25 / 41
25
しおりを挟む
「奥村君の言う通り、普通の手紙でしたね」
やっちゃんは嬉しそうに手紙を読んでいるけど、俺はゴクリと唾を飲み込む。
その文字、定規を使って書いてあるよね。
犯罪予告みたいなんですが……。
どういうつもりだ、相手の奴。
名無しの弁当を何の説明もなくやったり、手紙に定規つかったり。
やっちゃんはニコニコしてるけど、変なこと書いてねぇだろうな?
俺は手持ちぶさたなこともあって、胡座をかぎ、思考を巡らせてみる。
定規で文字を書くってことは、自筆だと素性がバレる可能性があるってこと?
弁当は……、やっちゃんが心配だから。
手紙は…………やっちゃんと話したかったから。
相手は、やっちゃんの昔馴染みかな。
壁を作ってるってことは、過去に、それだけの何かが、あったんだろう。
やっちゃん、見てっと、傍にきてやれよって、思うけどな。
ふう、と息をつくと、やっちゃんは手紙から顔を上げた。
「どんなこと、書いてあんの?」
雰囲気だけでも、知りてぇ。
「すごいんです。この人、僕のこと、すごく、知ってて。牛乳配達していることとか、スーパーの掃除していることとか、よく散歩へ行く公園まで知ってるんです。あ、昨日、お腹壊しちゃったこと、自分の作ったお弁当のせいだって思ってるみたいだから、訂正しておかないとですね」
やっちゃん、そういう行動をとる奴のことを、ストーカーって、世間は呼ぶんだぜ。
この部屋、盗聴されてねぇだろうなぁ、おい。
「奥村君のことも、書いてありますよ」
「え! マジ! なんて?」
やっちゃんが優しく微笑む。
「いいお友達ができたみたいで、うれしいですって」
呼吸を止めた。
ごめん。相手、ストーカーじゃない。
きっと、手紙の主は、誰よりも、やっちゃんを大事に思ってる。
「思い当たる人、いないの?」
「……はい。僕自身、すごく意外で戸惑っています。人と接した記憶、あんまりないから。こんなに見てくれてる人がいるんだなって」
僕、親に捨てられたんです、とやっちゃんは目を伏せた。
「僕の両親はαで、兄もそうでした。僕だけがΩだった。六歳のとき、旅行で立ち寄った駅に、置き去りにされたんです。父や母が僕を嫌っていたことは、薄々、感じていたんです。だから」
「帰れなかった?」
「はい……」
立ち上がり、やっちゃんの傍で膝をつく。
不思議そうに、俺の名を呼ぶやっちゃんの、ふさふさな髪をかき混ぜた。
「大丈夫。やっちゃんには俺がいるし、弁当の人もいる。きっと、この手紙の人、やっちゃんのこと、すげぇ好きだ。第三者の俺が言うんだから、間違いないって」
やっちゃんは、涙を浮かべた瞳で、何度も頷いた。
ビーとサイレンが鳴る。
部屋じゃなく、外で。
「うおっ! なに??」
「あ、心配いりません。近くに工場があって、そこがお昼休みになる合図として鳴らすんです」
かなり、でかい音だ。
工場内じゃ、これくらい、でかくないと聞こえねぇってことか。
「僕達もお昼にしませんか? 来ていただいたお礼に、ご馳走します」
やっちゃんは冷蔵庫を漁りながら、俺のアレルギーの有無を聞いてくる。
なんでも食べれることを伝え、手伝おうかと言うが、テレビでも観ててください、とリモコンを渡された。
存在を主張しないサイズの、液晶画面のスイッチを入れ、ニュース番組を選択する。
ガヤガヤうるさいテレビより、やっちゃんの出す音の方が落ち着く。
瞼が重い。
昨日、あんま寝られなかったからな。
やっちゃんは嬉しそうに手紙を読んでいるけど、俺はゴクリと唾を飲み込む。
その文字、定規を使って書いてあるよね。
犯罪予告みたいなんですが……。
どういうつもりだ、相手の奴。
名無しの弁当を何の説明もなくやったり、手紙に定規つかったり。
やっちゃんはニコニコしてるけど、変なこと書いてねぇだろうな?
