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愛猫日記
彼女のおねだりと彼のモヤモヤ②
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立っている状態だとあり過ぎる二人の身長差も、孝一の膝の上に真白をのせてしまえばちょうど良くなる。
孝一は両手ですっぽりと包み込んだ頭をゆっくりと撫でながら、彼女の目蓋、頬、首筋、そして唇へと軽いキスを落としていく。
目を閉じた真白は孝一にされるがままで、丁寧に撫でられて喉を鳴らす仔猫のようだ。
寛ぎきったその様子に、彼の胸の中には彼女を滅茶苦茶に撫で回したいような、骨が軋むほどに抱き締めたいような、そんな気持ちが熱い塊となって込み上げてくる。
孝一は大きく一つ息をついてその衝動を抑え込むと、真白の頭の後ろにまわしていた手を片方頬に移し、親指でそっと肌を撫でてその感触を楽しんだ。
日に日に柔らかさを増していく真白は、実に触り心地が良くなってきた。もう頬骨は触れず、ふっくらとした頬は齧ってみたくなる。
齧る代わりに手のひら全体で味わっていると、真白はわずかに首を傾けて頬をすり寄せてきた。
(クソ、無意識なんだよな、これは)
何気ない、仕草。たったそれだけのことで、孝一の胸はきつく締め付けられる。
変化は身体的な外見だけではなく、彼女のその表情やちょっとした行動にも現れていた。
真白が全てを孝一に委ねてくれたあの夜。あれを境に、彼女は以前よりも和らいだ顔を見せてくれるようになっている。今も孝一の唇と手の動きにうっとりとまどろんでいるかのようで、彼への全面的な信頼が身体中から溢れ出していた。孝一の方から引っ張り寄せなくても真白の方から触れるようになったし、軽いキスくらいなら彼女の方からするようにもなった。
それに、彼女と肌を合わせる時。
以前も、真白に触れれば、彼女を感じさせることはできていた。だが、今思えば、あれは単に肉体的な快感を強引に掻き立てたものに過ぎなかったのだろう。彼女の心は、身体の快楽に引きずり回されていたのだ。
今の真白には、心が先にある。だからなのだろうか、前とは、何かが違っていた。
性的な快感以外の何かがそこにある。
孝一は、こうやって真白に触れ、彼女が安心しきっている姿を見ていると、まさにこれが幸福というものなのだと実感する。それだけでも、自分の中に何かが満ちていく気がする。
(真白もそうなのだろうか)
そうであればいいと、思う。
――この上ない幸福感。一方通行ではない、心のつながり。
きっとそれが、かつての触れ合いでは生み出すことができなかったものなのだ。
孝一は真白のうなじに手を回すと熱を帯びた彼女の耳朶を口に含み、柔らかなそれを吸い、舌でもてあそんだ。
「んッ」
真白の肩が跳ね、小さな声が漏れる。
「これは、されたくない?」
孝一が耳元で囁くと、彼女は微かに首を振る。
「ううん。くすぐったいけど、気持ちいい、よ」
はにかみながらも、真白は素直にそう言葉に出す。
孝一は、彼女に言いたいことがあれば口にして、やりたいことがあれば行動しろと、事あるごとに告げてきた。その甲斐あってか、以前は唇を噛んで頑として閉じ込めようとしてきた声も、今は抗うことなく彼に聞かせてくれる。
それはまさに花が綻ぶような変化だった。そして、そうさせたのが自分なのだということに、孝一はこの上ない満足感を覚える。
真白の両手を持ち上げて唇に近付けようとして、孝一はふとその動きを止めた。そして目を上げて彼女を見つめつつ、輝くピンクの石がはまった左の薬指の関節にキスをしながら、言う。
「バイト中も指輪は外すなよ?」
「え……?」
彼のその台詞に真白が首をかしげる。そして少し困ったような顔になった。
「でも、失くしたり壊したりするかもしれないし……」
