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愛猫日記
彼と彼女と彼①
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「はいどうぞ」
差し出されたのは白い皿。その上のベーコンエッグには、レタスとプチトマト、皮まで切り取ってあるオレンジが添えられている。イイ感じにこんがりと焼けているベーコンの香ばしい匂いが、孝一の食欲をそそった。
「ああ、ありがとう」
バターとイチゴジャムが塗られたトーストを齧りながら、彼はそれを引き寄せる。
真白が来るまで朝食はコーヒーだけだった彼だが、今はすっかり毎食一汁三菜が習慣付いていた。昼ですら、彼女が作ってくれる弁当を持っていくことが殆どだ。
ニコッと笑った真白は、すぐに身を翻してキッチンへと戻っていく。一度少し高い位置で一つにくくってから三つ編みにした長い髪が、まるで猫の尻尾のようにゆるりと揺れた。
水音に硬い物が触れ合う音――どうやら、彼女は使った調理器具を洗っているらしい。
孝一は素早く食事を平らげると、ズボンのポケットに手を入れ、そこにある物を取り出した。
「シロ、ちょっとおいで」
呼ばれて、ピョンと彼女が顔を上げる。
「何?」
「いいから」
真白は少し首を傾げながらも水を止めると、布巾で手を拭き孝一の元へやってくる。
「ここに座って」
椅子を引いてやると、言われるままに彼女はそこに腰を下ろした。
その後ろに立って、孝一は長い三つ編みをすくい取る。元々髪が柔らかいうえに緩めに編んでいるから、三つ編みにしてあってもしなやかだった。
それをほんの少しの間もてあそんでから、クルクルとポニーテールの根元に巻き付ける。そうしておいて、ポケットから出した物――透明なピンクのプラスチックの飾りがぶら下がった小さなクリップのような代物を、三か所ほどくっ付けた。
「……これは?」
真白が首を捻って孝一を見上げながら両手で頭に触れる。
「髪をまとめる方法を、職場のヤツに教わったんだ」
「職場の?」
「ああ」
指先でプラスチックの飾りに触れながら訊いてくる彼女に、孝一は生返事で頷いた。
あまり突っ込んで欲しくない。
職場の女性が髪をキレイにまとめているのを見て、真白も同じようにしたらどうかと思ったのだ――今日から、バイトが始まるから。
はっきり言って、孝一は真白にバイトをして欲しくない。
というより、この部屋から出したくない。
彼女のバイトが始まる日が近付くにつれてどうしても強まってしまったそんな彼の気持ちは、真白にも伝わってしまっているだろう――真白の変化を喜びつつ、彼女を独占できている状況は変えたくないという、孝一の子どもじみたワガママは。
お互いの為に、それは良くないことだとは彼も解かっている。
これは、真白のバイトを――彼女が変わっていくことを孝一が受け入れているという、彼なりの無言の意思表示でもあるのだ。
いつからだとか、どこでするとか、詳細が決まってから、真白はバイトについてあまり口にしなくなった。多分、孝一が良い反応を見せなかったからだ。
全く経験のないことを始めるのだから彼女も不安や期待があっただろうに、真白は孝一の前ではバイトのバの字も出さなくなった。
(本当なら、何かアドバイスをしてやるべきだったんだ)
孝一の中で折り合いがついた頃にはもう遅く、彼も何となく口にしづらくなってしまった。
さりげなく、真白のバイトを応援してやりたい。
そう思いつつも時間は着々と流れ、バイトを始める四月一日は刻々と近付いた。
職場の女性の髪形に目が留まったのは、そんな折だった。
きれいに丸められた髪を見て、真白の長い髪も同じようにしたらどうかと思ったのだ。
昼休み、何気なくまとめ髪のやり方を尋ねた孝一と尋ねられた女性の周りには、あっという間に他の女性社員が集まってきた。
孝一は会社の女性とは付き合わない。だいぶ前にそうしたこともあったが、毎日顔を合わせる相手と交際することのわずらわしさに懲りて、一人でやめた。
愛想を振って変に好かれても困るから、今の職場での彼は仕事一辺倒だ。他の社員と言葉を交わすのは、事務的なものに留めていた。
そんな彼が「髪のまとめ方を教えて欲しい」などと言い出したら、女性陣が食い付かない筈がない。
