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五話 【コール】
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お姉ちゃんが出て行ってから一日が経った。
やはり何時も居る存在が居ないと寂しく退屈なものだ。
お姉ちゃんが居なくなって変わった事がある。
それはお義母さん達との会話の多さだ。
今まではお姉ちゃんが居た為、
お姉ちゃん以外の人物と会話をさせてくれなかったが、
居なくなりお義父さん達が物凄く話しかけて来るようになった。
と言っても話しの内容はごく普通で、
何食べたい?とかフェルが居なくても頑張るんだぞとか。
大・魔王の会話とは思えない程普通の会話だった。
そして、今そんなお義父さん達は謁見の間に行っていて、
部屋の中はウルエ一人だけになっていた。
何度がお義父さん達が居なくなる事はあったのだが、
その時はお姉ちゃんが遊んでくれていた為気が付かなかったのだが、
改めて一人になるとこんなに静かだったんだ。と実感する。
「さて、」
静かすぎて少し慣れない気もするが、
ウルエにはやる事があるので気にしてはいられない。
ベッドに腰かけながら今までずっとやりたかった事をやる。
一度は失敗したあの能力を。
あの可愛らしい女神がウルエにくれた能力。
その能力を授かってから七年。
七年が経ってやっと使う事が出来た。
「コール」
数十秒の沈黙が流れ、
一瞬駄目なのかと思った瞬間、
突如部屋から溢れかえる程の眩い光が放たれ、
思わず目を瞑ってしまった。
瞼越しからでも分かる程の光量。
光が徐々に消えて行くのを確認し、
ウルエは恐る恐る目を開けた。
「――っ!」
艶がある美しく長い黒髪、出るところは確りと出て、
引っ込むところは確りと引っ込んでいる完璧な体。
そして、犬の様なぬいぐるみを大切そうに持っている少女。
そんな美しい少女が目の前に立っていた。
あの時と全く変わらない美貌。
唯一違う所は服装だ。
この前は薄黒いコートだったが今回は可愛らしいフリフリが付いた
女の子らしい服装だった。
「私、怒ってる」
「ごめん、なさい。」
頬をぷっくりと膨らませたエミの初めの言葉はそれだった。
何に対しての怒りなのかは分かっている為、
ウルエは素直に謝った。
「私、ずっと待ってた、
だけど一向に呼んでくれなかった
私、ものすごく怒ってる……けど、ゆるす。」
「あ、ありがとう」
七年間もコールを使わずにいたのにも関わらず、
意外とあっさり許してくれた為ウルエは戸惑った。
「全然呼んでくれないから、
こっそりと覗いてたから理由、知ってる。
それに素直に謝ってくれた。だから、ゆるす。」
「なるほど――って覗いてたの!?
と言う事はあんな事やこんな事まで見てたって事?」
「うん、見てたよ。
新――ウルエの恥ずかしいとこ、たくさん。」
髪先をくるくると指先で巻き、
若干照れくさそうにそう言うエミ。
ウルエは今までのお姉ちゃんとのやりとりを全部見られていたと思うと
物凄く恥ずかしくなり穴があったら入りたい気分だ。
「物凄く恥ずかしい……」
「ふふ、ウルエ可愛い
君のお姉ちゃんが可愛がる気持ち、わかる」
「えぇ、俺男なんだけどな……」
可愛いと言われるのは別に嫌ではないが、
男としてはどちらかと言うとカッコいいの方が嬉しい。
「さ、ウルエ。
七年分の会話、しよ。」
七年分の会話をする為にエミはベッドに腰掛けた。
七年分の会話と言っても大して話す事が無いのが事実。
ウルエの七年間と言えばお姉ちゃんパラダイスだった為、
話すとしてもお姉ちゃんの話題しかないのだ。
それにエミがウルエの事をずっと覗いてた為
お姉ちゃんの話題を出しても殆ど知っているのだろう。
「ほら、ウルエ。何か話して」
「うん……」
困った。
話題が一切出てこない。
ウルエは脳をフル回転させ話題を探した。
「あっ!」
すると、ふと、とある事を思いだした。
それは転生したばかりのあの頃の事だ。
「そう言えばさ、エミ。
俺が転生された先に家が一軒も無かったんだけど
あれは敢えてそうしたのかな?」
「ん、あれはウルエが選んだ事」