「こっちだったらいいさ。失くしたらまた買ってやるから」
「そんなわけにはいかないよ」
「いいから、絶対、外すな――俺の、安心の為だ」
「わたしが指輪をしたままだとコウは安心するの?」
真白の顔中に、「何故?」と書かれている。
虫除けだと言わなければ判らないのは、他の男が自分に興味を示すわけがないと思っている所為なのか、それとも自分が他の男に目を向けるわけがないと思っている所為なのか。
前者なら不安だし、後者なら、嬉しい。
孝一は黙って真白の手をひっくり返し、真ん中のくぼみを舌でくすぐる。と、彼女の顔にはパッと朱が散り、疑問の色は一瞬にして消え去った。
その変化に微笑みつつ、不意に彼は、真白の学校での様子が気になった。厳密に言うと、彼女が、ではなく彼女の周りが、だ。
真白の高校は共学で、当然、彼女と同年代の男がゴロゴロしている。彼らの目には真白はどんなふうに映っているのだろう。
(普通に受け止めれば、『変なヤツ』だろうな)
どこか浮世離れしていた真白は、きっとクラスでも浮いていたに違いなく、大半の人間は彼女の事を遠巻きに見るか無視するか、という態度を取るだろう。
だが、しかし。
(中には興味を引かれる奴もいるよな……)
そこそこ大きな高校だから、全学年を総合すれば六百人からの男子生徒がいる。その中には、孝一がそうであったように、真白に惹き寄せられる男がいてもおかしくない。
そう考えると――
(不愉快だな)
「コウ?」
唐突に固まった孝一に、真白が訝しげな声をかける。
彼女に好意を持った者がいたのかどうか、真白に訊いても無駄だろう。密かに想われていたら当然気付いていないだろうし、まともに告白されても真に受けたとは思えない。
何しろ、孝一もあれほど手こずったのだから。
「コウ?」
真白が首をかしげて彼を覗き込んできた。と、髪がサラリと流れて細い首が露わになる。
孝一は無言で彼女を引き寄せて、その首筋に口付けた。
「んんッ」
くすぐったそうに身をよじるのを抱き締めて、封じる。皮膚の薄い所を強く吸い上げると、真白は身体を震わせた。
「コウ、そこは見えちゃうから――ッ」
真白の白い肌には簡単に痕が付く。彼女は抗議の声を上げかけたが、孝一が首筋の拍動を辿って同じことを繰り返すと、それは半ばで消え去った。
キスをしたいが、そうすると真白の口を封じてしまう。
孝一は、彼女が漏らす甘い声を聞きたかった。
真白の頭を少し反らさせて剥き出しになった顎の下あたりに舌を這わせると、仔猫のように速まった脈が感じられる。そこを甘噛みしながら彼女のシャツをめくり上げ、さっと頭から抜き去った。
「あっ」
真白が慌てたような声を上げたが、孝一は聞こえなかったふりをした。
下着は着けておらず、小さなふくらみが煌々としたリビングの灯りの下《もと》に露わになる。
チラリと真白の顔に目を走らせると、いつものように真っ赤に染まっていた。もう何度も孝一に見られ、触れられる以上のことをされているというのに、未だに恥ずかしがるのだ。
孝一は首から喉元、肩へとキスを繰り返しながら、両手で彼女の胸を包み込んだ。
「ぁッ」
人差し指の爪で軽く薄紅色の先端をひっかいてやると、真白の口から小さな声が漏れる。孝一の指が動くたびに、彼女の全身にさざ波が走った。
孝一は更に頭を下げ、片方の手を唇に代えて愛撫を続ける。先端ごと胸を吸い上げ、舌の先で硬くなった蕾を転がした。
「ゃあ、ん」
真白がビクビクと震え、彼の頭にしがみついてくる。
空いた片手で背中を撫でながらこりこりとした突起に軽く歯を立て甘噛みすると、彼女の背中が反り返った。
「や、ダメ……ッ」
そう言いながらも、孝一の頭にまわされた腕には力がこもる。
胸への攻めを続けつつ、彼の手は背筋を辿って下りていく。
「シロ、俺をまたいで」
顔を上げて耳元で囁くと、真白は目を見開いて孝一を見返してきた。が、彼がジッと見つめたままでいると、やがて赤くなった顔を伏せて言われたとおりにする。