彼女たちは、どうやら孝一が親戚の子の世話でもすると思ったらしい。懇切丁寧にやり方を教えてくれたばかりか、その為に必要なアクセサリーを売っている店まで教えてくれた。
プラスティックでできたファンシーな諸々が並ぶ店の中に立ち、まさか自分がこんな所で買い物をする羽目になろうとは、と苦笑したのは三日ほど前のことだ。
「わたし、ちょっと見てくる」
真白はそう言って立ち上がると、パタパタと小走りで洗面所の方へ向かう。
やがて戻ってきた彼女の頬は、ほんのりと色付いていた。
「ありがとう」
はにかみながら微笑んで、真白は孝一を見上げてくる。この上なく嬉しそうなその顔を見られただけでも、女子高生に混じってアクセサリを選んだ甲斐があったというものだ。
彼しか映していないその瞳を、孝一は見つめ返す。そうして、少し身体を屈めた――若干の悪戯心を含んで。
「行動で示して欲しいな」
「え?」
「どうすれば俺が喜ぶかは判っているだろう?」
彼のその言葉に、真白はパッと赤くなった。
予想通りの反応に口元が緩みそうになるのを、引き締める。
「真白?」
「……仕事、遅れるよ?」
「ああ、だから早くしてくれよ」
彼女が届くように身を低くしただけで、孝一の方からは動かない。
真白は一度チラリと時計に目を走らせて、意を決したように彼の肩に手を置いた。少し背伸びした彼女がそっと唇を重ねてくる。柔らかさと温かさを感じたのはほんの一瞬で、彼女にはそれが精一杯なのだろうとは判っているが、はっきり言って物足りない。
真白の踵が床に着くよりも早く孝一は手を伸ばし、彼女の細い首を包み込む。親指を頤《おとがい》にあてがって顔を上げさせると、覆い被さるようにして口付けた。
真白はハッと目を見開いたが、孝一が舌の先で促すと、すっかり慣らされた彼女の唇は当然のように開かれる。滑らかな彼女の舌を一瞬だけくすぐって、彼はさっと身体を起こした。
孝一にしてはあっさりとした触れ合いに、真白が物問いたげな眼差しを向けてくる。それが無意識に彼を誘っていることになるのだとは、気付かずに。
「本気で仕事を休みたくなっちまうだろ」
笑いかけて額にキスを落とし、手を放す。名残惜しいが仕方がなかった。
大きな目を逸らすことなく真っ直ぐに向けてくる真白からは、別に色香が漂ってくるわけではない。
ただ、そうやって見つめられていると、別れ難くなる――触れていたくなる。
(頼むから、そう思うのは俺だけであってくれよ)
ため息混じりに彼は胸の内でそう呟いた。惚れた欲目で孝一だけがそう感じているのなら、安心なのだが。
できるなら、今からでもバイト禁止を言い渡してしまいたい。
往生際悪くそう思ってしまう自分に、彼は苦笑した。
真白のバイトを許可するにあたって彼女に三つの条件を課しただけでも大概だろうに、これ以上見苦しいところを晒したくはない。
三つの条件――いやそれは、条件という名のわがままに過ぎなかったが。
昼間だけのシフトにすること。
二つの指輪のうち、必ずどちらかは左手の薬指に着けておくこと。
そして何かトラブルがあったらすぐに辞めること。
――婚姻届にサインをすること、というのも付け足してしまいたい誘惑に駆られたが、さすがにそれは止めておいた。
「新年度早々遅刻するわけにもいかないからな。行ってくる」
「あ、うん」
マシュマロのような真白の頬を一撫でして、孝一はソファの背にかけておいた背広を取る。鞄は彼が手を伸ばすよりも早く、小さな手が取り上げた。
歩き出した孝一の後を、鞄を抱き締めた真白が付いてくる。玄関で差し出された鞄を受け取りながら、まさか自分がこんな朝を送ることになるとはな、と彼は小さな笑みを漏らした。
「何?」
「いや……バイト頑張れよ?」
「うん」
頷いた彼女の、嬉しそうな笑顔。
(コレを送り出すのか)
柔らかな表情をするようになった真白は、可愛い。多分、第三者の目から見ても、可愛い。『他人』の存在を意識していない為なのか、警戒心の欠片もないような風情がまた、妙にそそるのだ。
馴れ馴れしくはしないのに、警戒している気配は皆無。無邪気な表情を見せるのに、触れさせはしない――そんな独特の雰囲気は、きっと野郎どもの気を引くだろう。
思わず、ため息が漏れた。
「コウ?」
「何でもない。くれぐれも、気を付けろよ?」