俺は手持ちぶさたなこともあって、胡座をかぎ、思考を巡らせてみる。
定規で文字を書くってことは、自筆だと素性がバレる可能性があるってこと?
弁当は……、やっちゃんが心配だから。
手紙は…………やっちゃんと話したかったから。
相手は、やっちゃんの昔馴染みかな。
壁を作ってるってことは、過去に、それだけの何かが、あったんだろう。
やっちゃん、見てっと、傍にきてやれよって、思うけどな。
ふう、と息をつくと、やっちゃんは手紙から顔を上げた。
「どんなこと、書いてあんの?」
雰囲気だけでも、知りてぇ。
「すごいんです。この人、僕のこと、すごく、知ってて。牛乳配達していることとか、スーパーの掃除していることとか、よく散歩へ行く公園まで知ってるんです。あ、昨日、お腹壊しちゃったこと、自分の作ったお弁当のせいだって思ってるみたいだから、訂正しておかないとですね」
やっちゃん、そういう行動をとる奴のことを、ストーカーって、世間は呼ぶんだぜ。
この部屋、盗聴されてねぇだろうなぁ、おい。
「奥村君のことも、書いてありますよ」
「え! マジ! なんて?」
やっちゃんが優しく微笑む。
「いいお友達ができたみたいで、うれしいですって」
呼吸を止めた。
ごめん。相手、ストーカーじゃない。
きっと、手紙の主は、誰よりも、やっちゃんを大事に思ってる。
「思い当たる人、いないの?」
「……はい。僕自身、すごく意外で戸惑っています。人と接した記憶、あんまりないから。こんなに見てくれてる人がいるんだなって」
僕、親に捨てられたんです、とやっちゃんは目を伏せた。
「僕の両親はαで、兄もそうでした。僕だけがΩだった。六歳のとき、旅行で立ち寄った駅に、置き去りにされたんです。父や母が僕を嫌っていたことは、薄々、感じていたんです。だから」
「帰れなかった?」
「はい……」
立ち上がり、やっちゃんの傍で膝をつく。
不思議そうに、俺の名を呼ぶやっちゃんの、ふさふさな髪をかき混ぜた。
「大丈夫。やっちゃんには俺がいるし、弁当の人もいる。きっと、この手紙の人、やっちゃんのこと、すげぇ好きだ。第三者の俺が言うんだから、間違いないって」
やっちゃんは、涙を浮かべた瞳で、何度も頷いた。
ビーとサイレンが鳴る。
部屋じゃなく、外で。
「うおっ! なに??」
「あ、心配いりません。近くに工場があって、そこがお昼休みになる合図として鳴らすんです」
かなり、でかい音だ。
工場内じゃ、これくらい、でかくないと聞こえねぇってことか。
「僕達もお昼にしませんか? 来ていただいたお礼に、ご馳走します」
やっちゃんは冷蔵庫を漁りながら、俺のアレルギーの有無を聞いてくる。
なんでも食べれることを伝え、手伝おうかと言うが、テレビでも観ててください、とリモコンを渡された。
存在を主張しないサイズの、液晶画面のスイッチを入れ、ニュース番組を選択する。
ガヤガヤうるさいテレビより、やっちゃんの出す音の方が落ち着く。
瞼が重い。
昨日、あんま寝られなかったからな。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
あなたの家族にしてください
秋月真鳥
BL
ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。
情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。
闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。
そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。
サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。
対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。
それなのに、なぜ。
番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。
一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。
ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。
すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。
※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。
※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。
箱入りオメガの受難
おもちDX
BL
社会人の瑠璃は突然の発情期を知らないアルファの男と過ごしてしまう。記憶にないが瑠璃は大学生の地味系男子、琥珀と致してしまったらしい。
元の生活に戻ろうとするも、琥珀はストーカーのように付きまといだし、なぜか瑠璃はだんだん絆されていってしまう。
ある日瑠璃は、発情期を見知らぬイケメンと過ごす夢を見て混乱に陥る。これはあの日の記憶?知らない相手は誰?
不器用なアルファとオメガのドタバタ勘違いラブストーリー。
現代オメガバース ※R要素は限りなく薄いです。
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。ありがたいことに、グローバルコミック賞をいただきました。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる