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本編
039 見過ぎだよ!
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第二王子が一仕事終えて王族の居室に戻って来た。それを笑顔で迎え入れるのは、髪色を元に戻したアルセルだ。
「やあ。その顔は、上手くいったみたいだね」
「っ……ああ。それにしても、本当にその色なんだ……」
「これ? 僕はまだおとなしい方だよ。僕が一番鈍い色で、姉上が少し明るい。その上が父上と同じティナってね~。まだこれくらいの色だと潜めるんだけど、父上やティナくらいになると、月光でもキラキラするから困りそう」
「……潜むのは当然なのか?」
「何言ってんの? ティナなんて、王宮の……お祖父様の寝室に普通に何度も忍び込んでいるし、君の枕元にも薬、届けてなかった?」
「っ……あれっ! ティナ嬢が直接!?」
王の治療薬は、侍従長と第二王子の元に直接届けていた。貴族や王妃の不正や犯罪の調査書類と共に、ある時寝室の枕元に置かれていたのだ。
「ティナなら簡単なことだよ」
「……」
そこに、王を伴ったレイノートと護衛のように付き添うリスティアがやって来る。
「父上っ。お身体の具合は……」
「……怖いぐらいに良くなった……明日死ぬのではないかと思うくらい劇的に……っ」
「ち、父上……?」
王は怯えていた。レイノートが腕を貸しているが、それは体の調子が悪いからではなく、怖くて腰が引けているから。
「はははっ。霊薬は良く効くでしょうっ。大丈夫ですよ。お義父上っ。レイもまだまだ元気ですからっ」
「ど、どういうことだ?」
「……私も、死にかけたことがありまして……そこで、森の神の霊薬をいただき、生き延びたのです……」
「あの頃はまだ、レイは自暴自棄になる所があったからなあ」
「っ、リスティ……」
恥ずかしそうにするレイノート。若気の至りというやつなのだろう。少々無茶をして死にかけたのは、今のレイノートにとっては黒歴史とも呼べるものだった。
「内臓がはみ出ていたレイもこの通りピンピンしてますからね。ちょっと毒で弱ったくらいは大したことありませんよ」
「……はみ出ていたのか……」
「兄上……っ」
「……」
かなり悲惨な様子も、今は見る影もないのだから、王は安心すべきだろう。リスティアもそのために話した。しかし、内臓がという話のせいで、レイノートは居た堪れない視線をもらっていた。
その困っている様子を見て、リスティアは可愛いなと思っているバカップルだ。それを正しく察しているのは、この場では息子のアルセルだけだった。
「あら。どうしたのです? お父様がまだ困っていらっしゃるなんて、今日はとても楽しい日ですわね」
「ビオラ……大司教、我慢できなかったの?」
ビオラをエスコートして来た者がいた。それが大司教だ。別の部屋で待機しているはずが、ビオラに見惚れながらしっかりとその腰まで抱いて手を取っている。
「ちょっと、大司教っ。姉上を見過ぎだよ!」
「……アルセル。黙っていてくれ。私はビオラの声だけを聞いていたい」
「あらあら。相変わらず困った人ね」
ビオラが空いている手を大司教の頬に滑らせる。すると、その手に縋るようにうっとりとした表情で、その手に頬を擦り付けた。
「君を困らせるのは本意ではないが……君の意識が私に向いていると考えると……堪らないな」
「ふふふ。これでやって行けるのかしら」
「もちろん。嫉妬はするだろうが、ほんのひと時でも傍に居られるなら、我慢できるよ」
「それならいいわ。頼むわよ? ローエ」
「ああ。任せてくれ。君の言いつけは守るよ」
「ふふふ」
「……姉上が……やっぱり悪女にしか見えない……これから大変だね……」
アルセルが同情する目を向けるのは、第二王子。これから、嫌でもビオラとローエに振り回されることになる人物だ。
「……頑張るよ……」
「うん……」
どうにも苦労人だなと、アルセルは気の毒に思った。第二王子との関係としては叔父だが、年齢や付き合いからすると友人。できる限りフォローしようとアルセルは心に決めた。
次にやって来たのは、アルティナとオリエル。そして、銀の女王だった。
アルティナの家族も、王達も、アルティナの姿に絶句した。
「……月の……女神……」
第二王子が思わず呟く。神話の中でしかしらない女神が降臨したかと思えるほど、アルティナと銀狼が並ぶ姿は、神秘的だった。
「もう始まる?」
「「「「「……」」」」」
喋らなければだ。
これから始まる催しに心躍るのだと喜色を浮かべて拳を握る様子は、女神とは程遠かった。お陰で全員、正気に戻ったと言えるので、良かったのだろう。
しかし、オリエルだけは、先ほどのビオラを見るローエと同じで、うっとりとアルティナを見つめていた。
「この残念な子に惚れてくれるとは……有り難いね……」
家族達は、全員アルセルの呟きに同意していた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「やあ。その顔は、上手くいったみたいだね」
「っ……ああ。それにしても、本当にその色なんだ……」
「これ? 僕はまだおとなしい方だよ。僕が一番鈍い色で、姉上が少し明るい。その上が父上と同じティナってね~。まだこれくらいの色だと潜めるんだけど、父上やティナくらいになると、月光でもキラキラするから困りそう」
「……潜むのは当然なのか?」
「何言ってんの? ティナなんて、王宮の……お祖父様の寝室に普通に何度も忍び込んでいるし、君の枕元にも薬、届けてなかった?」
「っ……あれっ! ティナ嬢が直接!?」
王の治療薬は、侍従長と第二王子の元に直接届けていた。貴族や王妃の不正や犯罪の調査書類と共に、ある時寝室の枕元に置かれていたのだ。
「ティナなら簡単なことだよ」
「……」
そこに、王を伴ったレイノートと護衛のように付き添うリスティアがやって来る。
「父上っ。お身体の具合は……」
「……怖いぐらいに良くなった……明日死ぬのではないかと思うくらい劇的に……っ」
「ち、父上……?」
王は怯えていた。レイノートが腕を貸しているが、それは体の調子が悪いからではなく、怖くて腰が引けているから。
「はははっ。霊薬は良く効くでしょうっ。大丈夫ですよ。お義父上っ。レイもまだまだ元気ですからっ」
「ど、どういうことだ?」
「……私も、死にかけたことがありまして……そこで、森の神の霊薬をいただき、生き延びたのです……」
「あの頃はまだ、レイは自暴自棄になる所があったからなあ」
「っ、リスティ……」
恥ずかしそうにするレイノート。若気の至りというやつなのだろう。少々無茶をして死にかけたのは、今のレイノートにとっては黒歴史とも呼べるものだった。
「内臓がはみ出ていたレイもこの通りピンピンしてますからね。ちょっと毒で弱ったくらいは大したことありませんよ」
「……はみ出ていたのか……」
「兄上……っ」
「……」
かなり悲惨な様子も、今は見る影もないのだから、王は安心すべきだろう。リスティアもそのために話した。しかし、内臓がという話のせいで、レイノートは居た堪れない視線をもらっていた。
その困っている様子を見て、リスティアは可愛いなと思っているバカップルだ。それを正しく察しているのは、この場では息子のアルセルだけだった。
「あら。どうしたのです? お父様がまだ困っていらっしゃるなんて、今日はとても楽しい日ですわね」
「ビオラ……大司教、我慢できなかったの?」
ビオラをエスコートして来た者がいた。それが大司教だ。別の部屋で待機しているはずが、ビオラに見惚れながらしっかりとその腰まで抱いて手を取っている。
「ちょっと、大司教っ。姉上を見過ぎだよ!」
「……アルセル。黙っていてくれ。私はビオラの声だけを聞いていたい」
「あらあら。相変わらず困った人ね」
ビオラが空いている手を大司教の頬に滑らせる。すると、その手に縋るようにうっとりとした表情で、その手に頬を擦り付けた。
「君を困らせるのは本意ではないが……君の意識が私に向いていると考えると……堪らないな」
「ふふふ。これでやって行けるのかしら」
「もちろん。嫉妬はするだろうが、ほんのひと時でも傍に居られるなら、我慢できるよ」
「それならいいわ。頼むわよ? ローエ」
「ああ。任せてくれ。君の言いつけは守るよ」
「ふふふ」
「……姉上が……やっぱり悪女にしか見えない……これから大変だね……」
アルセルが同情する目を向けるのは、第二王子。これから、嫌でもビオラとローエに振り回されることになる人物だ。
「……頑張るよ……」
「うん……」
どうにも苦労人だなと、アルセルは気の毒に思った。第二王子との関係としては叔父だが、年齢や付き合いからすると友人。できる限りフォローしようとアルセルは心に決めた。
次にやって来たのは、アルティナとオリエル。そして、銀の女王だった。
アルティナの家族も、王達も、アルティナの姿に絶句した。
「……月の……女神……」
第二王子が思わず呟く。神話の中でしかしらない女神が降臨したかと思えるほど、アルティナと銀狼が並ぶ姿は、神秘的だった。
「もう始まる?」
「「「「「……」」」」」
喋らなければだ。
これから始まる催しに心躍るのだと喜色を浮かべて拳を握る様子は、女神とは程遠かった。お陰で全員、正気に戻ったと言えるので、良かったのだろう。
しかし、オリエルだけは、先ほどのビオラを見るローエと同じで、うっとりとアルティナを見つめていた。
「この残念な子に惚れてくれるとは……有り難いね……」
家族達は、全員アルセルの呟きに同意していた。
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