死神の使徒はあんまり殺さない~転生直後に森に捨てられ少年が、最強の魔狼に育てられ死神の使徒になる話~

えぞぎんぎつね

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20.5 一般信者との交流

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 神殿を出ると、太陽が西の空に沈みかけているところだった。

「幸運な少年、君の名前はなんという?」
「俺か。俺はフィルだ」
「そうか! これから一緒に飯でもどうだ? 使徒さまと出会った感動を語り合おうじゃないか!」
「安心しろ、フィル少年、おごってやるからな!」
「じゃあ、お言葉にあまえちゃおうかな」
「それがいい! それがいい!」

 そうして、俺は十人ほどの信者と一緒に、人神の神殿の近くにある飯屋に向かった。
 人族の街に来るのは初めてだ。もちろん人族の料理を食べるのも初めてである。


 席に着くなり、信者の一人が料理を頼んでくれた。
 すると、すぐにパンと焼いた肉、それにふかした芋にバターを載せた物が運ばれてくる。

「うまそうだ」
「だろう? 遠慮せずにどんどん食べるんだぞ」
「この芋は、この辺りの特産品、ゼベシュ芋だぞ」
「おお、うまい。香辛料が旨い。バターも旨い」

 俺はいつも肉を焼いて食べていた。
 たまに山菜や、母のくれる赤苺や冬苺も食べたが、基本は肉だ。
 香辛料やバターなどと言うものは、フレキの森にはなかったのだ。

 人族の料理という物は、やはり美味しかった。

 ご飯を食べながら、信者たちはビールも飲む。
 俺は酒ではなく、お茶を飲んだ。判断力を鈍らせないためだ。


 酒を飲みながら、信者たちは楽しく会話をする。
 その内容はいかに使徒さまが優しくて美しくて、立派かというものだ。

 その話しが一段落ついたとき、俺は尋ねる。

「ところで、神像の前にいたときに、地下から変な音が聞こえた気がしたんだけど」
「変な音って?」

 実際は音はしていない。死神の神器の気配がしただけである。
 人神の神気で、わかりにくかったが、不死者の気配まで感じたのだ。

 音がしたと言えば、地下に何があるか、信者たちが知っていれば教えてくれると思ったのだ。
 俺は人神の神殿の地下には墓地があるのではないかと予想していた。

「わかんないけど。なにかカサカサみたいな」

 不死者の気配など言えば怪しまれる。
 俺が死神の使徒であることは、隠さねばならないことなのだ。

「ふーん、下水道のネズミじゃないのか?」
「神殿の下には下水道があるのか? 墓地とかじゃなくて?」
「墓地はないよ。墓地なら、街の北の端だよ」
「神殿の地下には下水道しかないんじゃないか?」

 神殿地下には下水道しかないということならば、下水道に不死者が沸いていると考えた方が良い。
 そして、その下水道に死神の神器がある可能性も高い。

「それにしてもネズミの足音を聞き分けるとは、フィル少年は耳が良いんだなぁ」
「田舎では狩人をしていたからね」
「へー、すごいもんだなぁ」

 そういうと、信者たちはなにも疑問に思わなかったようだった。
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