49 / 65
彼女&彼Side
彼Side23 もう一つの決心
しおりを挟む———家に帰ると母親が既に帰っていた。
先週出しそびれていた三者面談の日程表のプリントを渡す。
「あ、希望日通りね。じゃあこの日早退するわね」
俺は母親に「それでさ…話があるんだけど」と切り出した。
父親からこの前激怒されてから、ずっと考えていた事。
母さんはすでに離婚していてアイツとは無関係というのに、俺の事で母さんの事を悪く言われるのは嫌だった。
もうここで迷惑をかけられない。
今日佐藤にも事前に言っときたかったんだけど…。
「あのさ…俺、———東京に行こうと思うんだけど」
———三者面談当日。
「…そうですか」
柴村が神妙な顔で俺と母を見比べた。
「急な話なんですけど…」
「いや、僕も事前に小林くんからは相談は受けてて、僕自身も母子家庭で育ったので、他人事には思えなくてですね…。まぁ、成績はいいし進学出来るならしといた方がいいですし、これから大変だろうけどがんばって。で、東京はいつ行くの」
柴村が俺を見た。
「終業式の日です。飛行機の時間があるので途中で早退になると思います」
「そうか…。まぁ三年になってからより、二年の今のうちに決断しといた方がいいかもな。受験に差し支えてもいけないし、慣れるのにも時間かかるし。まぁ、心機一転、ね。あ、学校に提出する書類は東京に行くまでにはお渡ししますね」
トントンと成績表やお知らせなどのプリントをまとめて封筒に入れて俺に渡す。
「ありがとうございました」
母親が隣で頭を下げる。
俺も頭を下げて、教室のドアをガラっと開けた。
挨拶をして廊下に出ると、俺の次の順番である佐藤がすでに廊下の椅子に佐藤のお母さんと座っていた。
心なしか佐藤の様子がおかしかった。
「あら、小林くん」
佐藤のお母さんが俺に気づいた。
そういやあの日佐藤の姉たちにはオレたちの事はバレたが、両親には訂正していなかった。
「あ-----」
俺は母親の方をチラ、と見る。
「順番、小林くんが前だったのね」
にこやかに話しかけてくる。
俺は「こんにちは」と頭を下げた。
母親がキョトンとして俺を見た。
「えー…っと…」
彼氏のフリをする必要はもうないが、佐藤の両親はまだ俺が彼氏だと信じている。
俺は佐藤を見たが、視線を逸らされた。
佐藤のお母さんはにこやかに「はじめまして、佐藤と申します」とうちの母親に頭を下げて挨拶をした。
佐藤も遠慮がちに礼をする。
母親はピンときたらしく「あぁ!佐藤さん!もしかして….あっくんの彼女の?」と俺を見上げて顔を見比べる。
いや、本当は違うんだけど。
佐藤姉が挨拶していたので、母は名前を覚えてたのだろう。
「まぁ先日はお宅でご馳走になったみたいですみません~」
「いえいえ、こちらこそいきなり平日夜にお誘いしてすみませんでした」
母親たちが談笑している。
何この状況。
他のクラスも三者面談が行われているので、廊下で待っている隣のクラスの親子がこちらを見ていた。
いや、ちょっとまずいって。
教室のドアがガラっと開いた。
「次、佐藤さんどうぞー」
なかなか入って来ないので、柴村が中から顔を出した。
「あ、はい。———では失礼致します」
佐藤母はこういうところきちんとしている。
役員とかもやってそう。
佐藤も遠慮がちに会釈をする。
うちの母親も挨拶をして、中に入っていった佐藤親子を見て俺に肘でつついてきた。
「あっくん、しっかりとしたよさげな子じゃない。ああいう子がタイプだったんだ?」
廊下を歩きながら話しているけど、面談中で静まり返った廊下に響く上、隣のクラスの前の廊下を横切る時ものすごく視線を感じた。
「ちょっと声大きい。黙って」
俺は母親に言った。
「へぇ~あっくんがねぇ~」
「学校であっくんてやめてくれる?」
———家に帰ったら東京に行くための荷物の準備しないと。
父には先週、すでに連絡をしていた。
電話ですぐ済む話ではなかった。
ひとまず親子で今後について話し合わないといけないので、母さんには休みを取ってもらい、母さんと自分の東京行きのチケットを手配してもらった。
もう自分で欲しいものも要らないものも選べると思っていた。
17歳は大人なようでまだ子供だ。
———
案の定、翌日再び佐藤と俺が付き合っているという噂が流れた。
多分、昨日の一件だろう。
噂の出処はあの時廊下にいたヤツか。
2回目だからやり過ごす方法も分かった。
ほっとけばしばらくしたらおさまる。
夏休みの間に噂も収まるだろう。
ただ今回も何か他の男子から言われて佐藤が困っていることがあったら助けてほしいと和幸には頼んでいた。
中には調子に乗って悪ふざけしてしつこくするヤツがたまにいる。
和幸は男子の中でも一目置かれている人徳あるやつだから、多少のヤツなら大丈夫。
いつも調子にのってふざけている俺とは違う。
実際には俺は守りたいものも守れない。
0
あなたにおすすめの小説
憧れのお姉さんは淫らな家庭教師
馬衣蜜柑
恋愛
友達の恋バナに胸を躍らせる教え子・萌音。そんな彼女を、美咲は優しく「大人の身体」へと作り替えていく。「ねえ萌音ちゃん、お友達よりも……気持ちよくしてあげる」眼鏡の家庭教師が教えるのは、教科書には載っていない「女同士」の極上の溶け合い方。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと?
そんな男、こっちから願い下げ!
——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ!
って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる