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愛猫日記
彼と彼女と彼②
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繰り返し、繰り返し、ゆったりとした動きで孝一は真白の奥深くへと高まりを埋める。その度に彼女の身体が震え、彼を包み込むその部分が収縮した。
孝一の背中に小さな爪がキリ、と食い込む。その痛みすら、彼に痺れるような快感をもたらした。
身をよじる真白が喉を反らして微かに喘ぐ。
「や、ぁ……あ、ダメ、コウ、もう、もう、わたし……ッ」
震える彼女に、孝一はついばむようなキスを落とした。
「いいよ、好きな時にイけよ」
言葉にされなくても、彼女がどんな状態なのかは、身体で判る。きつく締め付けられ、彼自身が達してしまいそうになるのをこらえながら、真白の首筋を甘噛みした。そして、そっと舌を這わせる。
「んぁぅ!」
小さな悲鳴を上げて、彼女の肩がビクンと震えた。
その様に、孝一はゾクゾクする。
孝一は、感じている真白を見るのが好きだ。できることなら一晩中でも眺めていたいが、彼にも限界がある。
(ああ……クソッ)
孝一は、腰から駆け上がるように背筋を震わせる快感に呻き声を漏らし、堪えた。まだ、終わらせたくない。
跳ねるしなやかな身体を抱き締めて、孝一は真白の中心を突き上げ、えぐった。一突きごとに彼女の熱が上がっていくのが、彼の全身に伝わってくる。
と。
「ふ、あ、あ、ぁうッ」
一際高い、孝一の鼓膜をくすぐる、甘い声。
華奢な身体がガクガクと痙攣した。
それと共に、まるで彼の身体を離したくないと言っているかのように、真白の中が何度も蠢動する。
「クゥッ」
低く呻いた孝一は、達した真白の後を追うように、彼女の中に全てを解き放った。
「ぁ……ッ」
真白の中で脈打ちながら跳ねる彼の昂ぶりに、彼女が陶然とした眼差しになる。その表情が、快感を増幅させる。
腰が抜けるような愉悦に一気に力が抜け、脈動が治まると孝一は為す術もなく真白の上に崩れ落ちた。快楽に霞んだ頭で、このままずっと彼女の中に留まっていられたらどんなに幸せだろうかと思いながら。
未だ快感に震える真白の身体に覆い被さったまま、もそもそと腕を動かし彼女を抱き締めて、孝一は荒い息が落ち着くのを待った。
ピタリと密着させた胸から、仔猫のように速まった彼女の鼓動が伝わってくる。
何度身体を重ねても、真白に対する愛おしさは全く色褪せることがなかった。いや、むしろ増すばかりだ。
愛おしくて愛おしくて、彼女の存在を感じる度に孝一の中はその気持ちだけで満たされる。
やがて鼓動も呼吸も平静を取り戻した孝一は、ゆっくりと身体を引くと仰向けになり、真白を引き寄せた。胸の上に彼女の重みと温もりを感じることに慣れてしまった――というよりも、それがないとぐっすり眠れなくなっている。
ぐったりとした真白の身体には、達した余韻で時折ヒクンと震えが走る。彼女の背中に回した腕に、次第にそれが間遠になっていくのが感じ取れた。
完全にそれが止まるのを待って、孝一は真白にそっと声をかける。
「バイト、どうだった?」
「え……あ……うん、疲れたけど、楽しかった」
答える真白は眠いのか、舌足らずになっていた。呟くように、彼女は付け加える。
「篠原さんには、たくさん怒られちゃった」
「篠原さん?」
「ん……三年生の時に同じクラスだった……」
「ああ、そのバイトに誘ってくれた?」
真白が見つけてきたファミレスバイトは、元々そこで働いていた高校の同級生に「一緒にどうか」と声をかけられたのだと聞いている。孝一はそのクラスメイトのことだろうと、相槌を打った。が、彼の胸元で彼女がかぶりを振り、柔らかな髪が彼の肌をくすぐる。
「ううん、それは五十嵐君。五十嵐君は、色々たくさん教えてくれた……」
真白の囁きに、彼女の髪をもてあそんでいた孝一の手が止まる。
明らかに片脚を夢の中に突っ込んでいる真白のその言葉には、聞き流すことができない部分があった。
(五十嵐――『君』?)
