弱くてすみません~偽認定された夫婦の冒険記~

にしのみつてる

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第2章

突然の墜落でも、無事に帰れました~タブレットの故障と強制書き換え~

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「ウリエル、目的地をツクシノヒムカのイメラノトス市に設定だ!」
 ウリエル:「了解しました」

 キャンピングカーは高度三千メートルを維持し、時速五百キロで順調に飛行していた。南の海を見下ろす空路は平穏そのもの。時刻は昼下がりであった。

 アワシマスを離陸後、20分位経った時、突如、機体が激しく揺さぶられた。

「どうしたの、マリオさん!」
「なんだ、この揺れは!? 」

「ウリエル、緊急事態か?」
 ウリエルは沈黙したまま全く応答がない。ダッシュボードに置いたタブレットは沈黙していた。

「マリオさん、魔石板の魔力が無くなったかも知れません」
「ヒカル、電池切れだな」
「そうです」
 キャンピングカーは失速し、突然、急降下を始めた。幸いに魔法障壁は維持していたものの、機体は急速に高度を下げ、高度30mくらいの高さでマリオたちは手をつないで飛翔魔法で外に出た。墜落するキャンピングカーを慌てて収納し、事なきを得た。

「ヒカル、どうやら、俺たちは何処かの平野に着陸したようだね」
「マリオさん、それよりも、住居の確保です。僕のキャンピングカーも出しますが、マリオさんもを出して下さい」

 マリオはキャンピングカー横のスライド板を開けて魔石版10枚を取り出した。全てが黒く煤けて完全に焼き切れていた。動力を失ったウリエルは起動不可能で、応答しない。

「困ったな、予備の魔石版なんて持ってないし……待てよ、収納の中に無いかかな?」
「ヒカル、魔鉱石の在庫もなかったよ」

「そうですか、困りましたね」

「マリオさん、食べ物は田舎パンが2つだけよ。あとは……」
「リカコさん、転移門で、一旦、ナニサカの借家に戻れませんか?」

「ミチル、そうだった、私たちいつでもナニサカに帰れるわ」

「マリオさん、転移門よ」
「マリオは転移門を出して、4人はナニサカの家に戻った」


 四人は無事にナニサカの借家に戻り、マリオたちはまず故障の原因究明に取り掛かった。
 真っ黒に焼けた魔石版と、沈黙したままのウリエルのタブレットを見つめる。

「ヒカル、原因は魔石版の焼き切れで決定だけど……それにしても急激だったね」
「何かしら、異常な魔力の干渉があったとしか思えないな」

「そうですね、魔力の干渉が濃厚だと思います」
 マリオとヒカルは考え込んでいたが、結局、結論には至らなかった。時間は既に午後2時を過ぎていた。

「リカコさん、私、買い物に行ってきます」
「ミチル、私も一緒に行くわ。マリオさん、ヒカルさん、旅を再開するなら食料の買い出しよ」

 リカコは遮光器土偶を一旦、借家の神棚に戻した。土偶は依然沈黙したままで何も言わなくなった。


 四人はナニサカの市場で、食料品を買い込んだ。収納に入れておけば生物でも腐らないので。野菜、肉類、田舎パン、卵、牛乳、バター、チーズを買った。 マリオは近くの酒屋で口当たりの良いスパーリングワインを箱で買った。 ヒカルとミチルは、オクタ焼きの材料のキャベツ、オーク肉を多めに買ったのだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 買い物から戻り、再び借家にて……

「ねえ、クレイくん。あなたが何か隠しているんでしょ」
 クレイくんの瞳がぼうっと赤く光り、微弱な念話が届く。

(…ども、すんませ~ん。最近、ちょっと力が戻りすぎて魔力が暴走しちゃいまして…)
「はぁ~」マリオは目を吊り上げた。
「犯人はお前か……。俺たちが落ちた原因は全部お前のせいってことか?」

(ぴょんぴょん、ぴょ~ん……と!)
 訳の分からないギャグで誤魔化すクレイくんを見て、一同は呆れるしかなかった。

「マリオさん、とりあえず、ウリエルの再起動が必要です。この起動しないタブレットを何とかしないと」
 ヒカルがタブレットを起動しようとしたその瞬間、クレイくんは突然、その小さな手を伸ばし、マリオとヒカルのタブレットを異次元空間に放り込んだ。