「いい子だ」
微笑みながら、孝一は真白の唇を求める。二、三度軽くついばんでから、彼女の中に舌を挿し入れた。そうして、小さく滑らかな歯をそっと開けさせ、その先に進む。
真白の中は、滑らかで、柔らかくて、温かくて――甘い。
小さな舌を絡め取ると、彼女の喉の奥が引きつるのが感じられた。
キスをしながら、再び両手で背中から腰を何度か辿り、そしてその下の双丘を包み込む。スカートの下に潜り込んでも、流石にそこにはもう一枚の布が存在していた。
片手で包み込めるふくらみをやわやわともてあそんでから、更にその先に進む。そっと撫でると、布越しでも真白の準備がすでに整っているのが判った。
孝一は片手を彼女の腰に回して、グッと自分に引き寄せる。
と。
「あッ……」
真白が小さな声を上げてビクッとした。その反応に、孝一は微かに笑う。彼女が何に気付いたのかが判ったからだ。
「俺の方は、もういつでもイケるが?」
余裕ぶって孝一はそう言ったが、実際のところ、さっさと彼女の中に入りたいのが本音だった。彼のその場所は痛みを覚えるほどに脈打っている。
そんな彼の欲求を察したのか、どうなのか。真白は孝一の肩に顔を伏せ、囁く。
「わたしも、だいじょうぶ」
その言葉だけでも充分なのだが。
孝一は、欲を出した。
真白の頬に手を当てて上げさせ、その目を覗き込みながら、訊く。
「俺が欲しいか?」
その瞬間、彼女の顔が真っ赤になった。俯こうとするのを許さず、孝一は名を呼ぶ。
「真白?」
「……い、よ」
小さな声。
かすれた囁きは殆ど聞こえなくても、彼女が何と言おうとしたのかは判った。にや付きそうになるのをこらえて孝一は更に追求する。
「聞こえないな」
「!」
睨んでくる潤んだ目が、可愛くてたまらない。
「どうする?」
孝一は彼女の耳を、甘噛みする。
「……ッ! 欲しい、よ。わたしも、コウが欲しいよ」
震える声は、今度ははっきりと孝一の鼓膜をくすぐった。その一言でも、彼はイキそうになってしまう。
「良く言えました」
そう言って唇の端に小さなキスを落としながら手際よく真白の脚から下着を引き抜き、次いで張り詰めきった彼自身を解放した。
真白の脇腹を両手で掴んで支えておいて、孝一は彼女の耳元で指示を出す。
「一回、膝立ちになって――そう、で、そのまま腰を落としてごらん」
言われるとおりに動いた真白だったが、彼の先端が触れると、一瞬、びくりと身体を引いてしまう。
真白の力などたかが知れているから、強引にやろうと思えば、いくらでもできる。が、孝一は動かなかった。
「シロ?」
静かな声での促しに、彼女は一度唇を噛んで、また動き出す。
再び、わずかに温度の違う熱が触れ合った。
「んッ」
「大丈夫、そのまま――」
励ますように細い腰を撫でてやると、ゆっくりと、真白は彼の高まりを受け入れていく。じれったいほどその動きは緩慢だったが、孝一は火照った彼女の頬を見つめながら、待つ。
「ふ、ぁ……」
深く孝一とつながると、真白は小さく吐息をついた。小刻みに全身を震わせている彼女の頬を両手で包み込み、孝一は触れるだけのキスをいくつも落とす。
「つらい、か?」
孝一の問いに、真白はボウッした眼差しで彼を見返し、小さくかぶりを振った。
「ううん、だいじょうぶ……」
そう答える彼女の中は、時折ヒク付き、彼を締め付ける。
真白に包み込まれるのは、この上なく心地良かった。温かく潤っていて、それでいてきつくて、一晩中でも留まっていたくなる。
孝一は彼女の背中に腕を回し、抱き締めた。触れられる場所すべてを優しく撫でながら、首や肩にキスを降らしていく。そうして、ゆっくりと腰を揺らした。
「あ、ん……」
真白の口からあえかな声が漏れると、その度に彼をキュウキュウと締め付けてくる。
(ヤバ……)
孝一は、胸の中で呻いた。ろくに動きもしないうちに、達してしまうかもしれない。
