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「いつから、知ってた? 俺がΩだって」
「庸輔、教室で、ずっと、気を張っていただろ?」
上手くやれていた、と思ったのに、俺って挙動不審だった?
「部屋に帰ったら、がん泣きしていたし」
「それは……。……仕方ないだろ? ショックだったんだ」
白石の握力が増す。
「庸輔の様子が、おかしくなったのは、血液検査の結果が、わかってからだ。αの奴らが言うには、俺達のクラスには、Ωがいる。ベランダから見える庸輔は、いつも泣いている。二人で入ろうって、約束していたバスケ部にも入らず、ずっと泣いて」
「で、俺がΩだって?」
「確信はなかった。でも、もし、そうなら」
再び、白石の手が腹部に当てられる。
「初めて、こうした日、庸輔の顔を見て、守らなきゃって思った。友達とか幼馴染みとか、過去の繋がりは、どこかへ行ってしまって、守るんだって、ただ、それだけ」
でも、と白石は唇を噛みしめた。
「お前が発情したとき、俺は逃げた」
白石の声に嗚咽が混ざり、焦った。
「いや、それこそ、仕方ねぇだろ。男の発情なんて、キモいもんな。そりゃ、普通、逃げるって。見るに堪えねぇもん」
うっ、自分で言った言葉が、ブーメランのように返ってきた。
心臓から血、吹きそう。
「違う」
白石が首を横に振る。
「発情して苦しむ庸輔に、俺は欲情したんだ」
「え?」
「俺がX高校を志望したのは、αの欲求を押さえ込めるようになる、特別な授業があったからだ。庸輔の発情期に対応できれば、αもΩも関係なかったガキの頃に、近づけると思った」
白石の手が、重ねられた腹が、温かい。
「そんな計画をたてていたんだけど、志望校のことで庸輔を傷つけたうえ、発情期のお前、残して逃げ出すとか、計画以前の……守る以前の問題だよな」
αは勝ち組で、社会からチヤホヤされて、Ωやβをはべらせ、たいして苦労もなく、一生を終えられるんだろうなって思っていた。
白石の手に触れる。
「なあ、お前が俺から逃げていったあとも、俺の前に現れなかったのって、なんで?」
俺はある意味、運がよかったのかもしれない。
俺の周りは、基本、βだったから。
白石は違う。
X高校はαの巣窟だ。
そこで何かあったんだ。
白石の指がわずかに動く。
「言えない」
「如月と関係あんのか?」
相手は息を飲んだ。
「何があった? 言ってくれなきゃ、わかんねぇし、不安になんだよ」
「ごめん。言えないんだ。言ったら、罰せられる」
たかが高校に、人、一人を裁く力なんてあんのか?
「それにこれは俺の問題だから。庸輔は自分の体のことを考えていればいい。今度、庸輔のご両親に挨拶に行かせてくれ」
微笑まれたってな、寂しいんだわ、ボケ。
俺はそんなに頼りねぇ?
「妊娠って、いつ頃、わかるんだっけ?」
白石は面食らったようだった。
「あ……ああ。正確性をあげたいなら、三週間後とか?」
「わかった。三週間後だな」
「庸輔……?」
白石が心配げに俺の名前を呼ぶ。
「お前もわかったな。三週間後、子どもができたかどうか、はっきりしてから、両方の親に会いに行く。気の利いた言葉、考えとけよ」
このまま、終らせてたまるか。
白石には、幸せだって笑ってて貰わなきゃ、困んだよ。
んな悲壮な面、家庭に入れさせねぇからな、俺は!
「庸輔、教室で、ずっと、気を張っていただろ?」
上手くやれていた、と思ったのに、俺って挙動不審だった?
「部屋に帰ったら、がん泣きしていたし」
「それは……。……仕方ないだろ? ショックだったんだ」
白石の握力が増す。
「庸輔の様子が、おかしくなったのは、血液検査の結果が、わかってからだ。αの奴らが言うには、俺達のクラスには、Ωがいる。ベランダから見える庸輔は、いつも泣いている。二人で入ろうって、約束していたバスケ部にも入らず、ずっと泣いて」
「で、俺がΩだって?」
「確信はなかった。でも、もし、そうなら」
再び、白石の手が腹部に当てられる。
「初めて、こうした日、庸輔の顔を見て、守らなきゃって思った。友達とか幼馴染みとか、過去の繋がりは、どこかへ行ってしまって、守るんだって、ただ、それだけ」
でも、と白石は唇を噛みしめた。
「お前が発情したとき、俺は逃げた」
白石の声に嗚咽が混ざり、焦った。
「いや、それこそ、仕方ねぇだろ。男の発情なんて、キモいもんな。そりゃ、普通、逃げるって。見るに堪えねぇもん」
うっ、自分で言った言葉が、ブーメランのように返ってきた。
心臓から血、吹きそう。
「違う」
白石が首を横に振る。
「発情して苦しむ庸輔に、俺は欲情したんだ」
「え?」
「俺がX高校を志望したのは、αの欲求を押さえ込めるようになる、特別な授業があったからだ。庸輔の発情期に対応できれば、αもΩも関係なかったガキの頃に、近づけると思った」
白石の手が、重ねられた腹が、温かい。
「そんな計画をたてていたんだけど、志望校のことで庸輔を傷つけたうえ、発情期のお前、残して逃げ出すとか、計画以前の……守る以前の問題だよな」
αは勝ち組で、社会からチヤホヤされて、Ωやβをはべらせ、たいして苦労もなく、一生を終えられるんだろうなって思っていた。
白石の手に触れる。
「なあ、お前が俺から逃げていったあとも、俺の前に現れなかったのって、なんで?」
俺はある意味、運がよかったのかもしれない。
俺の周りは、基本、βだったから。
白石は違う。
X高校はαの巣窟だ。
そこで何かあったんだ。
白石の指がわずかに動く。
「言えない」
「如月と関係あんのか?」
相手は息を飲んだ。
「何があった? 言ってくれなきゃ、わかんねぇし、不安になんだよ」
「ごめん。言えないんだ。言ったら、罰せられる」
たかが高校に、人、一人を裁く力なんてあんのか?
「それにこれは俺の問題だから。庸輔は自分の体のことを考えていればいい。今度、庸輔のご両親に挨拶に行かせてくれ」
微笑まれたってな、寂しいんだわ、ボケ。
俺はそんなに頼りねぇ?
「妊娠って、いつ頃、わかるんだっけ?」
白石は面食らったようだった。
「あ……ああ。正確性をあげたいなら、三週間後とか?」
「わかった。三週間後だな」
「庸輔……?」
白石が心配げに俺の名前を呼ぶ。
「お前もわかったな。三週間後、子どもができたかどうか、はっきりしてから、両方の親に会いに行く。気の利いた言葉、考えとけよ」
このまま、終らせてたまるか。
白石には、幸せだって笑ってて貰わなきゃ、困んだよ。
んな悲壮な面、家庭に入れさせねぇからな、俺は!
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