「確かにそうだけど……」
エミに一番平和に暮らせる場所って何処?って聞いて
答えてくれた場所を最終的に決めたのはウルエだが、
せめてどこかの家で生まれたかったと言うのが正直な気持ちだ。
(そこの所女神の力でどうにかならなかったのかね……)
「まっ、いいや。」
今の生活も悪く無い。
今の所何の支障もなく平和に暮らせているし幸せだ。
お義父さんに拾われて良かったと今なら胸を張って言える。
そう言えば……
「……あのままお義父さんが俺の事拾ってくれなかったら
俺って今頃どうなってたんだ……?」
――ビクッ
チラリとエミの顔を見ると、
ビクリと飛び上がりぬいぐるみで顔を隠してしまった。
そしてぬいぐるみの手を持って、
「そ、それは……」
「それは?」
「……です」
ぬいぐるみの手を動かしながら、
ごにょごにょと聞き取れない程小さな声で話した。
これは何も考えていなかったのだな
と何となくだがそんな気がした。
だが、ウルエはエミの口から答えを聞きたい。
問い詰めると可愛いのでもっと問い詰めたい。
泣くまで問い詰めたい泣いても問い詰めたい。
「何だって?聞こえないなぁ~」
「……りしてました。」
「んんん~聞き取れないなぁ~」
「うぅ……」
エミはぬいぐるみの手をシュンと下げ、
今の感情を表している様だ。
問い詰めたいと思っていたが、
何だか申し訳なくなって来た。
「う、うっかりし――そんなことはどうでも良い!
はやく次の話し、して。じゃないと、おこる。」
やっと聞こえる声で言ったかと思うと、
物凄い早口でそんな事を言って来た。
早口のエミも可愛い。
「はいはい――」
次の話し……あ、アレがまだあったな。
その前にエミに確認しとかないとな。
「ねぇ、エミ。」
「ん」
「俺が転生したての時って俺の事覗いてたりしてた?」
今から話そうとしている事は
エミが最初からウルエの事を覗いていたのなら話す意味が無くなってしまう。
ウルエの事を覗き出したのは恐らくお義父さんに拾われてからだろうが、
一応念のために確認しておく。
「初めは覗いてた、けど、
無事転生が完了してるか、どうか確認して直ぐにやめた」
「そっか、なら今から話すのはエミは知らない事なんだな。」
今から話すのはウルエの命の恩人。
あの方が居なければウルエは異世界転生して
直ぐに天に召されるとこだった。
「俺が転生してお義父さんに拾われる前の話しなんだけど、
不思議な女性と出会ったんだよね。
彼女が居なかったら俺は死んでた。彼女は俺の命の恩人。」
驚くほどの真っ白な美しく長い髪、
バランスが良くキリっとしな顔立ち、
そして何よりも彼女を目立たたせていた額に生えている禍々しい角
忘れるはずもない。
あの雨の日、傷だらけの彼女はウルエに何だかの力を授けてくれた。
まるで彼女の命と引き換えの様にウルエの命は救われた。
そして次会う時は自己紹介をすると約束した。
次というのは何時のなのか分からないが、
ウルエは彼女と再び出会うまで死ぬ訳には行かない。
「――と言う事があったんだ。」
ウルエは彼女との出会い、そして別れを簡単にエミに伝えた。
すると、エミはぬいぐるみを膝の上に戻し、
真剣な顔をして考え出した。
「それ、本当?」
「ああ、本当だ。嘘を付く理由ないだろ?」
「だったら、それは――凄い事」
確かに凄い事だと思う。
(出会ったばかりの人が見ず知らずの俺の命を救ってくれたんだ。
それは本当に凄い事だと思う)
「うん、凄いよね。」
「彼女、心あったんだ。凄い」
「凄いスゴ――え?」
(何?心あったんだって)
「彼女、ずっと殺してた。
心の無い殺人鬼だと思ってた」
「えぇ、さ、殺人鬼って……」
転生して第一発見人が殺人鬼って、
さっそくウルエの平和な暮らしをぶち壊すような存在が
真横にいたという驚愕の事実。
「俺にはそうは見えなかったけど、
確かに只ならぬ感じだったけど確りと心はあったし、
優しさもあったよ。」
「そう、それが凄い事。
そして、きっとそれはウルエが呼び起こした。
つまり、ウルエ凄い。」
「おお?俺が凄いのか。」
どういう理論なのか、
最終的に凄いのはウルエと言う事になった。
(つか、彼女彼女ってエミはあの人の事知ってるのかな?)
