鮮やかなもの

上野たすく

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 白石からの提案で、俺達は同棲することになった。
 会社から、一駅離れたマンションの一室。
 最寄り駅は徒歩圏内だし、二十四時間、フル回転してくれるスーパーもある。
 そこの酒コーナーは、種類が豊富で涎もんだ。
 あの喉ごしと苦みに依存してたのね、俺。
 ノンアルコールなら、いいんじゃないかって、白石が有名所を持ってきてくれるけど、余計、本物が飲みたくなるっつって断った。
 妊娠がわかったら十ヶ月ちかく、禁酒か。
 俺も飲まないようにする、と白石は笑って、サイダーを買い物カゴへ入れた。
 俺がそうでも、お前はいつも通りにいればいいのに。
 一緒に住んでみると、中学の頃とのギャップがすごかった。
 自慢の幼馴染みは大人になり、ほとんどのことを一人でできる。
 掃除も料理も自動車の運転も。
 俺だってなぁ、できるぞ。
 本気出しさえすればな!
 大学から一人暮らししてんだ。舐めんな! 
 意気込んでいたら、リンスを詰め替えようとして、シャンプーのボトルに注ぎ込んじまった。
 マジ、ごめん……。
 しかも、タオルが最近、綺麗になんねぇって、白石がぼやいたから洗剤のせいにしたら、どれ使ってるってなって、渡したそれが柔軟剤だったから、それじゃあ、汚れは落ちねぇって呆れられた。
 リンスインシャンプーみたいな感じかと思っとった……。
 俺、柔軟剤って使ったことねぇもん。
 白石が言うには、洗剤に柔軟剤が加わったのもあるらしいが、白石が所持していたものは、別々に使うものだったらしい。
 俺のできなさぶりを、白石は許すばかりか、愛しいと言った。
「やっぱ、俺が守ってやらないとダメだな」
 くっそ、バカにしやがって! 
 白石のくせに! 白石のくせに!
 会社に出勤し、デスクにつくと浜ちゃんが体を寄せ、耳打ちしてきた。
「どうしたんですか? 近頃、仲の良さが増してますよ。一緒に出勤スタイル。これで何日目ですか?」
 十七日目です。
「こないだ、同じマンションに入ってくところ見たって、女の人達が話していましたよ」
 どんな話をされていたのでしょうか?
 幼馴染みであることも言ってねぇし、グレーな部分が多ければ、妄想も膨らんじゃうよな。
 白石を窺う。
 事務の女性と書類を確認しながら、笑顔で話をしている。
 番の申請をすれば、男女の結婚と同じ効力が生じ、俺達は記録上も家族になれる。
「もうちょっと待って。時期が来たら、ちゃんと話す」
 そばかすの彼は目を丸くし、そして、わかりました、と柔らかい笑みを返してくれた。
「そうだ。今日、お昼までいる? よかったら、ご馳走させてよ。この間、添削、手伝ってくれただろ?」
「本当ですか! 金欠だったんです。ありがたく、ごちにならせていただきます」
 部屋じゃ、白石に、俺が世話をして貰ってるみたいだから、なんかこの反応、自尊心をくすぐるなぁ。
 気分がよかったから、午前中の講義も、その乗りで終らすことができ、浜ちゃんを、自分一人では決して使わない店へと案内した。
 店内は洋風で洒落ているのに、明かりや壁、設置されているテーブルなどは、落ち着いた色をしている。
「いいんですか? 僕、本当にお金ないですよ」
 怯える浜ちゃん。
「どこでも、ランチはお得だろ?」
「え~。払える根拠、そこですか?」
 窓際に通され、椅子を下げてもらって座る。
 こんなサービスもしてくれんの!
 ランチ代にサービス料金プラスになんねぇよな?
 心拍数が上がりそう。
 大丈夫。現金を超えてもカードあるし。うん。
 はあ、決めきれねぇな、俺。
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