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本編
037 誰の耳にも入るようにだ
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王宮では静かにこの日を喜ぶ者達がいた。
「っ、父上……っ」
「陛下っ……っ」
「心配をかけたな……」
第二王子と王の侍従が、喜びに涙を落とす。回復の兆しが明らかになったのは数日前。そして今日、王は体を起こすことまでできるようになった。
「よかった……っ、薬が本当に効いて……っ」
「外部の薬師に確認はさせましたが……心配でした……っ」
「ああ……よくやってくれた」
流石に、知らない内に届けられていた薬が王のための解毒剤だとしても、そのまま信じられるわけがない。
「本当にあの香が毒だとは……っ」
「私が付いていながら、毒を盛られるとはっ……申し訳ありませんっ」
その薬を届けてくれた人は、多くの貴族達の不正などの情報とは別に、美しい文字の書かれた手紙で、周りに知られずに調査しろと伝えられていた。そこで、どれが毒なのかを正確に教えてくれていたのだ。そして、一緒に置かれていたものがその解毒剤であり、調べてもいいと書かれていた。
すぐに第二王子と侍従長は、個々でその薬と毒の調査を始めた。誰かに知られるわけにはいかないと思ったのだ。
王宮薬師ではなく、外部の知り合いの薬師を頼り調査すれば、間違いなくその毒に効く薬であると証明された。それが薬が届けられて二日目のことだ。それまで王は、動かない体をなんとか無理にでも動かし、解毒薬を飲んでいた。
結果が分かった侍従長と第二王子がその後は手を貸し、薬師からの助言を受けたこともあり、予定よりも早く王は起きられるようになった。
「仕方あるまい……昔から、あの女は狡猾であった……母上と気が合うはずだ……」
「っ、あの……お祖母様は……」
「死んだか……」
王は、痩せて落ち窪んだ目をギラリと光らせる。期待からだ。これに第二王子は、申し訳なさそうに答える。
「っ、いえ……お体の調子が悪いようで、寝込んでいるというのは確かです」
「では、すぐに地下牢に入れよう。私に毒を盛ったという疑いをかけてな」
「それはっ……母上ではなく……ですか?」
「王后さえいなくなれば、アレは力を失う。そうなれば、いくらでも排除する方法はあるのでな」
「……分かりました!」
「では、密かに」
「いや。多めに騎士を連れていき、大々的に王后を捕えろ。誰の耳にも入るようにだ」
「っ、分かりました」
王はかなり怒っているようだ。毒で体は弱っているが、目だけは強く光っていた。それは、誰にも屈さないという強い信念に見える。まだまだ王として立つ力があると感じられた。
第二王子が指揮を取ると部屋を飛び出して行くのを侍従と王は見送る。
「これで私に毒が盛られていたと内外には示せる。誰が犯人かなど、誰でも分かるだろう……懐疑の目を向けられて、あの女は黙っていられるか……」
少しは仕返しができるとほんのりと口元を緩める王。しかし、やはりまだ万全ではない。顔色が先ほどよりも悪くなっていた。
「陛下、お休みください。毒のことが認知されますので、香炉も回収いたします。見張りも増やしましょう。これでまた少しお体も楽になるはずです」
「そうだな……早く動けるようにならねば……あの子のためにも……」
「……陛下?」
大きなテラスに繋がる窓の方を見る王。そこから、またあの子が入って来ないかと、毎晩期待している。夢見心地で見た姿は、亡くなった妻によく似ていた。
「派手にやれば、あの子や息子にも届くだろう……」
時を待っているであろう最愛の息子。間違いなく生きていると今は確信を持っている。
「早く帰ってこなければ……私がアレに引導を渡してしまうぞ……」
手足はもいだ。いつでも戻っておいでと、王は身を横たえながら窓の外へと想いを馳せた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「っ、父上……っ」
「陛下っ……っ」
「心配をかけたな……」
第二王子と王の侍従が、喜びに涙を落とす。回復の兆しが明らかになったのは数日前。そして今日、王は体を起こすことまでできるようになった。
「よかった……っ、薬が本当に効いて……っ」
「外部の薬師に確認はさせましたが……心配でした……っ」
「ああ……よくやってくれた」
流石に、知らない内に届けられていた薬が王のための解毒剤だとしても、そのまま信じられるわけがない。
「本当にあの香が毒だとは……っ」
「私が付いていながら、毒を盛られるとはっ……申し訳ありませんっ」
その薬を届けてくれた人は、多くの貴族達の不正などの情報とは別に、美しい文字の書かれた手紙で、周りに知られずに調査しろと伝えられていた。そこで、どれが毒なのかを正確に教えてくれていたのだ。そして、一緒に置かれていたものがその解毒剤であり、調べてもいいと書かれていた。
すぐに第二王子と侍従長は、個々でその薬と毒の調査を始めた。誰かに知られるわけにはいかないと思ったのだ。
王宮薬師ではなく、外部の知り合いの薬師を頼り調査すれば、間違いなくその毒に効く薬であると証明された。それが薬が届けられて二日目のことだ。それまで王は、動かない体をなんとか無理にでも動かし、解毒薬を飲んでいた。
結果が分かった侍従長と第二王子がその後は手を貸し、薬師からの助言を受けたこともあり、予定よりも早く王は起きられるようになった。
「仕方あるまい……昔から、あの女は狡猾であった……母上と気が合うはずだ……」
「っ、あの……お祖母様は……」
「死んだか……」
王は、痩せて落ち窪んだ目をギラリと光らせる。期待からだ。これに第二王子は、申し訳なさそうに答える。
「っ、いえ……お体の調子が悪いようで、寝込んでいるというのは確かです」
「では、すぐに地下牢に入れよう。私に毒を盛ったという疑いをかけてな」
「それはっ……母上ではなく……ですか?」
「王后さえいなくなれば、アレは力を失う。そうなれば、いくらでも排除する方法はあるのでな」
「……分かりました!」
「では、密かに」
「いや。多めに騎士を連れていき、大々的に王后を捕えろ。誰の耳にも入るようにだ」
「っ、分かりました」
王はかなり怒っているようだ。毒で体は弱っているが、目だけは強く光っていた。それは、誰にも屈さないという強い信念に見える。まだまだ王として立つ力があると感じられた。
第二王子が指揮を取ると部屋を飛び出して行くのを侍従と王は見送る。
「これで私に毒が盛られていたと内外には示せる。誰が犯人かなど、誰でも分かるだろう……懐疑の目を向けられて、あの女は黙っていられるか……」
少しは仕返しができるとほんのりと口元を緩める王。しかし、やはりまだ万全ではない。顔色が先ほどよりも悪くなっていた。
「陛下、お休みください。毒のことが認知されますので、香炉も回収いたします。見張りも増やしましょう。これでまた少しお体も楽になるはずです」
「そうだな……早く動けるようにならねば……あの子のためにも……」
「……陛下?」
大きなテラスに繋がる窓の方を見る王。そこから、またあの子が入って来ないかと、毎晩期待している。夢見心地で見た姿は、亡くなった妻によく似ていた。
「派手にやれば、あの子や息子にも届くだろう……」
時を待っているであろう最愛の息子。間違いなく生きていると今は確信を持っている。
「早く帰ってこなければ……私がアレに引導を渡してしまうぞ……」
手足はもいだ。いつでも戻っておいでと、王は身を横たえながら窓の外へと想いを馳せた。
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