「エミ、彼女の事知ってるの?」
「うん、知ってる、けど教えないよ。」
「そっか……」
まぁ、そうだよな。
一応異世界にも個人情報とかあるだろうし、
幾ら女神だからと言ってそれを安易に教えたりしたらダメだよな。
「さ、ウルエ、次次ー」
・・・・
あれから色々な話をしてかなりの時間が経ち、
流石に話す話題が無くなってしまった。
寧ろ此処まで話題が出て来たのは凄いと思う。
「んーこれ以上は出てこないかな。」
「ん、そう。楽しかった。
私もそろそろ戻らないと、今度会ったらは私が話す番。
楽しみに待ってること。」
「うん、待ってる。」
「よろし」
今まで見た事のない笑顔でそう言って
エミは光になって消えて行った。
再び静かになった部屋の中でウルエは動き出した。
ベッドから離れ本棚に向った。
そして、とある本を手に取った。
その本のタイトルはスケルトンでも分かる生活魔法入門。
一度は読むのを止めたのだが、
あと三年後学園に行くとなると少しは
魔法を使えるようになっていた方が良いのではと思い、
ウルエはこの本を再び手に取ったのだ。
「うわぁ、」
相変わらず本の内容は吹っ飛んでる。
ウルエは取り敢えず相手の弱点を見極められる魔法を
覚えようと思い、その事が書かれているページを読み始めた。
ページ数が少なかった為数分で読み終わった。
「やってみるか。」
ウルエは本に書かれてあった通りに、
目に魔力を送ろうと……
「そもそも、魔力って何だよ。」
目に魔力を送れと言われても、
そもそも魔力自体何なのか分かっていないため
送りようがない。
生憎本には魔力についての説明は一切書いていなかった。
「これは誰かに聞くしかないな。」
魔王と大魔王であるお義父さんとお義母さんに聞けば、
間違いないだろう。
ウルエはそう思い、取り敢えず本をベッドまで持っていき、
本を横に置いてウルエは横になった。
まだお義母さんたちは戻ってきてないので、
ウルエは喋りすぎて疲れていた為寝て待つことにした。
・・・・
「んん~」
「あら、ウルエ起こしちゃった?」
目を覚ますと目の前にお義母さんがいて、
ウルエの頭を撫でていた。
久しぶりに撫でられ気持ちがいい。
「大丈夫。」
「そう、良かった。あら?その本……」
ウルエの横に置いてある本に気が付いたらしく、
お義母さんが不思議そうに本の事を見つめていた。
「お義母さん、俺、魔法を使えるようになりたいんだ。」
「あらっ!良いじゃない!」
お義母さんの顔がパァとなり、
物凄く嬉しそうだ。
そんなにウルエに魔法をつかってほしかったのだろうか。
「でも、魔力って言うのが良く分からないんだけど……」
「大丈夫よ、お母さんがしっかりと教えてあげるから。」
そういってお母さんは得意げに数十分間魔力の事を語った。
所々に専門用語が出て来てたまに良く分からなくなったが、
なんとか理解出来た。
魔力とは何かの説明は正直にいって難しすぎて良く分からなった。
でも、魔力と言うのは誰でも体内に持っているらしく、
その魔力を操る事で魔法を発動できるらしい。
ちなみに魔力量には個体差があり、
使った魔力は時間が経てば勝手に回復するらしい。
で、肝心の魔力の操り方なんだが、イメージするだけだと言う。
魔力をどんな風に使い魔法にしたいのかと言うのを具体的にイメージする。
詠唱と言うのをすればイメージはいらないらしいが、
そんな面倒な事をやってるのは人間たち位だと言う。
(俺も人間だけど)
「イメージ……」
ウルエは目の前にいるお義母さんのの弱点を見極める
イメージを何度もするのだが、一向に成功しない。
本に目に魔力を送ると書いてあった為、それもイメージしてみたが、