「コウ?」
無意識のうちに漏れてしまっていた苦笑に、真白が薄らと目を開けた。
「何でもない」
孝一は軽く唇を触れ合わせ、彼女を押し上げるようにして腰を揺らす。
孝一は両手ですっぽりと包み込んだ頭をゆっくりと撫でながら、彼女の目蓋、頬、首筋、そして唇へと軽いキスを落としていく。
目を閉じた真白は孝一にされるがままで、丁寧に撫でられて喉を鳴らす仔猫のようだ。
寛ぎきったその様子に、彼の胸の中には彼女を滅茶苦茶に撫で回したいような、骨が軋むほどに抱き締めたいような、そんな気持ちが熱い塊となって込み上げてくる。
孝一は大きく一つ息をついてその衝動を抑え込むと、真白の頭の後ろにまわしていた手を片方頬に移し、親指でそっと肌を撫でてその感触を楽しんだ。
日に日に柔らかさを増していく真白は、実に触り心地が良くなってきた。もう頬骨は触れず、ふっくらとした頬は齧ってみたくなる。
齧る代わりに手のひら全体で味わっていると、真白はわずかに首を傾けて頬をすり寄せてきた。
(クソ、無意識なんだよな、これは)
何気ない、仕草。たったそれだけのことで、孝一の胸はきつく締め付けられる。
変化は身体的な外見だけではなく、彼女のその表情やちょっとした行動にも現れていた。
真白が全てを孝一に委ねてくれたあの夜。あれを境に、彼女は以前よりも和らいだ顔を見せてくれるようになっている。今も孝一の唇と手の動きにうっとりとまどろんでいるかのようで、彼への全面的な信頼が身体中から溢れ出していた。孝一の方から引っ張り寄せなくても真白の方から触れるようになったし、軽いキスくらいなら彼女の方からするようにもなった。
それに、彼女と肌を合わせる時。
以前も、真白に触れれば、彼女を感じさせることはできていた。だが、今思えば、あれは単に肉体的な快感を強引に掻き立てたものに過ぎなかったのだろう。彼女の心は、身体の快楽に引きずり回されていたのだ。
今の真白には、心が先にある。だからなのだろうか、前とは、何かが違っていた。
性的な快感以外の何かがそこにある。
孝一は、こうやって真白に触れ、彼女が安心しきっている姿を見ていると、まさにこれが幸福というものなのだと実感する。それだけでも、自分の中に何かが満ちていく気がする。
(真白もそうなのだろうか)
そうであればいいと、思う。
――この上ない幸福感。一方通行ではない、心のつながり。
きっとそれが、かつての触れ合いでは生み出すことができなかったものなのだ。
孝一は真白のうなじに手を回すと熱を帯びた彼女の耳朶を口に含み、柔らかなそれを吸い、舌でもてあそんだ。
「んッ」
真白の肩が跳ね、小さな声が漏れる。
「これは、されたくない?」
孝一が耳元で囁くと、彼女は微かに首を振る。
「ううん。くすぐったいけど、気持ちいい、よ」
はにかみながらも、真白は素直にそう言葉に出す。
孝一は、彼女に言いたいことがあれば口にして、やりたいことがあれば行動しろと、事あるごとに告げてきた。その甲斐あってか、以前は唇を噛んで頑として閉じ込めようとしてきた声も、今は抗うことなく彼に聞かせてくれる。
それはまさに花が綻ぶような変化だった。そして、そうさせたのが自分なのだということに、孝一はこの上ない満足感を覚える。
真白の両手を持ち上げて唇に近付けようとして、孝一はふとその動きを止めた。そして目を上げて彼女を見つめつつ、輝くピンクの石がはまった左の薬指の関節にキスをしながら、言う。
「バイト中も指輪は外すなよ?」
「え……?」
彼のその台詞に真白が首をかしげる。そして少し困ったような顔になった。
「でも、失くしたり壊したりするかもしれないし……」
「こっちだったらいいさ。失くしたらまた買ってやるから」
「そんなわけにはいかないよ」
「いいから、絶対、外すな――俺の、安心の為だ」
「わたしが指輪をしたままだとコウは安心するの?」
真白の顔中に、「何故?」と書かれている。
