弱くてすみません~偽認定された夫婦の冒険記~

にしのみつてる

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第1章

一般常識とレベリング~やっぱりチートは楽しいね~

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 昼前の冒険者ギルドは閑散としていたので、買い取りカンターは空いていた。ヒカルは受付嬢に依頼が終わったことを告げ、マグワート100束をカウンターの上に置いた。

「ヒカルさん、おめでとうございます。依頼達成ですよ」受付嬢は銀貨1枚をヒカルに渡した。
「ありがとうございます」

「やっすー、マリオさん、この報酬安すぎですが……」
「ヒカル、この世界の基準だと、賃金はそんなもんだよ。銀貨1枚が元の世界の1万円で贅沢をしなければ三食を三日間は食べられるはずだよ」

「マリオは、ヒカルとミチルに食堂で昼のランチが銅貨1枚、元のお金で約1000円で食べられることを教えた」
「本当ですね。僕が間違っていました」

「お昼を食べたら、特訓だ」
「「はい」」
 マリオは一旦、家に戻って転移門を取り出した。

「マリオさん、そのドアはもしかして~アレですか?」
「うん、何処にでも行けるドアだね」

「えっ、何でオポタ川で使わなかったのですか?」
「それは、ヒカルたちの体力を見るためだよ」

「じゃぁ、行こうか」
 マリオがドアを開けるとそこは森の湖だった。

「ミチル、絶対にずるいよね」
「ヒカルさん、私たちも早くレベルを上げれば使えるわ」
「そうだね」

「ウリエル、ヒカルとミチルのレベルアップに最適な場所に連れて行ってくれ」
「了解しました。レベルアップの最適地はリコマ山です。キャンピングカーを出して乗り込んでください」

「マリオさん、キャンピングカーって、絶対におかしいです」
「なら、ヒカルだけ歩いていくか?」

「いえ、そんな訳ではありません」
 ヒカルはラノベ研究の知識から、転生勇者は最初からチートを持っていると信じていた。勇者の移動は馬車だったが、勇者は豪華な箱馬車で移動するのだとマリオとリカコに熱心に語った。

「ヒカルさん、そもそも箱馬車に乗れるのは貴族だけですよ」
「今のヒカルさんたちの身分では、平民ですから宿も平民用、馬車も乗合馬車だけです」

「ウリエル、そんなに身分差があるの?」
「はい、このイポニアは貴族が治めている国ですから、我々は最底辺の人種です」
「但し、ヒカルさんもミチルさんもレベルが上って99になれば国王も貴族も手出しはできません」

 この後、ウリエルはリコマ山に着くまで、延々とこの世界の一般常識を二人に教えた。キャンピングカーはリコマ山に30分で到着した。

「マリオさん、キャンピングカーは早いですね」
「そうだろう、乗合馬車は遅いし、お尻が痛いしで、こんなスピードでは着かないね」
「そうでしょうね」

「ヒカルさん、ミチルさん。LV15になれば中級魔法が全開放されます」
「中級魔法って、どんなのがあるんですか?」
「範囲回復、魔力強化、属性強化などですね。戦闘でも支援でも役立ちます」
「じゃあ、LV25になれば?」
「上級魔法が使えるようになります。ですが……すべての上級魔法を扱えるのはLV45以上です」
「そんなに先なんですね……」

  「いいえ。今日、明日中にはLV45に届きます」
 ウリエルはマリオとリカコに武器を出すように指示した。

「ヒカル、これが俺たちが使っていた武器だ。使えるか持ってみて」

 ヒカルは日本刀を持ち上げてみたが、すぐに腕がプルプル震えていた。
「重っ……これ、無理かも」
  ミチルが肩をすくめて言った。 
「ヒカルさんって、転生前の握力10キロだったよね。鉄棒にぶら下がれなかったし」
「うっ、……ミチル、それは言わないで……」 

 リカコが笑った。
「それなら、まずは魔力で補強しましょう」

「じゃぁ、ボウガンは?」
「あれ~、軽いぞ。これなら撃てそうです」

 ◇ ◇ ◇ ◇

 洞窟に入る前にウリエルが解説してくれた。
「リコマ山は、ナニサカ市からもエラポリ市からも遠く、誰も来ません」
「でも、魔鉱石は洞窟でかなりの量が採れます。午後からの目標はヒカルさんとミチルさんのレベルアップと素材採取を兼ねています。それと、遅くなれば今夜はここでキャンプをしても良いでしょう」