何の変化も出なかった。
「出来ない……」
「んん、ちょっとお母さんに任せて。」
そう言ってウルエのおでこを指先でなぞり、
『――――』
聞き取れない言葉を呟いた。
「何?」
「ちょっとお母さんの魔力を移してみたのだけど、
もういっかいやってみてくれる?」
「分かった。」
ウルエは再びイメージをした。
目に魔力を纏い相手の弱点を見極める。
そうイメージした瞬間、目がじんわりと熱くなり、
お義母さんの体の周りを囲むようにある青いオーラが見えた。
「うわ、なにこれ青い……」
「まぁ、成功したのね!良かったわ。
ちなみに青いオーラは普通で
赤いオーラが弱点って事ね。
「へぇ……」
つまりお義母さんには弱点が無いって事だ。
(流石大魔王様恐れ入ります)
「って痛い痛い!」
「ああ!大変、今すぐ魔法を止めるイメージをして!」
ウルエは急いで魔法をやめるイメージをした。
すると、目から熱が抜け、痛みも消えて行った。
「慣れないうちは良くなる事なの。
慣れたら今みたいな事はなくなるから練習あるのみね。」
「なるほど……」
これで暇な時間にやる事が決まった。
(お姉ちゃんが驚くほど上手く使いこなせるようになってやる!)
やはり何時も居る存在が居ないと寂しく退屈なものだ。
お姉ちゃんが居なくなって変わった事がある。
それはお義母さん達との会話の多さだ。
今まではお姉ちゃんが居た為、
お姉ちゃん以外の人物と会話をさせてくれなかったが、
居なくなりお義父さん達が物凄く話しかけて来るようになった。
と言っても話しの内容はごく普通で、
何食べたい?とかフェルが居なくても頑張るんだぞとか。
大・魔王の会話とは思えない程普通の会話だった。
そして、今そんなお義父さん達は謁見の間に行っていて、
部屋の中はウルエ一人だけになっていた。
何度がお義父さん達が居なくなる事はあったのだが、
その時はお姉ちゃんが遊んでくれていた為気が付かなかったのだが、
改めて一人になるとこんなに静かだったんだ。と実感する。
「さて、」
静かすぎて少し慣れない気もするが、
ウルエにはやる事があるので気にしてはいられない。
ベッドに腰かけながら今までずっとやりたかった事をやる。
一度は失敗したあの能力を。
あの可愛らしい女神がウルエにくれた能力。
その能力を授かってから七年。
七年が経ってやっと使う事が出来た。
「コール」
数十秒の沈黙が流れ、
一瞬駄目なのかと思った瞬間、
突如部屋から溢れかえる程の眩い光が放たれ、
思わず目を瞑ってしまった。
瞼越しからでも分かる程の光量。
光が徐々に消えて行くのを確認し、
ウルエは恐る恐る目を開けた。
「――っ!」
艶がある美しく長い黒髪、出るところは確りと出て、
引っ込むところは確りと引っ込んでいる完璧な体。
そして、犬の様なぬいぐるみを大切そうに持っている少女。
そんな美しい少女が目の前に立っていた。
あの時と全く変わらない美貌。
唯一違う所は服装だ。
この前は薄黒いコートだったが今回は可愛らしいフリフリが付いた
女の子らしい服装だった。
「私、怒ってる」
「ごめん、なさい。」
頬をぷっくりと膨らませたエミの初めの言葉はそれだった。
何に対しての怒りなのかは分かっている為、
ウルエは素直に謝った。
「私、ずっと待ってた、
だけど一向に呼んでくれなかった
私、ものすごく怒ってる……けど、ゆるす。」
「あ、ありがとう」
七年間もコールを使わずにいたのにも関わらず、
意外とあっさり許してくれた為ウルエは戸惑った。
「全然呼んでくれないから、
こっそりと覗いてたから理由、知ってる。
それに素直に謝ってくれた。だから、ゆるす。」
「なるほど――って覗いてたの!?