虫除けだと言わなければ判らないのは、他の男が自分に興味を示すわけがないと思っている所為なのか、それとも自分が他の男に目を向けるわけがないと思っている所為なのか。
前者なら不安だし、後者なら、嬉しい。
孝一は黙って真白の手をひっくり返し、真ん中のくぼみを舌でくすぐる。と、彼女の顔にはパッと朱が散り、疑問の色は一瞬にして消え去った。
その変化に微笑みつつ、不意に彼は、真白の学校での様子が気になった。厳密に言うと、彼女が、ではなく彼女の周りが、だ。
真白の高校は共学で、当然、彼女と同年代の男がゴロゴロしている。彼らの目には真白はどんなふうに映っているのだろう。
(普通に受け止めれば、『変なヤツ』だろうな)
どこか浮世離れしていた真白は、きっとクラスでも浮いていたに違いなく、大半の人間は彼女の事を遠巻きに見るか無視するか、という態度を取るだろう。
だが、しかし。
(中には興味を引かれる奴もいるよな……)
そこそこ大きな高校だから、全学年を総合すれば六百人からの男子生徒がいる。その中には、孝一がそうであったように、真白に惹き寄せられる男がいてもおかしくない。
そう考えると――
(不愉快だな)
「コウ?」
唐突に固まった孝一に、真白が訝しげな声をかける。
彼女に好意を持った者がいたのかどうか、真白に訊いても無駄だろう。密かに想われていたら当然気付いていないだろうし、まともに告白されても真に受けたとは思えない。
何しろ、孝一もあれほど手こずったのだから。
「コウ?」
真白が首をかしげて彼を覗き込んできた。と、髪がサラリと流れて細い首が露わになる。
孝一は無言で彼女を引き寄せて、その首筋に口付けた。
「んんッ」
くすぐったそうに身をよじるのを抱き締めて、封じる。皮膚の薄い所を強く吸い上げると、真白は身体を震わせた。
「コウ、そこは見えちゃうから――ッ」
真白の白い肌には簡単に痕が付く。彼女は抗議の声を上げかけたが、孝一が首筋の拍動を辿って同じことを繰り返すと、それは半ばで消え去った。
キスをしたいが、そうすると真白の口を封じてしまう。
孝一は、彼女が漏らす甘い声を聞きたかった。
真白の頭を少し反らさせて剥き出しになった顎の下あたりに舌を這わせると、仔猫のように速まった脈が感じられる。そこを甘噛みしながら彼女のシャツをめくり上げ、さっと頭から抜き去った。
「あっ」
真白が慌てたような声を上げたが、孝一は聞こえなかったふりをした。
下着は着けておらず、小さなふくらみが煌々としたリビングの灯りの下《もと》に露わになる。
チラリと真白の顔に目を走らせると、いつものように真っ赤に染まっていた。もう何度も孝一に見られ、触れられる以上のことをされているというのに、未だに恥ずかしがるのだ。
孝一は首から喉元、肩へとキスを繰り返しながら、両手で彼女の胸を包み込んだ。
「ぁッ」
人差し指の爪で軽く薄紅色の先端をひっかいてやると、真白の口から小さな声が漏れる。孝一の指が動くたびに、彼女の全身にさざ波が走った。
孝一は更に頭を下げ、片方の手を唇に代えて愛撫を続ける。先端ごと胸を吸い上げ、舌の先で硬くなった蕾を転がした。
「ゃあ、ん」
真白がビクビクと震え、彼の頭にしがみついてくる。
空いた片手で背中を撫でながらこりこりとした突起に軽く歯を立て甘噛みすると、彼女の背中が反り返った。
「や、ダメ……ッ」
そう言いながらも、孝一の頭にまわされた腕には力がこもる。
胸への攻めを続けつつ、彼の手は背筋を辿って下りていく。
「シロ、俺をまたいで」
顔を上げて耳元で囁くと、真白は目を見開いて孝一を見返してきた。が、彼がジッと見つめたままでいると、やがて赤くなった顔を伏せて言われたとおりにする。
「いい子だ」
微笑みながら、孝一は真白の唇を求める。二、三度軽くついばんでから、彼女の中に舌を挿し入れた。そうして、小さく滑らかな歯をそっと開けさせ、その先に進む。