バイトに誘ってきたのは女子だと、孝一は勝手に思い込んでいた。それが男だったとは。
(なんとも思っていない相手を誘うか、普通?)
友達付き合いをしていたなら、ただの親切心からというのも有り得るかも知れない。だが、真白は積極的に他の生徒と交流していなかった。
親しくもない異性にそんなふうに働きかけてくるとしたら。
(下心があるに決まってるよな)
そう、断定する。
孝一には放っておいても女の方から寄ってきたから、彼の方から何か策を講じたことはなかった。そもそも『好きな相手』がいたこともなかったし、だから、誰かの気を引く為に行動しようと思ったこともない。
しかし、商談で、まずは相手の興味があることを会話のとば口にするというのは良くやる手だ。絡め手で、ジワリと距離を詰めていく。
掴みどころのない真白がバイトを探している姿を見せていたら、彼女に気がある者がそれを見たとしたら、いいネタになると食い付くのは間違いない。
「なあ、真白?」
孝一は呼びかけながら胸元に視線を下ろし、すでに彼女が深い寝息を立てていることに気付く。
(人の気も知らないで)
そう胸の中でぼやいたが、当然、知る筈がない。
真白の肩まで覆うように布団を引き上げて、孝一は溜め息をついた。
その五十嵐とやらのことが真白の眼中にないことは、判っている。だが、真白に気があるかもしれない男が彼女の傍にいて、彼女の手助けをしていることが、気に食わない。
これが、世に言う嫉妬というものか。姿を見たこともない、苗字しか知らない相手にそんな気持ちを抱く自分に、苦笑する。
こんなふうに心を乱されるのは、何ともみっともなく、情けない。
解かってはいるが、そもそも、そう思おうとして思っているわけではないのだから、どうしようもなかった。
真白を胸の上にのせたまま、孝一は目を閉じる。
仕事に行く前に『五十嵐』のことを確かめておかなければと頭に刻み込みつつ、彼はうとうとと眠りに落ちていった。
孝一の背中に小さな爪がキリ、と食い込む。その痛みすら、彼に痺れるような快感をもたらした。
身をよじる真白が喉を反らして微かに喘ぐ。
「や、ぁ……あ、ダメ、コウ、もう、もう、わたし……ッ」
震える彼女に、孝一はついばむようなキスを落とした。
「いいよ、好きな時にイけよ」
言葉にされなくても、彼女がどんな状態なのかは、身体で判る。きつく締め付けられ、彼自身が達してしまいそうになるのをこらえながら、真白の首筋を甘噛みした。そして、そっと舌を這わせる。
「んぁぅ!」
小さな悲鳴を上げて、彼女の肩がビクンと震えた。
その様に、孝一はゾクゾクする。
孝一は、感じている真白を見るのが好きだ。できることなら一晩中でも眺めていたいが、彼にも限界がある。
(ああ……クソッ)
孝一は、腰から駆け上がるように背筋を震わせる快感に呻き声を漏らし、堪えた。まだ、終わらせたくない。
跳ねるしなやかな身体を抱き締めて、孝一は真白の中心を突き上げ、えぐった。一突きごとに彼女の熱が上がっていくのが、彼の全身に伝わってくる。
と。
「ふ、あ、あ、ぁうッ」
一際高い、孝一の鼓膜をくすぐる、甘い声。
華奢な身体がガクガクと痙攣した。
それと共に、まるで彼の身体を離したくないと言っているかのように、真白の中が何度も蠢動する。
「クゥッ」
低く呻いた孝一は、達した真白の後を追うように、彼女の中に全てを解き放った。
「ぁ……ッ」
真白の中で脈打ちながら跳ねる彼の昂ぶりに、彼女が陶然とした眼差しになる。その表情が、快感を増幅させる。
腰が抜けるような愉悦に一気に力が抜け、脈動が治まると孝一は為す術もなく真白の上に崩れ落ちた。快楽に霞んだ頭で、このままずっと彼女の中に留まっていられたらどんなに幸せだろうかと思いながら。