と言う事はあんな事やこんな事まで見てたって事?」
「うん、見てたよ。
新――ウルエの恥ずかしいとこ、たくさん。」
髪先をくるくると指先で巻き、
若干照れくさそうにそう言うエミ。
ウルエは今までのお姉ちゃんとのやりとりを全部見られていたと思うと
物凄く恥ずかしくなり穴があったら入りたい気分だ。
「物凄く恥ずかしい……」
「ふふ、ウルエ可愛い
君のお姉ちゃんが可愛がる気持ち、わかる」
「えぇ、俺男なんだけどな……」
可愛いと言われるのは別に嫌ではないが、
男としてはどちらかと言うとカッコいいの方が嬉しい。
「さ、ウルエ。
七年分の会話、しよ。」
七年分の会話をする為にエミはベッドに腰掛けた。
七年分の会話と言っても大して話す事が無いのが事実。
ウルエの七年間と言えばお姉ちゃんパラダイスだった為、
話すとしてもお姉ちゃんの話題しかないのだ。
それにエミがウルエの事をずっと覗いてた為
お姉ちゃんの話題を出しても殆ど知っているのだろう。
「ほら、ウルエ。何か話して」
「うん……」
困った。
話題が一切出てこない。
ウルエは脳をフル回転させ話題を探した。
「あっ!」
すると、ふと、とある事を思いだした。
それは転生したばかりのあの頃の事だ。
「そう言えばさ、エミ。
俺が転生された先に家が一軒も無かったんだけど
あれは敢えてそうしたのかな?」
「ん、あれはウルエが選んだ事」
「確かにそうだけど……」
エミに一番平和に暮らせる場所って何処?って聞いて
答えてくれた場所を最終的に決めたのはウルエだが、
せめてどこかの家で生まれたかったと言うのが正直な気持ちだ。
(そこの所女神の力でどうにかならなかったのかね……)
「まっ、いいや。」
今の生活も悪く無い。
今の所何の支障もなく平和に暮らせているし幸せだ。
お義父さんに拾われて良かったと今なら胸を張って言える。
そう言えば……
「……あのままお義父さんが俺の事拾ってくれなかったら
俺って今頃どうなってたんだ……?」
――ビクッ
チラリとエミの顔を見ると、
ビクリと飛び上がりぬいぐるみで顔を隠してしまった。
そしてぬいぐるみの手を持って、
「そ、それは……」
「それは?」
「……です」
ぬいぐるみの手を動かしながら、
ごにょごにょと聞き取れない程小さな声で話した。
これは何も考えていなかったのだな
と何となくだがそんな気がした。
だが、ウルエはエミの口から答えを聞きたい。
問い詰めると可愛いのでもっと問い詰めたい。
泣くまで問い詰めたい泣いても問い詰めたい。
「何だって?聞こえないなぁ~」
「……りしてました。」
「んんん~聞き取れないなぁ~」
「うぅ……」
エミはぬいぐるみの手をシュンと下げ、
今の感情を表している様だ。
問い詰めたいと思っていたが、
何だか申し訳なくなって来た。
「う、うっかりし――そんなことはどうでも良い!