真白の中は、滑らかで、柔らかくて、温かくて――甘い。
小さな舌を絡め取ると、彼女の喉の奥が引きつるのが感じられた。
キスをしながら、再び両手で背中から腰を何度か辿り、そしてその下の双丘を包み込む。スカートの下に潜り込んでも、流石にそこにはもう一枚の布が存在していた。
片手で包み込めるふくらみをやわやわともてあそんでから、更にその先に進む。そっと撫でると、布越しでも真白の準備がすでに整っているのが判った。
孝一は片手を彼女の腰に回して、グッと自分に引き寄せる。
と。
「あッ……」
真白が小さな声を上げてビクッとした。その反応に、孝一は微かに笑う。彼女が何に気付いたのかが判ったからだ。
「俺の方は、もういつでもイケるが?」
余裕ぶって孝一はそう言ったが、実際のところ、さっさと彼女の中に入りたいのが本音だった。彼のその場所は痛みを覚えるほどに脈打っている。
そんな彼の欲求を察したのか、どうなのか。真白は孝一の肩に顔を伏せ、囁く。
「わたしも、だいじょうぶ」
その言葉だけでも充分なのだが。
孝一は、欲を出した。
真白の頬に手を当てて上げさせ、その目を覗き込みながら、訊く。
「俺が欲しいか?」
その瞬間、彼女の顔が真っ赤になった。俯こうとするのを許さず、孝一は名を呼ぶ。
「真白?」
「……い、よ」
小さな声。
かすれた囁きは殆ど聞こえなくても、彼女が何と言おうとしたのかは判った。にや付きそうになるのをこらえて孝一は更に追求する。
「聞こえないな」
「!」
睨んでくる潤んだ目が、可愛くてたまらない。
「どうする?」
孝一は彼女の耳を、甘噛みする。
「……ッ! 欲しい、よ。わたしも、コウが欲しいよ」
震える声は、今度ははっきりと孝一の鼓膜をくすぐった。その一言でも、彼はイキそうになってしまう。
「良く言えました」
そう言って唇の端に小さなキスを落としながら手際よく真白の脚から下着を引き抜き、次いで張り詰めきった彼自身を解放した。
真白の脇腹を両手で掴んで支えておいて、孝一は彼女の耳元で指示を出す。
「一回、膝立ちになって――そう、で、そのまま腰を落としてごらん」
言われるとおりに動いた真白だったが、彼の先端が触れると、一瞬、びくりと身体を引いてしまう。
真白の力などたかが知れているから、強引にやろうと思えば、いくらでもできる。が、孝一は動かなかった。
「シロ?」
静かな声での促しに、彼女は一度唇を噛んで、また動き出す。
再び、わずかに温度の違う熱が触れ合った。
「んッ」
「大丈夫、そのまま――」
励ますように細い腰を撫でてやると、ゆっくりと、真白は彼の高まりを受け入れていく。じれったいほどその動きは緩慢だったが、孝一は火照った彼女の頬を見つめながら、待つ。
「ふ、ぁ……」
深く孝一とつながると、真白は小さく吐息をついた。小刻みに全身を震わせている彼女の頬を両手で包み込み、孝一は触れるだけのキスをいくつも落とす。
「つらい、か?」
孝一の問いに、真白はボウッした眼差しで彼を見返し、小さくかぶりを振った。
「ううん、だいじょうぶ……」
そう答える彼女の中は、時折ヒク付き、彼を締め付ける。
真白に包み込まれるのは、この上なく心地良かった。温かく潤っていて、それでいてきつくて、一晩中でも留まっていたくなる。
孝一は彼女の背中に腕を回し、抱き締めた。触れられる場所すべてを優しく撫でながら、首や肩にキスを降らしていく。そうして、ゆっくりと腰を揺らした。
「あ、ん……」
真白の口からあえかな声が漏れると、その度に彼をキュウキュウと締め付けてくる。
(ヤバ……)
孝一は、胸の中で呻いた。ろくに動きもしないうちに、達してしまうかもしれない。
「コウ?」
無意識のうちに漏れてしまっていた苦笑に、真白が薄らと目を開けた。
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