「別に、危ないことなんてないよ。いつも行くファミレスだし」
孝一の気など全く知らない真白の呑気な返事に苦笑しながら、彼は扉を押し開けた。
差し出されたのは白い皿。その上のベーコンエッグには、レタスとプチトマト、皮まで切り取ってあるオレンジが添えられている。イイ感じにこんがりと焼けているベーコンの香ばしい匂いが、孝一の食欲をそそった。
「ああ、ありがとう」
バターとイチゴジャムが塗られたトーストを齧りながら、彼はそれを引き寄せる。
真白が来るまで朝食はコーヒーだけだった彼だが、今はすっかり毎食一汁三菜が習慣付いていた。昼ですら、彼女が作ってくれる弁当を持っていくことが殆どだ。
ニコッと笑った真白は、すぐに身を翻してキッチンへと戻っていく。一度少し高い位置で一つにくくってから三つ編みにした長い髪が、まるで猫の尻尾のようにゆるりと揺れた。
水音に硬い物が触れ合う音――どうやら、彼女は使った調理器具を洗っているらしい。
孝一は素早く食事を平らげると、ズボンのポケットに手を入れ、そこにある物を取り出した。
「シロ、ちょっとおいで」
呼ばれて、ピョンと彼女が顔を上げる。
「何?」
「いいから」
真白は少し首を傾げながらも水を止めると、布巾で手を拭き孝一の元へやってくる。
「ここに座って」
椅子を引いてやると、言われるままに彼女はそこに腰を下ろした。
その後ろに立って、孝一は長い三つ編みをすくい取る。元々髪が柔らかいうえに緩めに編んでいるから、三つ編みにしてあってもしなやかだった。
それをほんの少しの間もてあそんでから、クルクルとポニーテールの根元に巻き付ける。そうしておいて、ポケットから出した物――透明なピンクのプラスチックの飾りがぶら下がった小さなクリップのような代物を、三か所ほどくっ付けた。
「……これは?」
真白が首を捻って孝一を見上げながら両手で頭に触れる。
「髪をまとめる方法を、職場のヤツに教わったんだ」
「職場の?」
「ああ」
指先でプラスチックの飾りに触れながら訊いてくる彼女に、孝一は生返事で頷いた。
あまり突っ込んで欲しくない。
職場の女性が髪をキレイにまとめているのを見て、真白も同じようにしたらどうかと思ったのだ――今日から、バイトが始まるから。
はっきり言って、孝一は真白にバイトをして欲しくない。
というより、この部屋から出したくない。
彼女のバイトが始まる日が近付くにつれてどうしても強まってしまったそんな彼の気持ちは、真白にも伝わってしまっているだろう――真白の変化を喜びつつ、彼女を独占できている状況は変えたくないという、孝一の子どもじみたワガママは。
お互いの為に、それは良くないことだとは彼も解かっている。
これは、真白のバイトを――彼女が変わっていくことを孝一が受け入れているという、彼なりの無言の意思表示でもあるのだ。
いつからだとか、どこでするとか、詳細が決まってから、真白はバイトについてあまり口にしなくなった。多分、孝一が良い反応を見せなかったからだ。
全く経験のないことを始めるのだから彼女も不安や期待があっただろうに、真白は孝一の前ではバイトのバの字も出さなくなった。
(本当なら、何かアドバイスをしてやるべきだったんだ)
孝一の中で折り合いがついた頃にはもう遅く、彼も何となく口にしづらくなってしまった。
さりげなく、真白のバイトを応援してやりたい。
そう思いつつも時間は着々と流れ、バイトを始める四月一日は刻々と近付いた。
職場の女性の髪形に目が留まったのは、そんな折だった。
きれいに丸められた髪を見て、真白の長い髪も同じようにしたらどうかと思ったのだ。
昼休み、何気なくまとめ髪のやり方を尋ねた孝一と尋ねられた女性の周りには、あっという間に他の女性社員が集まってきた。
孝一は会社の女性とは付き合わない。だいぶ前にそうしたこともあったが、毎日顔を合わせる相手と交際することのわずらわしさに懲りて、一人でやめた。
愛想を振って変に好かれても困るから、今の職場での彼は仕事一辺倒だ。他の社員と言葉を交わすのは、事務的なものに留めていた。
そんな彼が「髪のまとめ方を教えて欲しい」などと言い出したら、女性陣が食い付かない筈がない。
彼女たちは、どうやら孝一が親戚の子の世話でもすると思ったらしい。懇切丁寧にやり方を教えてくれたばかりか、その為に必要なアクセサリーを売っている店まで教えてくれた。
プラスティックでできたファンシーな諸々が並ぶ店の中に立ち、まさか自分がこんな所で買い物をする羽目になろうとは、と苦笑したのは三日ほど前のことだ。
「わたし、ちょっと見てくる」
真白はそう言って立ち上がると、パタパタと小走りで洗面所の方へ向かう。
やがて戻ってきた彼女の頬は、ほんのりと色付いていた。
「ありがとう」
はにかみながら微笑んで、真白は孝一を見上げてくる。この上なく嬉しそうなその顔を見られただけでも、女子高生に混じってアクセサリを選んだ甲斐があったというものだ。
彼しか映していないその瞳を、孝一は見つめ返す。そうして、少し身体を屈めた――若干の悪戯心を含んで。
「行動で示して欲しいな」
「え?」
「どうすれば俺が喜ぶかは判っているだろう?」
彼のその言葉に、真白はパッと赤くなった。
予想通りの反応に口元が緩みそうになるのを、引き締める。
「真白?」
「……仕事、遅れるよ?」
「ああ、だから早くしてくれよ」
彼女が届くように身を低くしただけで、孝一の方からは動かない。
真白は一度チラリと時計に目を走らせて、意を決したように彼の肩に手を置いた。少し背伸びした彼女がそっと唇を重ねてくる。柔らかさと温かさを感じたのはほんの一瞬で、彼女にはそれが精一杯なのだろうとは判っているが、はっきり言って物足りない。
真白の踵が床に着くよりも早く孝一は手を伸ばし、彼女の細い首を包み込む。親指を頤《おとがい》にあてがって顔を上げさせると、覆い被さるようにして口付けた。
真白はハッと目を見開いたが、孝一が舌の先で促すと、すっかり慣らされた彼女の唇は当然のように開かれる。滑らかな彼女の舌を一瞬だけくすぐって、彼はさっと身体を起こした。
孝一にしてはあっさりとした触れ合いに、真白が物問いたげな眼差しを向けてくる。それが無意識に彼を誘っていることになるのだとは、気付かずに。
「本気で仕事を休みたくなっちまうだろ」
笑いかけて額にキスを落とし、手を放す。名残惜しいが仕方がなかった。
大きな目を逸らすことなく真っ直ぐに向けてくる真白からは、別に色香が漂ってくるわけではない。
ただ、そうやって見つめられていると、別れ難くなる――触れていたくなる。
(頼むから、そう思うのは俺だけであってくれよ)
ため息混じりに彼は胸の内でそう呟いた。惚れた欲目で孝一だけがそう感じているのなら、安心なのだが。
できるなら、今からでもバイト禁止を言い渡してしまいたい。
往生際悪くそう思ってしまう自分に、彼は苦笑した。
真白のバイトを許可するにあたって彼女に三つの条件を課しただけでも大概だろうに、これ以上見苦しいところを晒したくはない。
三つの条件――いやそれは、条件という名のわがままに過ぎなかったが。
昼間だけのシフトにすること。
二つの指輪のうち、必ずどちらかは左手の薬指に着けておくこと。
そして何かトラブルがあったらすぐに辞めること。
――婚姻届にサインをすること、というのも付け足してしまいたい誘惑に駆られたが、さすがにそれは止めておいた。
「新年度早々遅刻するわけにもいかないからな。行ってくる」
「あ、うん」
マシュマロのような真白の頬を一撫でして、孝一はソファの背にかけておいた背広を取る。鞄は彼が手を伸ばすよりも早く、小さな手が取り上げた。
歩き出した孝一の後を、鞄を抱き締めた真白が付いてくる。玄関で差し出された鞄を受け取りながら、まさか自分がこんな朝を送ることになるとはな、と彼は小さな笑みを漏らした。
「何?」
「いや……バイト頑張れよ?」
「うん」
頷いた彼女の、嬉しそうな笑顔。
(コレを送り出すのか)
柔らかな表情をするようになった真白は、可愛い。多分、第三者の目から見ても、可愛い。『他人』の存在を意識していない為なのか、警戒心の欠片もないような風情がまた、妙にそそるのだ。
馴れ馴れしくはしないのに、警戒している気配は皆無。無邪気な表情を見せるのに、触れさせはしない――そんな独特の雰囲気は、きっと野郎どもの気を引くだろう。
思わず、ため息が漏れた。
「コウ?」
「何でもない。くれぐれも、気を付けろよ?」
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