弱くてすみません~偽認定された夫婦の冒険記~

にしのみつてる

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第1章

エラフィ鍋とキマイラ退治

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「まもなくエラポリ市に着陸します」
「ウリエル、ヤッロセ山の麓で降ろしてくれ」ヤッロセはエルフの言葉で『輝ける若草の丘』と訳すと、ウリエルが教えてくれた。

「マリオさん、了解しました。結界は常時発動していますが、着陸後にキャンピングカーを収納してして下さい」

「ところで、俺たちはエラポリ市で何をするんだろうね。神様から具体的な神託も出ていないし」
「そうよ、神様は『我らに知らせるのじゃ』だけだったわよ」

「こういう時は神様に直接聞いてみようよ」

「バッカス様、アリアドネ様、聞こえていますか?」
「マリオとリカコか、見えておるのじゃ」
「えっ、見えているって、タブレットで見ていらっしゃるのですか?」

「そうじゃ、タブレットはゼウス様とヘーラ様の許可が出たので、今回のバージョンアップで神界と常時通信が出来るようにテレビ電話の機能が付いたのじゃ」

「では、エラポリ市での具体的な活動をお教え下さい」

「1つ目は神殿の有無を確かめて欲しかったのじゃ」
「2つ目は勇者、聖女の有無じゃ」

「2つ共問題が無ければ、ここに我らの分院を建てるのじゃが、オリンポスの神々が他神の領地に足を踏み入れることは神界の規則で固く禁じられておるので汝らにお願いしたのじゃ」

「それから、ヘーラ様の強い希望でスイーツを探すのも今回の大事な仕事なので必ず報告するのじゃ」
「分かりました。スイーツ探しはリカコが責任を持って担当いたします」

 こうして神様との通信が終わったのでマリオとリカコの二人はエラポリ市のヤッロセ山の麓の麓に降り立っていた。二人は市内に続く大通りを歩いていたが、観光客も多かったがエラポリ市は他の街と少し様子が違っていたのだった。

「マリオさん鹿よ、鹿」
 エラポリ市はエラフィ鹿が聖獣として市民から大切にされていて、普通に市民と一緒に暮らしていたのだった。
「マリオさん、小鹿って可愛いね」

「マリオさん、お味噌と醤油が売っているよ」
「うん、そうだね」

「あと、お米も売ってるね、鶏肉と卵も買っていこうよ」
「そうだね」

 今日のリカコは妙にはしゃいでいるとマリオは思った。大通りの食料品店に入って自分達が知っている食材を買い込んだついでに店の主人にエラフィのいわれを聞いてみた。

「ああ、エラフィのことかい? それはな、エラポリ市の始まりに関わる大事な話なんだよ」

「今から二千年前、エルフの祖神が白いエラフィに乗ってヤッロセ山に降臨されたそうだ。 その祖神は、ヤムロ村の森エルフたちに味噌や醤油の作り方を授け、豊かな食文化の礎を築いたんだ」

「だがその後、国譲りの戦いが起きてな……ガイア様との力比べに敗れた祖神は、東方の国へと隠遁されたらしい。 東方の国ってのが、イポニアの東の地方だって言う者もいれば、もっと遠くの東の大陸って言っている者もいるけど誰も知らないし、場所が分からないから船で行けないんだ」

「それ以来、エラフィは祖神の象徴として、この街で聖獣とされてるんだ。味噌も醤油も、ヤムロ村の技術を受け継いで、今じゃエラポリ市の名物さ。 うちの味噌も、森汁の系譜を継いでるんだよ。誇りに思ってるさ」
 ハーフエルフの血を引く店の主人は自慢げにエラポリ市の歴史を教えてくれた。

「じゃぁ、エラポリ市にはナニサカ市のような教会は無いのでしょうか?」
「昔は有ったかも知れないが、ご覧のように鹿が有名なだけだよ」

「リカコ、冒険者ギルドに行って他にも話を聞いてみようよ」
「ええ、そうしましょう」

「エラポリ市の冒険者ギルドにようこそ」
「ご用件は何でしょうか?」

「私どもはナニサカ市から、こちらに来たのですが、仕事とか出来るのでしょうか?」
「はい、仕事の依頼は多数出ておりますが、その前にお二人のステータスを拝見させていただいてもよろしでしょうか?」

「ええ、構いませんよ」
「それでは、お二人共、手を魔力測定盤の上に乗せていただけますか」

 ◇ ◇ ◇ ◇

【名前】マリオ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】錬金術師
【スキル】
 秘匿
【LV】25
【MP】****

【名前】リカコ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】魔女
【スキル】
 秘匿
【LV】25
【MP】****

 ◇ ◇ ◇ ◇

「ギルマス、ナニサカ市の錬金術様と魔女様が来られました」
「おお、そうか、じゃぁ、あの案件がお願いできるな」
「ええ、そうですね」

 ギルド受付嬢のギルマスを呼ぶ大声は、エラポリ市の自称:ベテラン冒険者たちに対抗心の火をつけてしまった。
「何だあの貧弱そうな夫婦は、装備もまともじゃないぞ」
「ナニサカで食い詰めて流れてきたんじゃねぇの?」
「あの女、ちょっと可愛いな。男を鍛え直してからいただこうぜ」