はやく次の話し、して。じゃないと、おこる。」
やっと聞こえる声で言ったかと思うと、
物凄い早口でそんな事を言って来た。
早口のエミも可愛い。
「はいはい――」
次の話し……あ、アレがまだあったな。
その前にエミに確認しとかないとな。
「ねぇ、エミ。」
「ん」
「俺が転生したての時って俺の事覗いてたりしてた?」
今から話そうとしている事は
エミが最初からウルエの事を覗いていたのなら話す意味が無くなってしまう。
ウルエの事を覗き出したのは恐らくお義父さんに拾われてからだろうが、
一応念のために確認しておく。
「初めは覗いてた、けど、
無事転生が完了してるか、どうか確認して直ぐにやめた」
「そっか、なら今から話すのはエミは知らない事なんだな。」
今から話すのはウルエの命の恩人。
あの方が居なければウルエは異世界転生して
直ぐに天に召されるとこだった。
「俺が転生してお義父さんに拾われる前の話しなんだけど、
不思議な女性と出会ったんだよね。
彼女が居なかったら俺は死んでた。彼女は俺の命の恩人。」
驚くほどの真っ白な美しく長い髪、
バランスが良くキリっとしな顔立ち、
そして何よりも彼女を目立たたせていた額に生えている禍々しい角
忘れるはずもない。
あの雨の日、傷だらけの彼女はウルエに何だかの力を授けてくれた。
まるで彼女の命と引き換えの様にウルエの命は救われた。
そして次会う時は自己紹介をすると約束した。
次というのは何時のなのか分からないが、
ウルエは彼女と再び出会うまで死ぬ訳には行かない。
「――と言う事があったんだ。」
ウルエは彼女との出会い、そして別れを簡単にエミに伝えた。
すると、エミはぬいぐるみを膝の上に戻し、
真剣な顔をして考え出した。
「それ、本当?」
「ああ、本当だ。嘘を付く理由ないだろ?」
「だったら、それは――凄い事」
確かに凄い事だと思う。
(出会ったばかりの人が見ず知らずの俺の命を救ってくれたんだ。
それは本当に凄い事だと思う)
「うん、凄いよね。」
「彼女、心あったんだ。凄い」
「凄いスゴ――え?」
(何?心あったんだって)
「彼女、ずっと殺してた。
心の無い殺人鬼だと思ってた」
「えぇ、さ、殺人鬼って……」
転生して第一発見人が殺人鬼って、
さっそくウルエの平和な暮らしをぶち壊すような存在が
真横にいたという驚愕の事実。
「俺にはそうは見えなかったけど、
確かに只ならぬ感じだったけど確りと心はあったし、
優しさもあったよ。」
「そう、それが凄い事。
そして、きっとそれはウルエが呼び起こした。
つまり、ウルエ凄い。」
「おお?俺が凄いのか。」
どういう理論なのか、
最終的に凄いのはウルエと言う事になった。
(つか、彼女彼女ってエミはあの人の事知ってるのかな?)
「エミ、彼女の事知ってるの?」
「うん、知ってる、けど教えないよ。」
「そっか……」
まぁ、そうだよな。
一応異世界にも個人情報とかあるだろうし、
幾ら女神だからと言ってそれを安易に教えたりしたらダメだよな。
「さ、ウルエ、次次ー」
・・・・
あれから色々な話をしてかなりの時間が経ち、
流石に話す話題が無くなってしまった。
寧ろ此処まで話題が出て来たのは凄いと思う。
「んーこれ以上は出てこないかな。」
「ん、そう。楽しかった。
私もそろそろ戻らないと、今度会ったらは私が話す番。
楽しみに待ってること。」
「うん、待ってる。」
「よろし」
今まで見た事のない笑顔でそう言って
エミは光になって消えて行った。
再び静かになった部屋の中でウルエは動き出した。
ベッドから離れ本棚に向った。
そして、とある本を手に取った。
その本のタイトルはスケルトンでも分かる生活魔法入門。
一度は読むのを止めたのだが、
あと三年後学園に行くとなると少しは
魔法を使えるようになっていた方が良いのではと思い、
ウルエはこの本を再び手に取ったのだ。
「うわぁ、」
相変わらず本の内容は吹っ飛んでる。
ウルエは取り敢えず相手の弱点を見極められる魔法を
覚えようと思い、その事が書かれているページを読み始めた。
ページ数が少なかった為数分で読み終わった。
「やってみるか。」
ウルエは本に書かれてあった通りに、
目に魔力を送ろうと……
「そもそも、魔力って何だよ。」
目に魔力を送れと言われても、