 ゴオオッという音とともに、空間の歪みからタブレットが戻ってきたとき、背面にマリオのタブレットは”二重輪に花菱”の家紋、ヒカルのタブレットは”抱き稲”の家紋が施され、全く別の、日本仕様の端末に強制的に書き換えられていた。

「あらまあ。タブレットの中身まで勝手にいじったのね」
「まさか、俺たちのキャンピングカーまでいじったのか?」

 マリオとヒカルは予感を覚え、収納からそれぞれのキャンピングカーを呼び出した。一瞬の空間の歪みと、クレイくんの赤く光る瞳。二台のキャンピングカーは、見る間に日本神界仕様へと強制的に書き換えられた。

 飛行性能や魔石版の効率が劇的に向上したのが、魔力の流れから見て取れた。

「リカコさん、これで、トリーガタ山へ向かえますね。魔鉱石さえ手に入れば、動力が確保できます」

「それより、このクレイくんの神力暴走を何とかしねえと。まったく、厄介な土偶を拾ったもんだね」

「マリオさん、仕方ないわよ。本命の魔鉱石の採れる場所を教えてもらうのが先決よ」
 リカコは首から提げた勾玉の傍で静かに鎮座する遮光器土偶を手に取った。


「今日からお前はクレイくんだ。いいか、クレイくん。ここいらで、この魔石版の代わりになる魔鉱石が採れる場所を知っているか?」

 マリオの言葉に呼応するように、クレイくんの目がぼうっと赤く光り、古代日本的な神力の片鱗を見せた。
(…トリーガタ山へ)

「トリーガタ山ね。確か、イポニアのタカノモトケン(高知県)にあったはずよ」
「元の場所まで転移してから飛翔魔法<フライ>で向かいましょう。低空でなら魔力消費も抑えられます」

「それが一番速いですね。僕たちの魔力量なら問題ありません」

 四人は飛翔魔法<フライ>を発動し、何処かの平野に転移した。時速㊿キロ程度での山脈を越えた。キャンピングカーより高度を抑えた低空飛行で、マジックバリヤで風を切り裂きながら進む。

 クレイくんの導きでたどり着いた、未開拓の魔鉱石産地──トリーガタ山。

 四人が着地した途端、激しい地響きとともに、岩肌から魔猪の群れが突進してきた。どうやら魔猪の巣窟だったらしいた。その体躯は小型の馬ほどもあり、勢いを増して襲いかかる。

 マリオは即座に小太刀型魔導銃「ヤエン丸」を構えた。
「ヒカル、肩慣らしでやっつけよう」
「はい」
 ズドンッ、ズドンッ。
 一発の魔力弾が先頭の魔猪の頭を打ち抜き、群れの突進を止めた。リカコとミチルが後方から炎と雷の魔法を放ち、残りの魔猪を一掃した。

「マリオさん、洞窟の入口ですね。ここに魔鉱石があるのですか?」
「たぶん、そうだろうね。まだ鉱山として発見されていない場所のようだね」

「じゃあ、無断で採っても誰にも怒られませんね」
「そうだね、ヒカル、入り口からこの有様だと、内部は厄介そうだ」

 マリオはヤエン丸を鞘に戻し、光球を浮かべて洞窟の暗闇を見据えた。勾玉は静かに胸元で揺れている。


 光球の光が、洞窟の湿った壁面を照らす。洞窟内部は、一面の魔鉱石で、ダンジョン化はしていなかった。

「やはり、採掘された形跡はありませんね。こんな場所を正確に案内できるなんて、クレイくんの神力は本物ですね」
「マリオさん、警戒を怠らないで」
 マリオ:「言われなくてもな」

「インベントリー、洞窟の魔鉱石は全て回収された」

「みんな、一旦、洞窟の外に出ようか」
「4人は転移で、瞬間移動をした」

「リカコ、ログハウスを出すね」
「ええ、お願い」

こうして、四人はトリーガタ山で一夜を明かすことなった。

 続く──
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