17 / 28
第1章
一般常識とレベリング~やっぱりチートは楽しいね~
しおりを挟む
昼前の冒険者ギルドは閑散としていたので、買い取りカンターは空いていた。ヒカルは受付嬢に依頼が終わったことを告げ、マグワート100束をカウンターの上に置いた。
「ヒカルさん、おめでとうございます。依頼達成ですよ」受付嬢は銀貨1枚をヒカルに渡した。
「ありがとうございます」
「やっすー、マリオさん、この報酬安すぎですが……」
「ヒカル、この世界の基準だと、賃金はそんなもんだよ。銀貨1枚が元の世界の1万円で贅沢をしなければ三食を三日間は食べられるはずだよ」
「マリオは、ヒカルとミチルに食堂で昼のランチが銅貨1枚、元のお金で約1000円で食べられることを教えた」
「本当ですね。僕が間違っていました」
「お昼を食べたら、特訓だ」
「「はい」」
マリオは一旦、家に戻って転移門を取り出した。
「マリオさん、そのドアはもしかして~アレですか?」
「うん、何処にでも行けるドアだね」
「えっ、何でオポタ川で使わなかったのですか?」
「それは、ヒカルたちの体力を見るためだよ」
「じゃぁ、行こうか」
マリオがドアを開けるとそこは森の湖だった。
「ミチル、絶対にずるいよね」
「ヒカルさん、私たちも早くレベルを上げれば使えるわ」
「そうだね」
「ウリエル、ヒカルとミチルのレベルアップに最適な場所に連れて行ってくれ」
「了解しました。レベルアップの最適地はリコマ山です。キャンピングカーを出して乗り込んでください」
「マリオさん、キャンピングカーって、絶対におかしいです」
「なら、ヒカルだけ歩いていくか?」
「いえ、そんな訳ではありません」
ヒカルはラノベ研究の知識から、転生勇者は最初からチートを持っていると信じていた。勇者の移動は馬車だったが、勇者は豪華な箱馬車で移動するのだとマリオとリカコに熱心に語った。
「ヒカルさん、そもそも箱馬車に乗れるのは貴族だけですよ」
「今のヒカルさんたちの身分では、平民ですから宿も平民用、馬車も乗合馬車だけです」
「ウリエル、そんなに身分差があるの?」
「はい、このイポニアは貴族が治めている国ですから、我々は最底辺の人種です」
「但し、ヒカルさんもミチルさんもレベルが上って99になれば国王も貴族も手出しはできません」
この後、ウリエルはリコマ山に着くまで、延々とこの世界の一般常識を二人に教えた。キャンピングカーはリコマ山に30分で到着した。
「マリオさん、キャンピングカーは早いですね」
「そうだろう、乗合馬車は遅いし、お尻が痛いしで、こんなスピードでは着かないね」
「そうでしょうね」
「ヒカルさん、ミチルさん。LV15になれば中級魔法が全開放されます」
「中級魔法って、どんなのがあるんですか?」
「範囲回復、魔力強化、属性強化などですね。戦闘でも支援でも役立ちます」
「じゃあ、LV25になれば?」
「上級魔法が使えるようになります。ですが……すべての上級魔法を扱えるのはLV45以上です」
「そんなに先なんですね……」
「いいえ。今日、明日中にはLV45に届きます」
ウリエルはマリオとリカコに武器を出すように指示した。
「ヒカル、これが俺たちが使っていた武器だ。使えるか持ってみて」
ヒカルは日本刀を持ち上げてみたが、すぐに腕がプルプル震えていた。
「重っ……これ、無理かも」
ミチルが肩をすくめて言った。
「ヒカルさんって、転生前の握力10キロだったよね。鉄棒にぶら下がれなかったし」
「うっ、……ミチル、それは言わないで……」
リカコが笑った。
「それなら、まずは魔力で補強しましょう」
「じゃぁ、ボウガンは?」
「あれ~、軽いぞ。これなら撃てそうです」
◇ ◇ ◇ ◇
洞窟に入る前にウリエルが解説してくれた。
「リコマ山は、ナニサカ市からもエラポリ市からも遠く、誰も来ません」