 ヒカルはボウガンのストラップを肩にかけ、ミチルはスタッフ魔導杖を握り直した。 洞窟の入り口は、苔むした岩の裂け目のように静かに口を開けていた。

「じゃあ、行こうか」マリオが声をかけた。 順番はヒカル、ミチル、マリオ、リカコの順だった。
「洞窟の魔物は弱いですが、油断は禁物です。魔鉱石の採取も忘れずに」

「マリオさん、レベルアップ、してきます」
 バサバサ「うわ~」
 いきなり、岩蝙蝠が飛び出してきたのでヒカルはミチルに抱きつき、及び腰になっていた。

「ヒカル、いきなり洞窟に入らずに生活魔法を使おうか」
「はい」
ライトボール光球
「ミチルさん、タブレットの赤い点に注意するのよ」

 洞窟にいたのはゴブリンだった。ヒカルはボウガンの引き金に指を掛けて打ち出した
 バシュ、ギギ、
「ミチル、当たった」
「ヒカルさん、前、前」
 うわ~ ズテッ 「ストーンバレット」
 バシュ、バシュ、バシュ、マリオは石礫ストーンバレットの魔法でゴブリンを瞬殺した。

「ヒカル、大丈夫よ。怖がらないで」
 ミチルはヒカルの手を強く握った。その時、魔力の還流が起こり、ヒカルの体が光った。
 《初級魔法開放》
「マリオさん、いま何か言いましたか?」
「言ってないよ、それより常に前を見るんだ」

「ストーンバレット」「ストーンバレット」「ストーンバレット」
 バシュ、バシュ、バシュ、グギャ、グエ、グギョ、ヒカルはストーンバレットを取得した。
 ミチル、ストーンバレットを一緒に唱えて」
「「ストーンバレット」」「「ストーンバレット」」

 洞窟のゴブリンは全て倒したようだった。
「「うわぁ~、洞窟の壁が光っている」」

「ヒカル、見とれていないで採取が先だ」
 ヒカルとミチルは初めて見る魔鉱石に驚いて暫く呆然と立ち尽くしていた。

「ヒカル、収納《インベントリー》を使おうか」
「収納《インベントリー》」
 洞窟の魔鉱石は全て収納された。

「リカコ、一旦外に出よう」
「ええ、ミチルさんも急いで」
 マリオとリカコは急いで、アウトドアチェアを具現化で用意した。
 ピコーン、ピコーン、ピコーン……

「マリオさん、気持ち悪いです」
「リカコさん、私もきぼちわるい……」
 二人はレベルアップからくる魔力酔いを起こして地面にへたり込んでいた。

「マリオさん、リカコさん、魔力安定剤マナ・ポーションを作りましょう」
「材料は、セレニア草と月光花ですが、この近くに群生していますので直ぐに採取できます」

「ウオーターボール」
「クラッシュ・ドライ」
 リカコは採取した薬草を洗浄、乾燥、粉砕と一連の作業を終えていた。

 マリオが小型の薬師の鍋を用意したので、リカコが鍋に材料を入れた。

「サンクチュアリ」
「マリオさん、出来たわ」
「私たちも飲みましょう」

「うん、スポーツドリンクに似た爽やかな味だね」
「そうね、これなら普通に飲めるわ」

「ヒカル、ミチル、マナポーションよ」

「ミチル、気持ち悪いのが治ったね」
「ほんと、スッキリするね」
 二人はマナポーションを飲んで魔力が体に馴染んできたようだった。


「マリオさん、具現化でポーションの瓶を作りましょう」
 マリオは具現化を発動して普通のドリンク剤の瓶を作りマナポーションを入れた。瓶のフタは具現化でコルク材で作りはめ込んだ。

「皆さん、今日のレベルアップはここまでです」
「ヒカルさんとミチルさんはこれからキャンピングカーを作っていただき、ゆっくり休んでください」

「ヒカル、これが君たちのキャンピングカーだ。ミチルさんと一緒に作ってみようか」
「「はい」」

「ミチル、手伝って」
「いいわよ」
 二人は手をつないで魔力を循環させると、マリオたちと同じキャンピングカーが出来がった。

「ヒカルさん、すごいね」
「ミチル、中に入ってみようよ」

「うわぁ~、私たちの部屋だよね」
「うん、そうだね」

続く──
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