そもそも魔力自体何なのか分かっていないため
送りようがない。
生憎本には魔力についての説明は一切書いていなかった。
「これは誰かに聞くしかないな。」
魔王と大魔王であるお義父さんとお義母さんに聞けば、
間違いないだろう。
ウルエはそう思い、取り敢えず本をベッドまで持っていき、
本を横に置いてウルエは横になった。
まだお義母さんたちは戻ってきてないので、
ウルエは喋りすぎて疲れていた為寝て待つことにした。
・・・・
「んん~」
「あら、ウルエ起こしちゃった?」
目を覚ますと目の前にお義母さんがいて、
ウルエの頭を撫でていた。
久しぶりに撫でられ気持ちがいい。
「大丈夫。」
「そう、良かった。あら?その本……」
ウルエの横に置いてある本に気が付いたらしく、
お義母さんが不思議そうに本の事を見つめていた。
「お義母さん、俺、魔法を使えるようになりたいんだ。」
「あらっ!良いじゃない!」
お義母さんの顔がパァとなり、
物凄く嬉しそうだ。
そんなにウルエに魔法をつかってほしかったのだろうか。
「でも、魔力って言うのが良く分からないんだけど……」
「大丈夫よ、お母さんがしっかりと教えてあげるから。」
そういってお母さんは得意げに数十分間魔力の事を語った。
所々に専門用語が出て来てたまに良く分からなくなったが、
なんとか理解出来た。
魔力とは何かの説明は正直にいって難しすぎて良く分からなった。
でも、魔力と言うのは誰でも体内に持っているらしく、
その魔力を操る事で魔法を発動できるらしい。
ちなみに魔力量には個体差があり、
使った魔力は時間が経てば勝手に回復するらしい。
で、肝心の魔力の操り方なんだが、イメージするだけだと言う。
魔力をどんな風に使い魔法にしたいのかと言うのを具体的にイメージする。
詠唱と言うのをすればイメージはいらないらしいが、
そんな面倒な事をやってるのは人間たち位だと言う。
(俺も人間だけど)
「イメージ……」
ウルエは目の前にいるお義母さんのの弱点を見極める
イメージを何度もするのだが、一向に成功しない。
本に目に魔力を送ると書いてあった為、それもイメージしてみたが、
何の変化も出なかった。
「出来ない……」
「んん、ちょっとお母さんに任せて。」
そう言ってウルエのおでこを指先でなぞり、
『――――』
聞き取れない言葉を呟いた。
「何?」
「ちょっとお母さんの魔力を移してみたのだけど、
もういっかいやってみてくれる?」
「分かった。」
ウルエは再びイメージをした。
目に魔力を纏い相手の弱点を見極める。
そうイメージした瞬間、目がじんわりと熱くなり、
お義母さんの体の周りを囲むようにある青いオーラが見えた。
「うわ、なにこれ青い……」
「まぁ、成功したのね!良かったわ。
ちなみに青いオーラは普通で
赤いオーラが弱点って事ね。
「へぇ……」
つまりお義母さんには弱点が無いって事だ。
(流石大魔王様恐れ入ります)
「って痛い痛い!」
「ああ!大変、今すぐ魔法を止めるイメージをして!」
ウルエは急いで魔法をやめるイメージをした。
すると、目から熱が抜け、痛みも消えて行った。
「慣れないうちは良くなる事なの。
慣れたら今みたいな事はなくなるから練習あるのみね。」
「なるほど……」
これで暇な時間にやる事が決まった。
(お姉ちゃんが驚くほど上手く使いこなせるようになってやる!)
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早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
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驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
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HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
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