「でも、魔鉱石は洞窟でかなりの量が採れます。午後からの目標はヒカルさんとミチルさんのレベルアップと素材採取を兼ねています。それと、遅くなれば今夜はここでキャンプをしても良いでしょう」
ヒカルはボウガンのストラップを肩にかけ、ミチルはスタッフを握り直した。 洞窟の入り口は、苔むした岩の裂け目のように静かに口を開けていた。
「じゃあ、行こうか」マリオが声をかけた。 順番はヒカル、ミチル、マリオ、リカコの順だった。
「洞窟の魔物は弱いですが、油断は禁物です。魔鉱石の採取も忘れずに」
「マリオさん、レベルアップ、してきます」
バサバサ「うわ~」
いきなり、岩蝙蝠が飛び出してきたのでヒカルはミチルに抱きつき、及び腰になっていた。
「ヒカル、いきなり洞窟に入らずに生活魔法を使おうか」
「はい」
「ライトボール」
「ミチルさん、タブレットの赤い点に注意するのよ」
洞窟にいたのはゴブリンだった。ヒカルはボウガンの引き金に指を掛けて打ち出した
バシュ、ギギ、
「ミチル、当たった」
「ヒカルさん、前、前」
うわ~ ズテッ 「ストーンバレット」
バシュ、バシュ、バシュ、マリオは石礫の魔法でゴブリンを瞬殺した。
「ヒカル、大丈夫よ。怖がらないで」
ミチルはヒカルの手を強く握った。その時、魔力の還流が起こり、ヒカルの体が光った。
《初級魔法開放》
「マリオさん、いま何か言いましたか?」
「言ってないよ、それより常に前を見るんだ」
「ストーンバレット」「ストーンバレット」「ストーンバレット」
バシュ、バシュ、バシュ、グギャ、グエ、グギョ、ヒカルはストーンバレットを取得した。
ミチル、ストーンバレットを一緒に唱えて」
「「ストーンバレット」」「「ストーンバレット」」
洞窟のゴブリンは全て倒したようだった。
「「うわぁ~、洞窟の壁が光っている」」
「ヒカル、見とれていないで採取が先だ」
ヒカルとミチルは初めて見る魔鉱石に驚いて暫く呆然と立ち尽くしていた。
「ヒカル、収納《インベントリー》を使おうか」
「収納《インベントリー》」
洞窟の魔鉱石は全て収納された。
「リカコ、一旦外に出よう」
「ええ、ミチルさんも急いで」
マリオとリカコは急いで、アウトドアチェアを具現化で用意した。
ピコーン、ピコーン、ピコーン……
「マリオさん、気持ち悪いです」
「リカコさん、私もきぼちわるい……」
二人はレベルアップからくる魔力酔いを起こして地面にへたり込んでいた。
「マリオさん、リカコさん、魔力安定剤を作りましょう」
「材料は、セレニア草と月光花ですが、この近くに群生していますので直ぐに採取できます」
「ウオーターボール」
「クラッシュ・ドライ」
リカコは採取した薬草を洗浄、乾燥、粉砕と一連の作業を終えていた。
マリオが小型の薬師の鍋を用意したので、リカコが鍋に材料を入れた。
「サンクチュアリ」
「マリオさん、出来たわ」
「私たちも飲みましょう」
「うん、スポーツドリンクに似た爽やかな味だね」
「そうね、これなら普通に飲めるわ」
「ヒカル、ミチル、マナポーションよ」
「ミチル、気持ち悪いのが治ったね」
「ほんと、スッキリするね」
二人はマナポーションを飲んで魔力が体に馴染んできたようだった。
「マリオさん、具現化でポーションの瓶を作りましょう」
マリオは具現化を発動して普通のドリンク剤の瓶を作りマナポーションを入れた。瓶のフタは具現化でコルク材で作りはめ込んだ。
「皆さん、今日のレベルアップはここまでです」
「ヒカルさんとミチルさんはこれからキャンピングカーを作っていただき、ゆっくり休んでください」
「ヒカル、これが君たちのキャンピングカーだ。ミチルさんと一緒に作ってみようか」
「「はい」」
「ミチル、手伝って」
「いいわよ」
二人は手をつないで魔力を循環させると、マリオたちと同じキャンピングカーが出来がった。
「ヒカルさん、すごいね」
「ミチル、中に入ってみようよ」
「うわぁ~、私たちの部屋だよね」
「うん、そうだね」
続く──
