死神の使徒はあんまり殺さない~転生直後に森に捨てられ少年が、最強の魔狼に育てられ死神の使徒になる話~

えぞぎんぎつね

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22.5 下水道の依頼

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 俺は鼠を食べない。下水道の鼠の肉など特に臭そうだし、食べたくない。
 食べない生き物を殺すことは、基本的に俺はしない。
 俺は蚊や蠅すら意識的に殺さないようにしているぐらいなのだ。

「だが……」

 鼠が増えれば、疫病の温床になる。
 増えた鼠は食料も荒らしに来るだろう。

 鼠を殺さなければ、人は困るのだ。
 ならば、増えすぎた鼠を殺すことも、また人として自然な行いと言えなくもない。

「うーん。でもそうなると」

 殺さなければ困るというならば、人里に近づいた熊や鹿も殺して良いことになる。
 もっといえば、他人に迷惑を掛ける人族も殺して良いことになる。

「…………」

 ちらっとフレキを見ると、
『…………』
 フレキは俺に背を向けてお座りしていた。

 その背中で、それは自分で考えろと言っているかのようだ。


「……うーん」
「どうした、少年?」

 依頼掲示板の前で唸っていると、突然、ギルド職員に声を掛けられた。

「あ、いや。昨日、下水道掃除の依頼が出ていた気がするのだけど……」
「下水道掃除は詰まりが発生したときにだけでるんだよ」

 どうやら、昨日のうちに詰まりは解消したらしかった。

「鼠退治も掃除も大して手間は変わらないよ?」
「そうなのか? ちなみにだけど、失敗した場合のペナルティって」
「鼠退治に? いや、まああり得るか。鼠は素早いからな」

 ギルド職員は、納得したようにうなずいた。

「心配するな少年。鼠退治は常設依頼だからな」 
「常設?」
「そう。常設依頼の場合、依頼の受諾手続きが必要ない。殺した鼠を持ってきたら、その分の報酬を渡すことになっている」

 それは助かる。
 失敗続きで、除名されかけている冒険者への救済もかねているのかもしれない。

「少年のような五級なりたての冒険者のための依頼だからね」
「それは助かるけど、下水道に入るのに手続きはいらないの?」
「問題ないよ、冒険者なら手続きなしで入れるから」

 どうやら冒険者ならば下水道に自由に入れるらしい。
 ならば、難しいことを考えずともいい。

「あ、ちなみに、下水道ってどこからはいればいいの?」
「えっと、こっちにきて」

 俺とフレキは冒険者ギルドの裏庭に案内された。

「入り口はいくつかあるんだけど、冒険者ギルドで管理しているのはここ」
「おお、こんなところに出入り口があったとは」

 誰でも入れるようにしたら、犯罪者の巣にされかねない。
 街全体の治安が悪くなるだろう。

 だから、誰でも自由に出入りさせるわけにはいかない。
 だが、冒険者は毎日のように入り込む。

 それをいちいち管理するのはとても大変だ。
 だから、こそ冒険者ギルドの中庭に出入り口を用意したようだ。

「ありがとう、助かった!」
「あ、少年」

 お礼を言って、早速中に向かおうとしたのだが、呼び止められた。

「中古で良いからちゃんとした武器と鎧は買った方が良いよ?」
「そっか、そうだね」
「盾も大事。あるのとないのでは全然違うから」
「わかった。ありがとうね」
「うん、ちなみに、武器防具なら、この店がオススメ」
「何から何まで、ありがとう、装備買ってくる」

 そして、俺とフレキは冒険者ギルドを出たのだった。
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