未だ快感に震える真白の身体に覆い被さったまま、もそもそと腕を動かし彼女を抱き締めて、孝一は荒い息が落ち着くのを待った。
ピタリと密着させた胸から、仔猫のように速まった彼女の鼓動が伝わってくる。
何度身体を重ねても、真白に対する愛おしさは全く色褪せることがなかった。いや、むしろ増すばかりだ。
愛おしくて愛おしくて、彼女の存在を感じる度に孝一の中はその気持ちだけで満たされる。
やがて鼓動も呼吸も平静を取り戻した孝一は、ゆっくりと身体を引くと仰向けになり、真白を引き寄せた。胸の上に彼女の重みと温もりを感じることに慣れてしまった――というよりも、それがないとぐっすり眠れなくなっている。
ぐったりとした真白の身体には、達した余韻で時折ヒクンと震えが走る。彼女の背中に回した腕に、次第にそれが間遠になっていくのが感じ取れた。
完全にそれが止まるのを待って、孝一は真白にそっと声をかける。
「バイト、どうだった?」
「え……あ……うん、疲れたけど、楽しかった」
答える真白は眠いのか、舌足らずになっていた。呟くように、彼女は付け加える。
「篠原さんには、たくさん怒られちゃった」
「篠原さん?」
「ん……三年生の時に同じクラスだった……」
「ああ、そのバイトに誘ってくれた?」
真白が見つけてきたファミレスバイトは、元々そこで働いていた高校の同級生に「一緒にどうか」と声をかけられたのだと聞いている。孝一はそのクラスメイトのことだろうと、相槌を打った。が、彼の胸元で彼女がかぶりを振り、柔らかな髪が彼の肌をくすぐる。
「ううん、それは五十嵐君。五十嵐君は、色々たくさん教えてくれた……」
真白の囁きに、彼女の髪をもてあそんでいた孝一の手が止まる。
明らかに片脚を夢の中に突っ込んでいる真白のその言葉には、聞き流すことができない部分があった。
(五十嵐――『君』?)
バイトに誘ってきたのは女子だと、孝一は勝手に思い込んでいた。それが男だったとは。
(なんとも思っていない相手を誘うか、普通?)
友達付き合いをしていたなら、ただの親切心からというのも有り得るかも知れない。だが、真白は積極的に他の生徒と交流していなかった。
親しくもない異性にそんなふうに働きかけてくるとしたら。
(下心があるに決まってるよな)
そう、断定する。
孝一には放っておいても女の方から寄ってきたから、彼の方から何か策を講じたことはなかった。そもそも『好きな相手』がいたこともなかったし、だから、誰かの気を引く為に行動しようと思ったこともない。
しかし、商談で、まずは相手の興味があることを会話のとば口にするというのは良くやる手だ。絡め手で、ジワリと距離を詰めていく。
掴みどころのない真白がバイトを探している姿を見せていたら、彼女に気がある者がそれを見たとしたら、いいネタになると食い付くのは間違いない。
「なあ、真白?」
孝一は呼びかけながら胸元に視線を下ろし、すでに彼女が深い寝息を立てていることに気付く。
(人の気も知らないで)
そう胸の中でぼやいたが、当然、知る筈がない。
真白の肩まで覆うように布団を引き上げて、孝一は溜め息をついた。
その五十嵐とやらのことが真白の眼中にないことは、判っている。だが、真白に気があるかもしれない男が彼女の傍にいて、彼女の手助けをしていることが、気に食わない。
これが、世に言う嫉妬というものか。姿を見たこともない、苗字しか知らない相手にそんな気持ちを抱く自分に、苦笑する。
こんなふうに心を乱されるのは、何ともみっともなく、情けない。
解かってはいるが、そもそも、そう思おうとして思っているわけではないのだから、どうしようもなかった。
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