----------------------------------
「ヒカルさん、おめでとうございます。依頼達成ですよ」受付嬢は銀貨1枚をヒカルに渡した。
「ありがとうございます」
「やっすー、マリオさん、この報酬安すぎですが……」
「ヒカル、この世界の基準だと、賃金はそんなもんだよ。銀貨1枚が元の世界の1万円で贅沢をしなければ三食を三日間は食べられるはずだよ」
「マリオは、ヒカルとミチルに食堂で昼のランチが銅貨1枚、元のお金で約1000円で食べられることを教えた」
「本当ですね。僕が間違っていました」
「お昼を食べたら、特訓だ」
「「はい」」
マリオは一旦、家に戻って転移門を取り出した。
「マリオさん、そのドアはもしかして~アレですか?」
「うん、何処にでも行けるドアだね」
「えっ、何でオポタ川で使わなかったのですか?」
「それは、ヒカルたちの体力を見るためだよ」
「じゃぁ、行こうか」
マリオがドアを開けるとそこは森の湖だった。
「ミチル、絶対にずるいよね」
「ヒカルさん、私たちも早くレベルを上げれば使えるわ」
「そうだね」
「ウリエル、ヒカルとミチルのレベルアップに最適な場所に連れて行ってくれ」
「了解しました。レベルアップの最適地はリコマ山です。キャンピングカーを出して乗り込んでください」
「マリオさん、キャンピングカーって、絶対におかしいです」
「なら、ヒカルだけ歩いていくか?」
「いえ、そんな訳ではありません」
ヒカルはラノベ研究の知識から、転生勇者は最初からチートを持っていると信じていた。勇者の移動は馬車だったが、勇者は豪華な箱馬車で移動するのだとマリオとリカコに熱心に語った。
「ヒカルさん、そもそも箱馬車に乗れるのは貴族だけですよ」
「今のヒカルさんたちの身分では、平民ですから宿も平民用、馬車も乗合馬車だけです」
「ウリエル、そんなに身分差があるの?」
「はい、このイポニアは貴族が治めている国ですから、我々は最底辺の人種です」
「但し、ヒカルさんもミチルさんもレベルが上って99になれば国王も貴族も手出しはできません」
この後、ウリエルはリコマ山に着くまで、延々とこの世界の一般常識を二人に教えた。キャンピングカーはリコマ山に30分で到着した。
「マリオさん、キャンピングカーは早いですね」
「そうだろう、乗合馬車は遅いし、お尻が痛いしで、こんなスピードでは着かないね」
「そうでしょうね」
「ヒカルさん、ミチルさん。LV15になれば中級魔法が全開放されます」
「中級魔法って、どんなのがあるんですか?」
「範囲回復、魔力強化、属性強化などですね。戦闘でも支援でも役立ちます」
「じゃあ、LV25になれば?」
「上級魔法が使えるようになります。ですが……すべての上級魔法を扱えるのはLV45以上です」
「そんなに先なんですね……」
「いいえ。今日、明日中にはLV45に届きます」
ウリエルはマリオとリカコに武器を出すように指示した。
「ヒカル、これが俺たちが使っていた武器だ。使えるか持ってみて」
ヒカルは日本刀を持ち上げてみたが、すぐに腕がプルプル震えていた。
「重っ……これ、無理かも」
ミチルが肩をすくめて言った。
「ヒカルさんって、転生前の握力10キロだったよね。鉄棒にぶら下がれなかったし」
「うっ、……ミチル、それは言わないで……」
リカコが笑った。
「それなら、まずは魔力で補強しましょう」
「じゃぁ、ボウガンは?」
「あれ~、軽いぞ。これなら撃てそうです」
◇ ◇ ◇ ◇
洞窟に入る前にウリエルが解説してくれた。
「リコマ山は、ナニサカ市からもエラポリ市からも遠く、誰も来ません」
「でも、魔鉱石は洞窟でかなりの量が採れます。午後からの目標はヒカルさんとミチルさんのレベルアップと素材採取を兼ねています。それと、遅くなれば今夜はここでキャンプをしても良いでしょう」
