超え彼女の周囲に集まっている頃だろう。
 『記憶屋』を探すのに必死になっていた俺は取り憑いているスペル騎士団長を囮に逃げたのだ。騎士団長はまだ瞑想している。今、目の前で起きている現況を間近で視野に入れてるなら状況は把握できる。
 だ。
「女王の声が聞こえたな。発信源はこっちか」
 暗闇の中、喉太い声で鼻を唆る一匹狼が眼を閉じながら野獣の前に止まる。
 眼が見えないらしく匂いで判断しているようだ。ついでに『記憶屋』の場所も聞いてみよう。
「ふん。見覚えのある顔だ。まるで昔の俺を観ているみたいだ」
「待って。あの毛に付いてるの。御前の薔薇そっくり」
「これは御前等みたいな獣には合わない。主人を見つける。それが使命だ。『記憶屋』は此処を右折だ。じゃあな」
に忠告しておこう。カグラと名乗る嬢様を見つけたら逃げるんだな」
「御忠告などいらん。女王を探しているんだ」
「『記憶屋』で聞いてないのか。此処が貴様の分岐点だ。行ってこい」
「知った口を。もう俺は女王無しでは生きていけない。この薔薇が朽ちる前に・・・」
「なら報報屋へ行け。全ては其処からだ」
「勝手な」
 『幻の発掘梅 絨毯屋』鍵があるなら此処しかない。
 心臓部から無事、脱出したら俺も行く予定だ。
「時間は有限に限られている。初対面の相手に失礼だが構っている暇は無い」
「俺達にも『記憶屋』に用がある。じゃあな」
 また匂いを頼り女王の元へ歩む獣は『記憶屋』の場所を教えた後に去った。
「ねえ、カーボン。知り合いなの?」
「バモス、この道自体が物語ってる事に気付かないとはな。あれは俺の姿だ」
 時代の流れは多少ある。あの時代は『天王』即ち『魔王』とは異なる力の持ち主の事を指す。
 俺も情報屋へ行き、今後の課題を把握しておこう。
 『紅蓮の屋敷』の情報を聞き出さなければ。
 暗闇の洞窟から教えて貰った先へ進むと一帯全てが花畑の空間へ出た。
 最高峰インディア王国が設立される前、他国との争いは絶えず情報が熾烈に荒れていた頃。俺はこの花畑を一度、眼を通した事がある。
 魔物は魔物の国と人間は人間の国。他種族の国交。花畑は其れ等の監視ができる唯一の場所。記憶屋程の次元ではないが彼等は『フレグラ』の名を持ち花畑の地の守護、管理を任されている。
 『フレグラ』の特徴は炎の向日葵。森のドライアドとは違って姿は見せず人の闇を感知すると逃げる習性があると聞く。
 俺は此処であるお方から秘技を受ける約束をしていた。
 
 これさえあれば人知れず知れた豪華級の技が使える。技の階級は『雑草』『根』『樹』『薔薇』『桜』『豪華』と順に並びランク付けされ、その中でもインディア王国に集う者は『薔薇』から『桜』までの級は揃っていた。
 カグラ様は唯一『豪華』の力を持ち前衛へ出られるのも納得だ。『豪華』まで進展すれば心身共に急激な成長は止まらず時には妬む者も妬めなくなる。何故なら身体を乗っ取られるからだ。野獣と似ている。
 一刻も早く『紅蓮の屋敷』のボス『鬼餓鬼綱』を倒さなければ。
 野獣は狼を食べた事により特殊能力を持っている。『鬼餓鬼綱』もきっとそれを狙っているだろう。
 『鬼餓鬼綱』他者を平気で裏切り命をも弄ぶ下郎。
 それに備え管理人『フレグラ』の名において秘技を教えてもらえれば。
 『フレグラ』は性格が自由過ぎて手に負えないが約束は約束だ。姿、形を見た物は居ない。野獣の姿でこの地を訪れたのも縁だ。バモスの相棒クロも喜んで・・あれ。
「クロがいない」 
「まさか」
 茂みからウサギの耳を立てた獣が此方を見ていた。
「クロー!」
「マリアから逃げたか」
「ガゥー!」
 勢い良く飛び込んだ先はバモスのいつもの肩だった。
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