「マリオさん……あの人たち、私たちを狙ってるかも」
「リカコ、目を合わせないようにしよう。ここは騒がず、静かに通り抜けるのが一番だ」

 やがて、二人は二階の応接室に案内された。冒険者たちはよそ者がいきなりVIP特別対応なのでブーイングが起きていた。

「あの人達、Cランクでレベル45ですよ」
  新人受付嬢の一言に、場の空気が一瞬で変わった。 冒険者たちは口をつぐみ、誰もが目を逸らした。

「下で冒険者たちが騒いでいたようだが申し訳なかった」
 ギルドマスターがいきなり謝罪したのには驚いたが、当たり前の対応だった。

「依頼だが、キマイラを退治して欲しいのだ」
「先程の騒いだ冒険者たちではパーティを組んでも全滅なのだよ」

 ギルドマスターの話によると、オラチョリオ村の集落にキマイラが住み着いて村人たちが困っているとの事だった。エラポリ市からオラチョリオ村に行くにはバラカシ町まで乗り合い馬車で半日かけて南下してそこから馬車を乗り換えて半日との事だった。

「分かりました。今からオラチョリオ村に行ってきます」
「マリオさん、難しそうな仕事を引き受けたけど、本当に大丈夫なの?」
「うん、キャンピングカーで飛んで行って、さっさと済ませようよ」

 マリオは森の中でキャンピングカーを出して、二人は乗り込んだ。

「ウリエル、オラチョリオ村までお願いします」
「了解しました。オラチョリオ村まではおよそ10分の飛行です」

 オラチョリオ村は山間に出来た小さな集落だったので、キャンピングカーで走行するには道が狭くて不都合だった。

「ウリエル、小さな乗り物は作れないかなぁ?」
「それでは、世界辞書の中に四輪バギーのお手本が有りますので、今から作りましょう」

 マリオはリカコに手を握ってもらい、タブレットの画面を見ながら創造で四輪バギー作った。出来上がった四輪バギーはタイヤが付いていないので浮上して走行するとウリエルが教えてくれた。

「リカコしっかりつかまってね」
「ええ、大丈夫よ」

 マリオは四輪バギーで村の中を闇雲に走り回るよりも、ウリエルの探索機能を使って魔物がいる場所を特定して魔物が潜んでいる洞窟は2箇所に絞られたのだった。

「よし、こっちにしようよ」
 バギーは洞窟の中も浮上したまま走れるので、マリオたちの移動速度は格段に向上していた。

「マリオさん、前方に赤い点、停まって」
 魔導ライフルの暗視スコープを覗くと、洞窟の奥ではキマイラが待ち構えていた。

「エンチャント・サンダーボルト✕10」
 マリオは雷魔法の10掛けを魔導ライフルに付与した。キマイラに狙いを定めて……ズダーン、キマイラは雷撃に当たってあっさり死んだ。

「リカコ、まだ光っている?」
「いいえ、大丈夫よ」
 マリオとリカコは恐る恐る、洞窟の奥に行き、キマイラを3体を収納した。どうやら、誘導雷で3体とも感電死したようだ。

「もう一つの洞窟も退治しないといけないね」
「ええ、そうしましょう」

 もう一つの洞窟にはキマイラはいなかったが、代わりにオークが20体ほどいた。魔導ライフルでオークは全て倒してきたので収納にしまった。

「ウリエル、他に魔物は居るかい?」
「今の所は気配はありません」

 マリオは転移門を出して、冒険者ギルドの裏に転移した。

 受付にってオラチョリオ村の魔物を倒した事を伝えて、倉庫へ案内されたのだった。

「お前ら、もう帰ってきたのか?」
「ええ、転移魔法を使ったからです」

「はぁ?」
「お前たち、失われた古代魔法を使えるのか?」

「はい、神様に許可をもらったので転移門は自分たちで作ったのです」

 マリオは収納からキマイラを3体とオークが20体を収納から出してきた。

「こんな化け物が3体もいたのか?」
「それと、オークの20体だ」

「魔物は全てうちで買い取るが、別で報奨金が出ると思うので1週間後に来てくれ」
「お前らは伊達に勇者と聖女を名乗っている訳でも無いし、実力は本物のようだな」
「ありがとう」

「マスター、勇者と聖女は、エラポリ市にいるのですか?」
「いないよ、Cランク冒険者のカップルは、『自称、カズラダンジョンの勇者と聖女』と名乗ってダンジョン内で英雄気取りをしている輩ばかりだよ」

「分かりました。実はエラポリ市の勇者と聖女を調べるようにバッカス様とアリアドネ様から神託が下りていたのです」

「そうだったのか、このエラポリ市には勇者も聖女は一人もいないよ」
「Cランク冒険者のグループが数組いるだけだ」

「それから教会は有るのでしょうか?」
「2000年前にはエルフの祖神を祀る建物が有ったそうだが、今は無いな」

「ありがとうございます」
 こうして、オラチョリオ村の魔物退治は余分だったが、2つの神託は終わったので、残るはスイーツ探しだけだった。


「マリオさん、エラフィ鍋って看板が出ているよ」
「本当だね、お鍋に鹿の絵が描いてあるね」

 二人はエラフィ鍋の店に入った。元はエルフ鍋と言っていたが、豆腐ときのこを牛乳と味噌で味付けした鍋の事だったが、商売上手な店主が名称を変更して人気になったと教えてもらった。

「マリオさん、エラフィ鍋って美味しいね」
「うん、美味しいです」


「デザートのきな粉団子です」
 店員さんは、食事の後で、小皿に盛った きな粉団子を出してくれた。


「素朴な味でほっこり美味しいと思うのよ」
「リカコ、『ほっこり』って、何なの」

「ゆったりとか、温かい感じだと思うわ」
「ふ~ん、癒やされるって事と同じだね」

 マリオとリカコはお茶を頂いで午後の一時を楽しんだのだった。

(話終わり)
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