ヒカルはボウガンのストラップを肩にかけ、ミチルはスタッフを握り直した。 洞窟の入り口は、苔むした岩の裂け目のように静かに口を開けていた。
「じゃあ、行こうか」マリオが声をかけた。 順番はヒカル、ミチル、マリオ、リカコの順だった。
「洞窟の魔物は弱いですが、油断は禁物です。魔鉱石の採取も忘れずに」
「マリオさん、レベルアップ、してきます」
バサバサ「うわ~」
いきなり、岩蝙蝠が飛び出してきたのでヒカルはミチルに抱きつき、及び腰になっていた。
「ヒカル、いきなり洞窟に入らずに生活魔法を使おうか」
「はい」
「ライトボール」
「ミチルさん、タブレットの赤い点に注意するのよ」
洞窟にいたのはゴブリンだった。ヒカルはボウガンの引き金に指を掛けて打ち出した
バシュ、ギギ、
「ミチル、当たった」
「ヒカルさん、前、前」
うわ~ ズテッ 「ストーンバレット」
バシュ、バシュ、バシュ、マリオは石礫の魔法でゴブリンを瞬殺した。
「ヒカル、大丈夫よ。怖がらないで」
ミチルはヒカルの手を強く握った。その時、魔力の還流が起こり、ヒカルの体が光った。
《初級魔法開放》
「マリオさん、いま何か言いましたか?」
「言ってないよ、それより常に前を見るんだ」
「ストーンバレット」「ストーンバレット」「ストーンバレット」
バシュ、バシュ、バシュ、グギャ、グエ、グギョ、ヒカルはストーンバレットを取得した。
ミチル、ストーンバレットを一緒に唱えて」
「「ストーンバレット」」「「ストーンバレット」」
洞窟のゴブリンは全て倒したようだった。
「「うわぁ~、洞窟の壁が光っている」」
「ヒカル、見とれていないで採取が先だ」
ヒカルとミチルは初めて見る魔鉱石に驚いて暫く呆然と立ち尽くしていた。
「ヒカル、収納《インベントリー》を使おうか」
「収納《インベントリー》」
洞窟の魔鉱石は全て収納された。
「リカコ、一旦外に出よう」
「ええ、ミチルさんも急いで」
マリオとリカコは急いで、アウトドアチェアを具現化で用意した。
ピコーン、ピコーン、ピコーン……
「マリオさん、気持ち悪いです」
「リカコさん、私もきぼちわるい……」
二人はレベルアップからくる魔力酔いを起こして地面にへたり込んでいた。
「マリオさん、リカコさん、魔力安定剤を作りましょう」
「材料は、セレニア草と月光花ですが、この近くに群生していますので直ぐに採取できます」
「ウオーターボール」
「クラッシュ・ドライ」
リカコは採取した薬草を洗浄、乾燥、粉砕と一連の作業を終えていた。
マリオが小型の薬師の鍋を用意したので、リカコが鍋に材料を入れた。
「サンクチュアリ」
「マリオさん、出来たわ」
「私たちも飲みましょう」
「うん、スポーツドリンクに似た爽やかな味だね」
「そうね、これなら普通に飲めるわ」
「ヒカル、ミチル、マナポーションよ」
「ミチル、気持ち悪いのが治ったね」
「ほんと、スッキリするね」
二人はマナポーションを飲んで魔力が体に馴染んできたようだった。
「マリオさん、具現化でポーションの瓶を作りましょう」
マリオは具現化を発動して普通のドリンク剤の瓶を作りマナポーションを入れた。瓶のフタは具現化でコルク材で作りはめ込んだ。
「皆さん、今日のレベルアップはここまでです」
「ヒカルさんとミチルさんはこれからキャンピングカーを作っていただき、ゆっくり休んでください」
「ヒカル、これが君たちのキャンピングカーだ。ミチルさんと一緒に作ってみようか」
「「はい」」
「ミチル、手伝って」
「いいわよ」
二人は手をつないで魔力を循環させると、マリオたちと同じキャンピングカーが出来がった。
「ヒカルさん、すごいね」
「ミチル、中に入ってみようよ」
「うわぁ~、私たちの部屋だよね」
「うん、そうだね」
続く──
----------------------------------
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる