囚われの姫は嫌なので、ちょっと暴走させてもらいます!~自作RPG転生~

津籠睦月

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第3部 電脳機神兵の花嫁になんてならない!

第29章 アリーシャはお姫様抱っこで攫われない

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「以前から、薄々あやしいとは思っていた。だが、今回の件で確信した。お前、僕をノせて、SHIROをわざと狂わせたな?」
 
「僕がスパイだという証拠でも?……なんて、くだけヤボでしょうね。あなたが、それを用意せずに、僕を問いつめているはずがない」
 
「プライバシー保護規定には引っかかるがな。管理者権限で、お前の端末の中身や行動ログを、一通り洗わせてもらった。お前を天空牢獄行きにするには充分じゅうぶんな証拠だ」
 
「……てっきり、暴走したSHIROの修正にかかりきりで、そんなヒマは無いと思っていたんですが……。さすが室長。僕の想定をはるかに超える有能さです」
 
 マウリシオの声には、心からの称賛しょうさんが感じられた。だが、すぐにその声は、どこか皮肉をびたものに変わる。
 
「……しかし、それを公表せずに、先に僕を呼んだ。どういうおつもりなんですか?まさか、僕を助けてくれるとでも?」
 
「条件次第しだいだ。クレッセントノヴァをて、本当に僕の部下となるなら、見逃してやる。クレッセントノヴァの聖女王は、冷徹で非情な方だと聞く。つかえているお前が幸せだとは思えない。スパイなんて裏稼業かぎょうはやめて、真っとうに生きてみないか?」
 
 スカイの声は、真剣で熱かった。だが、マウリシオはそれに冷たい笑い声でこたえる。
 
「あなたという方は……頭は良いのに、本っ当に甘ちゃんですねぇ。それとも、夢見がち、とでも言うのでしょうか?冷たい女王にき使われる哀れなスパイを救ってやれば、改心してあなたに忠誠をくすとでも?」
 
「……僕は、お前の働きは評価していたんだ。それだけの能力があれば、まともな職でも充分やっていける。歴史に名を残す偉業だって夢ではない。なのに、自らその可能性をつぶすのか?」
 
 スカイはめげずに説得を続ける。だが、マウリシオが折れる気配はなかった。
 
「悪いんですが、僕にそんな可能性など、初めから無いんですよ。僕はあの国に……いえ、この世界に縛られた身の上ですので」
「何を、言っているんだ……?」
 
「それより、甘ちゃんだと申し上げたのは、スパイさえ救おうとする、その志だけではありませんよ。長年の部下とは言え、お一人で "敵" と対峙たいじする、その警戒心の低さに対しても、です」
 
 ……何だか、会話がますます不穏だ。ものすごくマズい予感がする。
 
 私は女子トイレを飛び出し、すぐ隣にあるドアを勢いよく開け放った。
 
「ちょっと!何する気!?」
 
 マウリシオがぎょっとして振り向く。
 
 だが、スカイはすでに意識を失い、マウリシオの腕の中でぐったりしていた。
 
「え?ちょっ……仕事早くない!? まさか、もう死……」
 
 あせって、思わず縁起えんぎでもないことを口走りかけるが……すぐにマウリシオからツッコミが入った。
 
「いえ、殺してはいませんよ。……しかし、困りましたね。まさか、貴女あなたに目撃されるとは。貴女が相手では、口封じにどうこうすることもできませんし……」
 
「って言うか、スカイをどうする気!? 今すぐ放さないと……」
 
 私はポケットを探り、セイクリッド・シザーを取り出そうとするが……
 
「おっと。危ない真似はしないでくださいよ。王子がどうなっても良いのですか?」
 
 先にスカイの喉元のどもとに刃物を突きつけられてしまった。
 この人……本当に仕事が早過ぎる。
 
「ちょうど良い機会ですので、僕はこのままメトロポラリスを去ることにします。エクスカイゼル王子にも同行して頂きますが……彼は今回の件に責任を感じて『自分探しの旅に出た』ということにしましょう」
 
 マウリシオはにっこり笑ってそう言うと、トイレの壁に向けて片手をかざした。
 
 直後、音も立てずに壁の一部が消え失せる。
 ぽっかり開いた穴からは、メトロポラリスの街並みが遠く、小さく見えた。
 
「え!? 何?超能力?あなた、何者?って言うか、自分探しの旅って……」
 
 混乱する私に、マウリシオは「ヒミツですよ」とでも言うように、唇に人差し指を当ててみせる。
 
「真実は誰にもお話しになりませんよう。言えば、王子の命は無いものと思ってくださいね」
 
 あくまでにこやかに微笑んだまま、マウリシオはそんなことを言っておどす。
 
「大丈夫。これは全て、創世の神の定めた出来事です。貴女もご存知・・・・・・ですよね?神託の乙女アリーシャ・シェリーローズ様」
 
 呆然とする私の前で、マウリシオはスカイをサッとお姫様抱っこした。
 そのまま、壁に開いた穴へと向かっていく。
 
「では、ごきげんよう。また次にお会いできるのを、楽しみにしています」
 
 私に向けてうやうやしく頭を下げた後、マウリシオは壁の穴へと後ろ向きに倒れ込んでいった。
 
「ちょ……っ、待……っ!」
 
 悲鳴じみた声を上げ、け寄るが……穴から見下ろす景色のどこにも、もう二人の姿は見えなかった。
 
 駆けつける前に一瞬、バサリと鳥の羽音はおとのようなものが聞こえた気がするが……気のせいだっただろうか?
 
「……今の、何だったの?創世の神の定めた出来事って……」
 
 必死に頭の中の、このゲームに関する記憶をあさる。
 
 ……そうだ。確かにこれは、ゲームのシナリオ通りの展開だ。
 
 メトロポラリス編の最後、第二王子エクスカイゼルは、突如とつじょとして姿を消す。
 
 研究室には『今回の件で、自分の未熟さが身に沁みました。自分を見つめ直し、立派な大人になるために、僕は旅に出ます。副室長のイゼルロットを同行させますので、どうか御心配なく、捜索そうさくなどもなさらずに、遠くで見守っていて頂ければ幸いです。』という置き手紙が残されているのだが……
 
 実は、これはダミーで、後に彼はとんでもない形で、再び姿を現すのだ。
 
「……スカイの失踪しっそう時の描写は無いから知らなかったけど、こうやってさらわれてたんだ……」
 
 ……なんて、感心してる場合じゃないよね。どうしよう……。
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